
ジョン・バウアー作(1905年)
女神フレイヤが巫女であったセイズは、北欧の呪術。
歴史の上でも、バイキングやキリスト教化以前の古代スカンジナビアの人々は習慣として、未来を知り、敵を倒す手段として用いていたと伝えられています。
霊との交信を行うことで、予知や呪詛(呪い)、善にも悪にも用いられるセイズ、
その神秘の呪術に注目です。
目次
セイズ、未来を予言し、敵を呪う魔術

19世紀の『古エッダ』
セイズ (Seiðr) は北欧神話や古代スカンジナビアで慣習として用いられていた魔術。
未来を予知し、運命や精神を操る呪術です。
セイズはもともと、ヴァン神族に伝わる魔法でした。
ヴァン神族とアース神族の争いの原因となり、それによって元はヴァン神族であったフレイやフレイアがアース神族の一員となっています
そのフレイヤはセイズの最高位の使い手であり、最高神オーディンや他の神々にもこの魔法を伝授しています。
多くの場合呪術者は女性で、ヴォルヴァ (vǫlva)、セイズコナ (seiðkona)、ヴィーセンダコナ (vísendakona) とも呼ばれています。
男性が術者である場合、セイズマズル (seiðmaðr) と呼ばれます。
術者は詠唱と祈りを通じて精霊との交信をおこないます。
起源については詳細は不明。
スカンジナビアがキリスト教化するにつれてその慣習も廃れてゆきます。
歴史の中のセイズ

予言者グロア
セイズは13世紀に書かれたとされる『赤毛のエイリークのサガ』やアイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンによって書かれた『ユングリング家のサガ』にも記されています。
◾️『赤毛のエイリークのサガ』にはグリーンランドには「ソルビョルグ」という名のセイズコナやヴォルヴァがいたと記述されています。
◾️『ユングリング家のサガ』にはセイズには占いと遠隔操作の魔法が含まれると述べています。
◾️ヴァイキングの文献によれば、セイズの術者はヴァイキングにとっての宗教的な指導者でした。
ヴァイキングたちはセイズの儀式によって未来を見通し、危機を回避。
敵に魔法をかけ、倒す手段として用いていました。
セイズは使い方では人を堕落させる魔術でもあります。
ノルウェーを最初に統一した王とされるハラルド美髪王(ハーラル1世 在位:872年頃 - 930年頃)は、セイズの慣習にふけったという理由で、自分の息子とその取り巻きを死罪にしたと記録されています
けれど、セイズは悪や快楽ためにも用いられましたが、主な目的は有益な日々の導きとしても用いられる魔術でした。
セイズの儀式

W・G・コリングウッド作「グロアの呪文」(1908年)
古代ゲルマン文化の中ではガルドル(Galdr)という呪術も伝えられています。
そのガルドルは「呪文の詠唱とルーン文字」を用いる呪歌・呪文であるのに対し、セイズは「トランス状態に入り、運命の操作をおこなう」シャーマン(巫女)の魔術。
巫女がトランス状態に入り、神々や精霊と交信、運命の糸を紡ぎ直すことで現実に干渉する魔法です。
- 未来予知
- 吉凶占い
- 天候操作
- 病気治療
- 遠隔透視
- 他者の精神や肉体の操作
- 幸運や不幸の付与
など、多岐にわたる神秘的な目的で使用されました。
セイズ呪術には魔法の道具一式が必要であったとされています。
また、セイズを行うものは道具を使いこなせる熟練者でなければなりません。
動物の毛皮をまとった術者は魔法の杖を持ち、高い台の中央に立ち、その周囲を助手が囲みます。
一同は呪歌『ヴァルズロック』を歌い、術者はトランス状態に入ってゆきます。
術者には魂の解放と同時に、性的な快感がもたらされます。
杖を媒介にして呪文を唱えると霊が呼び出されます。
霊は術者に未来に起こることをあかし、術者は場合によっては呪詛を願います。
セイズ魔法には呪詛や敵の攻撃に用いる「黒魔術のセイズ」と、未来を予言する「白魔術のセイズ」に大別されます。
戦いにおいてのヴォルヴァは様々な手段で戦況に影響を与えています。
セイズの術者「ヴォルヴァ」は、巫女やシャーマンの様な存在として崇められていました。
この名は「杖を持つもの」を意味し、杖は力のシンボルであり、魂が旅するための必需品。
ヴォルヴァはトリネコの木で作られた杖を、魔力を集中させる媒体として使用します。
呪詛に使用する場合は、杖で殴るように接して呪いをかけ、呪われた者は病や死に至ることもあったと伝えられています。
神話の中のセイズ

ローランス・フレーリク作 グルヴェイグの処刑。
神話の中でのセイズはかつて魔女グルヴェイグがアース神族の娘たちを堕落させたことでアース神族とヴァン神族との戦いの原因にもなっています。
その結果フレイヤがアース神族に移り、『ヘイムスクリングラ』の序章『ユングリンガ・サガ』によれば、セイズはヴァン神族であったフレイアがアース神族にもたらしたとされています。
フレイヤは神の世界であるアースガルズで、ヴォルヴァは人の世界であるミズガルズでセイズの巫女としての役割を果たしたとされます。
セイズ呪術は多くの場合女性が行いますが男性も使うことは可能でした。
そしてフレイヤは愛人オーディンにその技法を伝授したとも伝えられています。
けれど、男性がセイズ呪術を行う場合、同性愛の女性を演じることになり、女々しい(エルギと呼ばれるタブー)であり、恥かしいこととされ、オーディンもロキに「恥かしいやつ」と陰口を言われています。
グローア
その他、「グローアの呪文歌」と呼ばれるエッダも残されているグローア(Gróa)もセイズを用いてトールの傷を治療したとされる魔女。
オーディンが死者の国を訪れ、女予言者ヴェルヴァに息子バルドルの運命を予言するよう求めたという神話も残されています。
セイズ、現代でも武器魔法(?)
映画・ドラマ
2022年公開『ノースマン 導かれし復讐者』は9世紀のヴァイキングの復讐劇を描いたダーク・ファンタジー。
主人公が旅の途中で出会う盲目の巫女(預言者)が、セイズの儀式を行って未来を予言したり、呪術的な力を用いるシーンが登場します。
ちなみにその巫女を演じるのは世界的な歌姫ビョーク(Björk)
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アニメ・ゲーム
スマホゲーム「フェアリーテイル」のビックスローはセイズ魔法を操り、人の魂を見ることができる魔導士
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「モンスターストライク」の進化型フレイヤのストライクショットは、母神の力で自身のスピード&パワーをアップさせる効果の「ヴァナディースセイズ」
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アプリゲーム「オセロニア」の愛と戦いの女神フレイヤは、攻撃力をアップさせる「ヴァナディースセイズ」というスキルを備えています。
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セイズ まとめ

オーディンとヴォルヴァ(1895年)ローランス・フレーリク作
日本でも卑弥呼の時代から、巫女は霊や神と交信し、そのお告げで人々を支配していたことを考えれば、決して北欧の呪術も特異なものと決めつけてしまえません。
神の存在を信じる民がその声を聞きたいと願うのは自然なこと。
ただ、セイズに限りませんが、だからこそ呪術というのはやっぱり怖いですw
