コカトリスは、雄鶏と蛇の尻尾をあわせたような姿を持つ伝説上の幻獣です。フランスではコカドリーユと呼ばれています。
しばしばバジリスクと混同されるこの幻獣はルネサンス時代まで、神話や伝説にだけでなく、実在する動物だと思われていました。
今回はコカトリスの伝説に語られてきた生態をご紹介していきたいと思います。
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目で殺す混成幻獣
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雄鶏の卵をヒキガエルが暖め、シリウス(おおいぬ座の恒星)の昇った日に産まれると信じられてきたこのコカトリス。その姿はさまざまに語られていますが、おおむね雄鶏の首と胴体に、蛇の尻尾を持ち、コウモリのような羽が生えた混成幻獣として描かれることが多いようです。
見つめられただけで命を奪われる死の凝視を持ち、頭上を飛んでいる鳥でさえ、にらみ殺してしまいます。さらにはこの生き物の臭いを嗅いだだけでも死に至ります。
そこにいるだけで周囲の土壌を汚染し、草は焼け、岩は砕けてしまうのだと語られています。
コカトリスのルーツは
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「ハブ対マングース」という文言を聞いたことのある人は多いかと思います。
毒蛇を食べてくれるマングース。実はこれがコカトリスと大きなかかわりがあるのです。
古代ギリシアの文献ではエジプトのマングースを「イクネウモーン」(’Ιχνεύμων, 「後を追うもの」)と呼んでいたが、これがラテン語 Calcatrix に翻訳され、古フランス語 Cocatris を経て「コカトリス」になったという。wikipedia
蛇の天敵であったはずのマングースが、時と場所がうつろうにつれ、蛇の姿を持つ怪物になってしまったのは少しおかしくもあります。
同じくゲームや映画に登場するバシリスクとは同種、雌雄であるという説もあります。
14世紀にイングランドの詩人ジェフリー・チョーサーによる著書「カンタベリー物語」の中でバリリスクがバシリコックという名前で登場したのがきっかけで、次第にコカトリスに変化していったともいわれています。
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様々に伝えられているコカトリスですが、中世の聖書の中にはコカトリスが登場するものもあり、当時の多くの人々はコカトリスが実在すると信じていたのだとも伝えられています。
ゲームに出てくるコカトリス
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ゲームやアニメにもたびたび登場するコカトリス。多くの場合は敵として、それもあまり強くはない敵としてあらわれます。
有名なRPGシリーズである「ファイナルファンタジー」にも敵キャラとして各作品に登場しています。「ファイナルファンタジー15」では、大きな体と長く毒のある尻尾を使い主人公たちを苦しめます。
しかし羽は退化していて飛ぶことはできないようです。
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スマートフォン向けのゲームアプリ、「ぷよぷよクエスト」や「モンスターストライク」にもコカトリスは登場します。
どちらも鶏の要素が強調されており、コミカルな印象のキャラクターになっていますが、石化の息をはいたり、毒の衝撃波を放ったりと、本来の特性は損なわれていないようです。
「ぷよぷよクエスト」
数多くのゲームやアニメを彩ってきたコカトリスではありますが、相方とも言うべきバジリスクが「ハリー・ポッターと秘密の部屋」などで堂々たる悪役っぷりを見せていることを考えると、昨今の扱いは少し不遇であるといえるでしょう。
二体の語られる殺傷能力に違いはないのですが、蛇の王とも言われ神話級の大蛇の姿で描かれるバジリスクと、牧歌的な鶏の部分がクローズアップされてしまうコカトリスでは、やはりバジリスクの方が強敵として描きやすいのかもしれません。
まとめ
出典:FANDOM
ギリシア・ローマ神話に特に多い、実在する動物を混ぜ合わせた混成幻獣たち。その中でも特に恐ろしい能力を持つコカトリス。
メソアメリカの神話に出てくる羽毛のある蛇、ケツァルコアトルは人々にトウモロコシと知識を与えた英雄的な神様です。同じような姿で描かれるコカトリスは倒すべき凶悪な敵……。
ところ変われば神話も幻獣もさまざまに変わっていきます。
それがおもしろいところではありますが。