出典:deviantart
ゲルマン神話の終末・ラグナロクにおいて、世界を炎に包み、焼き尽くす役目を担う炎の巨人・スルト。
世界の始まりから存在し、世界に終末をもたらします。
巨人族の王にして、ムスペルヘイムの守護神、豊穣の神フレイを倒した怪物、スルトのご紹介です。
スルト、世界を終わらせる炎の巨人
スルト(Surtr)は、ゲルマン神話に登場する炎の巨人です。
巨人族・ムスペル族の王であり、ムスペルヘイムの入り口を守る守護者。
原初の巨人・ユミルが誕生する以前、世界にまだムスペルヘイムとニヴルヘイムしかなかった時代から存在し、炎の世界・ムスペルへイムを支配しています。
「スルト」という名前は「黒」を意味し、全身に黒々とした炎をまとった姿で描かれました。
炎の剣を持つ巨人であり、ラグナログにおいてはフレイを破り、最後まで生き残り、世界を炎で包み、すべてを焼き尽くすと伝えられています。
起源
スルトは北欧神話の成立以前から存在した神と伝えられています。
アイスランドは火山と厳しい氷雪の島。
炎をまとう黒ずんだ巨人という外見はアイスランドの火山噴火や溶岩流が神格化されたものとされます。
スルトのラグナログの全てが燃え尽きる神々の黄昏は、火山の噴火によって滅びる文明を象徴しているとされます。
スルトとレヴァーティン
スルトは、「枝の破滅」の異名がある炎の剣を持っており、この剣によって世界に終焉がもたらされます。
ラグナロクが起こるまでは、炎の剣を掲げ、ムスペルヘイムの国境を警備することが務めです。
一説では炎の剣は、レヴァーティンと呼ばれる魔剣と同一視されています。
レヴァーティンは、いたずらの神・ロキが氷の国・ニヴルヘイムの門の前でルーン文字を刻んで鍛え上げたとされる剣で、普段はスルトの妻・シンモラが大きな箱に9つの鍵をかけて厳重に保管しています。
一説によると、レヴァーティンは豊穣の神・フレイが過去に手放した剣であり、どのような経緯かは不明なものの、後にスルトの手に渡ったといわれています。
スルトとラグナロク
スルトが活躍するのは、終末の日・ラグナロクです。
彼は、ムスペル族を率いて神々を攻撃し、世界を破滅させる役割を担っています。
『スノリのエッダ』の第1部『ギュルヴィたぶらかし』によると、ラグナロクが訪れるとスルトは炎に包まれ、天を裂き、馬を駆って現れるムスペル族の先頭に立ち、南から神々の国・アスガルドに侵攻しました。
東からはロキを先頭に、ナグルファルの船に乗ったヨドゥンの軍。
巨人たちは虹の橋・ビフレストを粉々に砕き、決戦の地・ヴィーグリーズで神々の軍勢と相まみえることになります。
激しい戦闘の中、スルトはフレイと戦うことになります。
フレイは、かつて正しい持ち主ならば勝手に動いて敵を倒してくれる「勝利の剣」を持っていましたが、一目ぼれした女巨人・ゲルズを手に入れてくれた褒美に召使いのスキールニルに与えてしまいました。
そのため、代わりに鹿の角で応戦しましたが、スルトに角を奪われ、刺し殺されてしまいます。
そして多くの神々と仲間が倒れていく中、最後まで生き残っては炎の剣を振るってヴィーグリーズに炎を放ちます。
神々も巨人もあらゆるものが炎に包まれ、大地は海の底に沈んでいきました。
こうして、ラグナロクは終わり、生き残った者が新たな世界を築くのです。
スルト、ラグナロクと炎は切っても切れない関係
映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」では、物語の鍵を握る役割を持って登場。
50万年前に主人公・ソーの父であるオーディンに敗北し、炎の力を奪われ、アスガルドに復讐するためにラグナロクの時を待っています。ちなみに、この作品の原題は「マイティ・ソー ラグナロク」であり、ゲルマン神話のその時を再現しています
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ゲーム「Fate/GrandOrder」の第2部第2章「無間氷焔世紀ゲッテルデメルング」では、セイバーのサーヴァントとして登場。自身のマスターに固執し、ある英霊の身体をのっとります。
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スマホゲーム『東京放課後サモナーズ」のスルトは大手町ギルド・ジェノサイダーズに所属するユグドラシル出身の巨人転光生。
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ゲルマン神話がモチーフとなっている『指輪物語』『ロード・オブ・ザ・リング』の悪鬼・バルログはスルトがモデルになっています。
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スルト まとめ
出典:deviantart
ラグナロクの時に姿を表し、世界を滅ぼす炎の巨人・スルト。
他では、彼にまつわるエピソードがなく、その正体は謎に包まれています。そのため、スルトは「世界に終焉をもたらす」というイメージしかなく、人々に恐ろしさを与えます。
世界に終わりをもたらす存在は、そういったものの方が良いのかもしれません