出典:deviantart
宇宙を創造した神として、例えば日本では天之御中主神(アメノミナカヌシ)高御産巣日神(タカミムスビ)神産巣日神(カミムスビ)の三柱が宇宙と万物の起源とされ、インドではブラフマーが宇宙の創造神。
ヤハウェは最初の1日目に光と闇を創り、2日目に天を創造しています。
今回紹介するエジプトのトート神はそんな宇宙創造の細部を形創った神といえる存在。
神なんで、人間であるダビンチやアインシュタインなど名だたる天才たちも脱帽の、
その凄すぎるスケールのトート神のご紹介です。
トート神の凄すぎる功業とは
目次
トート(トト)、多くの神格と功績を持つ知恵と魔術の神
トート(トト)とは
トート、( Thoth )トトは、月、知恵、知識、書記、象形文字、科学、魔法、芸術、審判など、多くの神格を持つ、知恵と知識の創造神。
エジプト神話で最も重要視される神の一柱です。
トート(トト)の名はギリシャ表記。古代エジプトではジェフティと呼ばれます。
ギリシャ神話のヘルメスと同一視され
娘、あるいは妻は数学や計量を司る女神シェシャト、そして真実、均衡、秩序、調和、法、道徳、正義の女神・マアトもまた配偶者とされます。
聖獣はトキ。
神話の中のトートは、マアトと共にラーの太陽の船に同乗する二柱の神として、
⚫︎宇宙の維持に努め
︎ラーを補佐することから「「ラーの心臓」とも呼ばれます。
⚫︎神々の争いの仲裁など多くの重要な役割を果たす神
⚫︎神々の書記官を務め
ヘリオポリス九柱神の一柱で天空の女神であるヌトを助け
⚫︎それまで360日であった一年を365日とし
⚫︎セト、オシリス、イシス、ホルス、ネフティスの5柱の出産を助けます。
⚫︎ピラミットの建築法を人間に伝えたとされる神でもあり
⚫︎象形文字を生み
古代エジプト後期には、魔術や死者の審判と結び付けられるようになります。
魔術医術を持ってイシス・オシリス神話の中で重要な役割を果たし
冥界では
⚫︎死者の名簿を作成
などの役割を果たしています。
ヘルメスとの関わり
ヘレニズム時代(紀元前323年〜紀元前30年)にはヘルメス神との融合によりヘルメス・トリスメギストスという哲学の基盤を築いた伝説的人物を生んでいます。
へルメス思想では、エジプトの知恵がタロットに影響を与えたとされ、タロットは「トートの書」とも呼ばれます。
ヘリオポリス九柱神
ヘリオポリス九柱神(エネアド)とはエジプト・ヘリオポリスの創世神話に登場する九柱の神をいいます
- アトゥム 太陽神
アトムの子
- シュー 大気の神
- テフヌト 湿気の女神
シューとテフヌトの子
- ゲブ 大地の神
- ヌト 天空の女神
ゲブとヌトの子
- オシリス 冥界の神
- イシス 豊穣の女神
- セト 軍神
- ネフティス 葬祭の女神
誕生
トート神とセティ1世
トートの誕生については諸説語られています。
最も有名で一般的なのが
⚫︎世界ができた時、自らの力で石から生まれた(ヘリオポリス神話)
その他
⚫︎セトの頭を割って誕生した
⚫︎オシリスの末弟
⚫︎卵から生まれた創造神
とも伝えられています。
容姿
トート神は緑色のトキの頭を持つ人間、あるいはトキの姿をした神。
- 時と季節を表す三日月の上に月の円盤が乗った頭飾り
- 生命の象徴である アンクをもつ姿
で描かれています
あるいは
魔術を象徴するヒヒの姿で描かれることもあり「大いなる導きヒヒ」と呼ばれます。
これは、知恵の都「ヘルモポリス」で信仰されたヒヒを聖獣とする知恵の神ヘジュウルとの習合によるもの。
- 三日月を掲げたヒヒ
- 犬の顔をしたヒヒ
- ヒヒの頭を持つ人間
としても描かれます。
ヒヒとしてのトートは、
- 頭に月の円盤と三日月を載せた冠
- アテフ王冠または上エジプトと下エジプトの王冠
を被ります。
評価
古代エジプトにおいて、トートは自らを生んだ唯一無二の存在。
科学、宗教、哲学、魔術の創始者。
言語の創造者であり、物理と神の法(道徳)の支配者。
天と星と地球の軌道を探るあらゆる計算を行い、宇宙に秩序を与え、宇宙に法則を生んだといわれます。
ギリシャ人はさらにトートを
- 天文学
- 占星術
- 数理科学
- 幾何学
- 測量
- 医学
- 神学
- 文明
- 政治
- アルファベット
あらゆる知識の創始者であると考えています。
役割、神格、功績
トートは月、知恵、知識、書記、文字、科学、魔法、芸術、審判の神。
さらに、秩序と正義とに関わり、神々の顧問であり調停者としての役割を果たしています。
月を司る神
トートは月を司る神。
太陽が沈んだ夜には太陽に変わって地上の守護者となります。
月はまた、その満ち欠けや位置によって時間を測る目安となり、占星術や天文学にも重要な役割をはたします。
月の周期は、エジプト社会でも儀式や行事の多くを定める役割を果たしていました。
そのため、トートは知恵、魔術、時間の神と見なされるようになります。
神々の調停者
トートはラーの敵対者を倒し、エジプトを守るため異民族と戦い「異国の王を打ち負かす殺戮の主」の称号を持つという側面があります。
またある時、ラーの目となり遠方を見渡す女神であり、生命を維持するために欠かせない雨と湿気の女神・テフヌトが父ラーと疎遠になり、ヌビアに逃れたことがありました。
ラーはトートとシュー(神々の使者でテフヌトの夫)をヒヒに変装させて派遣。
トートとシューはテフヌトを説得し、エジプトに戻しています。
書記、文字、審判の神
『フネフェルのパピルス』(紀元前1275年頃)「心臓の計量」
トート神は文字(ヒエログリフ エジプトの象形文字)の発明者であり守護者。
冥界の書記官でもありました。
ヘルモポリス神話「死者の審判」においては、全ての人はその生涯が記録されており、死者の守護神・アヌビスが死者の心臓を計りにかけ、その生涯が審判されます。
その際、トートは死者の名前を名簿に記録する役割を担います。
また、新王の即位の際には、その名をイシェドと呼ばれる永遠に朽ちない葉に記します。
時の管理者
エジプトの創造神話では1年は360日、トート神が365日の暦を作ったとしています。
天空神・ヌトがオシリス、イシス、セトの兄弟を生む以前、ラーが「その子供たちは災いを生む」としてこれらの神々を産むことを禁じます。
ヌトはトートにその解決を願います。
トートは月の神コンスと賭けで勝利し、月の光の 72 分の 1 を手に入れます。
そしてラーの管理できない閏日(うるうび)(太陰暦と太陽暦の差)5日を作り、年間の暦を 360 日から 365 日に延長。
ヌトはこの間にオシリス、セト、ホルス、イシス、ネフティスの5柱を生んだとされています。
魔法、医術の神
トートは魔法や医術をもって、イシス・オシリス神話の中でも重要な役割を果たしています。
まず、
◾️ セトに殺されたオシリスの復活の際、その治療を葬祭の女神でオシリスたちの兄妹であるネフティスと共に施し、
◾️ セトに倒されたホルスの復活を助け
◾️ セトに同情したイシスを怒ったホルスに切り落とされたイシスの頭を牝牛の頭に挿げ替えて復活させます。
そして、
◾️ ホルスが失った左目を癒しています。
またトートは、多くの魔法書、この世のあらゆる知識を収録する本も(トートの書)執筆しています。
信仰
トートは最古神の一柱で、その起源は先王朝時代(紀元前6000~3150年)にまで遡ります。
その信仰は古代エジプトの都市・ヘルモポリス(ナイル川下流、カイロ近郊)を中心地として、長い時代、広い地域で、地位や階級を問わず崇拝されています。
ヘルモポリスでのトート崇拝は膨大な数の巡礼者を集め、祭典に捧げられた多くのトキやヒヒのミイラが発見され、またトート神を模った護符は様々な時代の様々な地域から発見されています。
トート神はエジプトの外、新バビロニアや古代ローマ帝国でも信仰されています。
シナイ半島(アラビア半島とアフリカ大陸北東部の中間)では、エジプト人の守護者「遊牧者の主」、「アジア人を征服するもの」
ハトホル以前の神として、スネフェル王(古王国時代、エジプト第4王朝の創始者)の時代から碑文にその名が記されています。
トートの書
『トートの書』とは、トートが書いたとされる、古代エジプトの多くの書物。
トートは書記の神格も司る神でもあるため、神殿の資料室に収められた文書の多くがトートが記したものとされました。
その内容は、魔術書、儀式、占星術、地理学、医学、天文学など多岐にわたっています。
その総数は、古代エジプトの歴史家・マネト(紀元前3世紀の神官)は「トートは36,525冊の本を書いた」としています
その中で、プトレマイオス時代(紀元前4世紀〜1世紀)に創作された『トートの書』には
「法、魔術、自然、来世に関するあらゆる知識」が記されているとされ
- 天と地、海と山、地獄に至るまで用いることのできる
- 死後も生きていた頃の姿を保つことが可能になる
2つの呪文が記されているとされます
その内容は
『本』はコプトス近くのナイル川の底で箱に封じられ、蛇に守られていました。
エジプトの王子ネフェルカプタハは『本』を手に入れますが、罰として神々によって妻アウェレと息子メラブを殺されてしまいます。
悲しんだネフェルカプタハは自殺、『本』とともに埋葬されます。
数世代の後、セトネ・カエムワセトは、亡くなったネフェルカプタハの亡霊に反対されますがそれを押し切って、ネフェルカプタハの墓から『本』を盗み出す。
その後、セトネは美しい女性と出逢いますが、その女性から自らの子供たちを殺し、ファラオに恥をかかせるよう唆されます。
けれど、これは亡霊・ネフェルカプタハが作り出した幻影であったことを知ります。
その幻影に恐怖したセトネは『本』をネフェルカプタハの墓に返し、ネフェルカプタハの妻と息子の遺体を主の墓に埋葬。
墓は封印されました。
この物語は、神々の知識は人間が持つべきではないというエジプト信仰が語られているとされます。
トート(トト)、現代では魔術や予言に特化したアイテム(?)
『ジョジョの奇妙な冒険』のトトは、第 3 部「スターダストクルセイダース」でボインゴが常に持ち歩くエジプト9栄神のスタンドの1つ。
近い未来の予知が出来る、ボインゴの超能力として登場しています。
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H・P・ラヴクラフトの『銀の鍵の門を通って」で「トートの書」は賢者や魔術師が崇拝する異星人・ ヨグ=ソトースと結び付けられています。
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『真・女神転生 STRANGE JOURNEY』ではサイドクエスト、『女神転生Ⅴ」では魔神種族の悪魔として登場します。
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トート(トト)まとめ
出典:deviantart
360日だった1年を365日にしたり、人間にピラミッドの建築を伝授したり、
トート神は非常に人間寄りな神とイメージします。
なるほど神の指導があればピラミッドも紀元前の太古でも人間にも作れるのかも。
けど、個人的にはピラミッドが宇宙人の産物であるという説を信じたいので、トート神に限っては宇宙人と人間のハーフという図式が生まれてくるのですが。。。。