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ニョルズ、エルフの王フレイ、美の女神フレイヤの父、海と豊穣を司る神

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出典:deviantart

ニョルズは北欧神話の神、フレイとフレイヤ兄妹の父であり海と豊穣を司る神。 

兄妹と比べイマイチ目立たないようにも思いますが、 

北欧では広く人々に崇拝される神。 

そのニョルズのご紹介です。 

 

ニョルズの担う役割、破局を迎えることとなる二柱の妻との結婚生活とはどのようなものであったのか、ご覧ください。 

 


 

ニョルズ、富や幸運を授ける海神

WG・コリングウッド作1908年

ニョルズとは 

ニョルズ (Njord )は航海、風、漁業、富、豊穣を司る、北欧神話の海神 

 

ヴァン神族として名前のない妹との間にエルフの王フレイと美と愛の女神フレイア兄妹をもうけます 

その後、アース神族との戦いで互いの人質の交換としてフレイ、フレイヤ兄弟とともにアース神族に加わり、女神スカジとの不運な結婚生活を送ったとされます。 

 

アース神族になったヴァン神族の海神 

WG・コリングウッド作『フレイの恋煩い』(1908年)

ニョルズは元はヴァン神族。 

古エッダ』の『ロキの口論』ではフレイ兄妹はヴァン神族のニョルズとニョルズの妹との間に生まれた子供たちと伝えられています。 

アース神族では近親婚は認められていなかったため、ニョルズは妹である妻と離婚。 

一説ではその妻は大地の女神ネルトゥスであったと伝えられています。 

 

フレイ・フレイヤとともに人質としてアース神族に加わります 

その経緯については『ユングリンガ・サガ』で語られています 

ヴァン神族の魔女・グルヴェイグの処遇が発端で起こった戦いに両陣営は疲れ果て、和平協定を結び人質を交換。

アース神族は知恵の神・ミーミルと美しい容姿の神・へーニルを、ヴァン神族はニョルズ、フレイとフレイヤを差し出しました。

ニョルズはヴァン神族で最も優秀な神で、その子どものフレイとフレイヤもアース神族から歓迎されました 

詳しくは→ 

ニョルズ、フレイ、フレイヤはオーディンから犠牲祭の祭司と神殿のゴシ(神官)を任ぜられ、住居と土地を与えられます 

アイスランドの詩人スノッリ・ストゥルルソンの『散文のエッダ』でもニョルズの住まいについて語られています。 

ニョルズは港を意味するノーアトゥーンに住まいます。 

この館は天にあるとも、ログ湖(現在のスエーデンメーラレン湖)にあるとも伝えられています。 

 

オーディンの死後、ニョルズは2代目のスウェーデン王となったとされます。 

 

ニョルズの役割 

作者不明 1893年

海の神であるニョルズは航海や漁業の守護神でもありました 

海と火を操り、風の動きを支配するニョルズは航海と漁業に携わる者から篤く信仰され、安全や大漁を祈願されています 

 

寒い気候の北欧では夏の間しか漁業ができないことから、ニョルズは夏の神としての側面も持ち、農業に適した気候を司ることから豊穣の神、富や幸運を授ける神として崇められていました 

 

そのためか、ニョルズは裕福な神、人々に富を与える神として信仰されています 

 

ニョルズとエーギル

航海や漁業を司る神であるニョルズに対し、エーギルは大海に起こる自然現象を司ります。 

エーギルの妻ラーンは大きな網を持っていて、船や人を海中に巻き込むといわれる女神 

 

アースガルズにも住まうニョルズは同じく北欧の海神であるエーギルが起こす暴風雨を止めるためノーアトゥーンに戻ります。 

ある時ニョルズは、暴風雨を起こすエーギルに「「妻ラーンの網を裂く」と脅し、荒れ狂う海を鎮めたと伝えられています。 

 

現在も北欧の各地には、「ニョルズの神殿」「ニョルズの森」「ニョルズの耕地」といった地名が多く存在し、ニョルズが北欧の人々に広く信仰されていたことがうかがえます。 

 

ネルトゥスは妹にして妻、あるいはニョルズ自身?

エミール・デープラー作(1905年)ネルトゥス

ネルトゥスはキリスト教以前の北欧で信仰された豊穣を司る女神

その存在は紀元1世紀ローマの歴史家タキトゥスの著書『ゲルマニア』に記されています。

ネルトゥスは大洋にある島の鎮守の森を守る、「ネルトゥスが訪れた全ての場所に平和が訪れる」と伝えられる太古の神

森に安置されている聖なる荷車から、触れることが許された神官だけがその存在を感じ取ることができると伝えられています。

ネルトゥス「Nerthus」はゲルマン祖語の「Nerþuz」、ニョルズの直接的な祖語となるため、一説ではネルトゥスはニョルズと同一視されます

ニョルズはかつては両性を持つ神であった(ネルトゥスはニョルズ)、またはヴァン神族に残った妹で妻である女性はネルトゥスであるとも伝えられています。

 

巨人族スカジとの結婚

ヴィルヘルム・ワーグナー作 1882年

スカジは巨人族の女性。ニョルズとの結婚の経緯については『スノッリのエッダ』に記されています。

父スィアチが神々に殺され、仇を討つためアースガルズに攻め入ったスカジに、神々はアース神族との結婚をもって和解を提案し、スカジはそれを受け入れます。

スカジは最も美しいバルドルを選びたかったのですが、神々が出した条件によって男神の足だけを見て相手を選ばなければならないことになり、結果、ニョルズとの結婚が決まります。

スカジとニョルズは共に暮らし始めますが、山の守り神のスカジと、海神ニョルズの環境の違いは大きく当初はそれぞれの住まいを往復していいましたが、自然と両者は別れ、スカジは山の館スリュムヘイムで暮らすようになります。

 

その後、スカジはオーディンと結婚、二人の間には多くの息子が生まれています 

 


 

ニョルズ、現代でも海を司る男神?

ゆるドラシル」のニョルズはヴァン神族の重鎮。彼の大剣が天を貫くとき、世界は再び裏切りと狂乱に包まれます

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百神〜ヒャクガミ〜」のニョルズは懐が広くおおらかで優しい北欧神話の海の神。様々な神達を海から見守っています

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アクションアドベンチャー「ゴッド・オブ・ウォー」では、宝の地図「ニョルズの漕ぎ手」として登場。ノースリの砦、トラベラーと戦った船の中で見つけられます。

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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」では「船着の館(ノアトゥーン)」を本拠とする、漁業系ニョルズ・ファミリアを率いる、漁を司る男神

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ニョルズ まとめ

作者不明  1832年作

暴風で人を死に追いやり、死後の処遇も富を求めるエーギル夫妻神と比較して、人に富をあた、繁栄に導くニョルズ神はありがたい神様とイメージします。

なるほど、フレイやフレイヤの父らしい温厚な神。

なのに、結婚生活がうまく行かないのは可哀想、です

 

 

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