デメテルは豊穣を司る女神。
冥王ハデスの妻ペルセポネの母としてのエピソードが有名です。
けれどゼウスやポセイドンとの経緯や太古からの言い伝えにはいろいろなドラマが記されています。
そんな謎多きデメテルに注目です。
目次
デメテル 豊穣を司る母神
デメテル(Dēmētēr)は豊穣を司る神であり、クロノスとレアの娘。
娘ペルセポネとハデスとの物語で知られ、その中では季節が生まれた経緯が語られています。
デメテルの信仰は古く、古代メソポタミア・紀元前10世紀にも遡ると考えられます。
その名は古典ギリシア語で「母なる大地」を意味し、穀物の栽培を人間に教えた神でもあります。
シンボルは麦、豊穣の角コルヌコピア、松明。女神の多くの作品には麦の穂や藁の松明を持つ姿が描かれています。
古くは娘のペルセポネと同一の女神であったとも考えられ、アナトリアの女神キュベレ、ローマ神話の女神ケレスと同一視されます。
デーメーテールの神格と起源
デメテルは穀物、大地の豊饒、季節、収穫を司る女神。
始祖ガイアからレアに続く地母神を継ぐ神。
ギリシャ女神の最高位「大女神」として崇められています。
豊穣神としてのデメテルは「植物の種子を植え、増やし、収穫する」穀物の栽培を人類に授けます。
そのことによって、それまでの人間の暮らしが一変します。
人間は定住の地で暮らし、安定した生活を確保することができるようになります。
また、デメテルは結婚、法律、生と死の循環を司る女神でもあります。
太古の民族崇拝でのデメテルは冥界との関係が深く、生者の世界と死者の境界を維持し、魂を冥界に導く、葬儀には欠かせない存在としても信仰されています。
太古のデメテル
太古のデメテルは馬の頭部を持つ黒衣の女神としても伝えられ、アルカディア地方では後に姉弟となったポセイドンとは婚姻関係にあったともされます。
また、デメテルと娘のペルセポネは、四季を生んだ春の女神。死と再生の神、永遠の生命を象徴する神として信仰されます。
デメテルの家族
デメテルはティータン族の農耕神クロノスと豊穣神レアの子。
冥王ハデス、海神・ポセイドン、主神ゼウス、かまどの神・ヘスティア、結婚と出産の神・ヘラの6姉弟の二女として生まれました。
ヘラやゼウス、ポセイドンの姉、ゼウスを除く兄弟たちとともに父親に飲み込まれ、ゼウスによって解放されています。
ゼウスとの間にコレー(ペルセポネ)を出産。
オルフェウス教の神統記では、ゼウスは蛇の姿で母親のレア、娘のペルセポネと交わりディオニュソスが誕生。「ゼウスの母となった後、以前はレアだった彼女はデメテルとなった」と記されています。
古代ギリシャの歴史家ディオドロス・シクルス によって紀元前 1 世紀に書かれた『歴史図書館』でも、デメテルとゼウスはディオニュソスの両親として記されています。
後に姉弟とされたポセイドンとの間にはアリオン、デスポイナ。
エレクトラとゼウスの息子イアシオンとの間にはプルトゥス、コリバス、フィロメルス が誕生しています。
デメテルの子
- ペルセポネ ハデスの妻、春の女神
- ディオニュソス オリンポス12神の一柱、酒神
- アリオン 黒いたてがみを持つ馬
- デスポイナ 名を明かされぬ(失った)者
- プルトゥス 富の神
- コリバス 初代クレタ王ミノスの息子であるアイダの父
- フィロメルス 畜産、耕作、耕作、農業の守護者
デメテルの性格
デメテルは大地の母と言われるよう母性が強く、温厚で慈悲深い性格であると言われます。
けれど、意にそぐわないものに対しては厳格な天罰を与えています。
デメテルの罰
🔸エリュシクトーン
テッサリア王のエリュシクトンがデメテルの聖地である森の全ての木を伐採。
ドライアドのニンフ(木の精霊)を殺してしまいます。
それを怒ったデメテルは飢餓の精霊リモスに王を罰するよう命じます。
リモスは王の胃袋の中に入り、王に飽きることのない飢餓を与えます。
王は絶え間ない空腹感に苦しみ、全財産を投じ、娘メストラを奴隷として売り、食べ続けます。
そして最後に自分自身を食べてしまいます。
🔸ミンテ
冥王ハデスはペルセポネを娶る以前、ニンフのミンテを愛人としていました。
ハデスがペルセポネに心を奪われたためミンテは「自分はペルセポネより美しく、ハデスはすぐに自分の元に戻ってくる」と豪語。
それを激怒したデメテルはミンテを踏み潰し、そこからミンテにちなんだ名のハーブが芽生えました。
デメテルとゼウス
デメテルはゼウスとの子を宿していますが、その経緯についての多くは謎に包まれています。
広く知られた物語では、雄牛に身を変えたゼウスがデメテルと強引に関係を持ちます。
また、子であるイアシオンはデメテルと関係を持ったため父ゼウスの稲妻に撃たれ死亡しています。
イアシオン
イアシオンはゼウスとプレアデスの エレクトラの息子。
ホメロスとヘシオドスの語る二柱の経緯ではテーベの創設者カドモスと調和の女神ハルモニアの結婚式でデメテルはイアシオンを見初め、二柱は新しく耕された畑で結ばれます。
ゼウスは二柱の関係を察し、イアシオンに落雷を落とし殺害してしまいます。
デメテルはその後イアシオンの子、富の神プルトゥスを出産しています。
ちなみに紀元前のローマの詩人オウィディウスは、イアシオンはデメテルの夫として老年まで生きたとしています。
デメテルとポセイドン
アルカディアに伝わる神話ではデメテルとポセイドンとの関わりは深く、太古のデメテルは馬を表徴とする大地母神で、二柱は婚姻関係にあったとされています。
デメテルは娘ペルセポネを捜して地上を放浪していた際、ポセイドンに関係を迫られます。
デメテルは牝馬の姿となり、オンコス王の馬群の中に紛れ込みポセイドンから逃れようとしますが、ポセイドンに見つかり、ポセイドン自身も牡馬の姿となってデメテルと強引な関係に至ります。
この結果、デメテルは名前を告げることを許されていない娘デスポイアと名馬アレイオンを出産。
この時のデメテルの怒りはすさまじく、身を清めるために全身黒ずくめの衣装で洞窟にこもってしまいます。そのため世界が飢餓に見舞われます。そしてついに作物や家畜、人々の死を招いてしまいます。
女神の怒りはラドン川の流れで沐浴するまで続いたとされます。
この時、デメテルにデメテル・ルーシア『水浴びをしたデメテル』、デメテル・エリニス『怒りのデメテル』デメテル・メライナ『黒いデメテル』という姓が与えらています。
ちなみに、古代のアルカディア・デメテル、デメテル・メライナ(黒いデメテル)は、鳩とイルカを抱えた馬の頭に蛇の髪をした姿であるとも伝えられています。
デメテルとペルセポネ
デメテル、ペルセポネ、ハデスの関わりは秘儀「エレウシス密儀」で語られています。
デメテルとペルセポネは豊穣を司る親子。
けれどある日冥王ハデスがペルセポネを見初めてしまいます。デメテルはペルセポネをシチリア島に隠して暮らしていましたが、ゼウスの入れ知恵でハデスはニュサの野で侍女たちと花摘みに来たペルセポネを美しい水仙の花で誘い出し、拉致、冥界に連れ帰ってしまいます。
主人を連れ去られた侍女たちはセイレーンとなって空を飛んでペルセポネを探します。
娘を失ったデメテルはペルセポネを探し、世界中をまわります。
そして一部始終を見ていた太陽神ヘリオスによってゼウスの企みでハデスが冥界にペルセポネを連れ去ったことを知ります。
デメテルはゼウスに抗議しますが「ハデスならペルセポネの夫に相応しい」と取り合いません。
デメテルは激怒し、神界を捨て、老婆の姿に身をやつし、素性を隠しエレウシースの王ケレオスの元に身を寄せることになります。
デメテルが去った世界は作物も実らず大地は荒廃します。
ゼウスは女神イーリスをおくり、デメテルを説得しようとしますが、デメテルの怒りは収まりません。
ペルセポネを帰還させるなら豊穣神としての務めに戻ると言い切ります。
ゼウスはついにペルセポネ帰還を許し、ペルセポネはデメテルのもとに戻ります。
けれど、ペルセポネは冥界でザクロの実を食べてしまっています。
冥界の食べ物を口にしたものは冥界の住人となる定めに従い、ペルセポネは一年の3分の1を冥界で過ごし、3分の2を天界で暮らすことになります。
そのため、娘が冥界に行っている間の期間、デメテルは仕事が手につかず、地上の実りに周期が生じるようになります。これが季節の起源となっています。
エレウシス秘儀
デメテルの信仰の中心はアッティカ地方のエレウシスにあり、エレウシス秘儀は紀元前15世紀から約2000年の間伝わるデメテルの祭儀
古代ギリシャを代表する密儀の一つとして、デメテルの娘コレー(ペルセポネ)と冥王ハデスの物語、死と再生の秘儀が語られています。
現代でもグラマラスな豊穣神デメテル
『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』では少女のような姿をした悪魔で、麦の穂とコルヌ・コピア(豊穣の角)を持ちます。口癖は『ハーベスト』
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「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」でのデメテルはファミリアの主神でグラマラスな女神。
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デメテル まとめ
出典:blogs.yahoo
豊穣の神はある意味最強といえるかもしれません。戦いや学問ができなくても死には至りませんが、作物が収穫できなければ生きてはいけないですものね。
なら、筆者個人の意見ですがデーメーテールはもっとゼウスやポセイドンに対して強い態度で、冒した罪を後悔させるべきだと思います。