黄金の林檎は、神話や民話・説話の中に登場する不思議な果実。
愛の証や愛を結ぶきっかけになったり、不死の果実、不和の原因ともなっています。
そんな黄金のリンゴにまつわる物語のご紹介です。
ステキで不思議な、世界で語り継がれる黄金のリンゴとは
目次
黄金のリンゴ、神々に永遠の命を授ける果実
ギリシャ神話
ヘスペリデスの園
黄金の林檎はギリシャ神話では「ヘスペリデスの園」で、夜の神ニュクスあるいはアトラスの3人の娘ヘスペリデスたちと不死の百頭竜ラードーンに守られています。
これはヘラの果樹園。ゼウスとの結婚に際しガイアから贈られたものとされます。
ここは世界の西の果て、あるいは北方の理想郷に住むヒュペルボレイオス人の国にあるとされます。
ヘラクレスの第11の難行
黄金の林檎はヘラクレスの11番目の難行になっています。
ヘスペリデスの園に向かうに際し場所を知らないヘラクレスは水神ネレウスにたずねます。
答えを渋るネレウスをやむなくねじ伏せその場所を教えられ、園に向かいます。
黄金の林檎は百の頭を持つ竜ラドーンに守られていましたが、ヘラクレスはラドーンを倒して林檎を手に入れています。
ちなみに倒されたラドーンは、りゅう座となって天に昇っています。
他説、古代ローマの著作家アポロドーロスはその役目をヘスペリデスの父アトラスに任せたと語っています。
まずヘラクレスは、カウカーソス山に縛り付けられていたプロメテウスに助言を求めます。
プロメテウスは「その役目はヘスペリデスの父であるアトラスに任せると良い」と答えます。
天空を担ぎ続けているアトラスの役目をヘラクレスがかわり、アトラスは林檎を持ち帰ります。
そして、自分が林檎をミュケーナイに届けると言い出すアトラスに、ヘラクレスは一計を案じ、ただし少しの間だけ天空を持っていてほしいと返答。
承知したアトラスが天空を担いだところでヘラクレスは林檎を持ち去っています。
アタランテー
アタランテーはアルゴナウタイのひとりでカリュドーンの猪狩りにも参加した美しい女狩人。
けれど、神託で結婚すると不運が訪れると告げられていたため結婚には消極的でした。
それを心配した父に俊足であったアタランテーは徒競走で自分を負かしたものとの結婚を約束。
多くの求婚者の中のひとり、ヒッポメネースは女神アプロディーテーに祈りを捧げ助けを求めます。
アプロディーテーは彼に3つの黄金の林檎を与え、これで競技の最中にアタランテーの気を逸らすよう告げます。
途中アタランテーは黄金の林檎を拾うために3度走るのをやめて立ち止まってしまいます。
ヒッポメネースは勝利し、アタランテーとの結婚が決まりました。
不和の林檎
黄金の林檎は、トロイア戦争の発端ともなっています。
全ての神々が招かれた、ゼウスの子でアイギナ島の王アイアコスの子・ペーレウスと海の女神・テティスの結婚式。
けれどただ一柱、不和と争いを司る女神・エリスだけが招待されませんでした。
怒るエリスは「最も美しい女神に」と書かれた黄金の林檎を宴席に投げ入れます。
それをヘラ、戦いと知恵の女神・アテーナー、愛と美の女神・アプロディーテーが、自分が一番美しい容姿の持ち主であると主張。
林檎の所有者を巡って、その審判がトロイアのパリスに委ねられることになります。
これが後のトロイア戦争を引き起こす原因となってゆきます。
北欧神話
北欧神話では、黄金の林檎は神々の不老不死の源。
その管理は女神女神イドゥンが担います。
けれどある時、ロキはイドゥンを言葉たくみにアスガルドの外に連れ出し、イドゥンと林檎を巨人の国ヨトゥンヘイムへ連れ去ってしまいます。
常若の林檎を失ったアースガルズの神々は老い始めてしまいます。
怒った神々は林檎とイドゥンを取り戻すようにロキに命じます。
ケルト神話
ケルト神話に登場する黄金の林檎は海の神であり異世界の守護者であるマナナン・マク・リルが所有しています。
その黄金のリンゴは、アイルランド神話『エクトラ・コーマイク』の中に登場しています。
これは上級王 コーマック・マック・アイルトが海神マナンナン・マック・リールが住む約束の地ティル・ナ・ノーグへの旅を語る物語。
『エクトラ・コーマイク』
あらすじ
ある時、上級王コーマック・マック・エアトは、アイルランドにあるタラの丘で、3つの黄金のリンゴが付いた魔法の銀の枝を持った謎の人物に出会います。
その枝は、誰もが眠ってしまう魔法の音楽を奏でます。
コーマックはその枝を謎の人物が後に所望する3つの願いを叶えるというという条件で手に入れます。
1年後、謎の人物はまず娘、次に息子、そして妻のアイスネを所望。
激怒したコーマックは謎の人物をどこまでも追いかけ、ついに魔法の霧の中で道に迷ってしまいます。
民話の中の黄金の林檎
イワン王子と火の鳥と灰色狼
この物語はロシアに伝わる民話。『ロシア民話集』に収められている一編です。
あらすじ
ある国の王宮の庭園には黄金のりんごの木が生えていました。
けれど夜になるとどこからともなく火の鳥が現れてりんごを食べてしまいます。
そこで王様は3人の王子に「火の鳥を生け捕りにしたものには国の半分を与え、自分の後継者にする」と宣言。
兄弟は順に夜の見張りをすることにしますが、上の2人は途中寝入ってしまいます。
末っ子で正直者のイワン王子は夜通し火の鳥の現れるのを待ち、現れた火の鳥を捉えようとしますが火の鳥には逃げられ、羽根だけを手に入れることが出来ました。
王様は兄弟3人を火の鳥探しの旅に出すことにします。
途中三叉路に道標があり、「飢えと寒さに襲われる道」「自らは助かるが馬は死ぬ道」「馬は助かるが自らは死ぬ道」と示されていました。
イワンは2番目の道を進みます。すると灰色狼が現れて馬を殺してしまいます。
イワンは悲しみながら道を進みますが、暫くすると先ほどの狼が現れて馬の代わりに同行するといいます。
「九羽の羽鳥と黄金の林檎」
「九羽の羽鳥と黄金の林檎」 はセルビアの叙事詩です。
あらすじ
ある国の皇帝の黄金のリンゴの木が毎晩何者かに盗まれてしまいます
皇帝は息子たちにそれを監視するよう命じます。
上のふたりの王子は寝むってしまいますが、末の王子は起きて見張っていました。
すると9羽のクジャクが舞い降ります。
そして9番目のクジャクが彼の隣に降りてきて、美しい乙女になりました。
王子は乙女にリンゴを 1 つ残してくれるように頼みます。
乙女は 2 つのリンゴを残し、これが二晩続きます。
兄たちはリンゴを手に入れる末の王子に何が起こっているのかを彼を監視、その経緯を知りました。
兄たちは魔女と取引をし、次の夜魔女は乙女の髪を一房切り落としました。
末の王子は魔女を処刑しましたが、クジャクたちは戻ってきませんでした。
悲しみに暮れた王子は、愛する人を探す旅に出ることを決心します。
黄金のリンゴの正体は
英語・欧州・インド・サンスクリットなど印欧語で"Apple"は果実全般を指す語としても用いられます。
「黄金の林檎」という語も直接的なリンゴを指すわけではなく、「ある魅惑的な果実」と解釈されます。
黄金の林檎、現代でもゲームの世界ではレアなアイテム?
「Fate/GrandOrder」の黄金の果実はAPを回復させるアイテムとして登場
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「パズル&ドラゴンズ」ではエリス装備アイテムとして登場
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黄金のリンゴ まとめ
もし黄金のリンゴが存在するなら皮が黄金、なら果肉は何色なのでしょう。
なんとなく、硬そうで食べてみたいという気にはなれません。
なんて、要らぬ想像をしてしまいますが。
けれど、ここで紹介するのは一部。世界には思う以上に黄金のリンゴにまつわる物語が存在するのだなっと思いました。