人魚でまずイメージするのは美しい歌声を持つ美女。
けれど、人魚には男や子供もいて、神話や伝説、作品となって、様々な物語が世界中で語られています。
人間の顔を持つ四つ足の魚。
人肉を食う。
吉凶を予言する。
真珠の涙を流す。
水に濡れない皮を被っている。
その起源も、一説にはシュメール期の大海の創造神とも伝えられる人魚。
人魚を俯瞰すると、なんとも壮大なスケールの世界観が出来上がってゆきます。
目次
- 1 人魚、神にも怪物にもなる、人間に次ぐ種族 (?)
- 1.1 人魚とは
- 1.2 ―人魚の生態― 性格・能力・特徴
- 1.3 ― 神話の中の人魚 ―
- 1.4 ― 伝承―
- 1.4.0.1 セルキー (スコットランド)
- 1.4.0.2 リバン (アイルランド)
- 1.4.0.3 シーズグ(スコットランド)
- 1.4.0.4 ベン・ヴァレー(イギリス・マン島)
- 1.4.0.5 ローレライ(ドイツ)
- 1.4.0.6 メリュジーヌ(フランス)
- 1.4.0.7
- 1.4.0.8 テッサロニケ(ギリシャ)
- 1.4.0.9 ハウフル(デンマーク・ノルウェー)
- 1.4.0.10 アントロポモルプス(シレーナ)(フィリピン)
- 1.4.0.11
- 1.4.0.12 シレナ(グァム)
- 1.4.0.13 リ(パプアニューギニア)
- 1.4.0.14 リー (ニュージーランド)
- 1.4.0.15 イアーラとイプピアーラ(ブラジル)
- 1.4.0.16 リバーマンマ(ジャマイカ)
- 1.4.0.17 マミ・ウォーター(アフリカ)
- 1.4.0.18 スヴァンナマッチャ(インド・タイ)
- 1.4.0.19 ニャイ・ロロ・キドゥル(インドネシア)
- 1.4.0.20 シンジキ・シンジケ(大韓民国)
- 1.4.0.21 タクラハ (台湾)
- 1.4.1 中国の人魚
- 1.4.2 日本の人魚
- 1.5 ― 作品の中の人魚 ―
- 2 人魚 現代でも夢いっぱいのラブ・ファンタジー
- 3 人魚 まとめ
人魚、神にも怪物にもなる、人間に次ぐ種族 (?)
人魚とは
左:ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス作「人魚の習作 1892」 右:フレッド・アップルヤード作
人魚は上半身が人間で下半身が魚の尾を持つ架空の生物。
その出現は凶兆とも瑞兆とも伝えられられます。
日本ではその肉を食べたために800歳まで生きたという八百比丘尼の伝説が有名ですが、その薬効は中国やスペインなどでも伝えられています。
かつては海獣などとも結びつけられ、身近な実在の存在として認識された生物。
中世キリスト教においては、櫛や鏡を手にする人魚の姿は、七つの大罪の虚栄心や色欲の表れともとみなされました。
アイルランドには、キリスト教に改宗しない女たちをすべて人魚に変身させたという伝承も残されています。
人魚の名
人魚は美しい女性をまずイメージしますが、人魚にも男の人魚、子供の人魚も存在します。
英語では
女の人魚は マーメイド(Mermaid)、
男の人魚は マーマン(Merman)
子供の人魚は マルメーレ(marmæle, marmæte)
総称は マーフォーク(人魚族)またはマーピープル(人魚人)
ちなみに、マー(mer)とはフランス語で「海」、メイド(maide )は「乙女」を意味します。
- フランス語:シレーヌ(Sirène)、
- イタリアやスペイン:シレーナ(Sirena)、
- ギリシャ語:セイレーン(Seirēn)
- インド・ヒンドゥー語:ジャラパリー(Jalapari)
マーマン
マーマン(merman)はその名の通り男性の人魚。
人魚族として、女性の人魚・マーメイドや、子供の人魚・マルメーレと共に暮らしていると考えられています。
原初の神・オアンネスという男性の人魚が起源であるという説がありますが、その容姿は一説では魚の頭とその下に人間の頭、魚の尾と人間のような脚を持つというようなもの。
また、ギリシャ神話の深海の神・トリトンが起源であるという説もあります。
トリトンは男性の人魚族とされる深海を支配する神族、スカンジナビアの伝説などでは半人の海獣としても扱われています。
スウェーデンヘルシングランド地方にはマーマンが人間の女性をさらって妻にするという伝承があります。
ノルウェーでは若い女性を溺死させるロスメル・ハブマンドという人魚男伝説があります。
マルメーレ
左:アルノルド・ベックリン作「海の牧歌、1887」
マーメイド(Mermaid)とマーマン(Merman)の間に生まれた子はマルメーレ(marmæler)。
その名は「海の話者」を意味します。
ノルウェーでは漁師が予言・託宣を得ることを目的に、漁で捕えようとしたと伝えられています。
人魚の容姿
ヨーロッパの人魚は、美しく、長い髪をなびかせ、月夜に川や海辺で美しい声で歌う若い女性。
けれど、古くは2つの尾を持つ人魚も描かれていました。
ギリシャ神話のセイレーンは元は翼を持つニンフ、トリトンやスキュラも二尾の姿で描かれることも。
人魚は上半身が人間で下半身が魚とイメージしますが、地域と時代によっては上半身が魚、下半身が人間という人魚の存在も伝えられていたとか。
人間と魚の境界も腰の辺りとされるのが一般的ですが、脚から尾に変わるものや、人の脚が変形したような人魚も描かれています。
ただし、足があって体の一部が魚の部位である場合は一般的には半魚人として人魚とは区別されています。
左:作者不明 右:ヒエロニムス・ボス作『「快楽の園」の人魚』
持ち物はくしや鏡、竪琴など。
上半身は裸のことが多く、女性の人魚は乳房をホタテガイの殻で隠している人魚も見られます・
作品の中での人魚は怪物のような独特の特徴を持つ者も語られています。
『オーラヴ聖王のサガ』に登場する人魚・マルギュグルは馬のような頭部、立った耳、大きな緑の目、蛇のような下半身を持つとされています。
東洋の人魚の容姿
中国では、人魚は太古からの文献に記されていますが、その中で(古代の神話集)『山海経』に、人魚は「ナマズに似た四つ足の生物で、人間の赤子のような声で鳴く」と記されています。
日本の人魚のイメージは、時代によって外見は様々。
🔳 鎌倉時代の世俗説話集『古今著聞集』では
伊勢国で漁夫の網にかかった人魚は「全身が魚で頭は人間、歯は細かい魚の歯で、顔は猿のよう。人間のような声で泣き、涙を流す。」と記されています
🔳 江戸時代の瓦版「阿蘭陀渡り人魚の図」には「髪は紅毛、手は猿のようで、水かきがあり、形は蛇のごとし」とあります。
🔳 同じく江戸時代「人魚図。一名海雷」という瓦版には、越中放生淵四方浦に現れた人魚について記されています。
その人魚は「全長は三丈五尺(約10.6メートル)。頭部は金色の角が二本生えた長髪の若い女。身体は魚で、脇腹の鱗の間に3つの目あり、鯉のような尾を持つ」というもの
人魚は誘惑の象徴
長い髪、誘惑的な歌声を持つ、上半身は美しい女性という人魚のイメージはギリシア神話のセイレーンに影響を受けたものと思われています。
その女性の人魚・マーメイドは、しばしば手にくしと鏡を持ち、海上の岩場に腰かけて、歌いながら髪をとかす姿が描かれています。
櫛と鏡は愛の女神・ウェヌス(ヴィーナス)の持ち物。
一説にウェヌス(ヴィーナス)は人魚の原型であるともされ、櫛と鏡を持つ人魚には性的快楽への誘惑が暗示されているのだとか。
左:ジョルジュ・レメン作 右:ウォルター・クレイン作
人魚の起源
人魚の起源についても諸説語られています。
一説には最古の人魚は、アッシリア・バビロニアの創造と海の神エア(エンキ)とされます。
エンキはバビロニアの創造神話『エヌマ・エリシュ』の中で語られる神。
そのエンキと同一視される(あるいは仕えた)海神・オアンネスはアカプルと呼ばれる、半神で人魚の7人の賢者。
現在あるような半人半魚のイメージはこの海神オアンネスが最初だとされます。
アッシリアの半人半魚の神ダゴンの原型とされ、ギリシア神話の海神・トリトンやグラウコスもオアンネスのイメージが伝えられたものと考えられています。
ギリシャ神話のセイレーンやトリトンが起源であるという説もあります。
セイレーンは、美しい歌声で航海者を惹きつけ、海に引き摺り込むとされる海の魔物。
もとは自然の精霊・ニンフであったものが人頭鳥体の奇獣となり、中世以降、女性・鳥・魚の混合獣として伝えられるようになりました。
また、トリトンは、父ポセイドンとは異なり、下半身が魚で上半身は人間という人魚の姿で描かれます。
ヘシオドスの『神統記』によるトリトンは海の深淵の支配者であり、ギリシャ神話の中で人魚の総称としてイメージされています。
左:エドマンド・デュラック 右:ヘンリー・ジャスティス・フォード作
人間との結婚
人魚と人間との結婚についても様々な形で語られています。
アンデルセンの童話『人魚姫』では、人魚には「魂」がなく、それを手にいれるには人間と結婚する必要がありました。
これはパラケルススの提唱する水の精霊・ウンディーネや、フリードリヒ・フーケの小説『ウンディーネ』から着想を得たものとされています。
🔳 フランスの人魚メリュジーヌも、その伝説の中でレイモンという男性と恋に落ち、結婚。
けれど自分の本当の姿を知られたために夫の元を去ったという物語が語られています。
🔳 アイルランドのメロウは、水かき状の膜が付いた手と尾を持つ人魚。
メロウの女性は若者を波の下の世界へ誘い入れ、その若者は海中で暮らすようになると伝えられています。
🔳 スウェーデンの民間伝承では、男性の人魚は花嫁になる人間の女性を誘拐すると伝えられています。
人魚の肉の効用
人魚の肉は食せば長寿を得られるといわれます。
その伝承は『八百比丘尼の伝説』として現代でも伝えられる有名な物語。
ちなみに人魚の肉の味は格別であったとか。
江戸時代、人魚の骨は『へいしむれる(歇伊武禮児)』と呼ばれ、様々な文献に人魚の肉の効果が記されていました。
🔳 瓦版『阿蘭陀渡り人魚の図』には
「食せば長寿は百歳を越し、見ただけでも無病延命の効がある」と記されていました。
🔳 『蘭方医学書』では
人魚骨を身につけるだけで痔に効果を発揮する
🔳 大槻玄沢の『六物新志』や『阿蘭陀外科医方秘伝』では
粉末にした骨を酒にまぜて飲むと血止めや下血に効果を発揮する
🔳『和漢三才図会』では
解毒効果
🔳『坤輿外紀』では
「体液の漏れ」にも効果がある
とされています
⚫️. ローマでは、人魚の骨をブレスレットにして手首につければ偏頭痛に効く
⚫️ 秦(しん)の始皇帝の葬儀では、人魚のあぶらで灯(ひ)を灯した
⚫️ スペインやフィリピンでも、「婦人魚」(ペス・ムヘール)の骨が止血・下血、体液の漏れに効果を発揮する
と伝えられていました。
―人魚の生態― 性格・能力・特徴
人魚は時として人間をさらう、危害を加えると仕返しに嵐を呼ぶなど、怖い存在とされます。
けれどその反面、慈悲深く、人間に恩恵を与え、人間と恋に落ちることもあるとも伝えられています。
左:ワーウィック・ゴーブル作 中央:アーサー・ラッカム作 右:アーサー・ラッカム作
嵐や不漁の前兆
スカンジナビアの伝承には人魚が予知や予言をするというものがあります。
また、人魚が出現するのは嵐の前触れともされています。
スウェーデンの漁師にとってもシェーロー(人魚)の出現は嵐や不漁の前兆。
もし人魚に遭遇したなら火打石と鋼器で火花を立てて難を逃れるよう伝えられています。
日本でも人魚の出現は凶兆とも瑞兆ともされます。
(平安時代に編纂された厩戸皇子(聖徳太子)の伝記のひとつ)『聖徳太子伝暦』では、人魚は不吉を呼ぶ存在。
これに反し、聖徳太子伝説において、江戸時代の解釈では太子が「瑞祥」であると諭したと記されています。
(江戸時代の各地の奇談・怪談などをまとめた雑書)『諸国里人談』では、若狭国で漁師が人魚を殺したためその村では海鳴りや地震が頻発、人魚の祟りと恐れられたとあります。
叡智を授ける
人魚が知恵を授けたという説話も残されています。
人間に病気の治療法を教えたり、アイスランドには実在の移民の逸話として、漁師が人魚男(マルメニル)を捕らえ、息子が将来所有する開拓地の予言を得ています。
そして、人魚を自由にする条件で、金貨が埋もれている場所、妻の不貞、犬の忠義という3つの知恵を授かります。
歌声で人間を惑わす
ヨーロッパの人魚は、美しく、長い髪の美女。
月夜に川や海辺に姿を現し、美しい声で歌う歌で渡航者を惑わせます。
その歌声に魅せられた者は我を失い、水中に引き込まれてしまいます。
人間をさらう 食う
(11世紀ノルウェーの聖オーラヴ2世の伝記)『オーラヴ聖王のサガ』に登場するマルギュグルは北欧に伝わる人魚で海の怪物。
高音の叫びで人を狂わせ、航行者を眠らせ溺れさせた。
ギリシャ神話のセイレーンは歌声で惑わせた人間を餌食にしていたと伝えられています。
予言の力がある
スカンジナビアに伝わる人魚・ハウフルには予知の能力があるとされ、嵐の到来を告げると伝えられています
『ニーベルンゲンの歌』のドナウ川の人魚もブルグント王国の重臣・ハゲネに不吉な予言を告げています。
日本でも人魚が予言をする伝承が残されています。
- アマビエは江戸時代、肥後国(熊本県)海上に出現したとされる「くちばしを持った人魚のような」妖怪。
疫病を予言したと伝えられています。
- 神社姫は(江戸時代の文人・医師)加藤曳尾庵の『我衣』に記された人魚の妖怪。
肥前国(長崎県・佐賀県)に現れ、「ころり」の流行を予言したとされます。
左:アルノルド ベックリン作「トリトンとネレイド、1875」 右:ガストン・ホフマン作
― 神話の中の人魚 ―
シュメール期、太古の神話から半人半魚の神々は伝えられ、その存在は世界中で語られています。
原初の人魚神
エンキ
エンキ(Enki)はメソポタミア神話の創造神
人類に知恵を授けた神。
メソポタミア文明のひとつシュメールの水・知識・創造の神です。
詳しくは→
オアンネス
オアンネス(Oannes)はシュメール文明が栄えた太古のバビロニア(イラク南部)で崇拝された下半身が魚の男神。
バビロニアの創造神話『エヌマ・エリシュ』の中で語られる神・エンキ(エア)と同一視され(あるいは仕えた)、エンキから得た知恵を人間に授けた神。
半神で人魚の7人の賢者「七賢人」アカプルと呼ばれます。
(紀元前3世紀、バビロニアの著述家で、ベル・マルドゥクの司祭)ベロッソスは「オアンネスは人間に知識を授けるために遣わされた魚で原初の神」と伝えています。
オアンネスには魚の尾を持つ妻(セミラミス)がおり、現在あるような上半身が人間で下半身が魚という人魚の姿の基となった海神とされます。
ダガン(ダゴン)
ダガンは古代シリアでバアル神と並ぶ信仰を集めた、本来は穀物神。
ペリシテ人に受け継がれたセム人の神。
ペリシテ人は半人半魚の人魚の姿を持つ神として崇拝し、半人半魚の主神ダガン(ヘブライ語でダゴンDagon)になりました。
詳しくは→
クルル
クルルは古代メソポタミア神話で語られた怪物。
バビロニアの創造神話『エヌマ・エリシュ』に登場する人間の上半身と、魚の尾を持つ人魚神です。
地下水アブズと交わって神々を生んだ太古の海・ティアマトの11体の内の一柱。
一説には家庭に繁栄と神の慈悲を与える神として崇められたとも伝えられています。
アタルガティス
アタルガティス(Atargatis またはデルケトDerketō)はシリアの月の女神。
古代メソポタミアで信仰された、魚の鰭(ひれ)を持つ女神ともされます。
豊饒を司る神。夫は嵐と雨の神・ハダド。
ギリシアのアフロディテの原形となった神として伝えられています。
詳しくは→
セミラミス
セミラミスはシリアの人魚・アタルガティス(またはデルケト)の一柱。
母は不義で生まれ生子セミラミスを砂漠に置き去りにし、湖で溺死。
セミラミスは鳩に餌を与えられ生き残り、アッシリアの王位を継承した伝説の人物となります。
詳しくは→
ギリシャ神話の人魚たち
左:ピエール・シャヴァンヌ作「ヴィーナスの誕生」 右:チャールズ・フォルカート作
ギリシア神話の中にも人魚は登場しています。
セイレーン
ハデスに連れ去られたペルセポネーを探すため、翼を持つ、上半身が人間の女性で、下半身は鳥の姿となり、後下半身が尾というに魚の姿になります。
岩礁から美しい歌声で航行者を惑わし、さらう、怪物。
セイレーンに喰い殺された船人たちの骨は、セイレーの島に山をなしたと伝えられています。
スキュラ
海の怪物スキュラ(Scylla)、カリュブディスも一説には魚のような特徴を持っていた人肉を食う怪物。
紀元前6世紀以前、スキュラは2つの尾を持つ人魚とも伝えられています。
狭い水路の一方、反対側に住む海を飲み込む怪物 カリュブディスとともにホメロスの『オデュッセイア』で語られています
カリュブディス
カリュブディス(Charybdis)はメッシーナ海峡(シチリア島)に住むとされる渦潮が擬人化された海の魔物。
ポセイドンとガイアの娘。
並外れて大食で、ヘラクレスに捕獲されたゲーリュオーンの牛を食べてしまったため。ゼウスの罰を受け、怪物になったとされています。
ネレイス
ネレイス(Nērēïs)は大海の神ネレウスとオケアニデスのドリスの間に生まれた海のニンフ。
悲しげな声で歌い、その数は50人とも100人とも伝えられています。
ニンフの中でも美しい美女たちとして知られ、その姿は上半身は人間、下半身が尾という人魚。
詳しくは→
オケアニス
オケアニス(Ōkeanis)はティターンで川の神・オケアノスとテテュスの間に生まれたニンフたち。
兄妹にはポタモイ。
泉が擬人化された存在です。
詳しくは→
ポタモイ
ポタモイ(Potamoi)はギリシャ神話の川の神。
大河オケアノスとその妻テティスの3000人の息子。オケアニデスの兄弟。
川のニンフ・ナーイアスの父たちとされます。
上半身はウシの頭を持った人間で下半身はヘビのような細長い尾を持つ姿で描かれています。
詳しくは→
アケロオス
左:ピーテル・パウル・ルーベンス作、 右:オルトス作「ヘラクレスとの格闘」
アケロオス(Acheloios またはAcheloos)はオケアノスとテテュスの間に生まれたポタモイの一柱。
セイレーンの父であるとも伝えられる川の神です。
詳しくは→
トリトン
トリトン(Triton)は作品によっては2本の尾や魚の鰓(えら)を持つものも描かれています。
好色な種族ともされ、巻貝をトランペットのように吹き鳴らす姿でも知られています。
グラウコス
右:ジャックス・デュモン・ル・ロメイン作
グラウコス(Glaukos)は、ギリシア神話の海神。
(古代ローマの詩人)オウィディウスは『変身物語』の中で「下半身が魚の尾の青緑色の男」として描写。
青緑色のひげと長い髪、水色の腕、時には腕がひれになった姿でも描かれています。
『変身物語』の中で
人間の漁師であったグラウコスは釣った魚を生き返らせることができる魔法の薬草を食べたことで不死で魚の尾を持つ人魚になったとされています。
神話の中でのグラウコスは、美しいニンフの スキュラに恋をしたためにスキュラを恐ろしい怪物に変えてしまったというがエピソードが有名です。
ヒッポカンポス『海馬』
ちなみに
ヒッポカンポス(hippocampus)は上半身が馬で下半身が魚という海馬。
ヒレのようなたてがみ、前脚には水掻きがついているといわれ、ポセイドンの戦車を牽くことでも有名です。
北欧神話の人魚たち
左:ジョン・ラインハルト・ウェグリン作『ゼノアの人魚』 右:ワーウィック・ゴーブル作
エーギル
北欧神話の海神・エーギル(Aegir)は白髪・白髭の姿で描かれるヨトゥン(霜の巨人)族の大海神。
戦場で死んだ勇者はオーディンの元へ迎えられますが、海で溺れ死んだ者はエーギルの元に迎えられるといいます。
妻は海神・ラーン。
二柱の間には9人の「波の乙女」がいます。
詳しくは→
ラーン
ヨハネス・ゲルツ作
ラーン( Rán)は海の擬人化である海神でエーギルの妻。
北欧では嵐の海にはラーンが大網を構えていて、その網で船や人を海中に巻き込むと考えられていました。
大海を渡る人々は、もしラーンに捕まっても安穏の館に入れてもらえる黄金を持参したといいます。
そして、もし溺死者が自身の葬式に現れたなら、ラーンに温かく迎え入れられたことを意味していました。
詳しくは→
波の乙女
左:ニルス・ブロマー作『エギルとランの 9 人の娘を持つニクシー』 右:ハンス・ダール作
『ギュルヴィたぶらかし』の中でエーギルとラーンは9人の波の乙女をもうけます。
その娘たちは光の神・ヘイムダルの9人の母となっています。
詳しくは→
マルギュグル
マルギュグル(margýgr)の名は「海のトロル(女)」を意味します。
「海の鬼女(オーグ)」や「海の怪物」のような存在。
(アイスランドの詩人で歴史家スノッリ・ストゥルルソンによる)『オーラヴ聖王のサガ』の中で、マルギュグルはオーラヴ聖王(ノルウェー王)と対決。
航行者を眠らせて溺れさせ、高音の叫びで人を狂わせた怪物。
黄色い髪、馬のような頭部、大きな緑の目、蛇のような下半身の人魚と表現されています。
ハーフストラムブル
『王の鏡』(ノルウェー)の中にマルギュグルと対をなすハーフストラムブル(hafstrambr)という男性の人魚が登場しています。
上半身は人間のような姿とされますが、下半身は誰も見たことがないのだとか。
中世のノルウェーではハフストランブルは最も大きな種類の半魚人と信じられていました。
そのため普通の大きさの人魚がマルメニル(「海の小男」)になったのだとも伝えられています。
マルメニル(マルベンディトル)
人魚男は古ノルド語でマルメニル(marmenill)。
決して海上に姿を現さないとされますが、マルベンディトルに関する民話では、腰から下がアザラシの様だと表現されています。
ニクス・ニキシー・ニクセ
左:テオドール・キッテルセン作「ネッケン(水の精霊)」1904 年 右:エルンスト・ジョセフソン作 1884年
ニクス(Nix)・ニキシー(Nixy)・ニクセ(Nixe)は北欧の神話や伝承に登場する、姿を変える能力を持つ水の精霊。
ドイツやアイルランド、ノルウェーなど、多くの国で様々に語られています。
人類に対して悪意を持つ者として
- 子供や老人を水に引きずり込んで溺れさせる
- 溺れているふりをして犠牲者を嘲笑う
怖い存在とも伝えられています。
詳しくは→
左:アルフレッド・テニスン作 右:ドロシー・P・ラスロップ作「W・デ・ラ・メアの「妖精詩」」集」
ケルト神話の人魚
メロウ
メロウ(merrow)はアイルランドに伝わる人魚。
緑の髪、あるいは全身緑色で、水かきのある手を持ち、下半身は尾。
漁師の間では、メロウに出会うと時化(しけ)になると伝えられていました。
メロウには女と男、両性の人魚がいます。
女性のメロウは美しく、肌が白く、濃い瞳、長い髪を持つ美しい人魚の姿
男のメロウは緑色の肌と歯、赤く尖った鼻の、醜い姿であるとされます。
メロウは被ると人間に変身する(または、どんな生物にでもなれる)「魔法の帽子(コホリン・ドリュー)」を持っていることで知られています。
詳しくは→
スラブ神話の人魚
ルサルカ
左:イワン・クラムスコイ作 『ルサルキ(人魚)』1871年 右:ヴィトルド・プルシュコフスキ
ルサルカは(Rusałka)スラヴ諸国の水の精霊。
川、湖沼、池などの水中に住む若い女性。
その正体は殺人や自殺など、不慮の死を遂げた若い女性の幽霊とされます。
かすかな日光の下で長く淡い緑色の髪と青白い肌をした美しい若い女性の姿で現れ、月明かりの下で若い男性を水中に誘い込みます。
長い髪を絡ませて沈めることあるという怖い存在です。
ヒンドゥー教の人魚
マツヤ
マツヤはヴィシュヌの第1のアヴァターラ(化身)。
魚となって太陽神スーリヤの息子マヌの前に現れ、大洪水から救っています(インド版ノアの方舟)。
神話の中では方舟を引く巨大魚ですが、絵画で描かれるマツヤは上半身がヴィシュヌで下半身が魚という人魚の姿で表現されます。
左:アーサー・ラッカム作 中央:ジョン・バウアー作『人魚』(1911年)
― 伝承―
セルキー (スコットランド)
セルキー (selkie, selchie, silkie)は、スコットランドの民間伝承やケルト神話で語られる、あざらしから人間の姿に変身する種族。
通常は海中で生活し、陸にあがるときはあざらしの皮を脱いで人間に変身すると伝えられています。
左:イダ・レントール・アウスウェイト 右:エドマンド・デュラック
リバン (アイルランド)
リバンまたはリ・バン(líban) は、北アイルランドにある淡水湖・ネイ湖に住んでいたとされる人魚。
12世紀の書物『レボル・ナ・ヒュイドレ』の中の『エイデッド・エチャック・マイク・マイレダ』 という物語で語られています。
リバンはこの大きな湖が誕生する前にこの地域に住んでいた人間。
湖が噴出し家族は溺死しましたが、リバンは生き延び、半人半鮭になりました。
人魚となったリバンはその後300年の間人魚として海で生活していました。
ある日、彼女の歌声を聴いた船に発見され、陸に上がることに同意。
洗礼を受け、ミュルゲンという先例名を受けましたが、亡くなってしまいます。
この物語は、魂を得るために人魚の寿命を失ったのだと解釈されています。
シーズグ(スコットランド)
シーズグはスコットランドの人魚。
人間と結婚した、捕まえた者の願いを3つ叶えてくれるという伝承もあります。
ベン・ヴァレー(イギリス・マン島)
ベン・ヴァレーは、贈り物を与えてくれると伝えられる人魚。
助けた漁師がお礼に宝の場所を教えてもらった。
人間の少女から人形を盗んだ子供の人魚が、叱られ、真珠の首飾りを添えて人形を返したという物語も伝えられています。
左:フェルディナンド・リーク作 右:ヘンリー・ジャスティス・フォード作
ローレライ(ドイツ)
ローレライ(Loreley)はライン川に住む淡水の人魚。
セイレーンの一種ともされる、不実な恋人に絶望してライン川に身を投げた乙女。
美しい歌声で漁師を誘惑。
出会った船は岩場にぶつかり、沈没してしまうと伝えられています。
詳しくは→
メリュジーヌ(フランス)
メリュジーヌ(Melusine)は、フランスの伝承に登場する水の精。
井戸や川など、淡水の精霊です。
父を殺したことの罰で受けた呪いのため、毎週土曜日には腰から下が2本の尾を持つ蛇(翼のあるものも伝えられています)になってしまいます。
ある時、貴族のレーモンドがメリュジーヌを見初めます。
メリュジーヌは「土曜日には自分の姿を決して見ないこと」を条件に結婚。
けれど夫はその約束を破ってメリュジーヌの正体を知り、メリュジーヌは夫のもとを去ることになります。
テッサロニケ(ギリシャ)
ギリシャ・マケドニアの伝説では、アレクサンダー大王の妹テッサロニケ(Thessalonike)は死後、エーゲ海の人魚になったと伝えられています。
テッサロニケはフランス最初の王フィリップ2世の娘で、古代ギリシア・マケドニアの王・アレクサンダーの異母妹、アレクサンダーに継いだマケドニアの王・カッサンドロスの妻。
アレクサンダーが手に入れた不死の水で髪を洗っていたために、兄の死を悲しんで入水自殺しようとして人魚になったと伝えられています。
左:アーサー・ラッカム作『ラインの乙女たち』1911年 右:ES ハーディ作
ハウフル(デンマーク・ノルウェー)
デンマークやノルウェーの人魚は『海の女』を意味するハウフル(havfrue)またはハヴリュ―。
男性の人魚はハヴマン(havmand)。
アンデルセンの童話『人魚姫』の人魚はこのハウフルであると伝えられています。
ハウフルは予言の能力をもち、美しく、人間に知恵を授けたりもしますが、人間をさらうこともあるとか。
ノルウェーの漁師の間では、もしハウフルに出会ったなら、誰にもその事は話さず、火打石の火花を散らして追い払うよう伝えられています。
アントロポモルプス(シレーナ)(フィリピン)
アントロポモルプス( Anthropomorphus)は、17世紀、フィリピンのビサヤ諸島周辺に生息したとされる男女の人魚。
民族ごとに異なる人魚種の総称シレーナと呼ばれ、美しく魅惑的な声を持つ凶暴な人魚と伝えられています。
フィリピンでは、民族ごとに人魚の概念が異なります。
- パンガシネンセ族の間では、ビナラトンガの人魚は海の女王であり、人間と結婚して一時期人類を支配しました。
- イロカノ族は、人魚は水の神リタオと結ばれて誕生
- ]ビコラノ族の人魚はマギンダラと呼ばれ、美しい声と凶暴な性質を持つ
- サンバル族の人魚はマンブブノと呼ばれ、2つのヒレを持つ。
とされます
左:フランク・C・パプ作 右:ヘンリー・ジャスティス・フォード作
シレナ(グァム)
グアム島には「シレナ」という人魚伝説があります。
シレナは雑用を嫌ってすぐに水の中に逃げ込んでしまう、元は人間の娘。
怒った母は「そんなに水が好きなら魚にでもなっておしまい!」と呪い、シレナは人魚になってしまいます。
リ(パプアニューギニア)
ニューアイルランド島のリ(Ri)はナケラ族に信仰され、美しい音楽を奏でる人魚。
ヒトの上半身と生殖器、魚の下半身を持ち、空気を呼吸するとされます。
リー (ニュージーランド)
ニュージーランドのマオリ族に信仰されるリー(Ri)は女性の海の精。
マオリ神話「サンゴ礁のパニア」の中で人間の男性カリトキとの悲恋が語られるバニアとして登場しています。
左:フランク・C・パプ作 右:ガートルード・ケイ作
イアーラとイプピアーラ(ブラジル)
イプピアーラ
イアーラは河川に棲むといわれるブラジルの伝説で語られる美しい魚女(ペイシェ=ムリェール)」。
男を惑わし、魅了された男性は水にのまれ、溺死。
漁師を水底に引きずり込み、口、鼻、指先、性器をくらう怪物。
その名は「水に棲む悪魔」を意味します。
全身が体毛で覆われた、体長15スパン(約340cm)の怪物。
(南アフリカの民族)トゥピ族の神話の水のモンスター・イプピアーラに由来すると考えられています。
リバーマンマ(ジャマイカ)
リバーマンマ(River Mumma)は、すべての魚はリバーマンマの子であると伝えられるジャマイカに伝わる川の人魚。
長い黒髪の女性で、捕まえようとすると全ての川の魚は消え、川が干上がってしまうため捕まえてはならないと伝えられています。
マミ・ウォーター(アフリカ)
マミ・ウォーター(水の母)は、アフリカ・カリブ海・アメリカに住むとされる人魚。
アフリカ系移民の間で崇拝される水の精霊です。
悪魔のような存在とされ、人を魅了し、死に至らしめるファム・ファタール。
- 東南アフリカ・ジンバブエでは、ンジュズと呼ばれる精霊
- カメルーンではジュエング。イトンゴ(海の女王)としても知られる人魚
カリブ文化には奴隷に連れ去られた人魚が数多く存在するとされます。
- ワトラママスリナム(ガイアナ)
- ママジョ(グレナダ)
- イエマニャまたはイエマヤ(ブラジル・キューバ)
- エルズリー(ハイチ)
- ラマンテ(マルティニーク)
- ラシレン(ハイチのヴードゥー教)
など
スヴァンナマッチャ(インド・タイ)
右:ウォーリック・ゴーブル作
スヴァンナマッチャ(黄金の人魚)はタイやカンボジアで伝えられる、古代インドの聖典「ラーマーヤナ」登場するラーヴァナ神の娘。
ラーヴァナは10の頭、20の腕を持つラークシャサ族の王。
スヴァンナマッチャは人魚の王女で、ハヌマーンという人間に恋をします。
ニャイ・ロロ・キドゥル(インドネシア)
ニャイ・ロロ・キドゥルはインドネシアの南海を支配する女王で海の女神。
本来はジャワ島の南の浜辺に住むと伝えられる豊穣の女神カンジェン・ラトゥ・キドゥル。
多くの姿を持つ超自然的な存在で、人魚の姿のときはニャイ・ブロロンと呼ばれます。
シンジキ・シンジケ(大韓民国)
大韓民国・巨文島の人魚は色白で長い黒髪を持つとされます。
暗礁に座礁するのを警告したり、嵐で難破するのを救うという伝説があります。
島の住民からは海の女神として、天気を予言できると信じられていました。
その他、釜山・東亜島には、ナランダという人魚の王国のファンオク姫の物語があります。
タクラハ (台湾)
台湾、サオ族の伝説にある、長い黒髪の人魚のような生物。
日月潭という湖に棲むと伝えられています。
中国の人魚
中国では人魚の存在について、幾つもの文献に記されています
🔳 『山海経』(紀元前4世紀、中国の地理書)にはディ族 (マーフォーク)
「龍侯山の決水に棲み、四つの足を持ち、嬰児のような声で鳴く」とあり、これが東洋の人魚の原形となっています。
🔳 『本草綱目』(李時珍(明の医師・本草学者)著)では
「孩児魚(人魚)には湖や河川の䱱魚の種と、山渓の鯢(げい)の2種類がいる」としています。
🔳『太平広記』(宋代初期に編纂された物語集)
その中の『洽聞記』で海人魚について語られています。
詳しくは→
中国の人魚の種類
赤鱬(せきじゅ)
オシドリのような声で鳴く、人の顔を持つ魚のような風体
氐人
建木の西の氐人国に棲む、人面で足がない魚のような姿の怪人
陵魚
海中に棲む人面で手足のある魚
蛟人(鮫人)
流す涙が真珠となる、下半身が鮫の人魚。
海人魚
中国の東の海域の人魚。
頭部は馬の尾(あるいは虹色のヒレ・たてがみ)のような長髪で人面、上部に手を持ち、下半身は魚の尾。
ウロコのような細かい体毛で覆われているといいます。
生殖器を持ち、人間と同じように性交を行うとされます。
日本の人魚
左:海女(人魚也)― 廣川獬『長崎聞見録抜書(ぬきがき)』 右:摂津国より献じられた人魚—『聖徳太子絵伝』(1069)
日本では人魚の姿は時代とともに変化してゆきます。
古くは人の顔を持つ魚と伝承され、文献では日本書紀の中に摂津国で網にかかったと記されています。
これが最古の人魚。
江戸時代に入り、四足を持つ魚となります。
江戸時代後期に人間の上半身と魚の下半身を持つ姿で認識されるようになります。
『武道伝来記』(井原西鶴)では「髪がトサカのような上半身、下半身は金色のウロコで覆われ、黄色い尾。ヒバリのような声で鳴く」と記されています。
人魚は妖怪として百鬼夜行にも登場しています。
その人魚は中国のディ族 (あるいは「低地人」)をモデルとしたもの。
日本の人魚 詳しくは→
八百比丘尼
人魚の肉を食べたことで長寿になったといわれる八百比丘尼の伝説は今も伝えられる有名なお話。
中世室町時代の『康富記』や『臥雲日件録』にその出現について記されています。
日本で語られる人魚の種類としては
神社姫(じんじゃひめ)
加藤曳尾庵の『我衣』に登場する人魚、あるいは妖怪。
江戸後期、肥前国に現れ、「ころり」(赤痢)の流行を予言したと伝えられています。
アマビエ
同じく江戸後期、肥後国に現れた人魚、あるいは妖怪。
クチバシがあり、3本の足、全身がウロコで覆われた人面魚。
豊作や疫病などの予言をしたと伝えられています
アイヌソッキ
アイヌ民話でも「その肉を食べると長寿が得られる」という人魚に似た生物が北海道・内浦湾に住むと伝えられていました。
ざんのいお
沖縄県に伝わる人魚。
釣り上げた漁師は海に返し、人魚はお礼に地震が来る事を漁師に伝えます。
それによって、漁師は津波から逃れることができた伝えられています。
― 作品の中の人魚 ―
人魚を題材にした物語も世界中で数多く語られています。
人魚姫
アンデルセンの童話の一作。
1837年、デンマークに伝わる伝説をもとに作られたおとぎ話。
魂のない人魚姫は遭難した王子に恋をし、人間になることを決意します。
左:アーサー・ラッカム 右:ウィリアム・ヒース・ロビンソン
ウンディーネ・オンディーヌ
ウンディーネ
右:ダニエル・マクリーズ
『ウンディーネ』はドイツの作家フリードリヒ・フーケの1811年の中編小説。
老いた漁師の養女で水の精霊ウンディーネと、一晩の宿を求め漁師のもとを訪れた騎士フルトブラント、実は漁師の娘ベルタンダが描く悲恋。
このウンディーネが、水の精霊であり、人間と結婚することで魂を得るという設定はパラケルススの提唱する元素生物に由来しています。
オンディーヌ
『オンディーヌ』はフランスの劇作家ジャン・ジロドゥの戯曲、1938年の作品です。
騎士ハンスと漁師の養女で水の精霊オンディーヌ、婚約者のベルタ王女の物語と設定されています。
詳しくは→
左:エリナー・アボット 右:エドマンド・デュラック
アウネーテと人魚
『アグネーテと人魚』は古くからデンマークに伝わる昔話。
アンデルセンも戯曲としてし執筆、19世紀の作家エーレンスレイヤーにも取り上げられています。
ニーベルンゲンの指輪
アーサーラッカム作
人魚はリヒャルト・ワーグナーの歌劇『ニーベルングの指環』の中の序夜、『ラインの黄金』の第一幕にも登場しています。
ニーベルング族のアルベリヒはドナウ川で3人の人魚・ラインの乙女たちに出会います。
人魚たちは「世界を支配できる指環」を作ることができるという、川底に眠るラインの黄金があることをアルベリヒに告げ、物語のきっかけを作っています。
ちなみに、この人魚たちはドイツの川の人魚・ローレライであるとされます。
箱入娘面屋人魚
山東京伝 『箱入娘面屋人魚』(1791年)
『箱入娘面屋人魚(はこいりむすめ めんやにんぎょう)』は江戸時代の浮世絵師で戯作家の山東京伝1791年の作品です。
浪奸物語
「浪奸物語(ナンガンものがたり)」は古代中国・高句麗の人魚伝説。
左:ハリー・クラーク 中央:ウォルター・クレイン作「妖精の女王」 右:イダ・レントール・アウスウェイト
陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語
人魚の物語は「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」の中『陸のアブドゥッラーと海のアブドゥッラーの物語』でも語られています。
人魚 現代でも夢いっぱいのラブ・ファンタジー
『リトルマーメイド』は1989年公開ディズニー製作のアニメーション映画。
アンデルセンの『人魚姫』の原作をアレンジしたストーリー展開で、人魚姫アリエルは最後には王子エリックとハッピーエンドしちゃいます。
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『崖の上のポニョ』は、2008年公開、スタジオジブリ制作の長編アニメーション。
人間になりたい人魚ポニョと人間の宗介の冒険が描かれた夢一杯のファンタジーです。
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「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」に登場する人魚シレーナは、永遠の命を求める“黒ひげ”によって、“生命の泉”で行う儀式に必要な人魚の涙を得るために捕獲されてしまいます。
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マーピープルは、『ハリーポッター』シリーズにも魔法動物の一種として登場しています。
ホグワーツの敷地の湖に生息する、長い暗緑色の髪、黄色い目と歯を持つ、ヒトを水中に引きずり込む好戦的な種族です。
映画以外にも、人魚が登場する作品はゲームや小説、シリーズ作品としても数多く制作されています。
人魚 まとめ
人魚の世界も人間にとっては異世界。
どうやら、竜宮城やティル・ナ・ノーグと同じように、時間の流れが違うようで、そこに行くには覚悟が必要なようです。
ところで
マーメイドでもマーマンでも、下半身が魚の尾の人魚には生殖器はないのでしょうね。
だから子供のマルメーレはやっぱり卵で生まれ、ポニョのような人間の頭を持つ稚魚になって孵化するのでしょうか。
なんか、想像に難くないファンタジーなイメージです❤️