フェアリー(妖精)でまず思い浮かぶのは「羽根のある小人」。
けれど、広い意味ではギリシャ神話のニュンペーや北欧神話のエルフ、ゴブリンやホビット、魔女や一部の妖怪なんかも妖精に分類されるんです。
そこで、改めてフェアリー(妖精)に注目です。
今までの妖精のイメージが一新するかもしれません。
フェアリー、羽のある小人の妖精(?)
フェアリーとは
フェアリー(Fairy)は狭義ではイングランド、スコットランド、アイルランド、ウェールズ地方に伝わる妖精。
フェアリー(Fairy)の語源はラテン語の「fatum(運命、神託)」。
それが「fatare(魔法をかける)」から、英語で「妖精」を意味する「フェイ(Fay)」、フェイの魔法にかかった状態『フェイ・エリーFay-erie』となり、「フェアリー」の名になったとされています。
そして、次第に魔法を使う不思議な存在そのものを差すようになったということです。
英語のフェイ(Fay)「妖精」は、アイルランド語・ゲール語では「シー(sidhe)」。
スコットランドのディーナ・シー(daoine sith)、スコットランドやアイルランドのバンシーbean sidhe)、アイルランドのリャナンシーなど、各国ごとに異種の妖精が伝えられ、その性格や容姿もさまざまです。
広義での、フェアリー(妖精)は神話や伝説に登場する、神と人との中間に位置する超自然的な存在の総称。
北欧神話の妖精エルフやギリシャ神話のニュンペー、ゴブリンやオーク、様々な小人たち、魔女や妖怪の類まで妖精(Fairy)に分類されます。
フェアリー(妖精)の定義についてはさまざま。
「自然の力が擬人化されたもの」や「死者の魂が形となったもの」といった解釈もされています。
キリスト教にもフェアリーは登場します。
キリスト教においてのフェアリーは堕天使。
天界に暮らすには邪悪、けれど地獄へ堕ちるには善良すぎる存在として描かれています。
リャナン・シー
リャナンシー(Leannán-Sídhe)は「妖精の恋人」を意味するアイルランドの妖精。
芸術家に取り憑き、創造力を与える代償に、生気や血を吸い取って死に至らしめると伝えられています。
フェアリーの外見
一般的にはフェアリーは羽根のある妖精としてイメージされます。
けれどその外見については、それぞれの地域や伝承によって様々です。
スコットランド北部のフェアリーは濃い灰色の服を着た小人、時には鎧を着ていると伝えられています。
- いくつかの民間伝承では、妖精は緑色の目をしています。
- 履物を履いているものもあれば、裸足。
- 羽根は、トンボや蝶のような半透明なものと認識されています。
妖精がさまざまな姿をとることについては「妖精は自由自在に大きさや体格などを変えることができる。
これは魔法でそのように「錯覚」させる能力によるもの。
なので、巨人となった妖精が人間を踏み潰すというようなことはできない」のであるとか。
人以外の姿の妖精や目には見えない妖精も多く存在します。
🔳 ウィルオウィスプ
日本でいう鬼火の一種、青白い光を放ち浮遊する霊体。
現世を彷徨い、夜の湖沼や墓場などに出没し、旅人を惑わすと伝えられています。
また人間以外の動物の姿をとる妖精も存在します。
🔳 クー・シー
クー「犬」・シー「妖精」、スコットランドに伝わる犬の妖精です。
全身に長い暗緑色の体毛を持ち、牛ほどに大きな犬で、妖精達の番犬であると伝えられています。
🔳 ケット・シー
ケット「猫」・シー「妖精」。
アイルランドに伝わる猫の妖精。
人間の言葉をしゃべり、二本足で歩く、犬ほどの大きさの黒猫と伝えられています。
フェアリーの起源
妖精は単一の起源があるわけではなく、さまざまな起源から生まれた民間信仰の集合体です。
キリスト教では降格された天使、あるいは悪魔。
また、異教の神、死者の霊、先史時代の先駆者、自然の霊などが起源のひとつとして挙げられています。
妖精の起源
🔳 自然の力を擬人化したもの
デーヴァと呼ばれる自然を操る霊的な力や存在は、生物の進化や植物の成長など、自然の多くの変化を導くと言われています。
🔳 太古の神々
古い民間伝承や神話の多くの神々
🔳 滅亡した古い種族
長い時代の流れの中で、敗北した種族の残された記憶が妖精になったとも語られています。
🔳 死者の魂
妖精は死者の霊であるとも考えられていました。
「未完の人生」を残した早すぎる死者が妖精になったとされます。
🔳 堕天使
キリスト教の教義では、妖精は「降格された」天使の一種であると考えられていました。
天使の一団が反乱を起こし、天国の門が閉められた際、天国にいる者は天使のまま、地獄にいる者は悪魔になり、捕らえられた者は妖精になった。
地獄堕ちるほど邪悪ではないため、天国から追放されたとされています。
🔳 悪魔
17世紀のキリスト教の信仰では、すべての妖精は悪魔であるとされていました。
🔳 エレメンタル(スプライト)
錬金術師パラケルススは、ノーム(土)とシルフ(空気)ウンディーネ(水)、サラマンダー(火)
の四大精霊を、自然の力を擬人化たエレメンタルとしました。
民間伝承では、妖精は「空気の精霊」であるとも伝えられています。
フェアリーの生態
性格
フェアリー(妖精)もその種族によって性格はさまざま。
人間に好意的なもの、人に悪戯したり騙したり、命を奪おうとするもの、人と結婚し人間として振る舞うもの、予言の能力を持つもの、などなど様々です。
けれど多くのフェアリー(妖精)はイタズラ好き。
妖精には節操や良心というものはありません。
思うままに振る舞うのが妖精。
たわいないイタズラは、ちょっとした盗みや旅行者を迷わせるなど、人間を困らせて楽しみます。
好意的に接する者はお礼を与えられることもあるとか。
金銭や宝物もあれば、「幸運」そのものを与えてくれる場合もあります。
ちなみに、彼らの姿を見たいときは「四つ葉のクローバー」を頭に載せるのだと伝えられています。
ただし、もし悪意で接すれば、末代まで祟るような恐ろしい罰を与えられることもあるので要注意です。
また、かつて突然死や結核は、毎晩妖精に踊らされたために発症すると信じられていました。
医学が発達する以前、妖精は病気、特に結核やさまざまな奇病の原因とされていました。
嗜好
妖精は草花や食物のエッセンスを吸収して生きています。
吸い取られた植物は色艶や味が無くなってしまいます。
嫌いなもの
- 鉄
- 日の光
- 聖水などの神聖なもの
- 腐った水
- 人間の汚水、
好きなもの
- 月夜
- 静寂
- 歌や音楽
生態
アイルランドでは妖精は地下にある妖精界に住んでいる、あるいは、堀などで囲った小さな野原「ラース(Rath)」や茨の茂みなどを住まいとしていると伝えられています。
ときおり人間が「ラース」から妖精界へと入り込むことがあります。
ある女性が、夜中、妖精たちがダンスを踊っている場面に出会いました。
妖精たちは人間に気づくと輪の中へ誘い込み、その女性は何日も踊り続けられてしまいます。
そして、気がつくと足の爪はすり減ってなくなっていたそうです。
妖精界と人間界では時間の経ち方が違うといわれます。
妖精界での数日が、人間界では数百年が経過していた、逆に、妖精界での何年もが人間界では一瞬であったという話もあります。
彼らの世界に囚われないようにするには、妖精の食べ物は口にしないこと。
ちょっとでも食べてしまうと、元の状態で人間界に戻ることは難しくなります。
チェンジリング
中世のヨーロッパで、妖精に関する伝承の中で、妖精が人間の子供をさらって代わりに彼らの子供を置いていくという取り替え子(チェンジリング)があると広く伝わっていました。
フェアリーは自分たちのひ弱な子供の代わりに、人間の健康な子と取り替えたのだというもの。
これは、幼い子供の生存率が低かった当時、子供を失った親が実の子は妖精界で今も生きているという慰めの気持ちから生まれたということもあったようです。
フェアリー、現代でも不思議の存在
人気ゲーム「ポケットモンスター」シリーズ『スカーレット バイオレット』ではフェアリータイプとして、悪やエスパー、ゴーストなど、さまざまなモンスターが活躍しています。
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「ファイナルファンタジー14」の妖精は学者がサモンで召喚する、蝶の羽持つ輝く幻獣。淡い黄色と緑の「エオス」、黄色と紫「セレネ」が登場します。
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アマゾン・プライムのドラマ『カーニバル・ロウ』はオーランド・ブルーム主演。人間とフェイの間に生まれた捜査官ライクロフトとフェイの恋人ヴィネットは抑圧されるカーニバル・ロウの妖精たちを助けるため体制に挑みます。
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フェアリー まとめ
フェアリー(妖精)とは、人間でも神でもない不思議の存在。
時に妖怪と恐怖され、時に悪魔や魔女として忌み嫌われることもある。
けれど、畏敬の念を持って接しなければならない何者か。
形のない、けれど存在を感じる、不思議の世界の住人。
そんな妖精の存在、信じていたいです。
妖精は人間界とは別次元の存在。
それが見える異能力者の存在や、異次元に迷い混んでしまった、そんなお話も含めて信じていたいと思います。