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カリス(カリテス)、三美神。美と優雅を司る女神たち

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カリス(カリテス)は美と優美を象徴するギリシャ神話の女神たち。 

表立った神話はないものの、その美しい演舞で神々を魅了し、神々の脇役としてさまざまな務めを果たしています。 

 

多くの芸術作品で描かれ、詩人や学者に語られるカリス(カリテス)に注目です。 

 

 

カリス(カリテス春の芽生えを象徴するアプロディーテーの従者 

サンドロ・ボッティチェッリ作『プリマヴェーラ(春)』

カリス(カリテス)とは 

カリス(Charis)はギリシャ神話の美と優雅を象徴する女神。 

複数形はカリテス Charites。 

ローマ神話ではグラティア(Gratia)英語名はGrace(s) 

 

カリス(カリテス)の人数や家族構成については幾つもの説があります。 

最も一般的なカリテスはヘシオドス紀元前700年頃、古代ギリシャの叙事詩人)によるゼウスとオケアニスオケアノスの娘たち)エウリュノメーの間に生まれた 

  • アグライアー(輝き, Aglaia)、
  • エウプロシュネー(喜び, Euphrosyne)、
  • タレイア(繁栄, Thaleia) 

の3柱。 

 

主にアフロディーテに仕える女神。また眠りの神・ヒュプノスや鍛治の神・ヘパイストスの妻もカリスとされます。 

若く美しいその肢体は魅力(charm)、美貌(beauty)、創造力(creativity)を司る『三美神』として、多くの芸術作品で描かれています。 

 

カリスの家族 

ラファエロ・サンツィオ・ダ・ウルビーノ作「三美神」

カリテスの両親については幾つもの説があります。

⚫︎  ゼウスとエウリュノメーの子という説(ヘシオドス)以外、 

⚫︎  太陽神・ヘリオスと川のニュンペーナーイアデス、あるいは「ヘスペリデスの園」を守るヘスペリスの一人アイグレ 

⚫︎  ディオニュソスとコロニスの娘、アグラエア、パシテア、ペイトーの3柱ノンノス 4〜5世紀、古代ローマの叙事詩人) 

⚫︎  ディオニュソスとアプロディーテーの娘であるという説

 

他説、母親としてゼウスの妻・ヘラの名もあがっています 

 

カリスの役割、神話の中のカリス 

ピーテル・パウル・ルーベンス 作

カリス(カリテス)は本来は春の芽生えの活力を象徴する植物神と考えられます。 

カリテス自身の物語は語られていませんが、神々のさまざまな物語の中で多くの役割を果たしています。 

オリュムポス山の山頂に住み、宴席ではアポロンの竪琴やムーサの歌声で演舞、その美しさをもって神々をもてなします。 

 

︎⚫︎ アポロンオリュンポスに迎えられる際は、アルテミスが歌い、アポロンが竪琴を弾く中、青春と若さの神・ヘベ、調和の女神・ハルモニア、アフロディーテなどの美を誇る女神たちと共に踊り、祝宴を盛り立てています。 

⚫︎ 愛と美の女神としてアプロディーテーの従者、また娘とされ、 

アフロディーテが人間の恋人トロイア王家の王子・アンキスを誘惑する際、アレスとの情事が原因でオリンポスを去った後、パフォスで沐浴するアフロディーテに付き添っています 

また、アフローディーテのペプロス(衣装)を織ったり染めたりするのもカリテスの役目。 

⚫︎ ヘシオドスはカリテスの一柱・アグラエアをヘパイストスの妻とし、 

⚫︎ ホメロスの長編叙事詩『イリアス』の中で、ヘラはトロイア戦争からゼウスの注意をそらすために、パシテア(カリス)を眠を司る神・ヒュプノスの花嫁として与えることを約束しています。 

⚫︎ 人間の妻となるパンドラに、説得の女神・ペイトーと共に、より魅力的に見せるためのネックレスを贈り 

⚫︎ ロイア戦争を語るホメロスの叙事詩『イリアス』の中で、アフロディーテと別れた後のヘパイストスの妻となったカリスは、アキレウスの母・テティスがヘパイストスにアキレウスの鎧を鍛造するよう頼む際の手助けをしています。

 

起源 

ポンペイのフレスコ画、西暦1~50年

カリテスの信仰は非常に古く、ギリシア人出現以前、エーゲ海にある島々を中心とし崇められ、紀元前6世紀のテラ島でのカリテス崇拝の碑文も残されています。 

最も重要な神殿は、ボイオティアオルコメノス神殿で、カリテス信仰の起源と考えられています。 

 

カリテス信仰は主に豊穣と自然を崇めるもの 

カリテスは豊穣に関係した地下世界の神々と解釈されています。 

(紀元前4〜6世紀、古代ギリシャの詩人)ピンダロスは、カリスは古代ミニアン人の守護者であり、予言の才を持つアポロンの神官・ピューティアはカリス、また、アポロンの隣りに玉座を持つ古代都市・オルコメノスの女王もカリスであるとしています。 

 

カリテスのメンバー 

ハンス・バルドゥング作
マドリード、プラド美術館所蔵

カリテスの人数は、元は不定であったとされ、古代の叙事詩の中で幾つかの説が語られています

 

ヘシオドスの『神統記』の中では、ゼウスと海の女神・エウリュノメーの娘たち 

⚫︎  アグライアー (Aglaia) 輝き   

 ヘーパイストスの妻とされることもある  ノンノスはディオニュソスとアプロディーテーの娘の1柱としています。 

⚫︎エウプロシュネー(Euphrosyne  またはエウティミアーEuthymia) 喜び 愉快さ 

 歓喜、祝祭を司るアプロディーテーの侍女 

 他の説ではパーシテアーカレーと姉妹とされます 

⚫︎タレイア( Thaleia  またはタリアー Thalia) 花盛り 

 豊かさと開花を司るアプロディーテーの侍女 

 

ホメロスの『イーリアス』では、

⚫︎パーシテアー(Pasithea ) 万物の女神 

 トロイア戦争を歌う叙事詩に登場するヘラの娘ともされ、夫は眠りを司る神・ヒュプノス 

 『イーリアス』によると、ヘラはトロイア戦争の戦局を左右するゼウスを眠らせるため、パーシテアーとの結婚を条件にヒュプノスに命じています 

 ノンノスの『ディオニュソス譚』ではディオニューソスとアプロディーテーの娘で、ペイトー、アグライアーとの3柱の姉妹 

⚫︎カレー( Cale  またはカレーイス Calleis) 美女 

 『ホメーロスの長編叙事詩イーリアス』では別名「カリス」 

 鍛冶の神・ヘーパイストスの妻。 

 ヘシオドスのアグライアーと同一視されます 

  • エウプロシュネー 

 

◾️ノンノスの『ディオニューソス譚』では 

  • パーシテアー 

⚫︎ ペイトー「説得 (Peitho)」)ペイトー Peitho 説得 結婚 

 ヘシオドスの神統記』の中では、オケアノスとテテュスの娘・オケアニデスの最年長のニュムペーとしています。 

 後代の伝承ではヘルメスとアプロディーテーの娘 

 一説にアプロディーテーの別称 

 アイスキュロス(紀元前6世紀、古代アテナイの三大悲劇詩人のひとり)の『アガメムノーン』では破滅の女神・アーテーの娘、『救いを求める女たち』(アイスキュロス)ではアプロディーテーの娘 

  ノンノスの『ディオニューソス譚』ではディオニューソスとアプロディーテー娘で、パーシテアー、アグライアーの姉妹。

 また、ヘルメスの妻 

 他、ゼウスの子でアルゴス市の始祖・アルゴスの妻、プロメテウスの娘などの説があります。 

  • アグライアー 

 

◾️他の叙事詩では 

⚫︎ アウクソー(Auxo) 美と成長 

 と夏、万物の生長を司ります 

タローカルポーとともに、季節の女神・ホーライの1柱ともされま

⚫︎ヘーゲモネー(Hegemone) 女王 支配権 

秋と果実の収穫を司る女神。 

ゲーテファウスト』にも登場しています。 

⚫︎クレーター( Cleta) 呼ばれる女 

ラコーニア地方で信仰されていたカリス 

⚫︎パエンナー(Phaenna)  輝く女 

ラコーニア地方で信仰されるカリテス。 

スパルタ・アミュークライ市にアトラスオケアノスの娘プレーイオネーの娘プレイアデス・ターユゲテーの息子ラケダイモーンが創建したと伝わる神域があったとされます。 

⚫︎カリス(Charis)  優美、美貌、魅力、創造力 

ホメロスに「光る面紗の麗しきカリス」と呼ばれ、鍛冶神・ヘーパイストスの妻とされる女神。 

ヘシオドスのアグライアーと同一視されます。 

 

その他 

◾️アテーナイでは 

  • アウクソー
  • ヘーゲモネー
  • ペイトー 

◾️ラコーニア地方では 

  • クレーター
  • パエンナー 

◾️後にラコーニア地方のスパルタでは 

  • アグライアー、
  • エウプロシュネー、
  • クレーター 

の3柱を指します。 

 

 

カリス、現代では悪と戦う意外な存在(?) 

『仮面ライダー剣では仮面ライダーカリスとして登場。 

喫茶店「ハカランダ」の居候相川始が腹部に出現したカリスラウザーラウズカードをラウズすることで仮面ライダーカリスに変身 

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『機動新世紀ガンダムXカリス・ノーティラスは「市の平和のため」に強化処置に志願した15才の人工ニュータイプの少年。

専用機・ベルティゴに乗機し、自警団を率いフォートセバーンの防衛に務めます。 

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カリス まとめ 

ピーテル・パウル・ルーベンス 作

カリス(カリテス)は、オリュンポスの神々の子として生まれ、主要な神々に仕える美しき女神たち。 

舞踊で宴席を盛り上げたり、アフロディーテに裏切られたヘーパイストスに嫁いだり、トロイア戦争を画策するヘラによってヒュプノスと結婚させられたり。 

女神とはいえ、強いられた生涯を送らなければならない、かわいそうな存在のようにも見えます。 

 

まあ、人間でも名家に生まれたものは家名のために将来が決められる、今も変わりないのでしょうね。 

幸か不幸か、そんな不自由に縁がないのでわかりませんが 

 

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