ゲームなどでは、自分の分身となるアバターを作りますが、その語源がヒンドゥー教の世界を維持する神・ヴィシュヌだということを知っていましたか?
世界が混沌に陥った時、世界を維持するためにヴィシュヌはさまざまな姿を使い分けて地上に現われます。そして、その姿はインド神話の英雄・クリシュナや仏教の始祖・ブッダなど、おなじみのビッグネームばかり。
今回は、特にヴィシュヌの10の化身に注目してご紹介します。
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最高神ヴィシュヌ、形の無い形而上的な存在?
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ヴィシュヌは、宇宙の根本原理ブラフマンであり、ヒンドゥー教においては破壊の神・シヴァ、創造の神・ブラフマーと三神一体だとされています。
世界を維持するため、世界が悪の脅威にさらされた時、混沌に陥った時、「維持者、守護者」として転生して人間世界に現われます。
その姿は「アヴァターラ (化身)」といい、それが転じて、現代では自分の分身となるキャラクターを英語読みのアバターと呼ばれるようになりました。
化身は数え切れないほどありますが、その中で10つが最も重要なものとして信仰されています。
ヴィシュヌと10のアヴァターラ (化身)
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1.マツヤ ー 巨大な魚。人間の始祖・マヌの前に現われ、「大洪水がくるので、ヴェーダ (知識) の船を造って生き延びろ」と言います。マヌは、そのおかげで洪水を生き延びられたのでした。
2.クールマ ー 巨大な亀。天地創造の際、神々と魔族が不死の霊薬・アムリタを手に入れるため、争いました。クールマは蛇神・ヴァースキを手伝い、見事アムリタを手に入れます。ちなみに、争いの時にさまざまなものが生まれ、ヴィシュヌの妻・ラクシュミーはここで誕生。
3.ヴァラーハ ー 巨大なイノシシ。大地を海に沈めた魔族と戦い、見事勝利。大地を引き戻しました。
4.ナラシンハ ー 半獅子半人、頭がライオン。ヴァラーハに殺された魔族の兄がヴィシュヌに復讐を誓い、世界征服をします。しかし、ナラシンハとして現われたヴィシュヌによって退治されます。
5.ヴァーマナ ー 小人。魔族の王・バリは偉大な王としてたたえられていましたが、強大な力で天界・地上界・冥界を征服。僧侶に変装したヴァーマナは、バリを褒めて「3歩分の土地が欲しい」と頼みこみます。気を良くしたバリは承諾。すると、ヴァーマナは巨人になり、1歩で地上界・2歩で天界・3歩で冥界を歩きました。
6.パラシュラーマ ー 仙人で斧の名人。一部のクシャトリヤ (カースト制度の上から2番目で貴族・武人階級) たちが人々に乱暴したため、斧でクシャトリヤたちをこらしめました。
7.ラーマ ー 古代インドの叙事詩『ラーマヤナ』の主人公。誘拐された妻・シータを救うため、軍を率いて羅刹の王・ラーヴァナに挑みます。
8.クリシュナ ー 『マハーバーラタ』『バガヴァッド・ギーター』などに登場する、古代インドの大英雄。『マハーバーラタ』では、主人公・アルジュナの戦友・導き手として描かれています。
9.ブッダ ー 仏教の始祖。魔族に異端の宗教・仏教を教え、改宗させます。そのため、ヒンドゥー教の教えを失った魔族の力は弱り、神々の力が増しました。
10.カルキ ー 白馬の頭の巨人、または白馬に乗った英雄。終末の時、世界を更新するために現われます。
これもヴィシュヌの化身のひとつ?
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悪魔と現代科学が融合した独特の世界観を持つゲーム「女神転生」シリーズでは、上位悪魔として登場。その後は、ヴィシュヌの化身のひとつであるクリシュナとしても出演しています。
引きこもりのささみさんと、八百万の神々たちがくり広げるライトノベル『ささみさん@がんばらない』では、世界を取り戻すためにささみさんを鍛えます。褐色肌の美少女として描かれています。
ヒンドゥー教 インドという〈謎〉 (講談社選書メチエ) [ 山下博司 ]
まとめ
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天地創造から世界の終焉まで、さまざまな姿で活躍したヴィシュヌ。「維持者、守護者」としての意識の塊と理解して良いのでしょうか。
けれど、たとえ別の意識の化身であるとしても、英雄になれるならなってみたいものです。