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鬼、妖怪か神か? その正体とは

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出典:deviantart

鬼、日本古来から伝わる怪物。

日本人にとって鬼は非常に馴染み深い怪物ですが、果たして彼らは何者なのでしょう? 悪さをする妖怪かと思えば、その力の強さを神の一人として崇(あが)められることもあります。

今回は、そんな鬼の正体に迫っていきます。

 

 

鬼の正体は

曾我蕭白作《雪山童子図》

民話や郷土信仰に登場する日本の妖怪をいいます。

あまり知られていないかもしれませんが、変身する能力を持ち、若い男性や美女の姿で現れ、人々に悪さをすることも度々あると伝えられています。

悪鬼は人に危害を加え、さらに人を食べてしまう存在であるとも考えられています。

鬼が厄災をもたらすとも考えられ、「悪い物」「恐ろしい物」の象徴として扱われることも多くあります。

けれどまったく逆に、鬼が悪霊を追い払う守護神として敬われることも少なからずあります。

節分の鬼は厄として払われ、その家の繁栄をもたらすことにひと役買う存在となっています

 

鬼の定義

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鬼は元々は定まった姿は持っておらず、おぬ(隠)が変化して鬼となりました。元来は姿の見えないもの、この世ならざるものを意味します。

鬼」(キ) の漢字は「死者の魂」という意味を持ちます

死霊を意味する中国の鬼が6世紀に日本に入り、日本古来の「オニ」と重なって鬼になったと解釈されます。

ここでいう「オニ」とは祖霊であり地霊

ひとつ目」の鬼は、隻眼という神の印を帯びた神の眷属、あるいは山神(五来重)ともされる説など、死霊というより神の姿を表したものと解釈される説。

けれど『日本書紀』では「邪しき神」を「邪しき鬼」、得体の知れぬ「カミ」や「モノ」が鬼として解釈されています。

 

容姿

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鬼は丑寅(北東、陰陽道(おんようどう)での鬼門)の方角、丑寅(午前1時から5時まで)の刻に出現すると考えられています。

一般的に定着している鬼の容姿は、頭に1または2本の牛のような角が生え、頭髪は細かくちぢれ、太い眉は釣り上がり、口に虎のような牙、指にも虎を思わせる鋭い爪があり、虎の皮のふんどしや腰布を身にまとう出で立

表面に突起のある太く思い金棒を持った大男

肌の色は中国の五行説と五蓋説に組み合わされ、青・赤・黄・緑・黒の5色、「青鬼(あおおに)」「赤鬼(あかおに)」「緑鬼(みどりおに)」「黄鬼(きおに)」「黒鬼(くろおに)」の存在を語っています

 



様々な鬼

葛飾北斎 作

中国には

「鬼(グウェン)」というものがあり、仏教伝来とともに日本に輸入されます。この、グウェンも本来は死者、幽霊の様な存在でした。

日本神話の中では、古事記において、イザナギノミコトが黄泉の国にいるイザナミノミコトから逃れる際に、黄泉醜女(よもつしこめ)とともにイザナギを追ってきた化け物も鬼とも言われています。

伝統的な鬼の姿。角を生やし、虎の腰巻きをしている姿は、風水的に「鬼門」の位置が東北、「艮(うしとら)」に位置しているので、牛の角を生やして、虎の毛皮を身に纏っているとされています

中には5本の角を生やし、目が15あったという最強の鬼、「酒呑童子(しゅてんどうじ)」がいます。

 

仏教の世界にも

鬼は居ます。邪鬼、夜叉、羅刹(らせつ)などです。中でも、夜叉、羅刹は護法善神(ごほうぜんしん)として仏教を守護する神の一人です。さらに元を辿るとヒンドゥー教の神であるヤクシャ、ラークシャサが仏教に取り入れれたという経歴があります。

生前貪欲だった人は餓鬼道という鬼の道に落ちるとされてます。また地獄の王、閻魔の元で働く牛頭馬頭(ごずめず)という鬼も居ますね(閻魔も遡れば「リグヴェーダ」に記される「ヤマ」という人だったりする)。

 

この様に、「鬼」は神話から民話にまで幅広く登場して、強力な力を持つものの総称として語られていきます。

 

日本の主な鬼

天狗(てんぐ)

一魁芳年作

神としても扱われる伝説上の生物、日本を代表する妖怪

天狗詳しくは→

 

酒呑童子(しゅてんどうじ)

歌川芳艶 作

山(京都の大江山だと言われている)から京へと降りてきては、悪さをする、人に危害を加える妖怪のような存在。

酒好きの鬼だったのでその名を付けられ、源頼光らが振る舞った毒入りの酒を飲んで弱らされた後に成敗されています。

酒呑童子詳しくは→

 

大嶽丸

歌川国芳作

鬼神魔王とまで称された日本の三大妖怪の一人

大嶽丸詳しくは→

 

餓鬼(がき)

『紙本著色餓鬼草紙』「食糞餓鬼図」

常に飢えと渇きに苦しみ、食べ物を手に取ると炎に変わってしまう六道の一つ餓鬼道にいつく鬼

 

天邪鬼(あまのじゃく)

十返舎一九作

煩悩の象徴として、四天王に踏みつけられている小鬼の姿をした妖怪。

天邪鬼詳しくは→

 

邪鬼(じゃき)

葛飾北斎作

人に悪影響を及ぼす鬼。悪鬼(あっき)。

 

山姥

佐脇嵩之作

山奥に住む鬼婆で、旅人を食らうとされる前世の行いや怨念で鬼と化した女性。

 

羅刹

通力(つうりき)によって姿を変え、人を惑わし食らう。

 

夜叉(やしゃ)

インドの鬼神、人の肉を食べる悪鬼。

夜叉詳しくは→

 

鬼、今では堂々の正義の味方

有名な昔話の登場人物で、「桃太郎」では退治される悪役、「泣いた赤鬼」ではユーモラスで人間味あふれるキャラクターとしても登場しています。

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アニメ、舞台、映画化と大人気の「鬼滅の刃」。大正時代を舞台に家族を殺され妹の禰豆子を鬼に変えられ炭治郎と仲間たちは鬼退治を生業とする組織「鬼殺隊」の隊士となって壮絶な鬼との戦いに挑みます。

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魔化魍と呼ばれる化け物を、鬼の力を宿したヒーローが音の力で鎮める「仮面ライダー響鬼」など、人ならざる力を宿したヒーローとしても描かれています。

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鬼武者」シリーズは、鬼の主人公が幻魔を斬る活劇アクションゲーム。この作品でも、鬼はヒーローが使う力であり、扱いはリスクのある善玉といったところ。

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人気アニメ「鬼灯の冷徹」。まさにオニの鬼灯と地獄に落ちた有名キャラたちの日常が楽しい

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鬼 まとめ

日本神話に現れ、妖怪として世にはびこり、仏教という宗教の中にも存在する鬼。

「鬼とは実在した人々である」という考え方があります。人々は街に住み、それによって人の立ち寄らない山や僻地はマイノリティーな風習や信仰が支配する一つの「異界」とされました。

異界に住む、自分たちとは違う価値観を持つ人々、こういったアウトサイダーこそ鬼だったのかもしれません。

鬼の正体は、「自分と違う他者を恐れる」という人間の心理が生み出した怪物なのかもしれません。

 



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