
ドロシー・ハーディー作『オーディンとフェンリス』(1909年)
フェンリルは北欧神話の巨狼。
ロキと巨人アンクルボサの息子。
弟は大蛇ヨルムガンド、末の妹は冥界の支配者ヘル、その長男として生まれます。
ラグナログでは主神・オーディンを飲み込むという、まさに怪物。
今回はその巨狼フェンリルのご紹介です。
フェンリル、神々でさえ恐怖する巨狼

ヨン・バウエル作(1911年)
フェンリル(Fenrir)はロキと巨人族・ヨトゥンのアンクルボザとの間に生まれた巨大な灰色狼。
ロキが女巨人アングルボザとの間にもうけた三兄妹の長男。
次に巨蛇・ヨルムンガンド、末の娘に死者の国を支配するヘルが生まれました。
一説にはロキがアンクルボザの心臓を食い、ヨルムガンドやヘルと共に、自らが作り出した怪物であるとも伝えられています。
太陽の女神・ソルと月の男神・マニを追いかける狼・スコルとハティの父。
フェンリルの物語は
- 『詩のエッダ』(9世紀〜13世紀に成立した古ノルド語の物語詩・歌謡集)
- 『散文のエッダ』(『スノッリのエッダ』)、13世紀のアイスランドの学者スノッリ・ストゥルルソンが著した北欧神話の解説書)
- 『ヘイムスクリングラ』(スノッリ・ストゥルルソンによるノルウェー歴代諸王のサガ(年代記))
に記されています。
詩のエッダ「予言者ヴォルヴァの予言」の中で、ラグナロクにおいて主神・オーディンを喰い殺すと予言されています。
ヴォルヴァの予言
ヴォルヴァ(預言者)はオーディンに、
「ベリを殺した輝かしい者(フレイ)がスルトと 戦う時、フリッグの 愛しい友は倒れるだろう。そして、「勝利の父の背の高い子」(ヴィーザル)が「「フヴェズルングル(ロキ)の息子」(フェンリル)の心臓に剣を突き刺し、父の死の復讐を果たす。」
と伝えています。
フェンリルの誕生

チャールズ・エドモンド・ブロック 作
『散文エッダ』「ギュルヴィの惑わし」の中で
ロキはヨトゥンヘイムの地に住むアングルボザとの間にフェンリスウルフ(Fenrisulfr フェンリル)、ヨルムンガンド、ヘルの3人の子供をもうけたと記されています。
神々は3人の子供から多くの災いが生じると考え、オーディンはヨルムンガンドを「ミッドガルドを取り囲む深海」に投げ込み、次にヘルをニヴルヘイムに投げ込み、ヘルヘイムの支配権を与えます。
けれど、子供のフェンリルは外見は普通の子狼であったので、神々の監視下のもとで育てられることになります。
性格は極めてどう猛。
その気性の激しさに、フェルリンの世話ができるものはただひとり軍神デュールだけであったと伝えられています。
フェンリルの拘束

フェンリルの束縛。ドロシー・ハーシー(1909年)
やがて身体も大きく、力も強くなるフェルリンを放置できなくなり、主神オーディンの命により拘束されることになります。
フェルリンの拘束具にはまず、「レージング(革のいましめ)」が試されました。
けれどフェンリルは軽く引きちぎってしまいます。
次に「ドローミ(筋のいましめ)」、これも同じく直ぐにちぎられてしまいます。
そこで神々はドワーフのドヴェルグ達に作らせた魔法の紐グレイプニルを用います。
これは「6つの有り得ない物」、この世には存在しない
- 猫の足音
- 女の顎髭
- 山の根元
- 熊の神経
- 魚の吐息
- 鳥の唾液
を材料にして作られた細い絹紐です。
そして神々はフェンリルをリングヴィの島に誘い出します。
「グレイプニルの効果を試すためだけ」と称してフェンリルを縛ろうとします。
縛られる条件にフェンリルは、「グレイプニルを引きちぎったら神々は二度と自分には干渉しない事」「グレイプニルで縛られている間、誰か一人が自分の口に右腕を差し入れておく事」を要求します。
後の条件にはフェンリルの世話役軍神テュールがためらうことなく右手を差し出します。
フェンリルを縛ったグレイプニルはその魔力でフェンリルを厳しく戒め、謀られたと悟ったフェンリルは即座にテュールの手首を食いちぎって逃走を図ります。
神々はあがくフェンリルに足枷「ゲルギャ(拘束)」をはめ、「ギョッル(叫び)」と呼ばれる石に縛り付け、「スヴィティ(打ち付けるもの)」という巨大な石で固定。
更に暴れるフェンリルの口に剣を押し込み、下顎に柄、上顎に剣の切っ先でつっかえ棒としました。
開いた状態のままのフェンリルの口からは大量の涎が流れ落ちて川となります。
それはヴァン(Ván、希望)川と呼ばれます。
ちなみに、フェンリルの拘束に貢献したテュールには、後にドゥエルグ達が作った魔法の義手をオーディンより授けられます。
こうしてフェンリルはリングヴィの島に拘束され、ラグナログで解放されるまでこの地で長い年月を暮らすことになります。
ラグナログのフェンリル

1908年、 WGコリングウッド作
ラグナログ、フェンリルの息子スコルが太陽を飲み込み、もう一人の息子ハティ・フロズヴィトニソンが月を飲み込んだ後、空から星々が消えさります。
大地は激しく揺れ、木々はたおれ、山々は崩れ落ち、すべての束縛が断ち切られ、フェンリルも解き放たれます。
自由の身となったフェンリルは目や鼻からは炎を吐き、開けば上顎が天まで届く巨大な身体で疾走。
オーディンとの対決の場であるヴィーグリーズを目指します。
オーディンを一飲みにするものの、直後にオーディンの息子・ヴィーザルによって殺害されます。
下顎を「あらゆる時代を通して材料が集められた」伝説の靴で踏みつけられ、上顎をつかまれ上下に引き裂かれたとも、剣で心臓を貫かれたとも伝えられています
フェンリル、可愛いい牝狼や召喚獣としてご多忙です
映画・ドラマ
2017年公開『マイティ・ソー バトルロイヤル』でのフェンリルはオーディンの長女で死の女神・ヘラの忠実なペット。
ハルクと激しい戦闘を繰り広げる巨大な黒い狼。
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2022年公開『ゴッド・オブ・サンダー ラグナロクの戦い』ではオーディンに封印されたフェンリルを復活させようとするロキと、それを阻止しようとするソーの戦いが繰り広げられます。
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アニメ・ゲーム
ファイナルファンタジーシリーズではお馴染み、敵のボスキャラや召喚獣として登場しています。
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『神撃のバハムート』『グランブルーファンタジー』のフェルリンは可愛いキュートな牝狼。
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ソーシャルゲーム『東京放課後サモナーズ』のフェンリルは疑い深く騙されやすい、狼の「転光生」。三兄弟の長男で、豪快に見えて非常に小心者な弟と、引きこもりの妹がいます。
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フェンリル まとめ

18世紀 アイスランドの写本
巨大狼のフェンリル、大蛇のヨルムンガンド、半屍のヘル、確かにそのままにはしておけない恐怖の三兄妹ですが、ヨルムガンドもヘルも醜いという理由で産まれてすぐに海や冥界に捨てられてしまう。
フェンリルも巨大であるがために拘束され続けなければならない。
可哀想な兄妹とも思えます。
自由になりたいと思うのは当たり前の感情、なんですが。。。