ギリシャ神話には、三柱でひとつの役割を持った女神が登場します。
運命をつかさどるモイライ三姉妹、復讐をつかさどるエリニュス三姉妹、美をつかさどるカリス三姉妹 (三美神) など、挙げればキリがないくらい。
今回は、そんな三姉妹のひとつで時間と季節をつかさどる・ホーライ三姉妹のご紹介です。
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時間をめぐる乙女・ホーライ三姉妹
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ホーライ三姉妹は、ギリシャ神話に登場する時間と季節、秩序をつかさどる女神です。
ゼウスと法の女神・テミスの娘で、ゼウスが知恵の女神・メティスとの間にアテナをもうけた後に生まれた子どもだといわれています。
季節を正しく移り変わらせることから、花や植物を守護する女神として重要視されました。そのため、絵画などでは花を手にした優雅な乙女の姿で描かれます。結婚の女神・ヘラを養育し、彼女か美の女神・アフロディテの侍女を務めています。
ホーライ三姉妹を構成する女神については諸説あります。

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組み合わせ①
最も有名な組み合わせは、『神統記』を執筆したヘシオドスやアポロドーロスなどの神話の作者が使ったものです。
- 「秩序」のエウノミアー
- 「正義」のディケー
- 「平和」のエイレーネー
ディケーは人間を見守り、人間が不正をした時、ゼウスに訴える役目を持っています。同じくホーライである有翼の女神・アストライアやローマ神話の正義のユースティティアと同一視されました。
一方、エイレーネーはローマ神話の平和の女神・パークスと同一視されました。
パークスは、「パクス・ロマーナ (ローマの平和)」を象徴する女神としてローマ皇帝から手厚くまつられた女神です。どちらが先に誕生したかは不明ですが、エイレーネーもギリシャでパークスと同様の扱いを受けていたのかもしれません。
組み合わせ②
次に、季節を春・夏・秋に三等分し、それぞれの季節を担当するという組み合わせです。
- 「春」のタロー
- 「夏」のアウクソー
- 「秋」のカルポー
それぞれ、植物の芽生え・生長・結実と収穫をつかさどっています。
当初は一年をふたつに分けたために、ホーライ姉妹タロー、アウクソーの二柱のみでした。しかし、その後に春・夏・秋に三等分したため、三姉妹となったのです。
組み合わせ③
ヒューギヌスの『ギリシア神話集』では、大地の豊穣をつかさどるホーライ姉妹が登場します。
- 「豊穣と富」のエウポリアー
- 「繁栄と育成」のオルトシアー
- 「創造と成就」のペルーサー
このホーライ三姉妹は、組み合わせ①と②の姉妹とあわせて九柱となっています。
その他にも、ヒューギヌスはこれらとは異なる十二柱のホーライ姉妹を挙げており、そのホーライ姉妹は一年または一日の時間帯 (朝、昼など) をつかさどっています。
ホーライ三姉妹は、ゼウスの次女であるにも関らず、具体的な神話がありません。そのため、他の三相一体の女神姉妹と比べると、影が薄いのかもしれませんね。
創作作品ではまだまだマイナー?
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ホーライ三姉妹の一柱・ディケーがゲーム「サモンズボード」に登場。正義・公正の女神として扱われており、神話通りの設定であることがうかがえます。
ホーライ三姉妹の一柱・エウノミアーは、ゲーム「古の女神と宝石の射手」に登場。秩序をつかさどる女神らしく、自分にも他人にも厳しいですが、子犬にだけはデレデレしてしまうという可愛らしい性格を持っています。
まとめ

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具体的な神話がないことが残念ですが、逆に神話がないということは、忠実に職務を果たし、平和に暮らしていたからかもしれません。
それ故に影が薄くなってしまったのは、良いことなのか悪いことなのか。微妙なところですよね~。