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エロース、切ない一途な想いを貫く恋を司る神

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レオン=ジャン=バジール・ペロー作「天使の矢

 

恋を司るエロース。クビド(キューピット)とも同一視されるエロースはイタズラな少年のイメージがあります。

けれど本来は意外にもガイアやタルタロスとともにカオスから生まれた原初の神の一柱なんです。

「愛と心の物語」ではひとりの女性に一途な想いを捧げます。

甘くせつないエロースの物語、ご覧ください

 


 

エロース(クピド)、年代を経るごとに若返る、愛を司どる神

ポール・ジャック・エメ・ボードリー作

エロース(Erōs)ギリシア神話に登場する愛を司る神。ヘーシオドスの『神統記』では、タルタロス(地底)やガイア(大地))と共に、世界の始まりから存在した原初神。卓越した力を持つ偉大なる神なんです。

外見も太古には力強い有翼の男性あるいは若々しい青年でした。

 

エロースという概念

ジャンヌ=エリザベート・ショーデ作

エロース(恋愛)が原初に存在することが意外にも思えるかもしれません。

けれど、大地(物質)があってもそれだけでは物語は始まりません。惹きつけることできっかけ生まれ、物語が始まります。 そのきっかけを作る、惹きつける思いを司る神がエロースであると思われます。

ギリシャ神話の主神ゼウスですらエロースの意思には逆らえなかったといいます。

 

クピードー

ヴェンツェスラウス・ホラー

エロース古代のおいては、若い男性の姿で描かれていましたが、近世以降、背中に翼のある愛らしい少年の姿で描かれることが多く、ローマ神話でのラテン語で「受苦の愛」に近い意味を持つアモール(Amor)またはクピードー(Cupido)と混同されてゆきます。

クピードーは手には弓と矢を持つ少年の姿でイメージされるようになり、幼児化して英語読みでキューピッドと呼ばれる小天使のように変化してゆきます。

エロースの持つ黄金で出来た矢に射られた者は激しい愛情にとりつかれ、逆に鉛で出来た矢に射られた者は恋を嫌悪するようになります。

アポローンとダプネーのエピソードはエロースの矢で射られたことで起こる物語として有名です。

 

原始には大神であったエロースですが、その愛くるしいイメージのためか、後に軍神アレースと愛の女神アプロディーテーの子であるとされるようになり、そして、アプロディーテーの傍に仕える忠実な従者に変化してゆきます。

 

エロースとプシュケー

エロースの恋

ヘレニズム時代になると、甘美な物語が語られます。それがエロースとブシュケーの愛と心の物語です。

ある国に3人の美しい王女様がいました。中でも末のプシュケーの美貌は美の女神アプロディーテでさえ嫉妬させるほどに際立っていました。

「女神さえしのぐ」という評判をそのままにはできず、アプロディーテはエロースに愛の矢で射抜き、下賎な男に恋をさせて評判を落とさせるよう命じました。

エロースは眠っているプシュケーに忍び寄り、その寝顔の美しさに動揺し自らの指を金の矢で傷つけてしまいます。

エロース自身がプシュケーに恋をしてしまったのです。

プシュケーに恋い焦がれるエロースは、プシューケーの両親に神託として「プシュケーは人間の誰とも結婚できぬ。婚礼衣装を着せ、山の頂きに連れなさい。山の怪物が彼女と結婚するであろう」と告げます。

頂きに置かれたプシュケーは悲しみの中眠りにつき、気がつくと壮麗な宮殿に連れられていました。

 

花嫁としてもてなしを受け、夜になりプシュケーは眠りにつきます。

そこへ花婿が現れ優しくプシュケーに語りかけます。

私がお前の夫です。しかし、絶対に私を見てはいけませんプシュケーはその声の主を夫とし幸せに暮らします

やがて宮殿に姉たちが訪れ、プシュケーの暮らしを妬み、花婿は怪物に違いないとプシュケの疑念を煽り立てます。不安に思うプシュケーはついにある夜、夫をろうそくの明かりで照らし、その姿を見てしまいます

そこに眠るのは夫である美しいエロース。

プシュケーもその時エロースを一目見て恋をしてしまいます

そしてその神々しさに動揺しランプの油をエロースの肩に落としてしまいます。

目を覚ましたエロースは悲しげに「愛は、疑念とはいられない」と言い残し去ってしまいます

取り残されたプシュケーはエロースを探して世界を彷徨います。そしてついにアプロディーテのもとにたどり着きます

アプロディーテはプシュケーに3つの試練を与えます

 

ブシュケーの試練

ベンジャミン・ウエスト作

最初の試練

神殿の穀物庫にある混ざり合った穀物を一夜のうちに種類で選り分けるようにというもの。

途方にくれるプシュケーをアリたちが助け、その試練をクリアします。

 

次の試練は

日暮れまでに無数にいる黄金羊の毛を刈り集めよというもの。

これには川辺に立ったプシュケーに川の神が助言を与え、鳥たちが毛を集めるのを助けます。

 

第3の試練

次にアプロディーテは炎を吐く竜の住む山にある泉の水を汲んでくるよう命じます。

そこは険しい山の頂、人間にはとても近づくことはできません。

するとそこにゼウスに仕える大鷲が水を汲ん届けてくれます。

 

最後の試練は

冥府に降り、女神ペルセポネから「美の小箱」を貰って来るようにというもの。

冥府に行く方法など死ぬ以外になく、帰る方法もない。 プシュケーはいよいよ死を覚悟します。

そして冥界に行くべく高い塔から身を投げてようとした時、微かに声が聞こえてきます。

プシュケーは声に導かれ冥府への道を歩み、ついに冥界の女王ペルセポネに出会います。女王はプシュケーの苦難をねぎらい、プシュケーに小箱を委ねます。

プシュケは小箱を持って現世に戻りますが、途中箱の中を見て見たいという好奇心にかられます。

けれど覗いた小箱からは冥界に誘う永遠の眠りが流れ出し、プシュケーを永遠の眠りにつかせてしまいま

これこそ、女神アフロディーテが仕組んだワナだったのです。

それを知ったエロースはプシュケーの元に行き、〈地獄の眠り〉をあつめて箱に戻しました。

そして、エロースは試練を乗り越えたプシュケーの愛に応えるべく、大神ゼウスに二人の結婚の許しを求めます

ゼウスは二人の結婚を許し、プシュケーを神として迎え、女神アフロディーテにも二人の仲を認めるよう助言します。

それに応え、女神もとうとうプシュケーのひたむきさに許しを与えることなります。

 



 

現代では美少女としてご多忙、エロース

スマホゲームファントム オブキルでは愛嬌たっぷりのおせっかい娘として登場。

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神姫プロジェクトでは愛は世界を救う信念で人々の為に戦う神姫。舞うように飛翔し相手を射抜くその様はまさにエロース。

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エロース まとめ

フランソワ・ブーシェ作

イタズラで気まぐれな少年のイメージがあるエロース。

実際の物語ではこれまでのイメージとは大きな違いがあって驚きです。

気まぐれな美少年もカワイイですが、一途な青年のエロースもステキです。

 



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