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アネモイ、ボレアース、ノトス、エウロス、ゼピュロス、 ギリシャ神話の風の神たち。

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ギリシャ神話の風の神たち。

春の訪れを運ぶそよかぜ、初夏の清しい南風、冬の訪れを呼ぶ木枯らし。 

吹く風も季節によって表情が違います。 

ギリシャ神話にはそんな、それぞれの個性を持つ風の神々が存在します。 

それがアネモイ。 

北の風を司るボレアース、南風のノトス、東風エウロス、そして西風は春の女神フローラの夫・ゼピュロス 。

 

そんな、それぞれに個性豊かなアネモイ、風の神々のご紹介です。 

 


 

アネモイ、方角や々な自然季節に吹くたち 

ジャン=バティスト・ウードリ作『北風と太陽』

アネモイとは 

アネモイ (Anemoi)はギリシャ神話の風の神 

風の神・アイオロスに従属する、様々な季節・天候に吹く東西南北の方角の擬人化 

季節ごとに吹く突風として語られたり、それぞれの個性を持つ有翼の神として崇められています。 

アイオロス→ 

 

構成 

上位アネモイ 

星空の神・アストライオスと暁の女神・エオスの子の4柱 

  • 東風・エウロス 暖気と雨を運ぶ、豊饒を恵む神
  • 西風・ゼピュロス 春と生命をもたらす 春と初夏のそよ風
  • 南風・ノトス 日本では南風は初夏をイメージしますが、ギリシャ神話の南風晩夏と秋の嵐をもたらす神
  • 北風・ボレアース、凍える冬を運ぶ 風

イソップの童話『北風と太陽』の物語は太陽神・ヘリオスと北風ボレアースの物語を元に作られています。 

後にこの4風神はプトレマイオスの世界図や古地図の方位を示す装飾図となり、12方位の風神に拡張されます。 

 

下位のアネモイ 

ュポンによって生み出された精霊アネモイ・テュエライ( 嵐の風の意味 

  • 北東 カイキアス 
  • 南東 アペリオテス 
  • 北西 スキロン 
  • 南西 コルス 

 

その他のアネモイ 
  • 北北西 トラスキアス 
  • 南南東 ユーロノトゥス 
  • 南南西 リボノトゥス 

などが語られています。 

 

それぞれのアネモイ

ポンペイの古代フレスコ画

上位、主なアネモイ

系譜を辿れば、この四柱のアネモイは原初の神ガイアと天空神ウラノスの子孫 

両親は 星空の神・アストライオスと暁の女神エオス 

妹は 正義の女神、処女神・アストライアがいます。 

アストライアは黄金時代(ギリシャ神話の中のクロノスの時代、人々が高潔で世界に悪が存在しない理想主義的な時代)に、地上で人間と共に暮らしていた神。 

けれど、人類が堕落していくにつれ人類を見捨て、乙女座となって星々の間に生きることを決意しています 

 

東風エウロス(ユーラス) 

ジェームズ・スチュアートとニコラス・レヴェット著『アテネの古代遺跡』

エウロス(Euros)は暖気と雨を運ぶ東風の神 

ローマ神話ではウルトゥルヌス。 

エウロスはまた大海を航行する船を海上で翻弄する、嵐に吹き荒れる風 

『ディオニュシアカ』(古代ギリシャの叙事詩)では「熱風」と表現されています。 

エウロスは太陽神・ヘリオスと密接に関係し、東から昇る太陽・ヘリオスの宮殿パエトンの近くに住んでいると伝えられています。 

 

西風ゼピュロス 

ジェームズ・スチュアートとニコラス・レヴェット著『アテネの古代遺跡』

ゼピュロス(Zephyr)は春の訪れを告げる西風の神 

豊穣を司り、穏やかな性格の神として伝えられています。 

住まいはトラキアの洞窟。 

 

ゼフィロスは異なるいくつかの物語でその恋愛が語られています。 

虹の女神・イリスの夫。 

ニンフのクロリスはゼフィロスの愛を得て春の女神・フローラとなり、カルポス(果物)をもうけます 

また、アポロンとヒヤキントスの愛を競った神としても知られています。 

ゼフィロス→

 

南風ノトス

 

ジェームズ・スチュアートとニコラス・レヴェット著『アテネの古代遺跡』

ノトス(Nótos)は南風の 

夏至を過ぎ、シリウス星が昇る時晩夏に吹く熱風 

豪雨や時には雹を降らし、疫病をもたらす。嵐を呼び、農作物に被害を及ぼす風として恐れられていました。 

現代でも、地中海から吹き寄せる不快な風として伝えられています。 

 

北風ボレアース

ジェームズ・スチュアートとニコラス・レヴェット著『アテネの古代遺跡』

ボレアース (Boreas)は冬を運ぶ冷たい北風の神 

厳冬を運ぶ風であるボレアースはアネモイの中で最も激しい性格の神です。 

アイスキュロスの失われた戯曲「オーレイテュイア」でアテネの王女オリテュイアを誘拐した物語で知られる神。 

その性格はイソップの童話『北風と太陽」のモデルとしても語られています 

 

ボレアース→

 

下位のアネモイ 

ヘシオドス(紀元前700年頃 古代ギリシャの叙事詩人)ホメロス紀元前800年頃 古代ギリシャの吟遊詩人)、これら下位のアネモイたちはテュポンによって生み出された邪悪で粗暴な精霊アネモイ・テュエライ(嵐の風の意味)

雄のハルピュイア「テュエライ」としています。 

ゼウスとの戦いに敗れたデュポンは破壊的な嵐の風の父となります。

 

ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』の中で、これらのアネモイは風神・アイオロスがオデュッセウスに与えた馬として登場しています。 

 

北東の風・カイキア 

アテネのアンドロニカス・キュレステスの時計塔

カイキアス(Kaikias)は北東の風の神 

カイキアスの名は『邪悪 κακία 』を意味します。 

(ひょう)をちりばめた盾を構えた髭の男 

カイキアス美徳の精霊アレーテの姉妹の悪徳の精霊の名前でもあります 

 

南東の風・アペリオテス 

アテネのアンドロニカス・キュレステスの時計塔

アペリオテス(Apeliotes) は南東の風の神 

農民に穏やかな恵みの雨をもたらす神とされます。 

巻き毛で温厚な表情、花々や穀物を散りばめた衣を纏い、雨靴で果物籠を抱えた男神。 

 

しばしば東風の神エウロスと習合されて語られています。 

 

北西の風・スキロン 

アテネのアンドロニカス・キュレステスの時計塔

スキロン(Skiron) は北西の風の神 

アテネではスキロンの岩山から吹く風をいい、スキロンの名はアッティカ(アテネ周辺)暦で、春の終わりの3か月(スキロフォリオン )を指します。 

冬の始まりを表す大釜を傾ける髭の男神。 

ローマ神話ではカウルあるいはコールス 

カウルスは最古のローマの風の神々、ディ・インディゲテス「土着の神々」の一柱です。 

 

南西の風・リプス 

アテネのアンドロニカス・キュレステスの時計塔

リプス(Lips) は南西の風の神 

その姿の多くは船の船尾を支えた姿で描かれています。 

ローマ神話ではアフリクス・「アフリカの風」 

この名はイタリアの南にアフリカが位置することから、アフリカ大陸の名の語源となった北アフリカの部族アフリに由来します。 

 


 

アネモイ、現代では乙女・女神系? 

2026年1月30日、ゲームブランド「Key」の新作恋愛アドベンチャーゲームアネモイ(anemoi)発売予定されています 

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アネモイ まとめ 

サンドロ・ボッティチェッリ作「プリマヴェーラのゼピュロスとクロリス

メソポタミアのエンリルの時代から、世界の神話には多くの風の神が伝えられています。 

日本でもイザナギイザナミの子シナツヒコが風神として崇められています。 

 

けれど、こんなにもそれぞれの季節の特徴を持った神々がいるのはギリシャ神話だけ。 

幾多の星々にもそれぞれの神話が語られている。 

ギリシャ神話の魅力のひとつだと思います。 

 


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