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グリフォン(グリフィン)、財宝を守り、神々の馬車を牽く、鷲の翼を持つ獅子

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出典:deviantart

最強の獣である獅子の身体と最強の鳥類である鷲の頭部と翼を合わせ持つグリフォン。

その王者の風格からゲームの世界でも空を支配する最強キャラとしてお馴染みです。

 

ギリシャ神話に登場する怪物のようにイメージしますが、以外にもその発祥は古代インドという説もあります。

 

そして、一説にはかのアレキサンダー大王がヨーロッパに伝えたともいわれる幻獣。

グリフォンに注目です。

 

 

グリフォン(グリフィン)、太古から世界で語られる天空の王

グリフォン—ヨンストン『鳥獣虫魚図譜』(1660年)

グリフォンとは

グリフォンは紀元前の太古からアジア・ヨーロッパの広域で存在したとされる、鷲の翼と頭部、獅子の身体を持つ伝説上の生物

日本語では「鷲獅子(じゅじし)」と訳されます。

 

語源は「曲がったクチバシ」を意味する古代ギリシア語のグリュプス

グリフォンはフランス語(griffon, gryphon)、

英語ではグリフィン(griffin)、

ドイツ語はグライフ(Greif)

ラテン語・ギリシア語はグリュプス( gryps・ γρύψ)です

 

発祥

西暦 50~270 年

グリフォンは古くは紀元前から広くヨーロッパやアジア各地でその存在が伝えられる生物。

そのルーツはインドやペルシャであるといわれ、アレキサンダー大王の遠征によってその存在がヨーロッパに伝わったともいわれます

2頭のグリフォンのひく戦車に乗ったアレキサンダー大王 1932年 作者不明

(紀元前5世紀・古代ギリシアの歴史家)クニドスのクテシアスもグリフォンはインドに棲息するとしています。

イラン神話でも、鷲獅子を意味する Shirdal という名で語られ紀元前3500年メソポタミア平原のスーサ遺跡からグリフォンのような合成獣の存在が確認されているとか

龍の亜種とされたり恐竜との関係も取り上げられ、それが古代ギリシャに伝わり一般的に知られるグリフォンとして語り継がれてゆきます。

 

アリステアース(紀元前7世紀)黄金を集めるグリュプスと言う禽獣と、その黄金を略奪する単眼族のアリマスポイ人との抗争を語っています。

(古代ローマの歴史家)ヘロドトスも著書「歴史」の中で「グリフォンは金鉱の番人で、隻眼の民族アリマスポイ人から金を守っていた」と記しています。

(古代ローマの博物学者)ガイウス・プリニウス・セクンドゥスは著書「博物誌」の中で「ペガサスなどと同じで伝説上の存在」と記述しています。

 

旧約聖書、神話の中のグリフォン

HJフォード作 「マンデヴィルの伝説」1899年

神話や聖書にもグリフォンは登場しています。

 

キリスト教においては

セビリアのイシドールス((紀元 560年-  636年)スペイン・ローマの学者、神学者、セビリア大司教)グリフェスは「ヒュペルボリア山脈に生息する翼のある四足動物

鷲のような翼と頭とライオンの体を持つ、馬の凶暴な敵。馬や人を引き裂き食する」と伝えています。

 

初期、権威の証とされるためか七つの大罪」では「傲慢」を象徴する悪魔として扱われていますが、後に神と人の合体のシンボル、イエスを象徴する聖獣となります。

また、神の乗る2輪の車を牽く役割も担っています

 

キリスト教においてのグリフォンは、旧約聖書では「智天使(ケルビム)」

そのためグリフォンはケルビムの役割としてのエデンの園」を守る守護獣であるという説もあります。

 

神話の中では

ギリシア神話では神々の馬車を引く、金鉱の守護神

バビロニア神話では創世神ティアマトの幻獣

エジプト神話ではスフィンクスの一種(ヒエラコスフィンクス)。

 

ちなみにエルサレムのグリフォンには病気を治す治癒力があったとされ、アレキサンダーの遠征で大王の馬車を引いたのもグリフォンであったと伝えられています。

 

グリフォンの容姿

マルティン・ショーンガウアー作 15 世紀

グリフォンの容姿については様々な説が伝えられています。

 

一般的には

グリフォンは、金色をした鷲の上半身と、白いライオンの下半身を合せ持つ怪鳥

黒海とカスピ海に挟まれたコーカサスの山中に住み、鋭い鈎爪で牛や馬をまとめて数頭掴んで飛べる巨体と力を持つと伝えられています。

 

大きさ

14 世紀、(イギリスの旅行家)ジョン・マンデヴィルは旅行記の中で「グリフィン1羽の体は、ライオン 8 頭、鷲 100 頭よりも大きくて強い」としています

 

容姿

4本の足とくちばしを持つグリフィンは、紀元前3000年以前の古代エジプトの遺跡には描かれています

けれど、古い文献でのグリフォンはクチバシのある犬とも、翼がなかったとも形容されています。

(紀元前5世紀の歴史家)クテシアスが「クチバシを持った四足の鳥類」と明記。

(紀元1世紀の古代ローマの博物学者)大プリニウスが「グリフォンは有翼で長耳」と明確にその容姿を記しています。

けれど同時期(紀元1世紀。ギリシアの哲学者・宗教指導者)ティアナのアポロニウスは、「グリフィンは真の翼は持たず、水かきのある足しかなく、短距離飛行しかできない」と記しています。

 

その後、

グリフォン—ヨンストン『鳥獣虫魚図譜』(1660年)

(ポーランドの博物学者)ヨハネス・ヨンストンの『鳥獣虫魚図譜』(1660年)にグリフォンが記されます。

その中にグリフォンは"鷲のような頭部、翼、くちばし、前足は猛禽類のような4本の足を持つ、ライオンのような身体"

また、"掘り出した黄金でつくった巣に2個の卵を産む。その卵は鷲のものより硬く、厚い"、と説明されています。

 

 

グリフォンの習性

グリフォンと馬 

セビリアのイシドールス(紀元7世紀)は、グリフィンは馬の大敵であると記しています。

グリフォンは「馬」に対して異常なまでの敵意を示します。

獰猛になり、執拗に追いかけ回し,息絶えるまで引き裂こうとします。

そうして、捕獲した馬を食べると伝えられています

ちなみに引き裂くのはオスのみ、メスに対しては子を産ませようと襲いかかります

その結果、グリフォンと馬を掛け合わせたヒポグリフ(Hippogriff)という上半身がワシ、下半身が馬という新種が誕生することがあります。

このヒポグリフは、馬嫌いのグリフォンと馬という組み合わせであることから、「本来あり得ない組み合わせ」として「不可能の象徴」になりました

 

ヒッポグリフ 

ルイ・エドゥアール・リウール作

ヒッポグリフhippogriffは、グリフォンと雌馬の間に生まれた伝説の生物

身体の前半身が鷲、後半身が馬

非常に誇り高いとされ、ありえないもの(天敵と被食者のハーフ)の代名詞ともなっています。

(16世紀の詩人)ルドヴィーコ・アリオストは叙事詩『狂えるオルランド』の中で「世界中や月まで飛ぶことができる」など、ヒッポグリフを詳細に描写しています。

,

ちなみに

『ハリー・ポッターシリーズ』では

魔法使いの乗騎として登場

その中で巨人の森の番人・ハグリッドが「ヒッポグリフに近づく時は視線を外さず、礼儀正しく、悪意のないことを示す必要がある」と教えています

 

グリフォンの役割

1450 年頃のタペストリー

グリフォンには2つの役割があると伝えられています

 

神々の馬車を引く

そのひとつは「神々の馬車を引く」役目

ギリシャ神話においては、ゼウスアポロンディオニュソスネメシスの馬車を引くと伝えられています。

太陽神であるアポロンは毎年グリフィンに乗って神託のデルフォイを離れヒュペルボリアに向かったため、その期間が太陽が遠のく冬になると信じられていました。

また、(古代ローマの詩人)クラウディアンはポロンはグリフィンに乗って戦場に赴いたと伝えています。

ディオニュソスもまたグリフィンに乗って戦場に就きますが、このグリフィンはアポロンから借りたものとか。

復讐の女神ネメシスもグリフィンの牽く車に騎乗していますがそのグリフォンは身体も翼も漆黒であるとされます。

また、海神オケアノスの乗り物であるともされています。

 

キリスト教においてのグリフォンは、初期、権威=悪魔の象徴とされていますが、後に神の二輪馬車を引く聖獣となります。

 

財宝を守る 

グリフィンは「財宝を守る」役割も担います。

ディオニュソスのクラテール(酒甕)を守る聖獣

また、黄金を守る獣としても知られています。

(古代ギリシャの歴史家)ヘロドトスは「グリフォンはギリシアの北方にあるとされたリーパイオス山脈(エチオピア、インド砂漠という説もあります)に住み、「黄金が流れる」プルートンの川から黄金を集め、巣に敷き詰めていた」と伝えています。

そして、自身が守る黄金を奪おうとする人間は容赦無く引き裂く

アリマスポイという隻眼の部族がそれを奪おうとするという抗争を伝えています。

 

中世ヨーロッパの伝承に、グリフォンは黄金でできた巣に住み、卵の代わりにメノウを産むというものがあります。

(13世紀、ドイツのキリスト教神学者)アルベルトゥス・マグヌスは著書『動物について』の中で、「グリフォンは鷲石あるいはメノウを置き、卵の温度の調整をしている」と伝えています

 

紋章になるグリフォン

グリフォンは美しい勇姿や誇り高い性格、最強の獣であるライオンと、最強の鳥類である鷲を組み合わせていることから、「王者の風格」「英雄」「力強さ」などの象徴とされました。

また、黄金を守護するというところから「富や権力」の守護者としての意味も加わって、多くの貴族や騎士の紋章の素材として扱われてきました。

ちなみに「ナルニア国物語」のモチーフになったとされるイタリアのナルニ市の市章も,グリフォンをモチーフにしています。

 

作品の中のグリフォン

『不思議の国のアリス』

作家・ルイス・キャロルの1865年刊行児童小説。

ここに登場するグリフォンは、ハート女王に命じられてアリスを代用ウミガメの所へ連れてゆきます

 

『神曲』

グリフォンはダンテ・アリギエーリの『神曲』にも登場しています。

『煉獄』編の中で、ダンテは地上の楽園でグリフィンに引かれた馬車に出会い、その後、ベアトリーチェと再会。楽園への旅を始めます


 

グリフォン、映画やゲームの世界でも聖獣

ハリー ポッターシリーズ』ではハリーたちが所属する寮はグリフォン・ドール(黄金のグリフォン)。グリフォンにちなんで勇敢で行動力のあるものが入ります。

グリフォンの子ヒッポグリフはハリーたちの飛行を助ける頼もしい友。『ハリーポッターとアズカバンの囚人』で初登場しています。

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スパイダーウィック クロニクルズ』では「スパイダー・ウィッグ」の古い屋敷に越してきた兄弟は、グリフィンの助けを借りて、125年前に居なくなったスパイダー・ウィッグに会いに行きます

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FF14」ではアバラシア山脈の有翼の魔獣トゥルーグリフォンとして、アナンタ族の蛮族クエストで登場しています

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オンラインゲーム「エルダークローズ」ではシリーズ中で最も古い時代となる第二紀582年に起きた大陸全土を巻き込む大戦争の中、サマーセット島にのみ生息し、地元のハイエルフに丁寧に扱われる重要な存在となっています。

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グリフォン まとめ

出典:deviantart

伝説上の生物グリフォンがいかに現実の歴史に溶け込んでいったのかが興味深いです。

エジプト神話ではスフィンクスの一種。

紀元前3500年の遺跡からグリフォンのような合成獣の存在が確認されているなど、

なんか、その存在を信じてみたくなります。

 

グリフォンも恐竜と同じく、絶滅した古代種であったとしても不思議はないですものね。

 

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