多数派に少数派が取り込まれるという現象は、歴史を振り返ってみると、さまざまなところで見かけますよね。宗教も例外ではなく、土着の神が外来の世界中で信仰されている神と混同されたり、その一部になってしまうなんてことはざらです。
ですが、キリスト教という超メジャー宗教の伝来があったにも関らず、信仰が生き残り、逆にキリスト教に設定が採り上げられた女神がケルト神話には存在するんです。
今回は、そんな豊穣の女神・ブリギッドをご紹介。
女神か聖女か、はたして彼女の姿は一体何なんでしょう?
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女神から聖女まで、さまざまな側面を持つブリギッド
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ブリギッドは、ケルト神話に登場する豊穣の女神です。それ以外にも、光・火・春・詩歌・工芸・戦・出産など、さまざまなものを司どっています。
ブリギッドは、ダーナ神族の主神・ダグザとブレグ (偽り) ・メング (狡猾) ・メイベル (醜さ) のいずれかの女神の子どもです。
「高貴なもの」「崇拝されるもの」という意味の名前を持ち、多くのアイルランドの人々から信仰を受けました。時には、同じ名前を持つ3姉妹の女神とされることもありました。
光・火を司る女神として魔法の火鉢を持つ姿で描かれることが一般的です。
ブリギッドの光や火の女神としての一面は、彼女が朝日と共に誕生したとき、火柱が天に吹き上がり、家の中を明るく照らしたという神話から成っています。
また、出産をつかさどっていたことから、多くの妊婦から崇拝されています。そのため、2月1日に開催される春の祭典・インヴォルグ祭と結び付けられ、そこで春の女神という側面も手に入れました。
ブリギッドの夫は、ダーナ神族と巨人族・フィモール族の混血児であるブレスです。
ブレスは、戦いで隻腕となり、王権を失ったダーナ神族のヌアザに代わって王となりました。
ダーナ神族の主神であるダグザと祖母である地母神・ダヌの血をひくブリギッドは、ブレスの王権を強化します。彼女は、ブレスとの間に息子・ルアダンをもうけましたが、ブレスがダーナ神族に反旗を翻したモイ・トゥラ第2の戦いで鍛冶の神・ゴブニュによって討ち取られてしまいます。
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ローマ帝国がキリスト教を国教とした以降、多くの国々にキリスト教が普及しました。アイルランドも例外ではなく、432年にブリテン島から来た聖パトリックによって急速にキリスト教化されることになります。
多くの神々は、邪神扱いこそされなかったものの、妖精や精霊へと零落して行きました。
しかし、ブリギッドは信仰が広く深く根付いていたため、キリスト教の僧侶たちは彼女を否定するのではなく、キリスト教に融合しようと考えます。
そのため、キリスト教の聖女・キルデアのブリギッドを女神のブリギッドと同一視するようになりました。聖ブリギッドの祝日が2月1日であることや火と関連が強い逸話が残っているのは、女神の影響が強いからだといわれています。
多義的な女神だからこそできることも?
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ゲーム「パズル&ドラゴンズ」では、ケルトの女神の1柱として登場。火属性で、ブリギッドの火の女神としての一面がうかがえます。
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ゲーム「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」では、弓兵として登場。亡き父の意志を継いで海賊を率いていた女傑です。
まとめ
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ケルト神話の女神が、キリスト教の聖女に転化する。女神が聖女になるというのは神が人間になる=降格のような気もしますが、いち地域のケルトの神が、全国版のキリスト教で崇められるというのはやはりこれは出世?
あやかりたい女神様です。