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ウル(ウルル)、北欧の厳冬に君臨する、謎多き誓いと戦いの神

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フリードリヒ・ヴィルヘルム・ハイネ作

ウルは北欧の厳しい冬を司る神。

その存在は文献として残されたものが少なく、謎に包まれています。

なので、日本ではほとんど知られていない存在。

けれど、厳冬での狩猟や旅する人々、ヴァイキングたちは戦いの前に加護を祈る頼もしい神。

そんなウルに注目です。

 

北欧の厳冬に君臨する神、ウルとは

 

 

ウル、厳寒の北欧で生きる術を象徴する神

アイスランドの 写本(18世紀)

ウルウッルウルル Ullr)その名は「栄光」、古英語では「名声」を意味する北欧神話の神

ウルは冬を司る、伝説的な射手、狩猟、スキーの神

勇猛果敢な戦士であり、『散文エッダ』では美しい戦士ウルは戦いの前に祈る神としても知られる誓いと戦いの神でもあります。

ノルウェーやスウェーデンにはウルの名の入った地名も多く、彼が広い地域で信仰されていた神であると考えられています。

 

ウルはオーディンが不在であった時期、アスガルドを統治したとされます。

初期のゲルマンの異教では主要な神として伝えられ、『詩のエッダ』の中でのウルもオーディンに次ぐ神として記述されています。

その中ではウルの指輪、住居についても語られています。

すべての誓いはウルの指輪の上で行われたとされます。

もし誓いを破れば指輪は縮んで指を切断すると伝えられています。

 

ウルはイチイの谷を意味するイダリルのホールに住まいます。

古エッダの詩篇「グリームニルの言葉」にもウルがユーダリル(イチイの谷)に自身の館を建てた事が記されています。

イチイは弾力性に優れた木材であるため、古代スカンジナビアで弓を作るのに適した素材。

 

古代北欧人はウルを讃え、冬の間彼の加護を求める儀式が頻繁に行われ、その習慣は現代にも受け継がれています

 

けれど、ウルは太古の神であったため、何世代にもわたる口頭伝承の中でその存在は薄れ、謎に包まれてゆきます

 

ウルの神格

オラウス・マグナス 作「異邦人の歴史」
魔術師ホラー (ウル)が動物の骨の上に立ち海を渡る姿

ウルは北欧の厳冬を司る、狩猟、スキー、弓、戦いの神。

多くの崇拝者は厳しい冬の旅や決闘の前にウルに加護を祈りました

ウルは元来はより高い地位にある天空神だったと推定されています。

一部の地域では、ウルは信仰の深さに応じて冬の季節を長くしたり短くしたりすると信じられていたとされます。

また、ルの名声と栄光と結びつきが戦いの前に祈るのに最適な神とされました。

 

ウルはスキーヤーの守護聖人とみなされ、キーに乗りながら射撃する彼の能力と狩猟との関わりは、厳しい冬の中で生き残る術を象徴する神として崇拝されています。

古代北欧社会ではウルに捧げる冬祭りでウルを敬うことによって獲物が十分に確保され、狩猟に適した環境が提供されると信じられていました

 

「盾の神」「ウルルの船」

『散文エッダ』の『ギルファギニング』でもウルがスキーの神、弓の神、狩猟の神、盾の神と伝えています。

その中で盾は『ウルルの船』と呼ばれ、繰り返し登場しています。

これは、盾に乗って雪や氷に覆われた山を滑り降りることから由来しているとされます。

その他、雪靴が雪にうもれぬよう盾のような形をしていたから、大地をおおう分厚い氷が盾のように見えたところに由来するともされています。

 

魔術師オレルス 

12世紀の著述家サクソ・グラマティクスの『デンマーク人の事績』でのウルは魔法の呪文を刻んだ骨の船を使い、海を渡った魔術師オレルス (Ollerus)として登場しています。

 

ウルの家系、結婚

ローランス・フレーリク作 スカジ

『散文エッダ』ではウルはトールの妻シフの息子であり、美しい戦士として描かれています。

ウルの血縁上の父親は不明。

 

ウルを描いた物語のひとつでは、冬とスキーの女神でニョルズの妻(一説ではフレイの母)スカジがウルの妻となったと語られています。

スカジはニョルズと別れた後自分と同じ弓とスキーの神であるウルと出会い、彼女の父が遺した館トリムヘイムで一緒に暮らしたとされています。

 

アスガルドの主神となるウル

アイスランド語の写本1(7世紀)

デンマークの歴史家、神学者サクソ・グラマティクスの12世紀の作品『デンマーク人の事績』でのウルはオレルス。

魔法の移動手段を持つ狡猾な魔法使いとして描かれています。

オーディンが追放され戻るまでの10年間、オーディンの名でアスガルドを統治したとされています。

 

オーティヌス(オーディン)はロシアの王女リンド と交わり、子をもうけます。

これを恥と考えた神々はオーティヌスを追放。

神々はその名と地位をオレルス(ウル)に与え、汚名をはらそうとします。

ウルは10年その地位に君臨しますが、オーティヌス(オーディン)が地位を買い戻したために王位を追われます。

ウルはスウェーデンへの逃亡、そこでデーン人の手にかかり最期をむかえたとされます。

そのため、ウルが追われて行ったスウェーデンのウップランドを中心とする地方およびノルウェー南東部で崇拝された神として言い伝えられています。

 

 

ウル、現代でも武具が注目される謎の神

人気ゲーム「アサシン クリード ヴァル​​ハラ」では武具「ウルの狩猟船」「ウルの狩猟パック」として登場しています・

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人気海外ドラマ「バイキング〜海の覇者たち〜」の中でもヴァイキングたちがウルに祈るシーンが描かれています。

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ウルの弓は日本の作品の中でも「イチイバル」として、『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの聖遺物や『ファイアーエムブレム』シリーズに登場しています。

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ウル、まとめ

フレドリック・サンダー作

ウルは天空神ともされる想像以上に偉大なる神とイメージします。

その存在が太古から口頭で語り継がれてきたために、謎に包まれてしまったというのは残念。

 

美しく、勇ましい、さぞスターな存在であったのだろうと推察します。

 

 

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