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ギリシャ神話・伝説 神・英雄・怪人

ホーライ(ホーラー)、ギリシャ神話の時の流れを司る女神たち

更新日:

エドワード・ポインター作 1896年

ギリシャ神話には、三柱でひとつの役割を持った女神が登場します。

運命をつかさどるモイライ三姉妹、復讐をつかさどるエリニュス三姉妹、美をつかさどるカリス三姉妹 (三美神) など。

 

そのひとつ、ホーライ三姉妹は「時」という概念の中で、四季や時間など、幾つもの神格で語られる女神たちです。

 


 

ホーライ、時間をめぐる乙女たち

ゲオルク・フリードリヒ・ケルスティング作 1822年

ホーラー・ホーライとは 

ホーライHorai)は、ギリシャ神話に登場する時間と季節、秩序をつかさどる女神たち

単数形ではホーラー(Hora )。

その名は時、あるいは季節を意味し、時間(Hours)の語源となっています。

一般的には三姉妹とされる、「昼と夜、夏と冬とを招来し、歳月の流れを司どる」神。

 

季節を正しく移り変わらせることから、花や植物を守護する女神として重要視されました。

そのため、絵画などでは花を手にした優美な乙女の姿で描かれます。

 

出自

ホーライは主神ゼウスと法の女神テミスの間に生まれ、運命の三女神モイライの姉妹。

ゼウスが知恵の女神・メティスとの間にアテナをもうけた後に生まれた子どもだといわれています。

 

他の物語、古代ギリシアの詩人ノンノスの『ディオニュソス譚』では太陽神ヘリオスと月の女神セレネの間に生まれた女神ともされます

 

神格

ホーライは古くは自然を擬人化された神とされていました。

季節の移り変りとともに訪れ、雨を降らせて花を開花させ、果実を実らせる、植物の成長と豊穣を司る女神たち。

やがて季節の規則正しい巡りと自然の秩序を司る女神。時の移り変わりが生む、季節、秩序、時間という概念を象徴する女神として信仰されてゆきます。

季節の移り変わりは、ホーライを花あるいは植物を手にした優雅な美しい乙女の姿として、春の花、芳香、優美な新鮮さといった属性も与えられています。

 

ちなみに時計学(時間を測定する技法)はホーライにちなんでホラロジイhorologyと命名されています。

 

ホーライの務め

ホーライは神話の中で様々な形で登場しています。

紀元前8世紀の詩人ホメロスはホーライを天界と地上を結ぶ雲の門の番人」としています。

神々が戦車でオリュンポスから外出する際は、天界の門となる雲を掻き分けます。

 

神々の宴会でホーライは美の女神・カリスと共に優美な舞踊を披露します。

 

アプロディーテーが誕生し、キュプロス島に上陸した際には、アプロディーテーを春の花で染めた衣服で着飾らせ、オリュンポス山に伴いました。

ゼウスがパンドラを地上へ送る際には、パンドラの頭を花飾りのついた冠で飾りました。

ヘラを養育し、戦車から馬を外すなどの侍女を務め生まれたばかりのヘルメスの保護者であり、ディオニュソスがゼウスの太股から生れた時にもディオニュソスを擁護しています。

 

そのほか、ペルセポネデメテルアポロンにも支えています。

 

いくつもの説があるホーライとその神格

エドワード・バーン=ジョーンズ作『めぐりあう時間たち』(1882年)

ホーライを構成する女神については諸説あります。

 

「秩序」「正義」「平和」 

最も有名な組み合わせは、『神統記』を執筆したヘシオドスやアポロドロスが語る、ゼウスと法の女神・テミスの子、エウノミア (〈秩序〉)・ディケ (〈正義〉)・エイレネ (〈平和〉)の3女神

 

  • 秩序」のエウノミア(Eunomia

法と立法の女神

このエウノミアは一説ではヘルメスとアフロディーテの娘とされます。

 

  • 正義」のディケ(Dikē

人間を見守り、人間の不正をゼウスに報告する役目を担います。

ディケは古くから擬人化される女神。

ゼウスは人類を公正に保つために地上に使わし、ディケは永遠の命を持つ人間として生まれています。

同じくホーライである有翼の女神・アストライアやローマ神話の正義のユースティティアと同一視されます。

 

  • 平和」のエイレーネー(Eirēnē

エイレーネーは平和の女神

平和と富の擬人化であり、豊穣の角、松明またはリュトンを持った美しい女性として描かれます。

「パクス・ロマーナ (ローマの平和)」を象徴するローマ神話のパークスと同一視されます。

 

「春」「夏」「秋」 

古代ローマの讃歌集(作者不明)『ホメロスの賛歌』で語られるホーライは豊穣の側面をを持つ春・夏・秋の3つの季節の女神、タロ(芽生え)・アウクソ(成長)・カルポ(結実)

 

古代ギリシャでは、一年を春分から秋分に至る半年と秋分から春分に至る冬季の半年、二つの季節のホーライ(タロとカルポ)を象徴としました。

アテネでは、 2世紀の地理学者・パウサニアスが記録した『アッティカの儀式』にも、タロ(春)とカルポ(秋)という2つのホラが登場します。

後に、春夏秋の三季節、タロ(芽生え)、アウクソ(成長)、カルポ(結実)という三柱のホーライとなります。

このホーライたちは北風を擬人化した神ボレアスの娘で、雪と冬の女神・キオネーとともに、季節の変わり目の女神ペルセポネに随行します。

 

自然と季節を司る彼女たちは、広くギリシャの農民の間で崇拝されています。

 

  • 「春」のタロ(Thallō)

植物の芽生えを司ります。

タロまたはタラッテは「花をもたらす者」、ローマではフローラ

春、芽、花の女神であり、若さの守護神とされます。

 

  • 「夏」のアウクソ(Auxō)

生長を司ります。

夏の季節を擬人化した女神

植物と成長と豊穣の守護者です。

アテネでは美と優美の女神、2人のカリスの1人((ヘゲモネと共に)としても崇拝されています。

ちなみにアウクソーは春のカリスで、ヘゲモネは秋のカリス。

 

  • 「秋」のカルポ(Karpō)

結実を司り、カルフォ、またはザルポとも称されます。

食物の熟成、収穫をもたらします

またオリンポス山への道を守り、神々の出入りの際には山を囲む雲を戻す役割も担っています。

ヘラ、アフロディーテ、ペルセポネの従者で、ディオニュソス、ヘルメスを養育し、アポロン、パンとも関係しています。

 

四季 

古代ギリシアの詩人ノンノスの『ディオニューソス譚』でホーライは太陽神・ヘリオスと月の女神セレネーの娘で、春夏秋冬の四季を司る4人の姉妹。

古代の記念碑の中には季節の特徴を持つ有翼の子供としても描かれています。

 

  •  エイアー(Eiar)

花を象徴する女神

花の冠をかぶり、子山羊か羊を抱え、芽吹いた苗木を持つ姿が特徴。

水星と雄羊に関連づけられています。

 

  •  テーロース (Theros)

穀物を象徴する女神。

トウモロコシの穂を冠し、手には穂の束と鎌を持っています。

アポロンと蛇とも関連付けられています。

 

  •  プティノポローン(Phthinophoron)

葡萄・蔦を象徴する女神

頭にはブドウの房を持っているか、果物の籠を載せています。

バッカス、トカゲ、ウサギとも関連付けられています。

 

  •  ケイモーン (Cheimon)

雪・オリーヴを象徴する女神

枯れた果物と水鳥を持ち、葉の落ちた木に立つ姿で描かれます。

ヘラクレス、サンショウウオとも関連付けられています。

 

「豊穣と富」「繁栄と育成」「創造と成就」 

ヒューギヌスの『ギリシア神話集』では、大地の豊穣をつかさどるホーライ姉妹が登場します。

  • 豊穣と富」のエウポリア
  • 繁栄と育成」のオルトシア
  • 創造と成就」のペルーサ

 

その他にも

時間 

紀元前の「神話集」の著作家・ヒューギヌスはこれらとは異なる十二柱のホーライ姉妹を挙げており、そのホーライ姉妹は一年または一日の時間帯 (朝、昼など) をつかさどっています。

 

 

創作作品ではまだまだマイナー?

ホーライ三姉妹の一柱・ディケーがゲーム「サモンズボード」に登場。正義・公正の女神として扱われており、神話通りの設定であることがうかがえます。

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無料スローライフRPGゲーム『ホーライ村奮闘記はケモミミとロマン武器をコンセプトにした主人公達が、どこか残念な掛け合いをしながら物語を進めていきます。

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ホーライ まとめ

ヤコブ・ヨルダーンス作

ホーライには具体的な神話がないので影が薄い存在になってしまっているのが残念です。

けれど、色々な神々を補佐する役目には長けていた感があります。

 

季節や時間の運行は大切な役割なんで、もう少し脚光を浴びても良いようにも思いますが。

 

 

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