
ヘンドリック・ゴルツィウス 作
ギリシャ神話の海神としてまずポセイドンをイメージしますが、その他ギリシャ神話には多くの海神がいます。
太古からの神として「海」そのものを神格化した原初の神・ポントスとその妻・タラッサ。
穏やかで聡明な「海の老人」・ネレウス。
海の危険や深海を司る老海神・ポルキュース。
そして、巨神ティータン族のオケアノス。
今回はそのオケアノス、世界の果てを意味する大海と海流を司る海神のご紹介です。
海神になった経緯や、3000人もいるといわれるオケアノスの子供達、オケアニデスやポタモイとは
オケアノス、最果ての海神
オケアノスとは
オケアノスは(Oceanus)は、ギリシャ神話に登場する大海と海流を司る神です。
原初の天空神・ウラノスと地母神・ガイアの息子であり、巨神族・ティターン族のいちばん上の兄で総領的な存在。
全世界を囲む大河の神であり、大洋(海洋)を神格化した存在でもあります。
妹のテテュスを妻とし、彼女との間に世界の全ての河神(ポタモイと呼ばれる男神)と、オケアニスと呼ばれる3000に及ぶ海・河・泉の女神をもうけ、あらゆる水の水源となりました。
ちなみに、英語で大洋を意味する「Ocean」という単語はオケアノスが語源となっています。
系譜

ゼウグマ・モザイク博物館 所蔵
オケアノスは、天空神ウラノスと大地神ガイアの息子であるティータン族の長男。
兄弟姉妹は、
- 知性の神・コイオス
- 星の神・クリオス
- 高空の神・ヒュペリオン
- 輝きの女神・テイア
- 大地の女神・レア
- 掟の女神・テミス
- 記憶の女神・ムネモシュネ
- 予言の女神・ポイベ
- 海や泉、地下水の女神・テテュス
- 武器と死の神・イアペトス
- 農耕の神・クロノス
妻は 妹のテテュス
2柱の間に
⚫︎ポタモイ(河神)
- ケブレーン 娘アステロペーはアイサコスと、オイノーネーはトロイアの王子パリスと結婚
- アケローオス ギリシア地方最大の河川アケローオス川の河神
- ペーネイオス 水のニュムペー・クレウーサとの間に、ヒュプセウス、スティルベー、 アンドレウス、ダプネー、キューレーネー、イーピスをもうける
- スカマンドロス トロイア戦争でトロイア軍として戦った
ポタモイ→
⚫オケアニデス
- メーティス ゼウスの最初の妻で、アテナの母
- エウリュノメ ゼウスの3番目の妻でカリテスの母
- ドーリス ネレウスの妻でネレイデスの母
- カリロエ クリュサオルの妻でゲリュオンの母
- アシアー(クリュメネ) イアペトスの妻でアトラス、メノエティオス、プロメテウス、エピメテウスの母
- ペルセイス 太陽神・ヘリオスの妻、魔女・キルケーや怪物・ミノタウロスを生んだパーシパエの母
- イデュイア メーデイアの母
- ステュクス 冥界の大河。パラスの妻であり、ゼロス、ニケ、クラトス、ビアの母
- カリュプソー 英雄・オデュッセウスと恋に落ちた
- エーレクトラー 虹の女神イーリスと、2人ないし3人のハルピュイアの母
- エウリュノメー ゼウスとの間にカリス、また一説に河神アーソーポスを生んだ
をもうけます。
オケアニデス→
⚫︎その他
エピメニデスの『神統記』では地母神・ガイアとの間に
- ハルピュイア
- トリプトレモス エレウシスの英雄
ノンノス(ローマ帝国時代のギリシア叙事詩人)『ディオニュシアカ』の中では
- ケルコペス 娘・テイアとの子でいたずら好きな森の生き物。
をもうけています。
海神になった河神

2世紀頃、イスタンブール考古学博物館所蔵
オケアノスは、世界の果てを流れる大河の神、あらゆる河川や泉の源とされる存在であり、同時に外洋の海流の神ともされる、両方の側面を併せ持つ神。
古代ギリシャの人々は、世界は円盤状になっており、ヨーロッパやアフリカ、アジアなどの大陸を囲むようにして大河が流れていると考えていました。
その大河とはすなわち大西洋であり、海流=オケアノス。
こうして、河の神であるオケアノスは、古代ギリシャの人々の河と海の認識上で同時に海神となったのです。
ちなみにホメロス(『イーリアス』と『オデュッセイア』の作者)は、「オケアノスからすべての川とすべての海、すべての泉と深い井戸が流れ出ている」としています。
地の果ての大海の神

左から:ネレウス、ドリス、巨人、オケアノス、ペルガモン祭壇 「ギガントマキア」
オケアノスは大陸の周りを囲む海流であり、世界を一周する大河の神。
そのオケアノスの領域は「地の果て」を意味する言葉としても使われました。
ヘシオドスとホメロスはオケアノスを「タルタロスの近くの地の果て」に位置づけています。
ヘシオドス の『神統記』には、「オケアノスの彼方」には黄金のリンゴを持つヘスペリデス、三つ首の巨人ゲリュオン、蛇の髪を持つゴルゴーンなどが生息。
ホメロスの『イリアス』ではオケアノスの果てにあるのが死後の楽園・エリュシオンです。
『オデュッセイア』では「ハデスの湿った家」に到達するためにはオケアノスを渡らなければならない。
太陽神・ヘリオスは東のオケアノスから昇り、西のオケアノスに沈み、星々は「オケアノスの流れ」に浸るとしています。
ティータノマキアでのオケアノス

ジョルジョ・ヴァザーリ作
オケアノスは争いを避ける温和な性格の神。
ティーターノマキアーでは末の弟クロノスが父ウーラノスを倒そうと策を練っていた時にもこれに加わらず、ティターン族の中で唯一中立を保ちます。
そのため、戦いが終わった後、他のティターン族のように奈落・タルタロスに閉じ込められず、自身の地位を守ったとされます。
また、娘のステュクスにゼウスに降伏するように勧め、そのおかげでステュクスはゼウスから神々を罰することができる特別な権限を与えられました。
他説、ヘシオドスはオケアノスは娘のステュクスとその子供たち、ゼロス(嫉妬)、ニケ(勝利)、クラトス(力)、ビア(力)をティータン族と戦わせたとしています。
神話の中のオケアノス

ソフィロス作、ペレウスとテティスの結婚式に出席するオケアノス、紀元前600~550年
ヘラとオケアノス
オケアノスは妻のテテュスと共に幼かったヘラを養育しました。
その縁でか、後にヘラがゼウスの妻となった後、ゼウスの愛人・カリストがおおぐま座となって天に召し上げられた際、それが気に入らないヘラはオケアノスとテテュスの元を訪れ、彼女が海に入って休むことができないように頼み込んだとされます。
トロイア戦争の際には、ヘラは、ギリシア軍を苦しめる夫ゼウスを眠らせるため、愛の女神・アフロディテに「オケアノスとテテュスの仲違いを仲裁するために、世界の果てへ向かう」という口実で、アフロディテ所有の宝物「魅惑の帯」を借用しています。
プロメテウスとオケアノス
アイスキュロス(古代ギリシアの悲劇作家)の『縛られたプロメテウス』で、オケアノスは火を盗んだ罪で鎖につながれた甥のプロメテウスを訪ねています。
プロメテウスの境遇に同情したオケアノスは翼のある馬に乗って現れ、ゼウスの前で謙虚になり、状況を悪化させないようにと助言しています。
ヘラクレスとオケアノス
ヘラクレスの10番目の功業で、ヘラクレスは怪物・ゲリュオンの赤い牛をミュケナイまで連れ帰るという命を受けます。
ゲリュオンは常人では辿り着くことのできないオケアノスの西の果てにある島・エリュテイアに住んでいました。
ヘラクレスはオケアノスを渡るのに必要な黄金の杯をヘリオスから与えられています。
フェレキュデス(古代ギリシャの神話学者)によれば、ヘラクレスがヘリオスの黄金の杯に乗ってエリュテイアに向かう途中、オケアノスが高波を起こしてヘラクレスに挑戦。
オケアノスはヘラクレスから弓でを射ると脅されています。
オケアノス、最果ての場所としての登場が多め
ゲーム「グランブルーファンタジー」では、召喚石として登場。本作では銀髪の美しい少女の姿をしており、奔放な最果ての女神として表されています。
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ゲーム「Fate/GrandOrder」では、第1部第3章「封鎖終局四海オケアノス」の舞台、また、ギリシャの大魔女・キルケーの真名を隠す際に仮名として「オケアノスのキャスター」が使用されました。
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オケアノス まとめ

ヘンドリック・ゴルツィウス 作
オケアノス自身に主だったエピソードがないとはいうものの、世界にある無数の川や湖、池の神々の父、源流であり外洋の海流という存在ということに威厳を感じます。
ナルホド、オケアニデス、子供達も神話の中の様々な物語を作り出しています。

