カール・フレドリック・フォン・サルツァ作
スカジは北欧の「氷の女王」の異名を持つヨトゥンの女神。
父の仇を撃つためにアスガルドにのりこむ勇ましい女戦士です。
「神々の麗しい花嫁」として、フレイ・フレイヤの父ニョルズと結婚、
その後、一説ではオーディンの妻になったと伝えられる女神様、
その生涯を辿ります。
目次
スカジ、北欧神話の雪の女神
HLM作(1901年)
スカジとは
スカジ(Skathi、Skade、Skadi )は巨人族の女神、山を司る地母神。
狩猟を好み、スキーと弓矢を得意とする「雪の女神」であり「氷の女王」。
その名は「傷つける者」「損害、危害、死」、またゴート語の「影」、古英語の「暗闇」を意味します。
けれど、古エッダ『グリームニルの言葉』では「神々の麗しい花嫁」と称されています。
巨人族アルヴァルディの孫にしてスィアチの娘。
アース神族のニョルズ、後にオーディンの妻となります。
フレイの母という説もあり、他説では影の国の女王スカアハと同一視されています。
父の死、そして父の仇との和睦
ローランス・フレーリク作
122年ごろにアイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンが著した『スノッリのエッダ』の中でスカジの父スィアチについて記されています。
スィアチは鷲に化身し、旅行中のオーディン・ロキ・トールに近づき、ロキを脅し、女神イズンと永遠の命と若さを得ることのできる黄金の林檎を略奪しようとします。
結局企ては失敗し、神々はアスガルドの門の内側で鷲の姿で逃げるスィアチを殺害します。
父の死を知ったスカジは復讐のためアスガルドに乗り込みます。
これに対し、アスガルドの神々はアース神族との結婚という形での和解を提案します。
スカジは「自らを笑わせてみよ」という条件も含め、和解を受け入れます。
スカジを笑わせるためには、ロキは自身の陰嚢と牝山羊の髭とで綱引きをするという余興を行います。
そして、オーディンはスカジの父スィアチの両眼を天へ投げ上げ、2つの星にします。
スカジはこれを喜び、その怒りは収まります。
結婚相手については、スカジはアース神族の中で最も美しい男神バルドルとの結婚を希望しますが、バルドルはオーディンの妻フリッグが溺愛する神、そこで神々は男神を布で覆い、足だけを見て相手を選ぶという条件を出します。
そして選ばれたのがフレイ・フレイヤの父、海の神ニョルズでした。
ニョルズとの結婚
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ハイネ作
ニョルズとスカジは当初それぞれの統治する山と海辺とを交互に往復し、仲睦まじく共に暮らし始めます。
けれど二人の育った環境の違いの影響は大きく、次第にそのことが原因で二人の間に亀裂が生じてゆきます。
スカジにとっての海辺の家はカモメの鳴き声が不快でならず、ニョルズにとっても山の生活は苦痛で、特に夜に聞こえる狼の遠吠えには慣れることはできませんでした。
次第に両者は別々の生活を送るようになり、スカジは巨人の国ヨトゥンヘイムの山合いにある父の館スリュムヘイムで暮らすようになります。
その後のスカジ
ニョルズとの破局の後、スカジはロキとも関係を持ち、そのことをロキに暴露されています。
そのこともあってか、父の仇でもあるロキがバルドル謀殺のため幽閉されると、ロキの頭上に蛇の毒が滴るよう細工し、果てしない苦痛を与えています。
その後巨人の館スリュムヘイムで弓の神ウルと共に暮らしたとも、一説ではオーディンの妻になったも伝えられています。
スカジ、現代でも勇ましく美しい戦士
スマホ向けパズルRPG「エレメンタルストーリー」のスカジは星5つのモンスター
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「ヴァルキリーコネクト」のスカジは目的を遂げるためには手段を選ばない冷徹な性格の霜の巨人族
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「サモンズボード」では巨大な山神、暗森スカジとしての登場です。
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スカジ まとめ
WG・コリングウッド作
スカジ、北欧神話の女戦士、ヴァルキュリア(ワルキューレ)をイメージさせる女神様です。
詳しい記述がありませんが、その名の由来に「傷つけるもの」や「死」「暗闇」などが関連し、英雄クーフーリンを育てた影の国の女王スカアハとも同一視されるなど、影の部分もありそうな女神様です。