
ギュスターヴ ドレ( 1860年頃)
オケアニス(オケアニデス)は数えきれないという意味合いの3000人いるという海神・オケアノスの娘たち。
大海を司る女神とも海のニンフともいわれます。
一見、神話の中の脇役的な存在のように思われますが、実は多くのオケアニスは物語の重要な役割を果たしているのです。
ゼウスの最初の妻で、アテナを身ごもり、ゼウスに飲み込まれたメティス
現世と冥界を隔てる河の擬人化であるステュクス
天空を支えるアトラス、人間に火を与えたプロメテウス、パンドラの夫のエピメテウス兄弟の母・クリュメネなど
影の立役者、のような存在に思えるオケアニス(オケアニデス)に注目です。
オケアニデス、美しすぎるギリシャ神話の影の立役者たち(?)

ヒッポカムポスに乗るドーリス
オケアニス(オケアニデス)とは
オケアニス(Oceanis)は、ギリシャ神話の海や泉、地下水の女神、あるいはニンフ。
ティーターン神オケアノスとテテュスの3000人いるとされる(「数えきれない」という意味で解釈される数)の娘たちです。
兄弟は同じく3000人いるとされる河の神・ポタモイ。
オケアニス(Oceanis) は単数形で、複数形はオケアニデス( Oceanids )
オケアニデスの父オケアノスは、ティータンの一柱、世界を一周する原初の大河であり、同じくティータンの母テテュスは海の女神。
兄弟のポタモイは、世界の川の擬人化。
オケアニデスたちもまた、他の家族と同様に、世界の海洋や地下水、すべての水の源流とされる女神たちとして水と結びついています。
多くのオケアニデスは、ギリシャ神話の中で重要な役割を果たしています。
航海において、船乗りたちはオケアニデスに祈りや供物を捧げ、嵐やその他の危険から守るよう祈願します。
神話の中でもアルゴナウタイは出発する際、オケアニデスや神々に供物を捧げ、航海の安全を懇願しています。
ネレイス、 ナイアス、オケアニスの違い
ちなみに同じ水のニンフとして他にナイアスとネレイスがいます。
彼女たちは両親や司る水域に違いがあります。
⚫︎オケアニス (Oceanids)
領域 : 外洋、オケアノス(大洋神)
両親: 海神・オケアノスと海の女神・テテュスの間に生まれた3000人の娘たち
特徴: 世界のすべての水の源(地下水や雲、川の源流)を司ります。
多くのオケアニスは神話の中で重要な役割を果たしています。
⚫︎ネレイス (Nereids)
領域: 地中海やエーゲ海など、古代ギリシャに身近な海(内海)
両親:海の老人・ネレウスとオケアニスのドリスの間に生まれた50人の娘たち
特徴: 美しいニンフの中でも特に美しいといわれ、イルカに乗って海を渡り、波を穏やかにして船乗りを助ける愛される存在。
⚫︎ナイアス (Naiads)
領域: 湧き水、川、湖、滝、井戸などの淡水域
両親: オケアニスの息子・ポタモイ
特徴: 陸地の水辺に住む、人間に身近な存在。
彼女たちが住む泉の水には、病気を治す治癒力や予言の力が宿ると信じられていました。
ただし、水域が汚染されたり干上がったりすると、彼女たちも死んでしまいます。
主なオケアニス

ジョン・フラックスマン作
長姉はステュクス。
ほとんどのニンフは下級の神々と考えられていましたが、その中でも多くのオケアニデスは神話の中で重要な役割を果たしています。
⚫︎メティス
メティスは知性の擬人化。「叡智」「思慮」「助言」の女神様。
ゼウスの最初の妻として知られます。
ゼウスが父クロノスに飲み込まれた兄弟姉妹を助けようとする際、ゼウスに催吐薬を与え、クロノスが兄弟姉妹たちを吐き出させることを助けています。
ゼウスと助け出された兄弟たちはクロノスたちと戦い(ティーターノマキアー)、それに勝利し、ゼウスはメティスを妻にします。
ガイアとウラノスは「メティスの産む子はゼウスよりも聡明で剛毅。もし男児であったらゼウスの地位を脅かすであろう」と予言。
そのため、ゼウスは父や祖父同様に子に権力を奪われることを恐れ、メティスを騙してハエに変身させ、飲み込みます。
このことでメティスとゼウスは同化し、ゼウスは知恵の神としての神格も得ることになります。
けれど、メティスはすでにゼウスの子アテナを身ごもっており、メティスはゼウスの中でアテナを育てます。
アテナが成長すると、メティスはアテナに武具を与えます。
アテナはゼウスの頭の中で槍と盾を打ち鳴らし、ゼウスに激しい頭痛を起こさせます。
耐えきれなくなったゼウスは、ヘパイストスに頭を切り開いて、中にあるものを取り出させます。
アテナは母が作った鎧を身に着け、武装し完全に成長した姿で生まれ、知恵、戦争、そして工芸の女神となります。
⚫︎ドリス
海神・ネレウスの妻で、50人の海のニンフ、ネレイデスの母
代表的ネレイデスに
などがいます。
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⚫︎ステュクス
地下(冥界)を流れる大河、あるいはそれを神格化した女神。
ヘシオドスによれば、ステュクスは父・オケアノスの水流の10分の1を与えられた支流。
生者の領域と冥府とを隔てる境界を形成、その水は地下深くを流れ、高い岩から地上に湧き出ているとされます。
冥界を流れるステュクス河の主要な支流は4つ。
- アケロン川 渡し守カロンが魂を運ぶ
- レテ 魂の忘却を司る
- プレゲトーン 炎の河
- コーキュートス 悲嘆の涙の河
ティーターノマキアにおいてのステュクスは、父・オケアノスに従い、自身の子供たちと共にオリュンポスの神々の陣営に参戦。
この功績により、彼女はゼウスから「神々を罰する」という特別な権限を与えられ、「神々の誓いの水」となります。
ホメロスの『イリアス』『オデュッセイア』では、ステュクス川の水で誓いを立てることは「神々が誓う最も強力で恐ろしい誓い」とされています。
ステュクスはティータン族の知恵の神・クレイオスの息子・パラースと結婚。
- ニーケー 勝利の女神
- クラトス 力を司る
- ゼーロス 競争心を司る
- ビアー 暴力と強制力
の4柱をもうけています。
⚫︎エウリュノメ
ヘシオドスは、エウリュノメをゼウスの3番目の妻とし、ゼウスとの間に優美の女神・カリテスをもうけています。
ヘラに捨てられたヘパイストスは、エウリュノメと後にアキレウスの母となったテティスに助けられ、オケアノス川のほとりで9年の間育てられています。
ヘーパイストスはその礼として、テティスとエウリュノメに自作の宝石を送っています。
ホメロスの『イーリアス』では、ヘパイストスの妻はエウリュノメの娘で優美の女神・カリス。
ヘーシオドスの『神統記』や後世の神話ではヘパイストスの最初の妻はアフロディーテですが、離婚した後にカリスの末妹・アグライアー(輝き)と再婚しています。
(紀元前3世紀の叙事詩人)ロドスのアポローニオスはエウリュノメは蛇神・オピーオーンの妻で、オリュンポスの最初の支配者であったとしています。
けれどオピーオーンはクロノスとの力比べで敗退。
オピーオーンとエウリュノメはクロノスとレアに王権を譲り、大河オケアノスに姿を消したとされます。
⚫︎クリュメネー
ティーターンの︎イーアペトスの妻。
- アトラス ティーターノマキアーの敗北で、天空を支え続けるという苦役を担います。
- メノイティオス ティーターノマキアーでゼウスの雷で死亡
- プロメテウス ゼウスを欺き、人間に火を与えます
- エピメテウス パンドラを妻とします
4柱をもうけます。
⚫︎エレクトラ
原初の海神・ポントスの子・タウマスと結婚
をもうけます。
⚫︎ペルセ(ペルセーイス)
太陽神・ヘリオスの妻
- キルケ 魔女
- アイエテス コルキスの王でアルゴナウタイの航海の目的である金羊毛の持ち主
- パーシパエー クレーテー島の王ミノスと結婚
・ アリアドネー テセウスに恋をし、迷宮からの脱出を助けた
・ ミノタウロス 牛頭人身の怪物
をもうけます。
⚫︎イデュイア
オケアニデスの中で最年少
コルキス の王アイエテスと結婚
をもうけます。
⚫︎カリロエ
メデューサの子・クリューサーオールと結婚。
をもうけます。
オケアニデス まとめ

アンリ・レーマン 作
ゼウスの頭から完全武装したアテナの誕生神話は、いつもながら奇抜で人間の想像の域を超えていると見る・聞くたびごとに驚かされます。
その影の仕掛け人が叡智の女神・メティス様だったんですね。
神々以外にも、多くの魔女や怪物を生み出した、ナルホド、オケアニデス、凄い女神様軍団です👍
