貞節を守る月の女神、アルテミスはロマンチックな慈愛の神とイメージします。
けれど実は潔癖であるがための残忍性も持ち合わせた死を司る神でもあるのです。
清楚な魅力の女神アルテミスの意外な側面、ご覧ください。
目次
アルテミス、狩猟と純潔を司る月の女神
アルテミス( Artemis)は狩猟と純潔の女神です。
主神ゼウスとティターン族のレトのあいだに生まれたオリュンポス十二神の一柱。
他説、ゼウスとデーメーテール、ペルセポネー、あるいはディオニューソスとイーシスとの間に生まれたとも伝えられています。
太陽神アポロンとは双子の兄妹。
シンボルは弓矢、松明、三日月、そして鹿と桧。
アルテミスは4頭の金の角を持つ雌鹿がひく黄金の戦車で夜空を駆け抜けます。
ローマ神話ではダイアナ、闇の女神ヘカテー、後に月の女神セレーネともと同一視されます。
アルテミスは多くの神格を持ち、それに則した多くの名前が与えられています。
そして、アルテミスは「戦略の女神アテナ」や「炉の女神ヘスティア」と並んで「三大処女女神」と呼ばれる純潔を司る女神でもあります。
アルテミスの神格
アルテミスは狩猟、荒野、野生動物、自然、植生、出産、子供、貞操を守護する女神。
双子の「光明の神アポロン」が太陽神とされるところから、「月の女神」とも称されます。
獲物となる野獣の守護者,哺育者でもあり、野獣たちの主であった古い大母神の性格を継承しています。
出産の守護神という面も持ち、出産と産婦の保護を司るエイレイテュイアと同一視されることもあり、子供の守護神でもあります。
これは自身の出生にまつわるエピソードから由来するものと考えられています。
また、妊婦に産褥の苦痛を免れる死を恵む神。
特に女性と子供たちの間で治癒と病気の後援者でもありました。
女性と子供に健康と病気の両方をもたらすと信じられています。
アルテミスの誕生
アルテミスとアポロンの出生については諸説伝えられています。
ゼウスの妻ヘラは、ゼウスの子を身籠るレトに地上の陽と光のあたるいかなる場所でも出産することを禁じました。
その命に背かないよう虹の女神イーリスと軍神アレースに監視を命じます。
蛇のピュートーンや巨人のティテュオスがレトをつけ狙います。
苦難の末、レトはデロス島に辿り着き、まずアルテミスを出産。アルテミスはレトを助け次にアポロンが生まれます。
この時、ヘラが出産の女神エイレイテュイアを引き留めていたため出産は9日間にわたる難産であったと伝えられています
これによってアルテミスはエイレイテュイアと共に出産と助産の女神の一人として崇拝されることになります。
アルテミスの起源
アルテミスもまた先住民族の信仰を古代ギリシア人が取り入れたものと考えられています。
古くは山野の女神で、野獣と関わりの深い神。
古典神話では、狩猟と貞潔を司る神とされます。
エフェソスの古代都市遺跡からは体中に無数の乳房をもつ像も出土し、当時のアルテミスへの信仰を伺わせています。
アルテミスは、古代ギリシャの神々の中で最も広く崇拝されている神の一人。
前身はミノア クレタ島で山と狩猟の女神ブリトマルティス。
また、アルカディア古ギリシャ人の信仰によれば、アルテミスは最初のニンフ、ニンフのリーダーであるとされます。
アルテミスの能力
アルテミスの武器は双子の兄弟であるアポロンと同じく弓矢。
雌鹿の馬車で夜空を駆け、金(銀)の弓を引き、金(銀)の光の矢を放ちます。
その腕前は遥か遠くの獲物も仕留められる正確さを誇ります。
「アルテミスの矢」には疫病や死を運ぶ効果もあり、難産に苦しむ母親に安らかな死をもたらす「死神」の力を発揮し、痛みなしに突然の死を招きます。
そしてその矢の効果は時として大量の死につながるものでもありました。
また、アルテミスは銀の鎖を用いることで海の潮を操ります。
他の神と同じく、裁きには厳しく、その罰には死以外にも動物に変える能力なども有していました。
アルテミスの性格
アルテミスは非常に気が強く、男勝りな性格の女神であったと伝えられています。
処女神アテナに憧れ、自身も処女の誓いを立てる男嫌いな女神として知られています。
人間がアルテミスに祈りを捧げる際、願いを叶える代償に生贄を捧げなければならない神としても認識されていました。
人間に罰を与える際には矢によって悪疫を蔓延させ大量死させるという冷酷さを持ちます。
アルテミスは大勢のニンフ達をお供に従え、狩猟に出かけることを好みます。
自身が純潔の女神である為、侍女のニュンペー達にも厳しく、純潔であることを求め、それを破った者には容赦のない厳罰が与えられます。
ただし、純真に愛し合い結婚に至る男女には惜しみない祝福を贈ったと伝えられています。
アルテミスの恋
オリオンは海神ポセイドンとミーノース王の娘エウリュアレーの間に生まれます。
強靭な肉体を誇る、ギリシャの神々の中で最も優れた狩人でした。
狩猟を司るアルテミスはオリオンと次第に惹かれ合う仲になってゆきます。
周囲もそれを認めるほどに親密になってゆきますが、唯一双子の兄妹アポロンだけが粗野な性格のオリオンを嫌い、それを快く思いませんでした。
アポロンはオリオンを遥か遠くの海上に立たせ、アルテミスにそれを射るように挑発します。
アルテミスはそれがオリオンとは気づかず矢を頭部に命中させ、自らの手でオリオンを殺めてしまいます。
そのことに気づいたアルテミスは死者を蘇らせる名医アスクレピオスに助けを求めます。
けれど死の秩序が乱れるという冥王ハデスの反対に合い、その願いは叶いません。
愛しい娘を哀れに思ったゼウスはオリオンを夜空に輝く星とし、月の女神アルテミスに添わせました。
潔癖を求めるアルテミスの罰
カリスト
カリストはアルテミスに従うニュムペーのひとり。
稀に見る美少女であったため主神ゼウスがカリストを見初めます。
ゼウスはアルテミスに姿を変えてカリストに近づき、純潔を奪います。
二人のあいだにアルカディアの祖となるアルカスが生まれます。
アルテミスは貞節の誓いを破ったカリストを怒り、雌熊に変えてしまいます(ヘラ、またはゼウス自身が、雌熊に変えたという説もあります)。
そしてカリストはアルテミスによって殺されたとも、息子アルカスがそれと知らず、熊と思い彼女を殺したとも伝えられています。
ゼウスはこれを憐れんでカリストを天に上げおおぐま座に、息子アルカスをこぐま座としています。
ニオベ
二オベの物語はホメーロスの叙事詩『イーリアス』他、多くの詩人に語られています。
ニオベは一説にはゼウスの子タンタロスと、巨人アトラースの娘ディオーネーとの間に生まれ、テーバイ王アムピーオーンと結婚し、14人の子供、7人の息子と7人の娘という多くの子宝に恵まれます。
ニオベは、レトよりも多くの子供を産んだため、自分はレトよりも良い母親だと主張。
レトはニオベの発言に激怒し、アポロンとアルテミスに天罰を与えるよう命じます。
アポロンは森で狩りをしている息子たちに忍び寄り、銀の弓で7人全員を射殺。
彼らの父アムピオンはこれを嘆き、自殺(あるいはアポロンによって殺されています)。
次にアルテミスが娘たちを撃ち始め、ニオベがせめて末の子だけは助けてほしいと懇願したその瞬間、最後のひとりを射殺。
ニオベは嘆き悲しみ、岩と化し、石化した後も涙を流し続けていると伝えられています。
アクタイオン
アクタイオンの物語はオウィディウス『変身物語』などで語られています。
アクタイオンは、アポロンの子アリスタイオスと、テーバイの王カドモスの娘アウトノエとの子。
ケンタウロスのケイローンに育てられ、狩猟の術を授けられました。
猟師であった彼はキタイロナスの山中で50頭の犬を連れて猟をしていました。
そしてある時、いつものように狩に出かけたアクタイオンは、ガルガピアの谷間はアルテミスに捧げられた聖域でありアルテミスが泉で水浴している姿を見てしまいます。
裸体を見られてしまったアルテミスは怒り、アクタイオンを鹿に変え、連れていた50頭の犬に襲わせます。
アクタイオンは愛犬に引き裂かれ、生き絶えます。
現代でも気高き女戦士アルテミス
『美少女戦士セーラームーン』のアルテミスは額に三日月のしるしがある愛野美奈子の相棒。前世で月の王国が滅亡した時ルナとともにコールドスリープ状態に入り、現世で覚醒。
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『カードファイト!!ヴァンガード』での月夜の戦神アルテミスはブースターパック第10弾「騎士王凱旋」で登場するグレード3のジェネシスに属するユニット。 アニメでは戸倉ミサキが使用しています。
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「イナズマイレブン」の在手実弓通称アルテミスは背番号6 のMF。彫刻のような仮面を被るスイーバー。弓で射た矢のように正確なパスやシュートを放ちます。
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アルテミス まとめ
潔癖すぎるというのは真逆の「いい加減?」「不潔?」なんかより遥かに残酷で怖い要素を持っているように思います。
個人的には多くのサイコバスもそれに類するように思います。
やはり、ヒトもコトもカミも、適度であるのがベスト、それを超えたモノには近づかないのが無難ですね。