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新・旧約聖書 神・英雄・怪人

天使とは 聖書で語られるその存在。使命、性別、外見、種類、階級、主な天使

更新日:

ラファエロ・サンツィオ・ダ・ウルビーノ作  『聖ミカエル』

天使、慈悲深くて神々しく美しい、人間を正しい道に導く存在をイメージします。

けれど、思えば天使って実体はあるの?

性別は? どんな天使がいるの? その役割は?

漠然とはわかっていても良くは知らない。

 

そこで改めて、天使に注目です。

 

 

目次

天使とは

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作

天使(Angelとは、アブラハムの宗教(ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の総称)で語られる神の使者

神に仕える超自然的な、あるいは霊的な存在です。

神の使いとして、神と人をつなぐ役割を担います。

人を導き、時には罪深い者に裁きを与える存在。

 

それぞれに称号が与えられ、主要な天使は人の名を持ちます

 

キリスト教の天使エンジェル angel』の語源は「伝令」(messenger) を意味するギリシア語の ἄγγελος (ángelos) 。

ユダヤ教の天使はマルアハ』 (םַלְאָךְ [mal’aḵ])。「遣わす」を意味するヘブライ語。

イスラム教では単数形は『マラク』 (مَلَك [malak])『マライカ』 ( مَلائِكة [malā'ika])・複数形『マライク 』( مَلائِك [malā'ik])。

 

天使には二つの存在があると考えられます。

ひとつは、キリスト教で語られる人と変わらない美しい容姿、若い青年の姿の「神の使者」

他のひとつはイスラムやユダヤの天使。

多数の眼や複数の翼等を持った異形のもの。『エノク書』や『クルアーン(コーラン)』で語られています。

 

天使の起源

ヴィンチェンツォ・イロッリ作

リスト教の天使の起源は、古代オリエン(紀元前3000年〜紀元前300年)や地中海地方の神話などにあるとされます。

一説には古代ギリシャ神話に登場する精霊ダイモーンのような存在。

人間と神の中間に位置する、下位の神格や死んだ英雄の霊」として認識されていました。

 

太古の天使は人間と接する一部を除き、多くの天使は人型ではなかったとされます。

高位な天使が異形の姿であったり、悪意のあるものも存在していたかもしれません。

時代が進むに連れて、姿は人間に近づき、神に仇なすものを追放することで現在の天使に至ったと考えらます。

 

天使の使命

フランシスコ・デ・ゴヤ 作「トビアスと大天使ラファエル」

天使の使命は神の御心に従い、それを遂行するというもの。

聖母に受胎告知を行い、預言者に天啓を与え、街や人々の腐敗を糺す、人間を導く存在です。

 

けれど天使の使命にはそれにとどまらず、『黙示録』では、七人の天使がふくラッパの合図で世界に災厄が訪れ、天の戦いで天使たちはサタンや赤い竜と戦っています。

 

キリスト教

キリスト教での天使は神の「使者」であり「救いの継承者」

古代キリスト教においての天使の主な使命は、教徒を守り導くことであったとされます。

 

イスラム教

クルアーン(コーラン)においてのマライカ(天使)は慈悲深い存在というだけでなく、厳しい役目も担います。

天使は悪魔に代わり、地獄を守り、罪深いものを罰する役目も担います。

 

天使の役割は

  • 神からの啓示を民に伝える
  • 神を讃える
  • あらゆる人間の行いを把握する
  • 死に瀕した魂を導く

というもの

 

ユダヤ教

ユダヤの天使マルアハは、唯一絶対の神ヤハウェに従属する超自然的な存在

彼らは分の意志を持たず、神の命令を忠実に実行します

 

 

天使の容姿 人格

バルトロメ エステバン ペレス 作『天使のキッチン』

天使の肉体

キリスト教において、天使は現代に至るまで数多くの作品で描かれる人気のモチーフ。

その多くは、頭上に天使の輪、翼を持つ、中性的な、輝くような美しい容姿を持ちます。

 

天使が肉体を持つか、肉体を持たない霊的な存在であるかについては意見が分かれるところ。

キリスト教神学では、定説として天使は肉体を持たないと考えられ、教父によっても意見が分かれています。

日本正教会は、『天使は霊的な世界に属するが、しばしば人間に見える形で現われる』としています。

 

天使の翼

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作『大天使ラファエルと司教ドモンテ』

キリスト教初期には天使は翼を持たない姿で描かれることも多く、天使が有翼の姿で描かれた最古のものは、テオドシウス1世の(379年–395年)「君主の石棺」とされます。

 

『エゼキエル書』10章ではケルビム(智天使)に4つの翼、イザヤ書6章2節ではセラフィム(熾天使)に6つの翼、クルアーン(コーラン)では天使は2対、3対、また4対の翼を持つと記述されています。

 

そして、その白く体を覆う大きな翼は猛禽類の翼であるとされます。

天使の性別

ウィリアム・アドルフ・ブーグロー 作

『マルコの福音書』12章には天使に性別はないと記述されています。

けれど、クルアーン(コーラン)では女性の天使は否定されています。

天使を描く作品は19世紀までは性別がわからない中性的な姿で描写されていますが、ウィリアム・ブグローなどの一部の芸術家は女性としての天使を描いています。

 

天使の性格

レンブラント作「トビアスの家を発つ大天使ラファエル」、1637年

天使の性格については主な天使はその性格を描写されるものもあり、現代の福音派でも、天使は「神の御使いとしての人格」を持つと考えられています

 

キューピットは天使? 

エミール・ムニエル作 「二人のアモール」

ちなみに
天使と称されるキューピッドはローマ神話の恋愛の神

裸体で背に翼が生え、弓を持った子供の姿であらわされます。
一方、天使は聖書で語られる神の使徒

人間界に遣わされ、神の御心を人に、人の願いを神に伝えるものとして捉えられています。

 



 

天使、宗派で違うその存在

ユダヤ・イスラムの天使

ジブリールから啓示を受ける預言者ムハンマド

神の概念が宗教によって異なるように、天使の存在も同様に宗教によって個々に語られています.

 

ユダヤの天使

ユダヤの天使マルアハには、サンダルフォンやメタトロンというような、神の使徒とは異なるイメージの天使が存在しています。

 

サンダルフォン

サンダルフォンは天に達するほどの巨体を持つ、預言者エリヤが生きながら昇天した後の姿

サタンと戦う役割を担うとされ、200人の神に反した集団『グリゴリ』を収容する天界『第五天マティ』を支配する天使。

胎児の性別を決め、天国の歌を司る天使であるとされます。

 

メタトロン

「契約の天使」「天の書記」「神の代理人」「炎の柱」の異名を持つ天使。

『エノク書』(エチオピア正教会での旧約聖書のひとつ)ではエノクが天上に昇りメタトロンになったとされます。

地上界に等しい長身、36対の翼と無数の目、「太陽よりも燦然と輝く」顔を持つ天の御使いとされます。

 

イスラムの天使 

イスラム教のマライカ(天使)はムスリム(信者)が信仰すべき六信のひとつと定められています。

 

六信 

六信とは(クルアーン(コーラン)イスラム教の聖典)に記された存在

 

  1. 全能の神(アッラー)
  2. 天使(マライカ)
  3. 啓典(神の啓示)
  4. 預言者(ナビー)
  5. 来世(アーヒラ)
  6. 定命(カダル)

 

マライカ(天使)は唯一神であるアッラーが光から創造したとされます。

天上にあって、神と人の仲立ちを務める、神と人間の中間的な存在

 

ジブリールを主天使とし、ミーカール、イスラフィール、アズライール が四大天使として並びます。

 

 

天使の種類

守護天使(Guardian angel)

ドメニコ・フェッティ作

守護天使とは、人間ひとりひとりに付き添い、守り、導く天使をいいます。

中世ヨーロッパの神学者トマス・アクィナスは、「全ての人々には、たとえ大罪人でも、決して離れることのない守護天使がついている」と語っています。

守護天使は人が罪を犯す時、それを故意に止めることはしませんが、その心に善意を吹き込みます

 

堕天使(Fallen angel)

ギュスターヴ・ドレ作

堕天使とは神に背き、天国から追放された天使

堕天の代表例として挙げられるのは、元は天使の長であったルシファーサタン

ルシファーは神が天使を人間に従うものとしたことに反抗して堕天されています。

「ヨハネの黙示録」のルシファーは自らに従う天使を率い、神に戦いを挑み、破れて地獄に落とされ、地獄の支配者となっています。

 

外典『エノク書』においては、人類の監視者として地上に使わされたアザゼルがその仲間200人(グリゴリ)と共に堕天し、人の娘との間に子をもうけています

 

イスラム教、コーラン釈義(タフシール) のイブリース(サタン)は火から創造された天使ジンの祖先とされます。

 

大天使(Archangel

グイド・レーニ作(1636年)

大天使ふたつの意味を持ちます

ひとつは聖書に記された階級

 

他のひとつは、ギリシア語で「使者の長」「卓越した使者」という意味を持つ「偉大な天使」を示します。

神の御前に並ぶ天使を大天使と称し、数は3人、4人、7人と認識されています。

 

 

主な天使(二大・三大・四大・七大天使)

正教会の七大天使  

キリスト教の大天使

バルトロメ ロマン作『ガブリエル』

キリスト教における大天使は

まず、ミカエルガブリエルニ大天使

ラファエルを加えた大天使

ウリエルを合わせた四大天使

 

そして、3人の天使が加わった七大天使となりますが、この3人の天使たちについては、教派によって異なります

 

これらの天使は

『エノク書』では

  • ラグエル (Raguel)

「神の友人」を意味する、他の天使の行いを監視する者

『ヨハネの黙示録』では神の命令で終末のラッパを吹き鳴らし、地上に天罰をもたらす存在。

 

死を司る、「神の命令」という名の大天使(アークエンジェル)

スリエル(Suriel)、サラカエル(Sarakiel)、ザラキエル(Zerachiel)ともされます。

 

  • レミエル(Ramiel)

「神の雷霆」「慈悲の意」を意味する、幻視を支配する天使。

その能力によって地上の人間に神からのメッセージを伝えるとされます。

ラミエル、ラムエル、ラメエルとも呼ばれます。

 

 

中世のカトリック教会では

エリュー・ヴェッダー作

  • サマエル(Samael)

イスラエルの死を司る熾天使

赤い蛇と呼ばれ、サマエルの名は「神の毒」「神の悪意」を意味します。

ローマの守護天使、エデンの園に棲む蛇などの説があります。

ユダヤ教では「モーセの魂を天国に運ぶ」使命に失敗し、この時モーセの杖で打たれ、目が潰れ盲目になった。神にも叱責され、その屈辱のため堕天し、魔王になったとされます。

一説では、12の翼とサタン(ルシファー)に匹敵するほどの強大な力を持った魔王。

また、『創世記』でイヴに知恵の木の実について教えた蛇は、カバラ(ユダヤの神智学)においてはサマエルとされていいます。

 

  • オリフィエル
  • ザカリエル

 

 

東方正教会

  • セラフィエル

両目を伏せ、両腕を胸の上に組んだ、祈りの姿勢で知られる天使。

祈りがセラフィエルの特質と考えられます。

信者は、祈りに集中できない、不注意で苦しむことがあれば彼に助けを求めるといわれます。

 

  • イェグディエル

冠を配し、三つの革紐のついた鞭や、燃える心臓(聖心)を手に持った姿で描かれます。

イェグディエルは努力し働く全ての人々の擁護者であり、神の慈悲と愛の運び手

冠は勤労への報酬を象徴しているとされます。

イェグディエルは従属する天使達とともに、責務ある立場の者の助言者であり守護者

王や判事、その他リーダー的な存在の人々の信仰を集めます。

 

  • バラキエル

バルトロメ・ロマン 作

バラキエルは守護天使の主天使

『第三エノク書』では四大セラフ(熾天使)の一人。

彼には無数の(一説には496,000人)守護天使たちが仕えるとされます。

『ソロモンのアルマデル(『ソロモンの小さな鍵』)』では第一・第四の聖歌隊の主天使のひとりとされています。

 

その他

  • アニエル

クリスペイン・デ・パッセ 作 力天使ハニエル

アニエルの名は「神の栄光」「神を見る者」を意味します。

愛と美を守る天使とされ、愛、平和、調和を祈る際にはアニエルにその祈りを捧げます

エノク書などでは権天使と力天使を指揮し、魔術においは、愛を得たい時彼の名が唱えられます

 

  • カマエル

カマエルの名は「神を見る者」を意味する大天使。

140,000人いるとされる能天使の指揮官といわれ、12,000人の「破壊の天使」を率いるともされます。

 

  • ヨフィエル(イオフィエル) 

ヨフィエルの名は「神の美を意味します。

『旧約聖書』に登場する智天使。

「エゼキエル書」では4つの顔、4つの腕、4つの翼を持つ者とされる智天使の指導者

アダムとイヴを楽園から追放した天使とされ、メタトロン(ユダヤ教の天使)の仲間として天使軍団を指揮したともされます。

 

  • ザドキエル 

ローラン・ド・ラ・イール作

その名はヘブライ語で「神の正義」を意味するユダヤ教の天使のひとり。

慈善・慈悲・記憶の天使

主天使の長であり、エデンの園にある生命の樹(ケセド)を守る天使として知られます。

また、アブラハムが我が子イサクを生け贄として捧げようとした時、直前でそれを止めた天使とされています。

 

以上が七大天使として名を連ねています。

 

イスラムの天使

四大天使

ヤン・ファン・エイク 作

クルアーン(コーラン)の中では、

  • 言者ムハンマド(マホメット)にクルアーン(コーラン)を口頭で伝えた天啓の天使ジブリールガブリエルを筆頭に
  • 戦士ミカイル(ミカエル
  • 死の天使」アズライール(アズラエル)
  • 最後の審判でラッパを吹くイスラフィール(ラファエル

四大天使と称されます。

  • ジブリール

カレル・デュジャルダン作『ハガルと荒野のイシュマエル』

アラビア語でガブリエルはジブリール

イスラム教ではジブリールが最高位の天使

イスラムのジブリールは濃黄色の髪と1600枚の翼を持ち、太陽が眉間に埋め込まれているといいます。

 

ジブリールは預言者ムハンマドに『クルアーン(神の言葉)』を伝えた天使です。

イスラムの聖地メッカにあるヒラー山の洞窟で瞑想していたムハンマドの前に現れ、以降23年の間ムハンマドの前に度々現れ、クルアーンの啓示を行っています。

 

そのクルアーン17章「夜の旅」の中では、ジブリールはムハンマドを「夜の旅」に誘います。

ある夜ムハンマドは、ジブリールに導かれ、翼を持つブラークという動物にまたがり、天国と宇宙を訪れます。そこで全ての預言者に出会い、彼らと共に礼拝を行う一夜を過ごしています。

またムハンマドの言行録『ハディース』では、ジブリールはバドルの戦い(イスラム創成期624年)で、ムハンマドの率いるムスリム軍に勝利をもたらしています。

その他、イスラム教では、

  • ヨハネの誕生をザカリヤに
  • マリアイエスの降誕を
  • アブラハムにイサクの誕生を知らせた3人の天使のうちのひとり
  • 翼の先端でソドムの地を平らにし、ソドムの民に神の罰を与えた天使
  • ハガル(サラの奴隷でアブラハムの妻)とイシュマエル(アブラハムの子)がサラの元を去り、飢えと乾きで瀕死の状態に陥った時、彼らのために決して枯れることのない井戸(ザムザムの泉)をメッカに造たともされます。

 

  • ミーカール(ミーカーイール)

イスラムでは、ミーカール(ミカエル)はジブリールに次ぐ次席。

神の摂理や気候のような自然現象をもたらす天使

彼はまた、この世で善良な人々に報酬を与える役割を担います。

慈悲深い性格で、地獄の罪人の苦しみを嘆き悲しみ、地獄の罪人に同情するが故に笑う事が無くなったとされます。

アッラーフは、ミーカールの慈悲深さを貴び、ミーカールの目から流れる涙を天使に変え、第七天においてミーカールを主天使とし、世界の維持という任務を与えています

 

  • アズラーイール(アズリエルアズラエル

イーヴリン・ド・モーガン作  1890年

アズラーイールアブラハムの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)において死を司る天使

片手には全ての生者の名を記した書物(死者になると名前が消える)を持ち、その時期が訪れると、神のお告げにより、死者の魂を体から引き離す責務を担います。

 

8 世紀のクアルーンの語り手・ムカティル・イブン・スレイマンは、アズラエルは体の中に生き物を宿し、その数と同じ数の顔と手を持ち、それらの顔と手がそれぞれの世界の魂と命とつながっているとしています。

そして、それぞれの死が訪れるとアズラエルの中の顔も消えてゆきます。

 

アズラエルはもし地球を肩に乗せると、野原にある豆というというほど巨大な身体

7万本の手足、恵みの翼と罰の翼の2種類の4,000の翼、全身に無数の目、口、舌を持ち、人の罪を見、語り、裁くのだと伝えられます。

 

神は大天使たちに、アダムの創造に際し、地球から塵を集めるように命じ、アズラエルだけがその命を果たしています

そのため、彼は生と死を司る天使となったとされています。

 

  • イスラーフィール (イスラフェルイスラフィル

イスラーフィールはイスラム教において、音楽をつかさどる天使

最後の審判の日、裁きを知らせるラッパを吹く役目を担います。

その名は「神の火」または「燃え上がるもの」を意味します。

 

その身体は天と地の狭間ほど大きく、四枚の翼を持ち、一対は世界の東西の先端に達し、もう一対は大地と自らを覆っているとされます。

 

地獄を管理する役目のイスラーフィールは非常に慈悲深い天使。

毎日地獄で責め苦に苛まれる罪人達を憐れんで大粒の涙をこぼすといわれます。

このときのイスラフィルの涙が雨となって大地に降り注ぎます

アッラーが止めなければ、溢れ出た涙が地上に洪水をもたらすのだと信じられています。

 

イスラーフィールの最後の審判を知らせるラッパの音と共に世界は終焉に向かい、全ての死者の魂は神の許で公平な審判を受けることになります。

このラッパの音は、

  • 一度目は世界を破壊し、
  • 二度目は人類を復活させ、アッラーの御前で審判を受けさせる

というもの。

死者に魂を吹き込む、「復活の天使」であるイスラフェルは、このラッパを吹くときに自は炎に包まれ消滅してしまうとされています。

 


 

 

天使の階級

フランチェスコ・ボッティチーニ作

アブラハムの宗教(キリスト教・イスラム教・ユダヤ教の総称)では天使の階級が説明されていますが、これは宗教や宗派によって異なります。

 

キリスト教の階層

フィレンツェの洗礼堂

上位「父」の階層   「神の周りに位置する」階級

 

熾天使(してんし セラフ(Seraph) セラフィム(複数形)(Seraphim)))

ヴィクトル・ヴァスネツォフ(1901年)

熾」は「火が燃える」を意味し、神への愛と情熱で体が燃えていることを表しています。

セラフィムはすべてを焼き尽くす炎によって悪を浄化します。

 

姿は「3対6枚の翼、その内の2枚で頭を、2枚で足を隠し、残りの2枚で羽ばたいている」とされます。

キリスト教の天使学では最高位に位置し、中世のキリスト教神学では天使階層の最高位の聖歌隊。神の御座で「聖なる、聖なる、聖なる」と歌い続けます

 

智天使 ちてんし(ケルブ(cherub)、ケルビム(複数形)cherubim))) 

アーニョロ・ブロンズィーノ作

キリスト教のケルビムは「主はケルビムの上に座せられる」(旧約聖書 詩篇)の記述もある「神の玉座」「神の乗物」。

神の姿を見ることができることから「智天使」という訳語が付いたものとされます。

『旧約聖書 創世記』では、神はアダムとイヴをエデンの園から追放した後、生命の樹を守るためエデンの東にケルビムと炎の剣を置いたとされます。

 

『エゼキエル書』にはケルビムの姿について記述されています。

その内容は

彼らは人の体と四つの顔、体を覆う四つの翼、その下に神の手を持つ

まっすぐ伸びた足には青銅のように光った牛のような足の裏。

四つの顔は前方は人、右は獅子、左は牛、後ろは鷲。

光る貴かんらん石のような地の上の輪、輪縁と輻とがあり、その輪縁の周囲は多くの目があった』というもの。

 

キューピッドの起源になった?

ジェイコブ・デ・ウィット 作

ルネッサンス絵画ではケルビムプット(Putto)という名の、翼を持つ愛らしい赤子の姿で描かれています。

キリスト教の伝統では、プット(ケルビム)は古代のキューピッドの起源になっともされています。

 

 

座天使(ざてんし ソロネ(Throne)スローンズ(複数形 (Thrones)))

ジョン・ロッダム・スペンサー・スタナップ作

上級三隊のひとつ。正義の天使、意思の支配者とされます。

神の玉座の担い手

の戦車として神の玉座を運ぶ尊厳を有し、肉体を持つ天使では最上位の存在です。

“座”天使という名の通り、無数の眼が付いた燃える車輪という姿を持つとされます。

 

主な座天使として

  • オファニエル 

座天使の長」であり「月の支配者

前後左右に4つずつ16の顔、翼は四方に100づつ、目は四方に2191づつを持つ」とされています。

 

 

中位「子」の階層 「神性の根源を有する」階級

主天使(しゅてんし、ドミニオン(dominion))

ローラン・ド・ラ・イール作

ドミニオンズの名は「統治」「支配」を意味します。

神の威光を人間に示すための様々な働きを担います。

「慈善・慈悲・記憶の天使」とされるザドキエルを長とします。

 

力天使(りきてんし、ヴァーチャー (Virtues)、デュナミス (Dynamis))

名は「高潔」「美徳」を意味します。揺るぎない不屈の精神を表しています。

奇跡を司り、英雄に勇気を授ける天使

イエスが天に召される際にはそれに付き添い、カインの誕生の際には生子をとりあげた天使たちとされます。

 

 

能天使(のうてんし パワーズ(Powers)、エクスシーア (exousia))

カトリックでは神の掟を貫く意思を司る天使。

神秘学では人間よりも4段階高次元な意識を持つ、人類を導く存在とされています。

 

 

下位「聖霊」の階層  「神の神秘を人間に開示する」階級

 

この層の天使は最も人間に身近な存在として、人間達が親しみやすい姿で降臨するとされます。

大天使直属の部隊として悪と戦い、守護天使として特定の人間に付き添い、人間を導きす。

地上に留まり人間と接するため、堕天使になるのもこの層の天使たち

 

権天使(ごんてんし プリンシパリティ(Principality)アルカイ(Arkhai))

国家や指導者層を守護します。

 

大天使(だいてんし アークエンジェル(Archangels)

ピーテル・ブリューゲル「叛逆天使の墜落」 (1562)

二枚の翼を持つ、神と人間を結ぶ役割をになう天使

また、地獄との戦いにおいては天使軍の軍兵として戦いに挑みます。

 

天使(エンジェル(Angels)

ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ 作「聖痕を受ける聖フランチェスコ」

天上の「使者」。

最も人間界と関わるため、人に「天使」をイメージさせる存在です。

 

 

ユダヤ教の天使の階層 

エゼキエル書の記述に基づいた戦車のビジョン

1, チャヨット・ハ・コデシュ

チャヨット・ハ・コデシュは「生き物」を意味します

ユダヤ神話の中で語られる天上の存在。

神の玉座と大空を支える火の天使たち

エゼキエル書の中でエゼキエルが見た 人間、ライオン、牛、鷲の4つの顔を持つ4つの生き物

『黙示録』ヨハネの幻視にも6つの翼と多くの目を持つ生き物として登場しています。

彼らは4人の大天使と関連付けられ、「ミカエルはライオン、ラファエル人間、ウリエルは牛、ガブリエルは鷲の頭を持つ」とされます。

 

2, オファニム

オファニムは「車輪」「球」「旋風」を意味します。

『エゼキエル書』1章のエゼキエルの幻に見られる車輪

神の御座の下で翼のあるケルビムの隣を移動します。

『エノク書』での彼らはケルビムやセラフィムとともに、神の玉座を守る存在として描かれています。

 

3, エレリム

エレリムは「勇敢な者たち」を意味します。

死の瞬間や国家的悲劇との関わりを持ちます

 

4, ハシュマルリム

彼らは人間のような姿を持つ天使

現存する最古のギリシャ語翻訳『七十人訳聖書』では英語で「琥珀」「電気」と訳されています。

 

5, セラフィム

エルサレム YMCA 節後のセラフ

セラフィムは「燃えるもの」を意味する、古代ユダヤ教に起源を持つ天体、または天上の存在です。

ユダヤ神秘主義『カバラ』では、セラフィムはベリアの世界(最初に創造された領域)の高位の天使

起源前8世紀には空を飛ぶアスプ(毒蛇)として描かれる、人間の特徴を持った天使と伝えられています。

 

6, マラキム

レンブラント作『ヤコブは天使と格闘する』

マラキム神の代理人

モーセの律法『タルムード』では、火の本質を持つ使者

人間と神の両方の「メッセンジャー」を務めます。

ヘブライ語聖書』では、モーセ、指導者ヨシュア、アブラハム、ヤコブ、預言者ロト、その他多くの指導者の前に現れた天使

 

7, エロヒム

エロヒムとは「神」または「神性」を意味します

『サムエル記』ではエンドアの魔女は、イスラエルの王サウルの要請で預言者サムエルの霊を召喚。その際、エロヒムを見たとサウルに告げています。

『創世記』の中では、アブラハムはペリシテ王に、「エロヒム(神」が私をさまよわせた」と述べています

 

8, ベネ・エロヒム

神の子、「支配者の子たち」「イスラエルの子たち」

神の子」は人間の起源であるという思想に由来します。

ユダヤ教の聖典『タルグム』では、人の娘と結婚した「神の子(堕天使 )」。彼らは高貴な社会的地位にある人間と考えられています。

 

9, ケルビム

ケルビムはヘブライ語聖書』では 生命の木を守るエデンの園の守護者

ユダヤの口伝律法『ラビ文献』では、2人のケルビムは翼のある人間に似た人物と記述されています。

1人は男の子、もう1人は女の子で、3日目に創造された天使たち

神の家の慈悲の座の両端に位置しています

 

10, イシム

最下層に位置するイシムは人間の姿をした天使

ラビで哲学者・律法学者マイモニデスは「彼らは人間と呼ばれる。預言者たちと話し、幻の中で預言者たちに現れる天使たちである。なぜなら、彼らの階層は人間の心の手が届くところにあるからである」としています。

 

 

イスラム教の天使の階層

イスラム教にはキリスト教と同様の階層組織はなく、コーランにも記述はありません

けれど、定の階層が存在することは明らかです。

一説には、イスラムの天使は14のカテゴリーに分かれ、高位の天使は大天使であると考えられています。

中世の宇宙学者で地理学者カズウィニは、すべての天使の頭上にルー(精霊)がいるとし、大天使(ケルビム)に囲まれた天使の階層構造と、七天の七人の天使を説明しています。

 

神学者のスルタンとして知られる中世の科学者であり帰納論理の先駆者・ファフル・アル・ディン・アル・ラジは天使を 8つの階層で説明しています。

  1. ハマラート・アル・アルシュ、 アルシュ(神の玉座)を担ぐ、熾天
  2. ムカラブン(ケルビム) 神の玉座を囲み、神を賛美する天使
  3. カルビイン 大天使
  4. リワドン 天国の天使。天国の門を守る天国の天使
  5. ザバニヤ 地獄の天使。地獄で罪人を拷問する使命の天使
  6. ムアキバット 守護天使 邪悪なジンや悪魔から人間を守ります
  7. キラマン・カティビン ラキブとアティドと呼ばれる二人の天使  人の行動を記録する天使たちです
  8. アニミズム 世界の動向を司どる天使

 

 

天使、主役も張れる、現代でもめちゃ売れキャラ

コンスタンティン』キアヌリーブス主演の2005年公開作品。この中のミカエルは物語の中核を担う重要な存在です

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ベルリン・天使の詩』1987年公開ヴィム・ヴェンダース監督作品。長い歴史、人間を寄り添うように見守った守護天使ダミエルは親友カシエルに「永遠の生命を放棄し、人間になりたい」と打ち明けます。

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スーパーナチュラル』2005年〜2020年まで続いた人気ドラマ。シーズン4より登場のカスティエルはこのドラマで生まれた天使。準主役になる存在感、人間の常識を持たない独特のトボけた雰囲気が印象的。

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ドラゴンボール』シリーズでは、破壊神ビルスの付き人、ウイス・ヴァドスの姉妹として登場しています。

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人気漫画『呪術廻戦』の来栖華は天使を受肉した泳者(プレイヤー)。羂索と契約して呪物となり、時を超えて受肉した千年前の術師。特に堕天と呼ばれる術師を執拗に狙っているとか。

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ビックリマン』は一世を風靡した人気シリーズ。その中でも10代目『天使VS悪魔シール』で社会現象を巻き起こしています

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ドラゴンクエストⅨ『星空の守り人』」の主人公は「天使界」に住む天使。

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天使とは、まとめ

ゲオルゲ・タッタレスク作『天使とハガル』

世界で語られる天使、想像以上に想像の域を超えた天使様が存在していてオドロキです。

いかにも、キリスト教では天使を(人間に身近な)霊的な存在として、イスラム教やユダヤ教では超自然的な存在として捉えていると思えます。

 

けれど。

思えば、近頃の天使も

コンスタンテインのミカエルは、実は○○だし。

ベルリンの天使は悩んでるし、コロンボ堕天使なんてのもいるし。

カスティエルはトボけたイケオジだし。

 

それに、なんか全体的に、年齢層高いし😢

 

せめて、創作世界の中では天使は絶対的な美しい存在であってほしいと思います💦

 

そこで、

制作者様各位

本来のキリスト教の天使らしい、見目麗しいイメージに戻った、旬のブラピやジョニデのような、目の保養になる天使が活躍するような作品の制作をお願いしますっ🙏❣️

 



 

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