「エコー」、日本でも音響用語として馴染みの単語です。
その由来はギリシャ神話の山の妖精。
哀しい運命に翻弄され、ついに言葉の残像だけになってしまったニンフ・エコーの物語です。
エコー、木霊になったニンフ、その物語
エーコー( Echo)は、ギリシア神話に登場する山のニンフ。
ギリシア語の木霊(こだま)を擬人化された妖精です。
陽気な性格で歌と踊り、おしゃべりを好む妖精でした。
その山のニンフ・エコーが木霊になった経緯については代表的なものとして2つの物語が語られています
- ひとつは、古代ローマ詩人オデッセウスの『変身物語』(紀元後8年)の「エコーとナルキッソス」。
- 他のひとつは、古代の作家・ロンゴス『ダフニスとクロエ』(紀元後2世紀)の中で語られる「バーン神とエコー」の物語です。
ナルキッソスとエコー
ある時、エーコーはゼウスの浮気相手となった山のニンフたちを助けるために、ゼウスの妻ヘラを相手に長話をし続けたことがありました。
そのことがへラに気づかれぬはずもなく、エーコーはへラの怒りをかってしまいます。
その罰として、自分からは話しかけることもできず、会話も続けることができず、ただ誰かが話した言葉の語尾を繰り返すことしかできなくされてしまいました。
エーコーはある日、狩をして他の人とはぐれてしまったナルキッソスに出会います。
そして一目でその美しさに恋をしてしまいます。
けれど、話しかけることができません。
ただ、彼の言葉の語尾を繰り返すだけ。
ナルキッソスが叫びます
「誰かいる(here)?」
エーコーは答えます
「ここにいるわ(here)」
「ここにきて(come)?」
「いま行くわ(come)」
エコーが姿を現し、ナルキッソスに近づこうとしますが、ナルキッソスに残酷な仕打ちを受けます。
「それ以上近づくな、お前なんかにそれ以上近づかれたくない!」
「近づかれたくない」
エーコーは屈辱と恋の悲しみから次第に痩せ衰え、肉体を失くし、ついに声だけの存在になってしまいます。
その後のナルキッソスは復讐の女神ネメシスによって、水面に映る自分の姿に恋をし、命を落とすことになります。
パーン神とエーコー
パーン神はアイギパーン( Αἰγίπαν, Aigipān, 「山羊のパーン」の意)とも呼ばれる牧神、牧羊神、半獣神です。
羊飼いと羊の群れを監視する神で、四足獣のような身体と、山羊のような角をもつ獣人。父親はゼウスともヘルメースともいわれ、母親はニュムペーであるといわれています。
好色な神で多くの女神やニュムペーに恋心を寄せています。
そのひとりが森のニュムペーエーコーでした。
エーコー(Ηχω、Ekho)は歌と踊りの上手なニュムペーであり、異性に関心がなく、愛情を軽蔑しているようなところのある妖精でした。
パーンはエーコーに想いが伝わらないことに怒り、かねてより優美なエーコーの存在に嫉妬していたこともあり、ついに従者にエーコーを襲わせる暴挙に出ます。
バーンに従う者たちエーコーに襲いかかり、八つ裂きにしてしまいます。
大地の女神ガイアがエーコーの肉片を受け取り、エーコーの体を隠しましたが、その後もエーコーの声は他の者が話した最後の数語を繰り返し、木霊となってパーンを怯えさせたと伝えられています。
別の伝承では、エーコーはパーンとのあいだに一人の娘イアンベー(イアムベー)、あるいはイユンクスを産んだとされています。
イアンベーはデメテル女神が、娘のペルセポネーを捜しエレウシースに至ったとき、領主ケレオスの館で冗談を言って、女神を笑わせた女性。
イユンクスはゼウスに魔法をかけ、河の神イーナコスの娘イオへ恋をさせたため、ヘラの怒りに触れ鳥のアリスイに姿を変えられたと伝えられる女性です。
現代でもはかない存在? エーコー
かつてないクオリティーのスマホゲーム『メビウスファイナルファンタジー』では主人公と行動をともにする妖精。
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「PandoraHearts(パンドラハーツ)」ではナイトレイ公爵家のヴィンセント=ナイトレイを主とする従者として登場。常に無表情、機械的に袖に隠した暗器を使いこなすちょっと怖い存在?
エーコー まとめ
コミュニケーションをはかるのに会話は大切です。言葉は言霊となって他者に想いが伝わります。
だからこそ不用意に使えば、そのことが我が身を破滅させる原因にもなりかねません。
今のようにメールやSNSのように言葉を吟味して使える機会が増えたことは、ある意味良いことなのかもしれません。
ただメールなんかに頼りすぎると、しゃべるのが苦手になる、なんてことがあるかも。
ん〜〜バランスが大切ってことですね。