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ヒンドゥー教 怪獣・魔物・妖精

アプサラス、妖艶な踊り子。インド神話の水の精霊

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アプサラスはインド版妖精。

その妖艶さはギリシャ神話のニュンペー、死者の霊を天国に向かい入れる役割はワルキューレ、そして、日本の鶴の恩返しや織姫や彦星の物語にも似た言い伝えを持つ天女です。

神々や仙人でさえ堕落させるという美貌のアプサラスとは

 

 

アプサラス、快楽の娘、男を惑わす天女

アプサラス(Apsaras)は、インド神話の水の精、あるいは天女。古代インドの聖典『リグ・ヴェーダ』では海の精と記されています。

アプは水を意味し、アプサラスで「水の中に動くもの」「雲の海で生きるもの」。古代インドの大長編叙事詩『ラーマーヤナ』ではアプサラー(Apsara)と称されます。

アプサラスは、川や海、雲、星、あるいは菩提樹に住むという一族の総称

神に従属し、ギリシャ神話でいえばニュンペー、日本では八百万の神々のような存在

絶世の美女インドラ神の天上の楽園において、半神半獣の奏楽神団ガンダルヴァ(乾闥婆)とともに神々に踊りを披露し、もてなしています。

 

アプサラスの容姿

アプサラスは官能的で神秘的な、美しい女性の姿をしており、その肌からは得も知れぬ芳香が漂います。その美しさは神々でさえ心を奪われるほどで、それゆえ「天女」とも呼ばれます。

その美しさゆえ神が英雄や聖仙を誘惑するための任を与えたり、その美しさは人間を狂気に導くともいわれます。

アプサラスは、姿を自由に変えることができ、ときには水鳥に変身して水辺で遊ぶこともあるといいます。

 

アプサラスの誕生

アプサラスの出自については諸説ありますが最も一般的な説として

インド神話の創世神話「乳海撹拌(にゅうかいかくはん)」で、不老不死の霊薬アムリタを造る副産物として生まれたというもの。

ちなみにこの時、太陽、月、白い象アイラーヴァタ、牡牛スラビー、酒の女神ヴァルニー、天界樹パリジャタ、アプサラス、月の神ソーマ、幸運の女神ラクシュミー、そしてアムリタを持った神々の侍医ダヌヴァンタリが現れたとされます。

 

この時、共に生まれたラクシュミーが多くの神々から妻に望まれ、ヴィシュヌ神の妻となったのに対し、アプサラスは誰とも結婚しなかった、あるいは誰からも結婚を望まれなかったためにすべての者の妻になることが決められました

そのため、その姿は非常に美しく官能的で「快楽の娘」とも呼ばれます。

 

ガンダルヴァ

アプサラスの夫の多くはガンダルヴァ族。外見は主に頭に八角の角を生やした赤く逞しい男性の上半身と、黄金の鳥の翼と下半身を持った半神半獣

インドラに仕え、宮殿で音楽を奏でる奏楽神団の役割を担います。

多くのガンダルヴァはアプサラスの配偶者ではあるものの、必ず結ばれるという訳ではなく、女性のガンダルヴァもおり、人間との間に子供をもうけるアプサラスも存在します。

 

ラクシュミー

ブラフマーシヴァとともにトリムルティの1柱ヴィシュヌの妻・美と富の女神ラクシュミーも、一説によるとアプサラスだと言われています。

これは

  • ラクシュミーも乳海攪拌で生まれていること
  • 容姿があまりに美しいこと

に由来するもの。

 

アプサラスの役割

インドラの宮殿では、通常、アプサラスは神々の接待役として、踊り子を務めます。

美しいアプサラスの踊りは、神だけでなく人間の王や仙人をも虜にします。

ただし、アプサラスは時として神の命を受け、その妖艶な美貌を利用して修行中の人間を堕落させる不実な天女とされて、古典インド文学にその悲恋の物語が綴られています。

後世には、戦死者の霊をインドラの待つ天界へ運ぶ、北欧神話のワルキューレのような役目も担うといわれています。

 



神話の中のアプサラス

アプサラスには神話で語られる幾人かの有名な女性がいます。

ウルヴァシー

ラヴィ・ヴァルマ 作

月神ソーマの孫で水星・ブダと女神イダーの子プルーラヴァス王はアプサラスのウルヴァシーを見初め、結婚を申し込みます。

ウルヴァシーは「自分が望まないときには近づかない。プルーラヴァスの裸体を自分に見せないことを条件に承諾。二人は幸せに暮らし、やがて子供も授かります。

けれど、二人の結婚を快く思わないガンダルヴァ族はウルヴァシーを取り戻すことを考えます。ガンダルヴァはウルヴァシーが可愛がっている子羊を盗み出そうとします。ウルヴァシーはそれに気付き悲鳴をあげます

その声を聞いたプルーラヴァスは驚いて裸のままウルヴァシーに駆け寄ります。その瞬間、すかさずガンダルヴァは稲妻を放ち、プルーラヴァスの裸体をはっきりとウルヴァシーに見せつけます

約束を破られたウルヴァシーはプルーラヴァスのもとを去ることになります。

嘆き悲しむプルーラヴァスはそれでもウルヴァシーを諦めきれず放浪の旅に出ます。

旅路の果て、ある湖で水鳥となって水浴しているアプサラスの中に、ついにウルヴァシーの姿を見つけます。

戻ってほしいと懇願する夫に、ウルヴァシーは1年に1度だけ会うことを約束します。

こうしてふたりは5年の間、1年に1度の逢瀬を重ね、その間5人の子宝に恵まれます。

ガンダルヴァも長い歳月の二人を哀れに思い、プルーラヴァスに1つだけ願いを叶えてやると提案。プルーラヴァスは「ガンダルヴァの仲間になりたい」と願います。

こうしてガンダルヴァ族となったプルーラヴァスは妻と子供たちと共に幸せに暮らしました

 

ラムバー

ラヴィ・ヴァルマ 作

アプサラスの1人ラムバーは、インドラの巨大な蛇の怪物ヴリトラ討伐の際にも協力しています。ラムバーの美しさに魅了されたヴリトラは、ラムバーがすすめるスラー酒を飲んでしまいます。

インドではバラモン(司祭階級)が、スラー酒を飲むことは許されておらず、バラモンであるヴリトラはスラー酒を飲んで気を失い(あるいは悪酔いしたために)インドラに倒されています。

 

ラムバーはまた、聖仙のひとりヴィシュヴァーミトラの苦行を妨害するようインドラに命じられます。

ラムバーは魅惑的な姿でヴィシュヴァーミトラを誘惑します。

けれど、ヴィシュヴァーミトラはこれがインドラ神の罠だと気づきます。

そして「1万年の間、石になってしまえ」という呪いをかけられてしまいます。

ラムバーは1万年の間石にされ、ヴィシュヴァーミトラは再び苦行を続け、ついに、梵仙の地位を獲得しています。

 

メーナカー

ラヴィ・ヴァルマ 作

メーナカーも、ラムバー同様、インドラの命令でヴィシュヴァーミトラを誘惑したアプサラスです。

インドラは苦行を積んでいるヴィシュヴァーミトラに王の座を奪われると危惧します。

そこで、メーナカーに誘惑するよう命じます。

聖仙の力を恐れるメーナカーは「聖仙が怒りを自分に向けることがないように、風神ヴァーユに私の衣服を奪い去るようにして、偶然に裸体を晒すようにみせかけてください」と提案。

インドラは承諾します。

メーナカーは風神とともにヴィシュヴァーミトラを訪れ、偶然風に衣服を吹き飛ばされたように見せかけます。

メーナカーの美しい裸体に心を奪われたヴィシュヴァーミトラは、長い月日をメーナカーとともに過ごします。

やがてメーナカーはヴィシュヴァーミトラの子を出産。メーナカーはこれでインドラの命を達成したと捉え、宮殿へ帰ります

このとき生まれた娘シャクンタラーは後にドフシャンタ王の妃となり、バラタ族の祖となります


 

モビルアーマー、戦姫になる、頼もしいアプサラス

 

ガンダムのアプサラスはOVA「機動戦士ガンダム第08MS小隊」に登場する「アプサラス計画」によって開発されたモビルアーマー

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グランブルーファンタジーのアプサラスは槍と斧を得意武器とする、妖艶で神秘的な雰囲気のランサー系列のclassⅣジョブ

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神姫プロジェクト」のアプサラスは世界平和の実現を目指す、神々の砲を制御するために生み出された神姫。

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アプサラス まとめ

妖精や天女、神に属する妖精たちは、やはり人間ごときが簡単には近づけない存在のよう。

その美しさを手に入れたいと望むなら覚悟もいるし、ある程度の力は必要なのかもしれません。

けれど、もし、権力もなく、容姿もイマイチな、取り柄のない凡人が絶世の美女に恋をしてしまったら、どうしたらよいのか。

思うに、後は性格で勝負なのではないでしょうか。

その女性が望む存在になれるかどうか。

正直、『じゃまにならないよう、暖かく見守る』(少女漫画にいそうな)こういう存在、結構貴重でいそうでいない、個人的にも欲しいです。こんな人がいたら、もしかしたらホレるかもしれない。

なんて、好き放題に、勝手なことを書いてます、、、すみません 。。。

 



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