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「ゴッド・オブ・ウォー (GOW)」でもおなじみのギリシャ神話の軍神アレス。
ゲームでは、主人公のクレイトスに強力な力を与えた神として重要なキャラクターです。
軍神なんで、強靭で、多くの冒険譚があると思いますが、実はアレスは戦いで人間に負けたり、裁判にかけられたり、おまけに冒険譚はほとんどないというありさま。
今回は、そんなアレスを探ります。
アレスってホントにザンネンなだけの軍神?
目次
軍神アレスはギャップが多い?
アレス( Ārēs)、またはアレース、アーレースは、戦いを司るギリシャ神話十二神の一柱。
出産の女神エイレイテュイアと青春の女神ヘベという妹がいます。
その名は「破滅」を意味するアレー(ἀρή)に由来すると考えられています。
聖獣はオオカミ・イノシシで聖鳥は啄木鳥・雄鶏。
配偶神は定かではなく、愛人アプロディーテーとの間に敗走を司る神ポボスと恐怖を司るデイモス、調和の神ハルモニアー、返愛の神アンテロースをもうけます。
母違いの姉である知恵の神・アテナは戦闘における戦略や誇りを司りますが、アレスは戦いでの破壊や狂乱を司ります。
その性格も交戦的、粗野で残忍、不誠実。
アテナとは不仲であることも有名です。
その性格からかギリシャの神々からも嫌われ者のアレスですが、男神の中でも1・2を争う美しさであったといわれます。
その美貌は愛と美をつかさどる神・アフロディテに惚れられるほど。
すでに鍛治の神であるヘパイストスと結婚していたアフロディテでしたが、アレスの愛人となり、ポボス・デイモス・ハルモニアを産んでいます。
女性だけの戦闘民族・アマゾネスはアレスの娘たち、アレスは全てのアマゾネスの祖であるともいわれます。
アレスはその名に比較して、語られる物語の数が少ない上に殆どが不名誉なものばかり。
古代ギリシア人からは忌み嫌われる存在でした。
これはアレスがギリシャに征服、統合されたトラキアの神であるところに所以しています。
ギリシャ人にとって、トラキア人の勇猛さが粗野と取られ、トラキア人は蛮族という偏見を受けていたことが原因しています。
軍神としてのアレス
戦場においてのアレスは巨大な槍を武器とし、ある時は4頭の神馬に乗り、またある時は徒歩で戦場を渡り歩きました。
神の中でも身長が高く、200メートルを超える長身ですが、戦場には戦いを楽しむためか、人間ほどの大きさで現れていたそうです。
その戦い方も、敵陣に突進してなぎ倒すという豪快なもの。
ホメロスの叙事詩『イリアス』では不和と争いの女神エリスはアレスの妹とされ、二柱は共に戦地におもむき、争いをより悲惨なものにし、楽しんでいたとされます。
アレスとアフロディテー
美の女神アプロディーテがアレスの愛人であったことは有名ですが、そのアプロディーテが美少年アドニスに心を奪われた時にはアレスは聖獣であるイノシシに変身して美少年に突撃し、アドニスを殺害。
けれど、不倫関係であることを知った夫ヘーパイストスによって、二人のむつみあった痴態を晒し者にされてしまいます。
この事件をきっかけにアプロディーテとヘーパイストスは離婚。アレスは郷里のトラキアで謹慎処分を受けています。
軍神アレスの敗戦
残忍な軍神として恐れられたアレスですが、意外にも人間に負けた逸話があります。
■トロイア戦争中、アレスはトロイア側として戦い、同じくトロイアに味方したアフロディテがギリシャの英雄・ディオメデスに負けてしまいます。
ディオメデスはアテネの加護を受けてアプロディーテの子・英雄アイネイアスを圧倒。助けに入ったアプロディーテに傷を与え、さらに加勢するアレスさえ倒されてしまいます。
■アレスの子キクノスがヘラクレスと戦った際、助けに入ったアレスはアテネに妨げられヘラクレスに惨敗。
■またある時は、ポセイドンの子で神々に戦いを挑んだ双子の巨人アローアダイ(オートスとエピアルテス)に捕まり、13ヵ月間青銅の甕の中に閉じ込められ、ヘルメスによって救い出されています。
アレスの勇姿
ですが、意外と子ども思いな逸話も伝えられています。
■ポセイドンの息子ハリティオスがアレスの娘アルキッペーを暴行。怒ったアレスはハリティオスを撲殺。これに怒ったポセイドンは、アレスを裁判にかけることを主張します。
オリンポスの神々はアテナイにある丘に集まり、アレスを被告とした世界初の裁判を行います。結果、アレスは無罪放免。それ以降、裁判はこの地で行われることになり、この丘は、最初の裁判にちなんで「アレイオス・パゴス (アレスの丘)」と呼ばれています。
■女人族アマゾンの女王ペンテシレイアがアキレウスに討たれた際には、アレスがアキレウスに戦いを挑み、ゼウスによって止められています。
■シーシュポスが死神タナトスを騙して監禁し、地上の人間が死ななくなってしまった時にはアレスはタナトスを救い出しています。
トラキアの神であったためにギリシャの民からは嫌われ者ではありましたが
『ホメーロス風讃歌』「アレース讃歌(第8番)」でのアレスは勇ましい軍神として語られています。
掟の女神テミスの支援者であり、勝利の女神ニーケーの父。
黄金の兜と青銅の鎧と楯をまとい、槍を携え、火を吐く馬の戦車を操り、天空を巡る。天界と地上を護り、人々に勝利と平和をもたらす神と謳われています。
アレスとマルス
ギリシャ神話とローマ神話の神は同一視されている場合が多く、アレスも同様にローマ神話のマルスと同一のものとして扱われています。
けれど、マルスはローマでは勇敢な理想の戦士として、ローマ神話の主神・最高神ユピテルに並んで崇拝されるほどの存在で、ローマの建国者であるロムルスの父ともされています。
軍神であることから男性の武勇を表す意味でもその名前が使われており、男性を表す記号「♂」は、元々マルスを意味するもの。
アレス 守護者としての一面も
出典:オリンパスの風
ギリシャ神話をテーマにしたアドベンチャーゲーム「ゴット・オブ・ウォー」では、主人公・クレイトスに神をも傷つけることができる武器を与えた、物語のキーパーソンとして出演しています。
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「イナズマイレブン」の荒須乱(アレスラン)はイレブンの一人、ポジションはDF、背番号4番、通称アレス。
『イナズマイレブン アレスの天秤』ではアレスシステムとも呼ばれる「月光エレクトロニクス」が開発した新世代教育プログラムとして登場しています。
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「ダンまち」のアレスはオラリオの西部に存在する軍事王政国家『ラキア王国』で軍神として崇められている【アレス・ファミリア】の主神。性格は好戦的で自分勝手、実力はないけれど自信過剰のオレ様系イケメン男神。
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アレス まとめ
出典:deviantart
軍神と聞くと、「戦いでは無敵の筋骨隆々のいかついおじさん」をイメージしがちですが、アレスは神々の中で1、2を争う美形だったり、人間にあっさり負けたり、悔しくて親に告げ口したり、意外な側面ばかりです。
けど、家族のために戦う姿は納得。ギリシャに負けて迫害された民族の神であることが原因しているのだとしたら可愛そう、です。