ヨハンズツァカリアスサイモンプレイ作
アスクレピオスとはギリシャの旧紙幣にも描かれた「死者を甦らせる」天才医師。
アポロンと人間の娘の間に生まれ、亡くなった後神となり、蛇使い座として今も天空で輝いています。
そんな今も信仰厚いアスクレピオスに注目です。
その偉業や生涯とは
目次
アスクレピオス、師ケイローンを凌ぐ天才医師
アスクレーピオス（ Asklēpios）は、ギリシア神話の医神。
医術の神でもある太陽神アポロンと人間の娘コローニスとの間に生まれます。
死者を蘇らせ、死して神の座につき、へびつかい座（Ophiuchus）となった、今も医学の象徴的存在です。
アスクレピオスの誕生
ジョバンニ・トノッリ作
医術を司る神でもあるアポロンはラリッサ王の娘コローニスに恋をします。
そこで、言葉を話し、純白の羽を持った一羽のカラスをコローニスとの橋渡し役に使います。
ある時、このカラスはコローニスが他の男性に心変わりしたと告げ、これを怒ったアポロンは、狩猟の女神アルテミスにコローニスの命を奪わせてしまいます。
けれど、この報告の真偽についてはいくつかの説があります。
- カラスが道草を食っていた言い訳の嘘
- コローニスとアルカディアの王子イスキュスが偶然親しげに話しているのを目にしたカラスの早とちり
- コローニスはアポロンの子を身ごもり、その後父王にアルカディア人のイスキュスと結婚させられた
- アポロンの子をやどしたにも関わらずイスキュスに恋をして密通した
怒りが治らないアポロンはカラスから言葉を取り上げ、白い羽を真黒に変え、天空に晒します。
（この時からカラスは黒い羽の鳥、天空ではカラス座になります）
けれど我が子である胎児は救い出し、ケンタウロスの賢者ケイローンに託します。
この胎児が後の天才医師となるアスクレピオスです。
死者を甦らせる医術の天才
クリストファー・アンターバーガー作
ケイローンのもとで育ったアスクレピオスは、とくに医学に優れた才能を示します。
成人したアスクレピオスは、イアソン率いるアルゴナウタイにも参加。
やがてアテナから授かったメドゥーサの蘇生作用のある血を使い、死者を生き返らせることができるようまで成ります。
これによってアスクレピオスは
らを蘇らせたと伝えられています。
アスクレピオスの最期
ジャック・シャルル・ボルディエ・デュ・ビニョン作
冥界の王ハデスは、死者の蘇りを「世界の秩序を乱す」とゼウスに強く抗議。
ゼウスも人間が生死を定められる能力を持つことを容認できないものと、ハデスの抗議を聞き入れます。
そして雷霆でアスクレピオスを射殺。
けれど、アスクレピオスの功績は認められ、あるいは父アポロンの怒りをなだめるため、アスクレピオスは死後へびつかい座となり、医神として天界に迎え入れられます。
◾️へびつかい座（Ophiuchus）
その名は「蛇をつかむ人」または「蛇を持つ人」というギリシャ語に由来し、その星座はアスクレピオスの姿であるとされます。
紀元元年頃の著作家ヒュギーヌスは、アスクレピオスと蛇との関係は、蛇が死んだ仲間の蛇に薬草を与えるのを見て、死者を蘇らせる術を得たためのものとしています。
◾️アポロンとキュクロプス
息子を殺されたアポロンの怒りは収まりません。
けれどゼウスに対して直接の非難はできなかったため、その怒りはゼウスの雷霆を造った巨人キュクロプスたちに向けられ、キュクロプスの兄弟たちは全滅させられてしまいます。
その所業にアポロンはゼウスに罰せられ、テッサリアの王アドメートスのもとで羊飼いとして家畜の世話をさせられています。
アスクレピオスの系譜
グスタフ・クリムト作
アスクレピオスの子どもたちもまた医学の知識に長けています。
- マカーオーン 外科の名医
- ポダレイリオス 内科の名医
- イアーソー 治癒を司る
- アケソー 回復を司る
- パナケイア 健康・癒しを司る女神
特にヒュギエイアは父と同じように蛇を操る衛生を司る女神。蛇の巻き付いた杯は「ヒュギエイアの杯」と呼ばれ、薬学のシンボルとされます。
その他、古代ギリシアの医者ヒポクラテスもアスクレピオスの子孫であるといわれています。
◾️アスクレピオスの杖
アスクレピオスの杖はクスシヘビの巻きついた杖。
医療・医術のシンボルマークとして現代でも世界的に広く用いられています。
ヘルメスの杖「ケリュケイオン」と似ているように思いますが、アスクレピオスの杖はヘビが1匹、ケリュケイオンは2匹のヘビが巻きつき、杖の上に翼が付いています
◾️アスクレピオス信仰
アスクレピオス神は紀元前5～後3世紀頃の地中海世界で、人々の悩みに応える医神としてあつく信仰されていました。
そのアスクレピオスの療法は、夢の中で患者を治療するというもの。
アスクレピオスを信仰する患者たちは聖地エピダウロスを訪れます。そこでアスクレピオスの夢を見ることができれば、病は癒えると信じられていました。
アスクレピオスをまつる神殿は病を癒す場とされ、病院は「アスクラピア」と呼ばれ、その遺跡からは治癒の記録を記した碑文や医療器具が出土しています。
けれど、4、5世紀以降、キリスト教の教徒によって全てのアスクレピオスの聖地は破壊されてしまいます
サーヴァント、神姫になる、アスクレピオス
出典：gamewith.
「Fate/Grand/Order」のアスクレピオスは味方全体にHP回復、弱体無効を付与できる優秀なサポート役。
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「神姫プロジェクト」のアスクレピオスは、会得した治癒法や魔術は奇跡の域に到達している、死者蘇生の法を求める女性。
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アスクレピオス まとめ
人間が死者を生き返らせる、なるほど超えてはならない神の領域を侵害していると思います。
けれど、どんどん人間の寿命は伸びてゆき、いつか、蘇生ではなく、死なないという域にまで到達するのかもしれません。
それも、意外に、そう遠くない未来のような気もします。
怖いような、楽しみなような。。。。
