北欧神話に存在する女神ヘル、冥界の女王として君臨する、半端なく、マジこわい女神様です。半身が腐敗した容姿を持つ、破壊神ロキの娘、ラグナログでオーディンと戦った巨狼フェンリル、雷神トールと相打ちになった世界蛇ヨルムンガンドの兄妹でもあります。血筋だでもその恐ろしさは容易に想像できるようにも思います。
今回はその女神ヘルのご紹介です。
恐怖、ゾンビ系が苦手な方はご遠慮ください。
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オーディンがその醜さゆえ冥府に追い遣った半屍人ヘル
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『散文エッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』によると、ヘルは破壊神ロキと巨人族のアングルボザの間に生まれました。一説には両性神であるロキがアングルボザの心臓を食べ、女巨人に変身し、自らヘルを生んだとも伝えられています。
兄弟に第一子巨狼フェンリル、第二子巨蛇ヨルムンガンド、その末の娘として生まれています。
ヘルの容姿
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恐ろしい怪物で、様相は凄まじく、生れつき半身は青く半身は人肌の色をしているとも、上半身は人肌の色で下半身は腐敗して緑がかった黒に変色しているとも伝えられています。
つまり半分は生きていて、もう半分が死んでいる半屍人。
絵画では半身は白く半身が黒い姿や、半身が赤半身が青など、様々な姿に描かれています。
ゲルマン神話の地獄ヘルヘルム
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ヘルはその様相の醜さゆえ、オーディンによって下層に存在するとされる冷たい氷の国ニヴルヘイムへ追放され、暗黒の冥府ヘルヘルムを支配することになります。ヘルヘルムは疾病や老衰で死んだ者達や悪人の魂が送り込まれる地。
ヘルという語はゲルマン語で〈隠す〉の意。冥府ヘルは霧におおわれた暗い地下の寒冷の地、灼熱の炎が連想される地獄と違い、ヘルヘイムは永久凍土の冷獄。その地でヘルは迷える死者の魂を統率します。
ヘルの住む広大な館はエリュズニルと呼ばれ,どう猛な番犬ガルムが守ります。
死者を蘇らせる能力を持つヘル
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ヘルは死者を蘇らせる能力を有する唯一の神。
たとえアースガルドの神々であっても、彼女の許しと能力がなければ復活することはできません。
光の神バルドルは美しい容姿を備えた主神オーディンとフリッグの子、不死の身体を与えようと母のフリッグは翻弄しますが、ロキの悪戯であえなく死亡。
フリッグの命を受けたヘルモーズがバルドルの蘇生をヘルに懇願します。ヘルは「九つの世界の住人すべてがバルドルのために泣いて涙を流せば蘇生させてもいい」という条件を出します。しかし女巨人セックに化けたヘルの父ロキが涙を流さなかったのでバルドルが蘇ることはなかったという神話も残されています。
ラグナロクでのヘルは
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ラグナロクに際しては、ヘルは死者の爪で造った船ナグルファルに、死者を満載してアースガルドに乗り込み、巨人族に加勢して神々と死闘を演じるといわれています。
一説には死者の軍勢を送り、彼女自身はヘルヘイムに残ったとも伝えられれいます。
ラグナロクの後ヘルが生き延びたかどうかは不明。冥界は滅びなかったとも、バルドルやヘズ、心正しい人々を残し、ヘルと彼女の支配する死者達は滅びたとも伝えられています。
現代でも恐怖を与え続けるヘル
至高のハイファンタジーRPG「ヴァルキリーコネクト」では冥界ヘルヘイムを統治している死をつかさどる女神。思いやり深い性格で、亡者たちの人気者として登場しています。
オンライン対戦型トレーディングカードゲーム「ロードオブヴァーミリオ」。ヘルは特殊技のアイアンメイデンを持つスーパーレアなカードとして扱われています。
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まとめ
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女性でありながら醜いと忌み嫌われ、冥府の支配者とまでなったヘル。もはや性を超えたところで業を積んでいるものと思われます。
神であれ、人であれ、愛と無縁の人生はそれ以外の力を得ても、ただ哀れと見えてしまう。
けれど現代でも同類の愛だけが唯一のものでも無いように思う。例えばバーチャルな中で幸せでいられるのならそれは決して逃避しているわけではなく、自らの選択であるとも思います。
死者の世界であろうと、ヘルだって、何かしらの幸せがあったのかもしれない。希望的な憶測です。。。