ドラマのタイトルになったことでも印象深いウロボロス。ゲームやアニメの世界ではおなじみのモチーフです。
そのウロボロスに注目です。
遥かな太古から、様々な分野、世界中の神話の中に存在するウロボロス。
それらが象徴する壮大な世界観を探ります。
目次
ウロボロスとは
出典:Wikipedia
ウロボロスとは「自らの尾を噛んで環となったヘビ(もしくは竜)」を図案(紋章)にしたもの。いにしえより伝わるシンボル、象徴のひとつです。
語源は、古代ギリシア語で「ουροβóρος」、οὐρά(尻尾)とβορά(食事)で「尾を飲み込む(蛇)」を意味しています。
このシンボルは多様な意味を有します。広義には永久性と無限性、創造と崩壊、生と死。
ヘビは脱皮して成長し、強い生命力を持つ生物であるところから、「死と再生」「不老不死」の象徴。そのヘビが自らの尾を食べることで、始まりも終わりも無い「永遠」「無限」「完全なもの」を意味するものと解釈されています。
ウロボロスの起源は
出典:peopleschina
みずからの尾をくわえたヘビ(または竜)ウロボロスの起源は、一般的には古代エジプト文明、冥界を巡る太陽神ラーを守護する大蛇メヘン神であると伝えられています。
夜を航海するラーを取り囲んで、妨害する悪の化身アペプから太陽神を守る役割を担います。
原初のウロボロスは、紀元前1600年頃〜紀元前1100年頃、古代都市アビドスのオシリスの神殿の壁に彫られた輪の形に丸まった蛇。死後の世界の監視役を意味し、また死と転生の境目であると推定されます。
ウロボロスはエジプトからフェニキアを経て、古代ギリシアに伝わります。
そして、哲学者らによって「ウロボロス」の名を与えられ、始まりも終わりもない「永遠」を表すものとして用いられるようになったと考えられています。
中国では紀元前、新石器時代の遺物の中に、猪やブタのような頭とヘビの胴体を持ち、自らの尾をくわえた「猪竜(ズーロン)」または「玉猪竜(ユーズーロン)」と呼ばれるものが発掘されています。
これ以外、ウロボロスに類似するシンボルはネイティブインディア、スカンジナビア、アステカ、インドなど、世界各地に存在し、この起源を確定することは難しいとされます。
宗教、錬金術、神話、心理学の中のウロボロス
長い歴史の中でウロボロスは様々な分野で象徴としての役割を持って伝えられています
錬金術でのウロボロス
錬金術においてのウロボロスは『相反するものの統一』を象徴するもの。
中世の錬金術師たちはウロボロスのシンボルを多くの「真理」の印、『循環』『完全』を意味する紋章として用いています。
卑金属から金への錬成を可能にする、賢者の石を作り出すための元素の変化を象徴する重要な要素、「死と転生」の循環。
尾を噛んだ蛇は、4大元素の変化と転換を具象化したものとして考えられていました。
心理学でのウロボロス
心理学者カール・グスタフ・ユングは、ウロボロスを『人間精神(プシケ)の元型を象徴するもの』と提唱
ウロボロスの「元型」は、個人の成長の初期段階、暗闇と自己崩壊、成長と創造を象徴するものとしてとらえています。
宗教のウロボロス
出典:Wikipedia
キリスト教での、ウロボロスは『物質世界の限界を象徴するもの』
旧約聖書での蛇は穢れた存在。サタン「悪魔」を象徴し、アダムとエヴァの楽園追放の原因となる存在として扱われています。
ヒンドゥー教では、「世界は4頭のゾウに支えられ、そのゾウは巨大なカメに、そのカメを自らの尾をくわえた竜が取り巻いている」とされています。
神話の中のウロボロス
** エジプト神話 **
エジプト神話の中のウロボロスは、永遠、不死、森羅万象を具象化したもの。
フェニックスと同様、終わりも始まりもないプロセスを表すようになったと考えられます。
ウロボロスに象徴されるメヘン神は「ラーを守る」冥界の蛇神。
夜の世界を運行する「夜の太陽の船」を護衛する神々のひとり。太陽神を包み込んで守るアポピスの敵とされる、神話の中に登場する神。
** ギリシア神話 **
古代ギリシアでのウロボロスは、頭(誕生)と尾(死)を自らくわえた姿から不死、無限の象徴と考えられています。
ウロボロスの語源となったドラコーン(δράκων)はドラゴンの語源ともなった大蛇。
ドラコーンは多くの神話や伝説に登場しています。
- ヘーラーの果樹園ヘスペリデスの園で黄金のリンゴを守護するラードーン
- 怪物テューポーンとエキドナの娘キマイラはライオンとヤギとドラコーンの合成獣
- アルゴナウタイが目的地としたコルキスでは黄金の羊毛を守護する竜
- テーバイのドラコーンはフェニキアの英雄カドモスに討ち取られます
- 地獄の番犬ケルベロスの尻尾もドラコーンのもの
** 北欧神話 **
北欧神話のヨルムンガンドは、ロキと巨人アングルボダの間に生まれた怪物。
人間の住む領域ミッドガルドを取り巻き、みずからの尾をくわえて眠る毒蛇です。
主神オーディンはヨルムンガンドを海底へと追放。
大洋でヨルムンガンドは、大地を取り巻き、その尾を咥えるほどにまで成長します。
ラグナロクの戦いでヨルムンガンドは雷神トールと戦います。怪物は世界の海から出現し、自身の毒で空と海を毒で覆い尽くします。
この戦いで、トールは怪物の頭を打ち倒しますが、怪物の体から降りかかった毒が彼に致命傷を与え、絶命。
** インド神話 **
ナーガ (नाग, Nāga)は蛇の精霊あるいは蛇神。
古来よりインドではナーガは、水、生命と肥沃の守護者として崇拝されています。
ナーガラージャ (Nāgarāja) はその蛇神の諸王。
シェーシャは、尾を噛んだ蛇の形で描かれるナーガラージャです。
カシュヤパ仙とカドゥルーの間に生まれた1000のナーガの1人。
別名をアーディシェーシャといい、地底界の最深部で世界を支える原初の蛇。
ヒンドゥー教では、世界には7層の地下世界があるとされ、シェーシャはさらにその下で、千の頭で大地を支えているといわれます。
またシェーシャは、輪になっている状態の時、「無際限」「永遠」を意味するアナンタ(Ananta)の名で呼ばれます。
この世が始まる以前、宇宙が混沌の海だった時に、ヴィシュヌ神はアナンタの上に寝ていたといいます。そのヴィシュヌのへそから蓮の花が伸び、そこから創造神ブラフマーが生まれ、ブラフマーの額から破壊神シヴァが生まれました。
また、この世が終わる時、再び世界が創造されるまでの間、ヴィシュヌはアナンタの上で眠り続けるとされています。
絵に描かれるシェーシャはヴィシュヌ神が腰を下ろす丸くなった蛇。シェーシャの体は果てしない時の循環を表し、その空間は宇宙のすべての星々に繋がっているといわれます。
** アステカ神話 **
アステカ神話のケツァルコアトルは水や農耕に関わる蛇神。風神、文化神でもあります。
マヤ文明ではククルカン。
人身供犠をやめさせ、人類に火をもたらした神でもあり、トルテカ族の祖神。
その名は古代ナワトル語で「羽毛ある蛇」を意味します。
原初神トナカテクトリとトナカシワトルの息子の1人として、創造神の1柱にもなっています。
「五つの太陽の神話」の中では太陽神。
岩を投げると森が平地になるような怪力を誇る平和の神。
宗教画では、ケツァルコアトルがみずからの尾を噛んでいる姿で描かれているものもあります。
ウイルス、ラスボズ、アラガミ、仲魔になる、変幻自在なウロボロス
ドラマ「ウロボロス 愛こそ正義」では二大イケメン小栗旬と生田斗真が主演。刑事とヤクザに別れた幼馴染が法で裁けない悪を断罪! 原作は神崎裕也の連載アニメです。
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出典:gameline
ゲーム「バイオハザード」のウロボロスはウロボロスウイルスによって生み出されたクリーチャー
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アクションゲーム「GOD EATER」のウロヴォロスは触手の集まりの様な存在自体が天災とされる巨大なアラガミ。
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「女神転生」シリーズのウロボロスは∞型に巻いた龍王の仲魔として登場です。
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ウロボロス まとめ
ウロボロスは始まりも終わりも無い「永遠」を意味するものと理解します。
人は、できれば、永遠を望みます。
けれど、SFの世界では繰り返させるループは決して「幸福」にはつながらない。
なんて、ひねくれたものの見方をしているだけなのでしょうか。。。。