エジプトの原初の神アトゥム神。天地創造の神、イシスやオシリスの祖となる偉大なる神です。
その存在は原子の子「鉄腕アトム」の語源としてあまりにも有名です。
そこで、エジプトの神アトゥムが原子の語源となった由縁についても探ってみたいと思います。
世界を構成する根源となるアトゥム(原子)神とは。
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目次
アトゥム神、世界の創造神
出典:Wikipedia
アトゥム(Atum)はエジプト神話の男神。ヘリオポリス神学における天地創造の神です。アテム(Atem)、トゥム(Tum)、テム(Temu)とも称され、”完全なもの”を意味します。
原初の水ヌンから生まれ、洪水の後に生じる新たな土地を表すとも伝えられています。
雄牛、ライオン、猫、蛇がシンボル。原子「atom」の語源となった神。
アトゥム神はエジプト九柱の神々の筆頭格。他の8柱
- シュー(Shu)―アトゥムの自慰によって誕生したとされる大気の神
- テフヌト(Tefnut)―水分、湿った空気の神
- ゲブ(Geb)―大地の神
- ヌト(Nuit)―天空の女神
- オシリス(Osiris)―生産の神であり冥界の王
- イシス(Isis)―豊穣の女神
- セト(Set)―保護と恵み、破壊の神
- ネフティス(Nephthys)―葬祭を司る女神
以上の神の創造神です。
アトゥム神は様々に姿を変えるエジプト神の中で、基本的に人間。プスケントという二重王冠を被り、エジプト十字のアンクと杖を手にした姿で描かれることが多いようです。
独力で他の神々を生み出したため両性具有(男性と女性の両方の特徴を併せ持つ存在)。
アトゥムはまた、ファラオの魂が神になるのを助ける、冥界を旅する魂を守る神とされ、後には太陽神ラーと習合して、ラー・アトゥム神となります。
そして、ラーやケプリ (Khepri)などの他の太陽神に変化しながら、昼と夜を旅し、同じくヌンから生まれた冥界の悪の化身、アポピスという大蛇と戦うとされています。
アトゥムの誕生
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古代エジプトの創世神話では、世界には最初に原初の水「ヌン」があったとされます。
そしてヌンの中に蓮(ロータス)が生え、花を咲かせます。
創造神アトゥムはその花から生まれます。
その時アトゥム神は古代エジプト人たちが最も原初に近い生物とした「蛇」の姿をして誕生したと伝えられています。蛇は脱皮によって死と再生を繰り返す、生命を象徴する存在。
アトゥムは、世界が破滅を迎える時、原初の水ヌンの中に帰り、再び「蛇」の姿をとる。この時、知恵を司るトート神によって目覚めさせられると伝えられています。
アトゥム神による天地創造
出典:gregorius
創造神アトゥムは自慰によって、あるいは口から吐き出して、大気の神シュウ(男神)と湿気の神テヌフト(女神)を生みます。
シュウとテヌフトは、大地の神ゲブ(男神)と天空の神ヌト(女神)を生みます。
ゲブとヌトも夫婦となります。けれど2神はあまりに仲が良すぎて、身を寄せ合っていたため、大地と天空の間に隙間がなく、世界が創造される余地がありません。
そこで、シュウとテヌフトが大地と天空の間に空間をつくります。
その後、ゲブとヌトの間にオシリス、イシス、セト、ネフティスの神々が生まれます。
後年、アトゥムに妻「イウサーアス」もしくは「ヘテベト」が現れます。けれどアトゥムの妻はアトゥムの女性的な部分に神格を与えた存在であるとも認識されます。
アトゥム神の神格
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アトゥム神はすべての神々の祖、空気、大地、天空を生んだ万物の創造者です。
アトゥムはギリシア語での名称で、エジプト語名では「テム」となります。
テムは「それ自身で完成に至るもの」「始まりにして終わりなるもの」を意味します。
「すべての始まり」としてのアトゥムは世界そのものであり、宇宙神であるという概念につながります。
同時に終わりでもあるため、ヘリオポリス神話においてのアトゥムの死は世界の終焉を意味すると捉えられます。
太陽神ラーと習合されるアトゥム神
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アトゥムは、原初の水ヌンから最初に現れた存在であることから、太陽神としての属性を持ちます。そのため同じ太陽神であるラーと同一、あるいは習合された存在となってゆきます。
一説にはヘリオポリスの祖神は太陽神ラー、後に現れたアトゥムはラーと同一化し「アトゥム・ラー」となったとされます。
他説、エジプト神話での太陽は、朝、昼、夜の姿に変わると考えられます。朝が「ケプリ」、昼が「ラー」、夕方が「アトゥム」老いたる太陽。
ただし、エジプト中王国時代(紀元前2040年頃〜紀元前1800年頃)にはアトゥムは一日を照らす太陽。そのため、後に太陽神ラーと習合して「ラー ・アトゥム」となったとも伝えられています。
アトゥム神、原初の神、今ではテクノロジーが生んだ原子の子
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「鉄腕アトム」は手塚治虫を代表する作品のひとつ。漫画として1952年(昭和27年)連載、1963年(昭和38年)にはアニメシリーズとして登場。今でも全世界で親しまれる日本を代表するSF作品。原子力(後に核融合)をエネルギー源とするロボット、アトムの活躍が描かれています。
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「ジョジョの奇妙な冒険」のアトゥム神はダニエル・J・ダービーの弟テレンス・T・ダービーのスタンドとして登場しています。「賭け」に負けた相手の魂に干渉する能力の持ち主。
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オンラインゲーム「神姫プロジェクト」のアトゥムは翠蛇の弓導者、人気NO1の褐色肌のギャル。自在に矢を放つ怪力の持ち主です。
アトゥム まとめ
出典:gramho
神々を生み、世界を創造したアトゥム神が、万物を構成する原子の語源となって、原子の子「アトム」になった。
マクロ・アトゥムがミクロ・アトムになった、なるほど手塚治の世界なのだなっと納得します。