「縁の下の力持ち」ということわざがあります。
これは、人目につかない隠れたところで他人のために努力や苦労をするという意味ですが、ギリシャ神話では、まさにこのことわざを体現するような神がいるのです。
その名はアトラス、世界の西の果てで人知れず天空を背負っています。
今回は、そんなギリシャ神話の縁の下の力持ちについてのご紹介です。
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永遠の天空を背負う巨人・アトラス
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アトラスはギリシャ神話に登場する、巨人族・タイタン (ティターン) 族の神です。
タイタン族のイーアペトスと海神・オケアノスの娘であるクリュメネーまたはアシアーの間に生まれました。兄弟には、火を盗んで人間に与えたプロメテウス、パンドラの箱で有名なパンドラを妻にしたエピメテウスなどがいます。
オケアノスの娘・プレイオネと結婚し、狩猟の女神・アルテミスの侍女となる7姉妹・プレイアデス、ニンフの5姉妹・ヒュアデスをもうけました。
また、オケアノスの妻・テーテュースとの間には、『オデュッセイア』でオデュッセウスを誘惑する海の女神・カリュプソが生まれています。他にも、暁の女神・ヘスペロスとの間に、世界の西の果ての園の番人であるヘスペリデス姉妹をもうけています。
アトラスはタイタン族の中でも随一の力持ちで、クロノス率いるタイタン族とゼウス率いるオリンポスの神々が宇宙の支配権をかけて争ったティーターノマキアーでは、その巨躯と怪力でゼウスたちに苦戦を強いらせました。
しかし、ティーターノマキアーに敗れると、多くのタイタン族は奈落・タルタロスに送られましたが、アトラスだけはより重い罰を与えられます。すなわち、世界の西の果てで天空を背負い続けなければならないという罰です。
これは、アトラスにとって大きな苦痛を伴うものでしたが、ゼウスの許しは与えられず、以降、アトラスはずっと天空を支えることとなります。
≪アトラスとヘラクレス≫
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ミュケナイのエウリュステウス王が与えた試練 (12の功業) により、ヘスペリデスの園から黄金の林檎を持ち出すことになったヘラクレスは、どうすれば良いか分からず、人間に火を与えたために拷問を受けていたプロメテウスを救い出し、助言を求めます。
プロメテウスは、「ヘスペリデスの父はアトラスだから、彼に頼ってみてはどうか」と言いました。
ヘラクレスから相談を受けたアトラスは、「その林檎は私の娘たちが守っているから、取ってきてやろう。その間、私の仕事を代わってくれ」と言って、天空をヘラクレスに預けて黄金の林檎を取りにいきました。
数日後、林檎を持ち帰ったアトラスですが、天空を背負う苦痛から逃れたかったため、「私がエウリュステウス王のとこまで届けてやろう」と仕事をヘラクレスに押し付けようとします。
しかし、これを見抜いたヘラクレスは、「これから天空を背負うにあたって、今の姿勢は厳しい。もう少し楽に背負いたいから、コツを教えて欲しい」と言って、アトラスが天空を支えて見本を見せている間に、黄金の林檎を奪って逃げてしまいました。
≪アトラスとペルセウス≫
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怪物・メデューサを退治した後、ペルセウスは西の果てに流れ着きました。
ヘスペリデスの園で休ませてもらおうと思ったペルセウスは、その主であるアトラスに許可をもらいに行きますが、アトラスは決して許しません。
実は、アトラスは掟の女神・テミスから「いつか、ゼウスの息子が黄金の林檎を奪いに来るだろう」という予言を受けており、ペルセウスがその人物だと思ったからです。
根気強く頼んだペルセウスですが、頑ななアトラスに怒り、ついにメデューサの首をかざします。こうしてアトラスは石となりましたが、その上には未だ天空が乗っており、石化したアトラスの残りがモロッコ辺りにあるアトラス山脈だといわれています。
ちなみに、アトラスが石化したのには諸説あり、天空を支える重荷から解放されたかったアトラスが自らペルセウスに頼んで石になったという説も存在します。
アトラス、巨躯の力持ちはどこも共通!
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アトラス まとめ
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苦痛から逃れることを願ったアトラスですが、ヘラクレスを騙そうとして逆に騙されたり、知恵を働かせずに無理にペルセウスを追い返そうとしたり、実直な性格が溢れ出る神話が多いですよね。
石化した後も天空を背負い続けるとは、非常に残酷な運命にありますが、そのようなアトラスだったからこそ、天空を支えられたのかもしれません。