出典:deviantart
テュポンはギリシア神話の多くの怪物の中でも最大最強最強の怪物。
台風の語源になった、一説では地母神ガイアと奈落タルタロスの間に生まれたとされる、まさに究極の存在です。
天空神ウラノスとは兄弟、クロノスの子らゼウスやヘラ、ポセイドン、ハデスの叔父にあたります。
そんな血筋を持った大怪物とはいかなる神であるのか。
マジに最強、恐るべきテュポンの実態とは
テュポン、天に届く巨神
ヴァーツラフ・ホラー作
デュポンとは
テュポン(Typhoon)は台風 (Typhoon)の語源にもなった、ギリシャ神話の中で最も強く恐ろしい巨神。
上半身は人間の男性ですが、頭髪は目から雷や炎を発することのできる100のドラゴンの頭。
下半身はとぐろを巻く大蛇。
全身は羽毛で包まれ、その羽先は彼自身が起こす激しい突風に常に逆立っていると伝えられています。
一説には我が子タイタン族を奈落タルタロスへ幽閉したゼウスを制裁するため地母神ガイアが生んだ子。
宇宙の覇権を巡って争い、激戦の末ゼウスが勝利。
デュポンもまたタルタロスに堕とされています。
出生
紀元前 540-530年頃
テュポンの出生についてはいくつかの説があります。
最も一般的なのが
⚫︎ ギガントマキアの後、我が子の多くがタルタロスに幽閉される処遇に怒った地母神ガイアが、ゼウスを諌めるために産んだ最後の子である(ヘシオドスの『神統記』(紀元前 8世紀~7世紀頃))
他の説では
⚫︎ ゼウスの浮気を諌めるためにへラがクロノスからもらった卵を孵化させデルポイの大蛇ピュトンが育てた、
⚫︎ へラ自身が単身で産んだ(ホメロスのアポロ賛歌(紀元前6世紀))
⚫︎ クロノスの子孫
などがあります
古代都市・キリキア(あるいはコリコス)で生まれ、成長したテュポンはガイアの思惑通りゼウスを打ち負かすためにオリンポス山に進軍します。
その足音は全世界に響き渡り、地下の国、冥界では大地が崩れるのではないかと死者たちが恐怖し、オリュンポスの神々は恐怖のあまりエジプトまで逃げ出したと伝えられています。
家族
テューポーンは多くの怪物をギリシャ神話の世界に生み出しています。
妻は半身が蛇という怪女エキドナ。
その子らについては
ヘシオドスの『神統記』では
⚫︎ オルトロス、巨人・ゲリュオンの牛を守る2つの頭の猛犬
⚫︎ ケルベロス 3つの頭を持つ地獄の番犬
⚫︎ ヒュドラ、切り落とすと2つが生える多頭の蛇
⚫︎ キマイラ 獅子の頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ怪物
神話学者アクシラオス(紀元前6世紀)は
⚫︎ コーカサスの鷲 プロメテウスの内臓を食べた
フェレキュデス( アテネの神話学者 紀元前5世紀)は
⚫︎ ラドン、 ヘスペリデスの園で黄金のリンゴを守るドラゴン
アポロドーロス (古代ギリシャのの著作家 1世紀〜2世紀)は
⚫︎ ネメアーの獅子、ヘラクレスの最初の功業になった人肉を食う獅子
⚫︎ スキュラ、6つの犬の頭の生えた腹部、下半身は魚、あるいは12本の触手の怪物
⚫︎ ゴルゴン、姿を見たものを石に変える目を持ったステンノ、エウリュアレ、メデューサの三姉妹
⚫︎ スフィンクス 人間の頭獅子の怪物
といった名だたる奇形の怪物たちを挙げています。
容姿
アタナシウス・キルヒャーの『エジプトのオイディプス』デュポンの挿絵
テューポーンの特徴はまずその大きさと力にあります。
- 天に届く体格
- 100の蛇の頭は星々に並び、
- 両手を伸ばせば世界の果てを掴むことができた
- 無限にも思える怪力は山や大地を引き裂き、
- 目や口からは全てを燃やし尽くす火焔を吐き、
- 暴風を司る、あるいは暴風である巨神
- 下半身は蛇のとぐろを巻き、
- 星をかすめるほどの巨大な翼、
- あらゆる種類の声を発し、そのたび毎に山々が鳴動します。
残酷で残忍な性格。
テュポンの通った跡は全てが燃やし尽くされ、あるいは吹き飛ばされ、大地がめくれ、何ひとつ存在しなかったと伝えられています。
ゼウスとの戦い
ウィリアム・ブレイク作『テュポンと戦うゼウス』
ガイアが意図した通りテュポンはやがてオリュンポスに戦いを挑みます。
テュポンを恐れたギリシアの神々は動物に姿を変えてエジプトに逃げることになります。
エジプト神話の神々が動物の姿をしているのはそのためであるとか。
このとき、パーン神 (Pan) は上半身がヤギで下半身が魚という獣に化けるという醜態をさらし、これがPanic (パニック)の由来と伝えられています。
テュポンは激しい炎弾と噴流によって地球を炎上させ、ゼウスは雷霆や金剛の鎌で応戦。
全宇宙を揺るがす激闘の末、やがてテュポンは、ゼウスの雷に全身を焼かれてシリアのカシオス山へ追いつめられ反撃に転じます。
とぐろを巻いていた足でゼウスを締め付け金剛の鎌と雷霆を取り上げ、手足の腱を切り、デルポイ近くのコリュキオンと呼ばれる洞窟へ閉じ込めます。
ゼウスの手足の腱を熊の皮に隠し、半獣デルピュネー(下半身が蛇あるいはドラゴンの怪物)を置き、ガイアの治療を受けます。
ゼウスが囚われたことを知った神々はヘルメスとパーンを救出に向かわせます。
2柱はデルピュネーをだまして手足の腱を奪い返し、ゼウスを治療。
力を取り戻したゼウスは再びテュポンと壮絶な戦いを繰り広げます。
有翼馬の引く戦車に乗ったゼウスの雷霆がテュポンを打ち、形勢は逆転、テュポンを追い詰めます。
深手を負ったテュポンは運命の女神モイラ達を脅迫して、全ての望みがかなうという「勝利の果実」を入手。
けれど、果実を口にしたとたん、全身から力が抜けてしまいます。
モイラは、「勝利の果実」の代わりに、けっして望みのかなうことのない「無常の果実」をテュポンに与えていたのでした。
ついにテュポンはシチリア島まで追い詰められ、エトナ火山の下敷きにされます。
テュポンは今でも山の下から炎や雷を放ち続け、エトナ火山で地震や噴火が起こると、テュポンが暴れていると表現されています。
テュポン、召喚石、大先生になる、最大最強の怪物
【グランブルーファンタジー】ではアルバハHL戦で発動、PTメンバーが確定で全滅するという「理の超越」対策の召喚石。一度きりしか使えない最終兵器として登場しています。
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『ファイナルファンタジーシリーズ』では鼻息で主人公一味を邪魔したり助けたりするデュポン先生として登場。FF14ではアマジナ杯闘技会の決勝戦でオルトロスと共に参加しています。
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『東京放課後サモナーズ』では神器のサーフボードを持ち、水色の海パンを履いたサーファーとして登場。異世界オリュンポスの出身で、東京湾でサーフィンをしていたら異界化に巻き込まれた、赤目でアロハシャツを羽織ったシャチのような容姿、関西弁の転校生です。
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テュポン まとめ
出典:deviantart
地球を破壊する力を持ったゼウスとテュポンの戦いはまさにチート級、
例えるならスーパーサイヤ人悟空とフリーザ級の戦い。
我々人間には肉眼で見ることもできないほどのスケールなのかもしれません。
今はただテュポンが解放され、エトナ火山の噴火、そして天変地異が起こらぬことを祈るばかりです。