
ギュスターヴ・モロー作「オイディプスとスフィンクス」
スフィンクスでまずイメージするのがエジプトのピラミッドを守る聖獣。
ファラオの頭部と獅子の身体を持つこの獣はメソポタミア文明にも登場します。
けれど、ギリシャ神話にもスフィンクスは存在し、こちらはエキドナとオルトロスの間に生まれた由緒正しい怪物。
旅人に謎かけする有名なお話はこのギリシャ神話のスフィンクス。
そして、アジア圏にもスフィンクスに相当する人間の頭部に獅子の体を持つ獣が語られています。
そんなスフィンクスのご紹介です。
知らなかったスフィンクスの一面が見えるかも、です。
目次
スフィンクス、謎かけするのはギリシャ神話

フランツ・フォン・スタック作 「スフィンクスのキス」1896年
スフィンクス(Sphinx)は獅子の身体と人間の頭部を持つ怪物、あるいは聖獣。
エジプトが起源とされ、シリア、フェニキア、バビロニア、ペルシア、ギリシア、アジア圏でもスフィンクスに相当する獣が語り継がれています。
スフィンクスは古典ギリシア語ではスピンクス(Σφίγξ, Sphinx)
古代エジプト語の「シュセプ・アンク(生ける像・復活の像)」、または「きつく縛る」「絞め殺す者」を意味するギリシア語のスピンクスsphink、Sphinxに由来するとも考えられています。
アラビアでは「アブ・ホル(Abu al-Haul)(恐怖の父)」と呼ばれ、畏怖の対象として敬われていたと伝えられています。
スフィンクスの誕生

1637 年
古代オリエントとは、紀元前4000年紀から紀元前400紀頃までの間、エジプト、メソポタミア(現在のイラク・シリア)、古代ペルシア(現在のイラン・アフガニスタン)の地域で興った古代文明。
オリエントの古代社会では、獅子は百獣の王である聖獣。
霊力を持つとされ、玉座や墓所を守護すると考えられていました。
古代エジプトにおいての獅子はスフィンクスとなり、ファラオの守護者の役割を担います。
そして神々と同じように、人頭のものだけでなく、ヒツジやハヤブサなど、それぞれの神と同じ頭部や身体、性別を持ったスフィンクスも多数生まれます。
古代ギリシアやメソポタミアのスフィンクスは、このような古代エジプトの影響を受けて誕生したものとも考えられています。
エジプトのスフィンクス

スフィンクスの発掘、1887
エジプトのスフィンクスは古くから王権のシンボルであり、知恵と力の象徴として、多くの神殿や墳墓の入り口を守ります。
スフィンクスが造られた時期についてはピラミッドと同時期(ギザの三大ピラミッドが造られたのは紀元前2500年頃)に造られたという説が有力ですが、それ以前、紀元前1万年以上も前に造られたという説もあります。
エジプトではスフィンクスは太陽神ホルスの化身であると考えられ、ホル・アクティ(地上のホルス)、ホル・エン・アケト(地平のホルス、墓場のホルス)と呼ばれる他、古期にはルウティ(西に輝ける者、あるいは双頭のライオンの意味)、中期にはシェセプ・アンク(魂の像)とも呼ばれています。
その姿は、ファラオの顔を模したり、神々を意味する動物の姿であったり、女性や翼を持つなど様々です。
特にネメスと呼ばれる頭巾を付けたファラオの顔に獅子の身体を持つものは王を守護する王権の象徴とされまる聖獣。
死後に神格化したファラオと猛獣の王ライオンを組み合わせて生み出された伝説であるともいわれています。
メソポタミアのスフィンクス

エトルリア文明のスフィンクス 紀元前550〜530年
エジプトの影響を受け、メソポタミアにもスフィンクスは伝えられてゆきます。
メソポタミア神話(バビロニア神話)のスフィンクスは、獅子の身体、女性の頭部、鷲の翼を持つ怪物であり、死を司る存在。
スフィンクスはバビロニア神話では光の神マルドゥークに退治される怪物。
ギリシャ神話でイメージするスフィンクスはメソポタミア神話(バビロニア神話)の影響によるものと考えられます。
ギリシャ神話のスフィンクス

『オイディプスとスフィンクス』ギュスターヴ・モロー作(1864年)
ギリシャ神話に登場するスフィンクスは多くの魔獣を生んだエキドナとエキドナの子双頭の犬オルトロスとの間に生まれます(一説には怪物テューポーンとエキドナの娘)。
ネメアのライオンとは兄弟、肉親には他にケルベロスやキマイラなどがいます。
エジプトのスフィンクスは王家を守護する聖獣であるのに対し、ギリシャ神話のスフィンクスは子供をさらう恐ろしい怪物。
戦争においては人々の死を司る死神のような存在ともいわれています。
エジプトの多くのスフィンクスは男性ですが、ギリシアのスフィンクスは若い女性の頭部と乳房、獅子の身体、背中にワシの翼、稀にヘビの尾を持つとされることもありました。
神話の中のスフィンクス

ジャン・オーギュスト・ドミニク・アングル作 1808年、
スフィンクスの謎かけ
『スフィンクスの謎かけ』として知られる物語はオイディプース神話の中で語られれいます。
スフィンクスは驕ったテーバイ人(アテナイやスパルタと覇権を争い、最強と謳われた都市国家とその民)を懲らしめるという女神ヘラの命を受けます。
ピキオン山で道を塞ぎ、通行人に「朝は四本、昼は二本、夕刻には三本足で歩く生き物は何か?」と問いかけます。
ちなみにこれはムーサに教わったとされている謎。
そして答えられなかった者を喰らいます。
そこにアポロンの神託を受け、旅に出た若きオイディプスが現れ、「それは人間である。赤ん坊の時の人間は4本の手足で這い、老人になると杖をついて歩く3本足になる」と解答。
謎を解かれたことでスピンクスは崖から身を投げて死亡、またはオイディプスに退治されたとも言い伝えられています。
アジア圏のスフィンクス

仏塔の門にあるスフィンクス、紀元前1世紀
インド、スリランカ
南インドでは、スフィンクスはサンスクリット語でプルシャムリガ (puruṣamr̥ga)
インド神話や南インドの寺院でみられる、人間と動物(主に鹿や獅子)が合体した、魔除けの役割を果たす、半人半獣の神聖な生き物。
しばしば「南インドのスフィンクス」と称されます。
伝承によれば、寺院に入る信者の罪を取り除き、悪を遠ざけるとされ、ゴープラム(寺院の入り口にある塔)や寺院の門に配されています。
スリランカ と他のインドの地域では、スフィンクスはナラシンハ(Narasiṃha)として知られています。
ナラシンハはヴィシュヌ神の第4のアヴァターラ(化身)。
ライオンの頭と人間の体を持つ「人獅子(じんしし)」、強大な悪魔を滅ぼす神。
仏教においても北の方角の守護者として崇められています。
ライオンと人間の身体を持つという姿が、エジプトのスフィンクスに似ているところから、そう呼ばれることがあります。
タイ
タイでは
- ノラ・ネア、ノラ・ネア (Nora Nair)
- ノラシン (Norasingh)
- テップ・ノラシン (Thep Norasingh)
「タイのスフィンクス」として知られています。
ヒマパン(ヒマラヤ山脈にあるとされる伝説の森)に生息する神話上の生き物ともされます。
これらは、下半身がライオンまたは鹿、上半身が人間である直立歩行の生き物。
仏教において北方の守護者として崇められ、仏塔(ストゥーパ)の隅などに配置されます。
ミャンマー(ビルマ)

ビルマのマヌシハ
ミャンマーのスフィンクスはマヌシハ(マヌティハ manussīha )
人間の上半身とライオンの後ろ足を持つビルマの半人半獅子の神話上の生き物です
生まれたばかりの王族の子供を海のラクシャシー(女鬼)から守るために、仏教の僧侶によって作られたという伝説が残されています。
パゴダ(仏塔)の四隅を守る聖獣。
「ビルマのスフィンクス」とも呼ばれます。
現代でもスフィンクスはそのまま
映画・ドラマ
1981年公開『スフィンクス 』はセティ1世の墓の謎をめぐる冒険ミステリー。
エジプトのピラミッドやスフィンクス像が物語の舞台となります。
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2016年公開『キング・オブ・エジプト 』は神と人間が共存する古代エジプトが舞台のアクション映画。
スフィンクスが砂漠で主人公たちに襲いかかるシーンも楽しめます。
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アニメ・ゲーム
「アサシン クリード オデッセイ」でのスフィンクスは『スフィンクスの伝承』というクエストのひとつとして登場します。
戦闘は無く、スフィンクスが出題するクイズに3問正解すると秘宝を入手。
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ソーシャルゲーム「ONE PIECE トレジャークルーズ」のスフィンクスはインペルダウンLEVEL2の牢番。
暇な囚人達になぜか麺類の単語ばかり覚えさせられている、人の言葉が話せない巨大な人面ライオン。
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スフィンクス まとめ

ギュスターヴ・モロー 作
12000年もの太古、想像を超える遥か昔から存在したスフィンクス。
聖獣として崇められたサラブレットの怪物なのに、たかが謎を解かれたぐらいで死んでしまうのは少し情けないように思います。
獅子の身体、鷹の翼、蛇の尻尾を持つ女性、なんか怖いというより美しいだろうとイメージするスフィンクス、せめて戦って退治されてください。