すべてが死に絶える最終戦争ラグナログの後、その希望となる結末に注目です。
バルドルはゲルマン神話の光の神、非業の死をとげるオーディンの愛息子。
多くのものから愛され幸せに暮らす、美しい容姿に恵まれたこの神は謂れのない妬み嫉みをかい、不遇な運命を辿ることになります。
けれど、、、、
目次
ラグナログの後蘇る、幾つもの物語で語られるバルドルの生涯
バルドル(古ノルド語でBaldr、英語ではBalde)は北欧神話の光の神。
その名は「主君、主人、君主、あるいは白い」を意味します。
アース神族の中でも最も美しい、白いまつ毛の光り輝く容貌。聡明で、雄弁、穏やかな性格。誰からも愛され、彼の裁きは不変であるといわれる神。
主神オーディンと、愛と結婚と豊穣の女神フリッグとの間に生まれた、オーディンに最も愛された子。
妻はネプ神の娘の女神ナンナ。2柱の間には正義・平和・真実を司る息子フォルセティが誕生しています。
弟には
- ロキにそそのかされ、バルドルを殺める盲目のヘズ、
- バルドルを蘇らせるため、ヘルヘイムへの使者を務める俊足のヘルモーズ、
- バルドル殺害の復讐を果たすため、オーディンが巨人族の女性リンドに産ませた司法神ヴァーリ。 ヴァーリは一夜にして成人し、バルドルを殺めたヘズを殺害しています。
- ヴィージと呼ばれる森で半ば隠遁生活をおくるヴィーザル
の神々がいます。
住まいはアースガルドでも最も美しく、争いごとのない館ブレイザブリク。
フリングホルニという巨大な船を所有しています。
ロキの悪巧みによって、盲目の弟ヘズの射たヤドリギの矢を受け、非業の死を遂げます。
神話の中で語られるバルドル
「古エッダ」『バルドルの夢』
偉大な両親を持ち、聡明かつ優美で何不自由なく生活を送っていたバルドルですが、ある夜自らの死を暗示する夢を見て目を覚まします。
バルドルの父オーディンは、バルドルの夢の答えを知るために素性を隠して旅をし、死者の国ニヴルヘイムに辿り着きます。
そこでは死者達が蜜酒を用意して酒宴の準備をしています。
オーディンは女予言者の魂にその目的を問います。魂は「バルドル様を迎える準備だ」と答えます。
そしてバルドルが弟のヘズに殺される運命にあること。そのヘズへの復讐を果たすため、オーディンは巨人族のリンドと交わり、ヴァーリが誕生。ヴァーリは一夜にして成人して、目的を果たすことを告げます。
「スノッリのエッダ」『ギュルヴィたぶらかし』
**母フリッグはバルドルに不死身の身体を与えます、が…**
息子の身を案じた母フリッグは9つの世界をまわって、すべての生物・無生物からバルドルに傷一つつけないことの約束をもらいます。
これによりバルドルはあらゆるものからダメージを受けない無敵の身体を手に入れたのです。ただひとつ約束されていなかったヤドリギを除いて…
不死身となったバルドルは神々から盛大にお祝いを受けます。神々は不死身のバルドルに武器を投げつける遊びに興じます。
** ロキのイタズラで命を落とすバルドル **
どんな武器に突かれても平気なバルドルに不快感を覚えた悪神ロキはフリッグに探りを入れます。
老婆に化け、フリッグからうまくヤドリギのことを聞いたロキは、さっそくバルドルの兄弟である盲目のヘズに取り入り、言葉たくみにバルドルにヤドリギを投げさせます。
ヤドリギに身を貫かれたバルドルはあっけなくも命を落としてしまうのでした。
この時、妻のナンナも、夫の死の哀しみを耐えきれずにショックで死んでしまいます。
** 母の願いも虚しく復活を果たせず **
バルドルの死を嘆き悲しんだフリッグに応えて、バルドルの弟のひとり、俊足のヘルモーズが父オーディンよりスレイプニールを借り、ヘルヘイムへと向かいます。
ヘルヘイムを流れるギョッル川に架かるギャッラルブルー橋では、橋の管理をしていた女巨人のモーズグズも、死者には見ることもできないほど速いヘルモーズの俊足を認めると、ヘルヘイムへの入国を許します。
ヘルモーズは冥府の女王ヘルの館エーリューズニルで兄バルドルとナンナと再会。
死の国の女王ヘルにバルドルの復活を懇願します。
そこでヘルが出した条件は全世界のものがバルドルのために泣くこと。
世界の殆どのものがバルドルのために涙を流します。
けれど、バルドルの死に涙するようおふれを出した使者は、洞窟の中に隠れていたセック(感謝)と云う名を持つ女巨人と出会います。
セックは実はロキが変身しており、「自分は老人(オーディン)の息子なんか愛していない、ヘルは自分の手に置いたものを手放すな」と語ります。
こうしてバルドルの復活は果たせず、神々は哀しみと怒りから、ロキに永劫蛇の猛毒を浴びせ続ける罰を与えます。
** そしてラグナログが訪れます **
ロキを除く全てのものから愛された光の神バルドルの死によって、世界から光が徐々に失われ、遂に世界の終焉ラグナロクが訪れることになります。
古エッダの『巫女の予言』
ラグナログでは、怪物たちがとき放たれ、巨人族とともに進撃、神々も巨人も死に絶え、旧世界は一掃されます。
けれど、その後、バルドルは新しい大地にヘズと共に降り立ち、ラグナロクを生き延びる異母弟のヴァーリ、ヴィーザルと再会。
オーディンの息子達が新たなる世界の神々となります。
『デンマーク人の事績』
『デンマーク人の事績』は中世デンマークの歴史家サクソ・グラマティクスが著した歴史書。
この中でバルドルはオーティヌス(オーディン)の息子バルデルスとして登場しています。
バルデルスはどんな武器も貫けない強靭な肉体を持つ勇猛な半神の戦士。
弟のヘズはホテルスとなって、終生のライバルとして描かれています。
ホテルスの乳兄妹のナンナをめぐって、バルデルスとホテルスは争い、バルデルス(バルドル)が敗れます。
ちなみにこの物語ではナンナはホテルス(ヘズ)と結婚しています。
バルドル、戦士、幻魔にもなる、本来はイケメン北欧の神
出典:psneolog
光の神という異名から美しいキャラクターとして描かれることが多いバルドルですが「ゴッドオブウォー」では不死身の狂戦士というイメージで登場します。
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乙女ゲーム「神々の悪戯」のバルドルのフルネイムは「バルドル・フリングホルニ」。光を司り、神をも魅了してしまう人を惹きつけてやまない魅力を持つ正真正銘の人気者
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「女神転生」のバルドルは “ベル神”の一柱であり、『ベル・デル』の名で登場する幻魔。頭部には光輪を思わせる楕円形の飾りがある銀一色のコスチューム。
バルドル まとめ
正直なところ、バルドルはロキの企みで命を落とす、主神オーディンの美しい息子。
北欧神話の中ではロキやトール、オーデインに比べて、イマイチ存在感がないようなイメージを持っていました。
けれど、最後のひとこと、「ラグナログの後に蘇り、オーディンの息子たちが新しい世界を再生する」というような内容に、極めて重要な、希望を一身に受けた、未来を担う、まさに光の神なのだと再認識しました。
マジ、ラグナログで全てが死に絶えてしまわなくって、よかったぁ〜