ベニーニュ・ガグネロー作「アキレウスの教育」（1785年）
ケイローンはギリシャ神話のケンタウロス。
主神・ゼウスの異母兄弟という神々の王家の血筋で、ギリシャ神話最高の英雄・ヘラクレスや最高の戦士・アキレウス、神々の医師・アスクレーピオスを育てた賢者です。
死後、射手座になった半人半馬。
その偉大なる半獣・ケイローンに注目です。
王家の血筋でありながら半獣として生まれ、多くの英雄を育てたケイローン、その生涯とは。
目次
ケイローン、射手座になったケンタウロス
「アキレウスの教育」（1798年）
ケイローンとは
ケイローン(Chiron)はケンタウロス族の賢者。
一般的に知られる粗暴で好色なイクシオンの子ケンタウロスとは出自が異なる、ティータン族クロノスとニュンペーのピリュラーの子。
主神ゼウスとは異母兄弟である、不死の神。
ゼウスの子・アポロンから音楽、医学、予言の技、アルテミスから狩猟を学んだ賢者。
ヘラクレスやアキレウスなど、名だたる英雄たちを育てたことで知られています。
そのヘラクレスの射った毒矢を受けたことが原因で死亡。
死後、天に昇り、射手座になったケンタウロスとしても知られています。
家系
父
前主神であったティータンのクロノス。
母
ピリュラー ティータンの河の神・オケアノスと妹で妻・テテュスの間に生まれた水のニュンペー・オーケアニデスの一柱
兄弟
ドロプス
妻
カリクロー 一説にはアポロン、ペルセス、またはオケアノスの娘。幼いアキレウスの乳母とされます。
他説、ナイス
子供
カリクローとの間に
⚫︎ ヒッペ
プロメテウスの息子デウカリオンの孫・アイオロスに誘拐され、メラニッペまたはアルネーを出産。父に告げることを恥じ、一説にはアルテミスが彼女をペガサス座に変えています。
⚫︎ エンデーイス
アイギーナ島の王アイアコスと結婚。2人の息子アルゴナウタイの英雄テラモーンとペレウスを出産。
⚫︎ オキュロエー
父ケイローン（あるいはアスクレピオス）に彼の死の運命を告げたため、ゼウスに馬に姿を変えられ、話す能力を奪われています。
⚫︎ カリストゥス 長男
をもうけます
他説
⚫︎ エンデーイス
ペレウスと結婚。アキレウスの母となった女神、あるいは水のニュンペー・ネレイス。そのテティスも一説にはケイローンの娘とされます。
ケイローンの誕生と幼年期
ティーターンのクロノスは妻レアーの目を逃れるために馬に姿を変えてニュンペーのピリュラーと交わります。
けれどレアーに知られ、馬の姿となったクロノスはその場から逃げ去り、ピリュラーはペラスゴスの山中で半人半馬のケイローン出産。
ピリュラーは生まれた子の姿を見て悲しみ、ゼウスに願い、菩提樹（ピリュラー）に変えられます。
母を失い孤児となったケイローンは、後にアポロンから音楽、弓術、医術、薬学、そして予言の術、アルテ ミスから弓術と狩猟の術を与えられます。
ケイローンはペーリオン山の洞穴に住み、薬草を栽培し病人を助けて暮らしました。
そのケイローンは植物学と薬学の発見者としても知られています
主な弟子とその関わり
⚫︎アスクレピオス
クリストファー・アンターバーガー作
アスクレピオスはアポロンとテッサリアの女王・コロニスの間に生まれた医術の神。
けれど、コロニスは人間の男性との情事をアポロンに知られ、アルテミスによって殺されます。
アポロンは妊娠していたコロニスから胎児を救い、ケイローンに託します。
その子が後のアスクレピオス。
ケイローンはアスクレピオスを育て、アポロンの能力の一つである治癒の術を授けます。
一説ではケイローンの娘オキュロエはアスクレピオスに彼の運命と死を予言。
ゼウスはオキュロエを牝馬に変ています。
⚫︎ペレウス
紀元前500年頃
ペレウスはケイローンの娘エンデイスとアイギナ王アイアコスの子。
ケイローンはペレウスの祖父にあたります。
アルゴノーツのひとりでイオルコスの王・アガストスの娘・アスティダミア（ヒッポリュテー）はペレウスを慕いますが相手にされず、父・アカストスにペレウスが彼女を強姦しようとしたと告げます。
アカストスは怒り、ペレウスの殺害を計画、森の狩猟に誘います。
ケイローンはアガストスの剣を奪い、森のケンタウロスに襲わせ、ペレウスの命を救いました。
その後、ケイローンはペレウスとテティスとの関係をとりもち、ふたりは結婚。
アキレウスが生まれます。
︎⚫︎イアソン
「ウィリアム・ラッセル・フリント作 1924年」
イアソンはアルゴナウタイのリーダー。
ポセイドンの子でイオルコスの王・アイソーンの息子でメディアの夫
イアソンの父アイソーンはテッサリアの支配権を握ろうとする兄ペリアースに幽閉され、その間、アルキメデスという女性との間にイアソンをもうけます。
アルキメデスはペリアースの目を逃れるために死産を装い、生まれたイアソンをケイローンに託します。
その後、イアソンの息子メドゥスもまた、ケイローンの弟子の一人となります。
⚫︎ アキレウス
ドナート・クレティ作「ケイーロンに託されるアキレウス」
ケイローンとペレウスの関わりは厚く、テテュスとの結婚の後もケイローンはペレウスを助けています。
ペレウスの盲目の友人で後にアキレウスの教師となったフェニックスの視力も回復させています。
そして、我が子アキレウスもケイローンに託します。
いくつかの説で、以前のアキレウスは「リギュロン」という名で呼ばれており、ケイローンが彼に新しい名前を与えたと伝えられています。
後に、アキレウスはケイローンから学んだ医術も、共に育った無二の親友バトロクロスに伝授しています。
また
⚫︎ 若きヘラクレス
⚫︎ オデュッセウス
⚫︎ カストール 双子座になった馬術の名手
らに武術や馬術を伝授しています。
ケイローンの最期
ヘラクレスは第4の試練、エリュマントス山の大猪を生け捕りにするためにケンタウロスのボロスに助力を求めます。
その際、ヘラクレスはケンタウロス族の酒を飲んふだことでケンタウロス族と争いになってしまいます、
争いの最中、ヘラクレスの射ったヒュドラーの毒矢が誤ってケイローンにあたってしまいます。
不死の力を持つケイローンは、永劫の毒の痛みに耐えきれず、その力をプロメテウスに譲り、死を選びます。
その際、ヘラクレスはカウカソス山に縛られているプロメテウスを解放。
ケイローンの死を惜しんだゼウスは、彼を天に上らせ射手座にしています。
ケイローン、現代でも射手座のアーチャー
『Fate/Apocrypha』のケイローンはアーチャークラスのサーヴァント。
魔術師フィオレ・フォルヴェッジ・ユグドミレニアに召喚された、「不死」の返還を求める「神霊」です。
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『聖闘士星矢』の射手座はアイオロス。
仁・知・勇の全てに優れた黄金聖闘士の中心人物のひとり。
アテナを守るために命を懸けた聖闘士の鑑と称される人物です。
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ケイローン まとめ
マックスフィールド・パリッシュ作「イアーソーンと師 」（1909年）
不義の子、獣神とはいえ、ケイローンはクロノスの子、ゼウスの兄弟という血筋なんで、ヘラクレスやアキレウスを、その他多くの英雄たちを育てたことに納得です。
地に降りて人間を育てた神という図式が浮かびます。
ケンタウロスである姿も神々しく思えます。
