
ベルナール・ピカール作(1731年)「
「縁の下の力持ち」ということわざがあります。
これは、人目につかない隠れたところで他人のために努力や苦労をするという意味ですが、ギリシャ神話では、まさにこのことわざを体現するような神がいるのです。
その名はアトラス。
世界の西の果てで人知れず天空を背負っています。
今回は、そんなギリシャ神話の縁の下の力持ち、アトラスのご紹介です。
目次
アトラス、永遠の天空を背負う巨人

ジョン・シンガー・サージェント作『アトラスとヘスペリデス』 (1925年)
アトラスとは
アトラス(Atlas)は「支える者」「耐える者」「歯向かう者」を意味する、巨人族・ティターンの神です。
ティーターノマキアーに敗れ、世界の西の果てで天空を背負うという役目を負わされます。
一説には天文・地理学の創始者。
人間に火を与えたプロメテウスの兄、人間への罰として造られたパンドラの義兄。
ヘルメスを生んだプレイアデス、黄金の林檎を守るヘスペリデスの父としても知られています。
家系
父は 地母神・ガイアと天空神・ウラノスの子・タイタン族のイーアペトス
母は 海神・オケアノスの娘,オケアニスのクリュメネーまたはアシアー
兄弟は
⚫︎プロメーテウス、 ゼウスから火を盗み人間に与えた
⚫︎エピメーテウス パンドラの夫
⚫︎メノイティオス、
妻と子
◾️オケアノスの娘・プレイオネと結婚

エリュー・ヴェッダー作(1885年 )
⚫︎プレイアデス
アルテミスの侍女で、幼いディオニューソスを育てています。 後にオリオンに追われることになる昴の女神たち
・マイア、 ゼウスの子、ヘルメスの母
ニュンペーのカリストが大熊にされた後、その子アルカスを養育
・ターユゲテー ゼウスの子、スパルタ王・ラケダイモーンの母
・ステロペー アレスの子、古代都市・ピーサの王オイノマオスの母
・メロペー コリントス王でタルタロスに堕ちたシーシュポスの妻となり、不死を失っています。
・ケライノー 海神・ポセイドンの子、リュコスとエウリュピュロスの母
・アルキュオネー ポセイドンの子、
・ヒュリエウス(ボイオーティアの王、一説にはオリオンの父)
・ヒュペレノル
・アイトゥーサ (アポロンの子、エレウテルと音楽家で叙情歌の指導者・リノスの母)、
・ヒュペレス(ニュクテウスとリュコスの父 )
の母。
・エーレクトラー ゼウスの子
・ダルダヌス (ダルダノス市の創設者)
・イアシオン (デメテルとの子、富の神・プルトスの父)
の母
・一説には調和と和合の女神・ハルモニアをもうけています。
⚫︎ヒュアデス、
兄弟であるヒュアースが狩りで死亡。それを嘆いて自殺。
ヒュアデス座とし牡牛座の頭に置かれます。
⚫︎ヒュアス 弓の名手、狙っていた獲物に射殺されます。
の父
◾️暁の女神・ヘスペリスとの間に

エドワード・バーン=ジョーンズ 作
⚫︎ヘスペリデス 世界の西の果てのヘラの園の番人をもうけます
◾️オケアノスの妻・テーテュースとの間に
⚫︎カリュプソー、 オデュッセウスを愛した海の女神をもうけます。
アトラスが受ける罰
アトラスはタイタン族の中でも随一の怪力。
クロノス率いるタイタン族とゼウス率いるオリンポスの神々が宇宙の支配権をかけて争ったティーターノマキアーでは、その巨躯と怪力でゼウスたちに苦戦を強いらせました。
けれど戦いに敗れると、多くのタイタン族は奈落・タルタロスに送られましたが、アトラスだけはより重い罰を与えられます。
すなわち、世界の西の果てで天空を背負い続けなければならないという罰です。
これは、アトラスにとって大きな苦痛を伴うものでしたが、ゼウスの許しは与えられず、以降、アトラスは永劫天空を支えることとなります。
神話の中のアトラス
アトラスとヘラクレス

クロード・メラン作『 アトラスを助けるヘラクレス』
ヘラクレスはミュケナイのエウリュステウス王が与えた試練 (12の功業) の11番目で、ヘスペリデスの園から黄金の林檎を持ち帰らなければなりません。
ヘラクレスは人間に火を与えたために拷問を受けていたプロメテウスを救い出し、助言を求めます。
プロメテウスは、「ヘスペリデスの父はアトラスだから、彼に頼ってみてはどうか」と返答。
アトラスは、「その林檎は私の娘たちが守っているから、取ってきてやろう。その間、私の仕事を代わってくれ」と言って、天空をヘラクレスに預けて黄金の林檎を取りにいきました。
数日後、林檎を持ち帰ったアトラスは、天空を背負う苦痛から逃れたかったため、「私がエウリュステウス王のとこまで届けてやろう」と仕事をヘラクレスに押し付けようとします。
しかし、これを見抜いたヘラクレスは、「その間天空を背負うのには、今の姿勢は厳しい。もう少し楽に背負いたいから、コツを教えて欲しい」とアトラスに助けを求めます。
そして、アトラスが天空を支える見本を見せている間に、黄金の林檎を奪って逃げてしまいました。
アトラスとペルセウス

エドワード・バーン=ジョーンズ作『石に変わるアトラス』(1878年)
怪物・メデューサを倒したペルセウスは西の果てに流れ着きました。
ヘスペリデスの園で休ませてもらおうと思ったペルセウスは、その主であるアトラスに許可をもらいに行きますが、アトラスは決して許しません。
実は、アトラスは掟の女神・テミスから「いつか、ゼウスの息子が黄金の林檎を奪いに来るだろう」という予言を受けており、ペルセウスもその人物だと思ったからです。
根気強く頼んだペルセウスですが、頑ななアトラスに怒り、ついにメデューサの首をかざします。
こうしてアトラスは石となりましたが、その上には未だ天空が乗っており、石化したアトラスの残りがモロッコ辺りにあるアトラス山脈だといわれています。
ちなみに、アトラスが石化したのには諸説あり、天空を支える重荷から解放されたかったアトラスが自らペルセウスに頼んで石になったという説も存在します。
アトラス、巨躯の力持ちは共通(?)
ギリシャ神話をテーマにしたゲーム「ゴッドオブウォー」では、主人公・クレイトスと死闘をくり広げた後、世界を支える役目を担うことになります。クレイトスとは、因縁の関係です。
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ゲーム「ファイアーエムブレム」シリーズでは、筋骨隆々の木こりとして登場しています。盗賊さらわれた弟を助けるため、主人公たちに同行を申し出ます。
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アトラス まとめ

グエルチーノ作『(1646年 )
天空を支え続けるアトラス、死と再生を繰り返すプロメテウス、重労働を繰り返し、徒労の語源になったシューシュボス。
果てしなく続くというのはなによりも酷い。
想像を絶する拷問です。
地獄の責苦も何千年から何兆年、何京年も続くと言います。
地獄に落ちないよう精進しなければ💦💦💦
