アベンジャーズの活躍も記憶に新しい映画やアニメの世界では、SF( science fiction) の世界と同じほど人気の神話の世界。
その中でアベンジャーズと同じように英雄が勢揃いし、冒険を繰り広げる物語をご存知でしょうか?
ギリシャ神話のアルゴナウタイ(アルゴー探検隊)。
今回はその冒険譚をご紹介します。
短いあらすじでさえ胸躍るアルゴー探検隊の冒険とは
目次
アルゴナウタイ、アルゴー探検隊の冒険譚
アルゴナウタイ(Argonautai)(アルゴー探検隊)はギリシア神話に登場するアルゴー船で航海をした英雄たちの総称。紀元前3世紀頃、ロドスのアポローニオスの叙事詩『アルゴナウティカ』を起源とする物語です。
アルゴー探検隊は、テッサリアのイオルコス王の息子・イアソンが金色の羊の毛皮入手を目的に編成しました。
乗組員は、
など、名だたる英雄が50人以上も集められたドリームチーム。
アルゴナウタイ一覧
出典:Wikipedia<
イアソンの帰還と冒険のはじまり
出典:Wikipedia
イアソンは、テッサリア地方のイオルコス国王・アイソンの息子として生まれました。
イアソンが幼い頃、父アイソンが死亡し、彼が成人するまでという約束で叔父のペリアスが王位を継ぎます。その間、イアソンはケンタウロス族の賢者・ケイローンに預けられ、育てられました。
成人したイアソン国に帰る途中、川岸で老婆が困っているのを見かけます。老婆を背負って川を渡りますが、その時、はいていたサンダルが片方流れてしまいました。
イオルコスに戻ったイアソンは、ペリアスに王位を返すよう頼みますが、ペリアスはサンダルを片足しかはいていないイアソンを見て驚きます。
実は、ペリアスはかつて「サンダルを片方しかはいていない者に殺されるだろう」という予言を受けていたのです。
そこで、ペリアスは王位を返す条件として、「コルキスという国にある黄金の羊毛をとってこい」と言います。黄金の羊毛を求めて生きて帰った者がいないことを知っていたため、「旅の道中で死ぬだろう」と予想していたからでした。
イアソンは、船大工のアルゴスに依頼し、巨大な船を造ってもらいます。
建造させ、船名をアルゴスの名から「アルゴー」(「快速」の意)とします。
古代ギリシャの都市イオールコス(現在のイオルコス)を出航した一行は、レームノス島→ドリオニア→ミューシアー→ベブリュクス島→サリュミュデーソス→テューニアス島を経てコルキスに到着
コルキスではコルキスの王女メデイアが一行に加わり、目的の金羊毛の獲得に成功。
リグリア海、サルディニア海を経て→アイアイエー島→ケルキューラ→リビア、トリートーニス湖に渡り→地中海、クレータ島→アイギーナ島→イオールコスにたどり着いています。
その間、4ヶ月間の航海。
レームノス島
最初の寄港地となったレームノス島は、女だけの島。
この島の女たちはアプロディーテーを軽んじたために呪いを受け、相手にされなくなった男たちを皆殺しにしてしまったのです。
アルゴナウタイはあつい歓待を受け、イアソンはトアース王の娘ヒュプシピュレと交わり、息子のエウネーオスとネプロポノスをもうけています。
ドリオニア
王キュージコスの手厚い歓待を受け、一旦は無事この島を出港しますが、逆風で戻され、敵襲と勘違いしたドリオニア人と戦うことになります。
そのためにキュージコス王は死亡、王妃クレイテーも自害。
アルゴナウタイはこの惨劇を悼み、頭髪を切り、犠牲者を手厚く葬ります。
けれど、その後も何日も雨風が激しく、出航できずにいます。
これは、亡き王キュージコスが大地の女神レアーの聖獣を、アルゴナウタイが6本の手を持つ巨人を倒したことへのレアーの怒りであると知ります。
そこで、アルゴスが女神像を建て、ディンデュモン山頂で踊り、女神の怒りを沈めます。
ヘラクレスの離脱
ミューシアでヘラクレスの小姓・ヒューラスが水くみに出かけると、水の精霊・ニンフにさらわれてしまいます。
助けを求める声を聞いたヘラクレスは、ヒューラスを探し回りますが、その間にアルゴー船は出発してしまいました。
ベブリュクス島
王アミュコスはポセイドンの子。この国を訪れる者に拳闘試合を申し込み、殺してしまう残忍な暴君です。アルゴナウタイは、ゼウスとスパルタの王妃レーダーの子で不死身のポリュデウケースが試合に応じ、逆にアミュコスを倒します。
これに怒ったベブリュクス人たちがポリュデウケースに襲いかかり、アルゴナウタイは応戦しています。
ピーネウスと怪鳥・ハーピー
サリュミュデーソスの地に立ち寄ったアルゴナウタイは、盲目の預言者・ピーネウスに航海の助言を求めます。
ピーネウスは、「自分は、たくさんの人に予言したためゼウスに罰せられている。食事をしようとすると、女の頭と胸を持つ怪鳥・ハーピーが現われ、汚物で食卓を汚すのだ。ハーピーを退治してくれたら、助言してやってもよい」と返答。
いつものようにハーピーが現われると、翼を持つ北風の神の子カライスとゼーテスの双子が追いかけます。見事、ハーピーを退治した双子のおかげで、ピーネウスは食事にありつけ、アルゴナウタイは助言を得ます。
ピーネウスは「シュムプレーガデスの岩」について忠告します。
そこは巨大な岩と岩がぶつかり、海路を塞ぐ難所。
ピーネウスは一羽の鳩を飛ばし、岩の間を鳩が通り抜けられたら全速力で抜けるよう助言。鳩が通り抜けると、アルゴナウタイは岩が動き出すと同時に全力で櫂をこぎ、ヘーラーの加護もあって無事に通過。
それ以来、岩は二度と動く事がなくなり、安全な航路になったといいます。
コルキス島、イアソンの試練と王女・メディア
ようやくコルキスに到着したアルゴナウタイ。
イアソンは、コルキスの王・アイエーテスに金羊毛を譲るように頼みますが、アイエーテスは渡すつもりなどありません。
「返してほしかったら、戦神・アレスの持ち物である火をはく青銅の牡牛を使って畑を耕し、知恵の女神・アテナから授かった竜の牙をまけ」と無理難題を押しつけます。
ヘーラーはアプロディーテーに命じ、アイエーテスの娘で魔術を使う王女メディアに、イアソンに恋をするようにします。
それによってイアソンは、彼に恋をした王女・メディアの助力を得ます。
メディアは雄牛の炎を無効化する薬草でイアソンに沐浴させます。炎を跳ね除けることのできるイアソンは無事青銅の牡牛をつかまえ、畑を耕すことに成功。
次の課題は「竜の牙」を地面に撒く。けれど、この牙を撒くとテーバイ人達の祖先となったスパルトイと呼ばれる戦士が次々と生まれてくるのです。
イアソンはメディアの助言を得て、彼らの中に石を投げ入れます。すると、スパルトイ同士が同士討ちをはじめ、最後の一人はイアソンが討って、アイエーテスの難題を無事に達成。
見張りの竜を眠らせて金羊毛を手に入れたイアソンは、メディアを連れてコルキスから脱出します。
娘と宝を盗まれたことを知ったアイエーテスは、追っ手を差し向けました。
コルキスの船は速く、追いつかれると判断したメディアは、一緒に乗っていた幼い弟・アプシュルトスを殺害し、死体をバラバラにして海に放りました。
追っ手がアプシュルトスの遺体を回収している間、アルゴナウタイは逃げ延びたのでした。
アイアイエー島
帰路、ゼウスはメデイアのアプシュルトス殺害を怒り、嵐を作り、航路を妨げます。
アルゴナウタイはアイアイエー島にたどり着き、この島に住む太陽神ヘリオスと海の女神ペルセイスの娘・魔女キルケーに罪の浄めを受けることになります。
セイレーン、スキュラとの遭遇
セイレーンの住むそばを通ると、アルゴナウタイがセイレーンの歌に魅了され海に引き込まれそいうになります。竪琴の名手で吟遊詩人のオルペウスがセイレーンに対抗して歌い、乗組員を船に引き止めています。
次には、渦潮を擬人化したメッシーナ海峡に住む海の魔物カリュブディス、そして、腹部から6つの犬の首が生えた怪物スキュラに遭遇。この時、ヘーラーが海神ネーレウスと女神ドーリスの娘たち(ネーレーイス)の1人テティスに命じ、ネーレーイスに守られ、難所を通過することができます。
リビア、砂漠の奥地
嵐に遭遇し流されたアルゴー船はリビア砂漠の奥地まで押し上げられてしまいます。
そこにリビュエー(アフリカ)の3人の娘が現れ、「母親が胎内に重荷を負ってくれた恩に報いなさい」と助言。その助言に従い、アルゴナウタイは、トリトニス湖まで船を担いで運びます。その後、海神トリトンが船を地中海まで戻してくれます。
クレータ島
ここでは島の番をしていた青銅人・タロースに投石で攻撃を受けます。このタロースはヘーパイストスがエーゲ海を支配したクレタの王ミノスに与えたもの。
メディアはタロースを魔法で眠らせ(あるいは薬で狂わせ)かかとにはめら込まれていた青銅の釘を抜きます。そこから全身の血が流れ出し、タロースは死亡。(あるいはへレクレスの弓を与えられたポイアースがタロースのかかとを射て倒した)
アイギーナ島
アルゴナウタイはこの地でヒュドロポソアの祝祭を創設。
その後イオールコスのパガサイ湾(現在のウォロー湾)に帰り着いています。
アルゴナウタイ、意外に認知度の低い(?)アルゴー探検隊
「Fate/Grand Order」ではメインストーリー第3章「封鎖終局四海オケアノス」にて、アルゴー探検隊が登場。イアソンは性格が歪んだ男として描かれ、他にはメディア、ヘラクレス、アタランテが出ています。
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2017年に放送された「宇宙戦隊キュウレンジャー」では、アルゴー船が宇宙を救うキーアイテムになっていました。
1963年公開映画『アルゴ探検隊の大冒険』は、特撮の巨匠、レイ・ハリーハウゼンの代表作。以降の特撮映画を先駆する傑作です!
アルゴナウタイ(アルゴー探検隊) まとめ
アルゴナウタイ、アルゴー探検隊の冒険は、怪物や神と人間が、天と地、大海を舞台に繰り広げる一大スペクタルであろう作品。
これが最近のリメイク作品になっていない事自体が不思議に思います。
近い将来、大画面で迫力の映像を鑑賞できることを期待しています。