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アムピトリーテー、海の女王。 ポセイドンの妻になったネレイデス

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シャルル=ジョセフ・ナトワール作『アンフィトリテの勝利』(1730年)

日本でもポセイドンが海神であることはあまりにも有名ですが、元は大地の神であったことはあまり知られていないように思います。

海神になったのはタイタン族との戦いの後、ゼウスとハデスとの兄弟三柱で、なんとくじで決めちゃっています。

 

そうして、海神としての実権を握ったのが元からの海の女王・アムピトリーテーとの婚姻によって得たものともされています。

 

そのアムピトリーテーは美しく寛容で慈愛に満ちた、海の妖精・ネレイデスでもある女神さま。。。

 

 

アムピトリーテー、海を支配するネレイデス

ボン・ブーローニュの追随者作

アムピトリーテーとは

アムピトリーテーAmphitrite アムピトリテ・アンフィトリテ)はギリシア神話の海の女王で海神ポセイドンの妻

その名は「大地を取り巻く第三のもの」を意味します。

聖獣はイルカ。

象徴は冠、ヴェール、王笏(君主が持つ杖)。

ローマ神話の海の女神サラキアと同一視されます。

 

アムピトリーテーは一般的には海神ネレウスと外海神オケアノスの娘ドリスとの間に生まれた海のニンフ・ネレイデスの1人とされます(ヘシオドスの『神統記』)

他説、古代の歴史学者アポロドロスは、ティーターン族のオケアノスと兄妹のテテュスの娘、川の女神オケアニデスでもあるとしています。

 

アムピトリーテーはポセイドンの配偶者となり、ポセイドンとの間に、トリトン、ロデー、ベンテシキュメをもうけます

これら三柱の子供達は

  • トリトンは新月、
  • ロデー(ロドス)は満月、
  • ベンテシキュメは旧月

を現しているとされ、アムピトリーテーの三面相を示すものともされます。

 

アムピトリーテーは寛容で夫の多くの浮気を黙認する、慈愛の持ち主。

美しい種族として知られるネレイデスの中でも特に美しい女神としても知られています。

 

海の女王アムピトリーテー

フランス・フランケン作

アムピトリーテーは静かな海の化身

紀元前8世紀の吟遊詩人・ホメロスの『オデュッセイア』では、海の巨大な怪魚や海獣を養っていると記されています。

海獣は時折大波を起こしその巨大な波は船乗りを危険にさらしました。

 

ヘーシオドスの『神統記』では、アムピトリーテーは同じネレイデスのキューモドケー、キューマトレーゲーとともに、海洋を操る力を持ち、大津波や嵐を起こすことも、荒れ狂う風を鎮めることできたとされます。

 

ポセイドーンは元は大地の神であったのが、アムピトリーテーとの結婚によって実質的にも海も司るようになった

古代ギリシアの抒情詩人・ピンダロスは、ポセイドンを「海の偉大な神、紡錘の女神アンフィトリテの夫」と表現しています。

 

アムピトリーテーの容姿

ニコラ・グラッシ作

アムピトリーテーは大海を思わせる美しい青黒い瞳の持ち主。

作品の中でのアムピトリーテーは、他のネレイドとは異なり、女王としての特質を持って表現されています

ポセイドンの隣で玉座に座るか、トリトンやネレイドに付き添われ、ヒッポカンポス(海馬)や他の深海の生き物に引かれた戦車に騎乗しています

女王のローブを羽織り、こめかみにカニのハサミが付いている姿で描かれるものもあります。

 

ポセイドンとの結婚

古代ローマのフレスコ画

アムピトリーテーは姉妹たちとともにナクソス島で踊っているときにポセイドンによってさらわれてしまいます

けれど、アムピトリーテーは粗野なポセイドンを嫌って海の西端にいるプロメテウスの兄アトラス(またはオケアノス)のもとに逃げ、彼女の姉妹たちによって匿われていました。

 

そこでポセイドンはイルカにアムピトリーテーを探させることにします。

そのうちの一匹が見事大西洋の島にアムピトリテを見つけ出し、ポセイドンと会うように言葉巧みに説得しました。

ポセイドンはアムピトリーテーと結婚、この功績によってイルカは天に登ってイルカ座となりました。

他説、当初ポセイドンの求婚を拒みましたが、ポセイドンからイルカをプレゼントされ、婚姻を承諾したともされます。

 

ポセイドンとアムピトリーテーの子供達 

ポセイドンとアムピトリーテーのあいだには、三柱が生まれます

  • トリトン 上半身が人間、下半身がイルカ(または魚)の深海に君臨する海神
  • ロデー(ロドス) ロドス島の女神、太陽神ヘリオスの妻。ヘリオスとの間に7人の息子をもうけています
  • ベンテシキュメ  ポセイドンの子・エウモルポスを育てたといわれます

 

エウモルポス

エウモルポスはポセイドンとキオネの子。

キオネは北風の神ボレアースとアテナイ王の娘オーレイテュイアとの子。

兄妹に

  • クレオパトラー ピーネウス(アンドロメダの元の婚約者)の妻で、パンディーオーンの母、
  • ゼーテースとカライス ハーピーを倒したアルゴナウタイの有翼の英雄

がいます 。

キオネポセイドンとの間にエウモルポスをもうけますが、父に知られぬよう赤ん坊を海に投げ捨ててしまいます。

ポセイドンはその子を救い、ベンテシキュメに託します。

 

神話の中のアムピトリーテー 

アムピトリーテーとテセウス

エウフロニオスとオネシモス作、紀元前500~490年

アテナイの英雄テセウスもポセイドンの息子。

トロイゼンの王女アイトラとの間に生まれ、数々の怪物を倒した英雄です。

 

ミノタウロスを倒すためクレタ島を訪れた際、ミノス王はテセウスがポセイドンの息子であることを信じようとせず、自らの指輪を海に投げ入れます。

そして、テセウスに「もしポセイドンの息子なら指輪を取り戻すこともできるはず」と告げます。

テセウスが海に潜ると、イルカがポセイドンの王宮までテセウスを運びます。

宮殿で出迎えたアムピトリーテーはテセウスにミノスの指輪と、真紅の外套、花冠を授けています

 

アムピトリーテーとアポロン

『ホメーロス風讃歌』の「アポロン讃歌」の中では、レトがデーロス島でアルテミスとアポロンを出産したとき、ディオーネー、レア、テミスをはじめとする多くの女神たちとともに立ち会った女神の一柱でもあります。

 

 

アムピトリーテー、現代でも萌え系美女

ソーシャルゲーム『ドラゴンプロヴィデンス』のアムピトリーテーは海を意味する神話の神。常に落ち着いた仕草で、人間からもアルカナからも一目置かれている、冷静な頭脳の持ち主。

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百神~ヒャクカミ~』のアムピトリーテーはギリシャ海中のモンスターコンプリートで出現する、ネーレウスの娘でポセイドンの奥さん。神具はポセンドンからもらったイルカのぬいぐるみ。

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アムピトリーテー まとめ

ジャン=ユーグ・タラヴァル作(1780年)

ポセイドンは数でいえばゼウスを超える子を生したとか。

女癖が悪いというのも、度を越してしまうとこれも英雄の証のように思えてきます。

それを容認なのか、黙認なのか。

アムピトリーテーの義理の子に対する態度はヘラとは対照的なようで。

良いか、悪いかは別として、その方が心の安らぎは得られると思います。

 

アムピトリーテー、聡明な女神様なようで。

 

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