出典:deviantart
ノームは錬金術師・パラケルススが提唱する四大精霊の中の土の精霊。
なんとなくトムテやゴブリンなんかとゴチャ混ぜなイメージが浮かびます。
そこで今回はノームに注目です。
じつは知恵者で勤勉、地の中を泳ぐように移動するともいわれるノーム、その伝承とは。
ノーム、中世の錬金術から生まれた地の精霊

モーリッツ・ルートヴィヒ・フォン・シュヴィント作 『バイエルンのノーム』
ノームとは
ノーム(Gnome)は、大地を司る精霊または妖精。
16世紀、土の精霊としてパラケルススによって提唱された四大精霊のひとりで、地下に住む小さな老人の姿をしているされます。
ノーム(gnome)は「小人」を意味する英語読み。
地には小人が棲むというそれまでの伝承を元に、他の精霊に比べて比較的早い段階で小人の妖精とされました。
小人で風貌は炭鉱夫や修道士、または派手な色の服装と三角帽子を身につけ、長いひげを生やした老人。
手先が器用で、知性も高く、優れた細工品を作る技術を持つと伝えられています。
主に地中で生活しており、鉱脈の場所などにも詳しいとされます。
ドイツの鉱夫のあいだでその存在が伝えられていた「山のこびと」(Bergmännchen)が起源であるとされ、一説にはコボルトやドワーフと同一視されます。
語源
ノームの語源についてはさまざまな説があります。
- ギリシア語の「地中に住むもの」を意味するグノーメ(Gnome)、女性はノーミーデス(Gnomides)、またはノーミード(Gnomid)
- 「大地のすみか」を意味するグノーモス(Genomos)、
- 「知恵」を意味するグノーシス(Gnosis)
から来ているなどの説があります
他に
- 「冶金の悪魔 」を意味するデモン・メタリクス(daemon metallicus )
- 「野盗・道化師)」を意味するコバロス(cobalos)
などの呼び名があります。
ちなみに「コバルト鉱石」や「コボルド」の語源はこの「コバロス」という説があり、同じ起源と考えられています。
特徴

19世紀後半、ストーンサークルを中心に踊るブルトンノーム
ノームは地中を自由自在に泳ぐように移動でき、鉱脈の場所などにも詳しく、大地に隠された秘宝を護っているのだとか。
伝承の中ではゴブリンやドワーフ、英国の炭鉱に住む精霊ノッカー、北欧のトムテにも近い関係。
近年では地中で暮らす精霊の一種族として扱われることも多いようです。
ドワーフと同様に、日の光にさらされると石化して死んでしまうとも伝えられています。
イギリスの美術史家フレッド・ゲティングスによれば、ノームの別名はピグミー(小人族)といい、石のノームと樹木のノームの2種がいるとされています。
ちなみに、家の庭先に飾られる小人の人形はガーデン・ノームと呼ばれ、庭を守護するとされています。
小人で、長いあごひげを生やした老人のような風貌。
派手な色の服と赤いとんがり帽子を身につけています。
陽気で明るく、手先が器用で知性も高く、優れた細工品を作ることができます。
他種族との交流は不得意、特にトロールたちを大の苦手としているそうです。
錬金術、四大精霊のノーム

ハインリヒ・シュリット作(1923)
ノームは16世紀のスイスの錬金術師パラケルススによって提唱された四大精霊の一種族、四大元素の「土」を司る精霊です。
パラケルススは『妖精の書』の中で、火・水・土・空気の四大元素には、それぞれに対応する精霊が棲んでいると提唱しています。
火にはサラマンダー(Salamander)、水にはウンディーネ(Undine)、空気にはシルフ(Shylph)、そして土にはノーム。
パラケルススは北欧神話やゲルマンの民間伝承に登場する「ドワーフ(侏儒)」や「地の小人たち」の伝承を、当時の自然哲学や四大元素説にあてはめて体系化、ノームが生まれました。
パラケルススの提唱するノームは大地を司る精霊で、その身長は2スパン(約46cm)の小人。
小人型の妖精・ピグミーやベルクメンライン(Bergmännlein 山の小人)はノームと同義語。
ノームを山のこびと(Bergmännlein )という表現を多く使用。
また、ドワーフ(Zwerge)はノームの奇形(なり損ない)としています。
ノームは大地に自在に潜り進むことができ、壁や岩山を突き抜けたりもできる、地中に隠された鉱脈や秘宝の番人であるとされます。
また、ノームを含め元素の精霊たちは、飲み食いし、(人間と)喋ることも可能。
その点においてスピリットである「精霊」とは一線を画していると強調しています。
錬金術でのノームは通常は小さな老人ですが、巨人にもなれ、欲深く、悪意を持った、みすぼらしい精霊であるとされています。
けれど、錬金術では「地はあらゆるものを内包する」というイメージから、術師たちは彼らを「知恵」の象徴と見なしました。
伝承中のノーム

ジョンファーマー作『しかし、どうやって山に入るのですか、ノームの少年は尋ねました』
ノームは北欧の伝承に登場する地中の小人(ドワーフや山の精霊)たちの伝承をもとにパラケルススによって体系化された概念。
その「地中の小人」あるいは「地の精霊」は北欧の伝承でも伝えられています。
伝承の中の地の精霊は太っていて小さく醜い老人の姿、しばしば修道士の服を着ていると伝えられています。
土や木の中に姿を消すことができ、地下の採掘場や鉱山などを住まいとし、人に知られないよう財宝を守っていると伝えられています。
ヨーロッパでは北欧から黒海周辺、北米大陸でも、身長15cmぐらいのノームに似た小人が目撃されています。
** ノームと同一視される妖精たち **
山の小人
16世紀、「鉱山学の父」として知られる鉱山学者・ゲオルク・アグリコラは著書『地下の生体について』の中でドイツの鉱山伝承にある「山のこびと」(ベルクメンライン Bergmännlein )について言及。
後の「ノーム」の概念に大きな影響を与えています。
「山のこびと」は長い白髪と髭を蓄えた老人で、3ドドランス(約69cm)の小人。
人の物まねを好み、陽気で笑い声をあげ、小石を投じるなどの悪戯好き。
服装も鉱夫と同じく、リボン飾の付いたシャツに、革製のエプロンをつけています。
ときおり貴重な金属の鉱脈を教えてくれるともされます。
トムテとノーム

ヴィンセント・ストルテンベルグ・レルシェ 作
また、ノームはトムテと近縁であるとも伝えられています。
トムテは北欧に伝わる妖精です。
赤い帽子をかぶった子供ぐらいの大きさ。
農家に繁栄をもたらす守護神。
どちらも北欧やヨーロッパの伝承に登場する「小さな老人の姿をした妖精」という共通のイメージによって、地域や言語によって呼び方が異なるほぼ同一の存在として扱われることがよくあります
ノームとコバルト(コボルト)
16世紀の鉱山労働者の間では、鉱石の変色や採掘の邪魔をする厄介な存在を「コボルト(コバルトの語源)」や「山の精霊」と呼んでいました。
これがのちの地の精霊「ノーム」のイメージと重なり、しばしば同一視されるようになります。
16世紀、ドイツの鉱山で硬くて加工しにくく有毒ガスを出す厄介な鉱石が採れました。
その鉱石はコバルトと名付けられますが、その名前は地底の小妖精「コボルト(コベル」に由来しています。
鉱夫たちはその鉱石を「妖精のいたずらで銀が盗まれ、代わりに悪質な鉱石に変えられた」「地下の精霊(コボルト)が人間を困らせるために魔法をかけた石」と考え、精霊の名にちなんでその鉱物・金属を「ノームのいたずらの産物」としてコバルトと名付けました。
悪魔とノーム
中世の悪魔学において、ノームが地下に住む性質の精霊であるところから、地底のデーモン(悪魔的な存在)と同一視または混同された経緯があります。
パラケルススのノームは、ドイツの鉱夫の伝説であるベルクメンラインまたはデーモン・メタリカス「冶金または鉱物の悪魔」に由来するとされます。
鉱山学者・ゲオルク・アグリコラは著書の中で、この悪魔をヴィルンクルス・モンタノス(山の小人)や、コベリなどの名前で記述。
これらの鉱夫の精霊は、いたずら者で時には鉱夫に小石を投げつけるが、銀鉱石の豊富な鉱脈を知らせることもあると記録しています。
リベザル

モーリッツ・フォン・シュヴィント作「ルーベザール」(1859年)
コラン・ド・プランシーは著書『地獄の辞典』でリベザルという異形の悪霊を紹介。
この悪霊はポーランドのルゼンベルク山の山頂に住む、山頂を雲で覆い大嵐を起こすノームの王であるとしています。
その風貌は、禿げた頭に日本の天狗のような長い鼻、首の周りに木葉が生え、樽の胴体、右手は二股のフォークを握っている蟹のハサミ、左手は甲虫の足、右足は山羊、左足は鳥というユニークな姿。
この悪霊の起源はドイツのリューベツァールと呼ばれる善良な山の精・ノームを起源としているとされます。
物語(作品)の中のノーム

カール・シュピッツヴェーク作、1848年
◆グリム童話とノーム
ノームはグリム童話「土の小人・精霊」として登場しています。
グリム童話の第91話『土の中の小人』。
禁忌を犯して地下へ消えた三人の王女と、彼女らを救い出す三人の王子の冒険を描いた物語。
この物語はドイツ語の原本では「ノーム(Gnom)」ではなく「エルトマネケン(Erdmänneken=土の小人)」であったものが、英訳された際に「ノーム(gnome)」と訳されたというもの。
あらすじ
ある国の王様は大事な赤いリンゴの木を守るため「この木からリンゴをもぎ取る者は、地底へ落とされる」という願掛けをしていました
王様の末娘が誘惑に負けてリンゴを一つもぎ取ると、三人の娘は突然地下深くへ引きずり込まれてしまいます。
王女たちを捜すため二人の兄が旅立ちますが、地底の小人(土の中の小人)の助けを得られず失敗。
心優しい一番下の若者が小人のアドバイスを得て王女様を救い出します。
◆J・K・ローリングのハリー・ポッター・シリーズでは、
子供たちが庭に住むノーム(庭小人)たちを捕らえては捨てる姿が描かれています。
彼らは身長30cmほど、ジャガイモのような頭で外見は人。
鋭い歯で噛みつかれるので要注意な魔法生物です。
◆ヴィル・ヒュイゲンの『ノーム(不思議な小人たち)』のノームは、
グノームとも呼ばれる北欧のニス(トムテ)という妖精の近縁。
身長が15センチメートルほどの小人で、服装は非常に派手、赤い三角のとんがり帽子をかぶり、陽気で明るく、手仕事に励んで、地面に穴を掘って生活しています。
手先が器用で、地中の家には家具も揃っていて、食物は木の実やキノコなど。
白い口髭(くちひげ)と顎髭(あごひげ)が特徴で、一見老人の姿をしていて、子供のノームもいますが、その区別は難しいそうです。
長命で、寿命は400歳を超えると言われ、100歳くらいで結婚。
女性でも250歳を超えると髭が生えてくるそう。
ただ、他種族との交流は苦手で、特にトロールを嫌厭しています。
ノーム、ファンタジー作品では不動の人気
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のノームは陽気で好奇心豊かな頭の良い小人族。
森に住む「フォレスト・ノーム」とからくり仕掛けを扱うのが得意な「ロック・ノーム」の亜種族に分かれます。
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1995年から続くRPGゲーム『テイルズ オブ』シリーズのノームは『ヴェスペリア』「レジェンディア」「シンフォニア」などのキャラで登場する地の精霊。それぞれのほほんとしたゆるキャライメージです
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『聖剣伝説』のノーム、よく笑うのん気な性格の地の精霊です。
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ノーム まとめ
出典:deviantart
ノームって陽気なおじさんのイメージがありましたが、意外と様々。
意地が悪かったり、強欲だったり。
北欧ではクリスマスの精霊になったり、ハリーポッターでは噛みつきたがる魔法生物になっていたり。
けど、そんな変幻自在なノームも結構楽しい、これ全部ひっくるめてノームであると理解すればいいのかな。。


