ゴーレム、未完の人間。ユダヤのラビが造った動く泥人形

出典：deviantart

ゴーレムはアニメやゲームの世界ではお馴染みのキャラ

けど、ゴーレムにも元ネタがあるのです

なんとなく頼りないようなモンスターのイメージがありますが。

元は旧約聖書にも登場するユダヤ教に伝わる伝承のひとつ。

「アダムとイヴ」のアダムもゴーレムという考えもあるくらい、いにしえの生き物なのです。

で、その実体とは

ゴーレム、知能のない、未完の人間

ゴーレムとは

ゴーレム（golem）とは、ユダヤ教に伝わる動く泥人形のことです。

カバラの魔術によって命を吹き込まれた、ユダヤのラビ（司祭）が作る人型の人形。

知能はなく、主人の命令だけを忠実に実行する、擬人化された生き物。

通常は粘土や泥などの無生物から作られます。

ゴーレム という言葉は聖書の詩篇に登場し、神の前にいる「未完成の人間」を暗示しています。

また、『旧約聖書』の天地創造において、アダムはヤハウェが土をこねて創造しています。なので、魂を吹き込まれる以前のアダムもゴーレムであったともされています。

神話の中では青銅の巨人もゴーレムとされる場合もあります。

ギリシャ神話の鍛冶の神・ヘパイストスが造った青銅の巨人も一説にはゴーレムと認識されています。

ゴーレムの姿体と知能

プラハのゴーレムの像

ユダヤ教においてゴーレムの創造とは、土から人間を造ったヤハウェ (神) の模倣と考えられていました。

転じて、ヤハウェを冒涜する儀式だとも受け取れるため、ユダヤ教の秘儀・カバラを修めた徳の高いラビ (ユダヤ教の司祭) しか造ることができなかったのです。

ゴーレムの体にはヘブライ語の「その明示的な名前」を意味する「シェム・ハ＝メフォラシュShem HaMephorash」という言葉が刻まれているとされます。

これは、タルムード（ユダヤ教の聖典）の中で唯一神の御名を示す言葉。

ゴーレムの名はヘブライ語で「胎児」「未完成のもの」「形なき固まり」、現代ヘブライ語では「愚かな」「無力な」といった意味を持ちます。

ゴーレムは粗雑な擬人化された生き物を指し、人間に仕えるが、他の状況下では敵対する、知能のない愚か者の比喩としても使われます。

しばしば傲慢の象徴として表され、ユダヤ教のミシュナー (旧約聖書の最初の5書に関する解説書) では、「教養がない人」という意味でも使われています。

ゴーレムの作り方

ミコラーシュ・アレシュ作「ラビ・レーヴとゴーレム」（1899年）

ゴーレムを創造するためには、まず、ラビは断食や祈祷などの儀式を行います。

次に、土をこね、聖なる呪文を唱えます。

聖なる呪文は、ヤハウェの名前や数秘法で得た聖なる数などさまざまです。

最後に、紙に「真実」を表す「emet」という文字を書き、ゴーレムの額に貼り付ければ完成です。

ゴーレムを壊すときは、「emet」から「e」を消すと「死」という意味になり、土に戻ります。

ゴーレムを作ったラビ

プラハ新市庁舎のラビ・レーヴ像

これまでに幾人かの高名なラビが実際にゴーレムを制作したとされています

その中でいちばん有名なのが、16～17世紀にプラハで活躍したイェフダ・レーヴ・ベン・ベザレルです。

ラビ・レーヴは、ゲットー (ユダヤ人強制移住区) をポグラム (ユダヤ人に対する集団テロやリンチ) から守った人物。

自らが造ったゴーレムにゲットーを守らせていたといいます。

ラビ・レーヴの造ったゴーレムはヨーゼフと呼ばれ、自身の姿を隠し、死者の霊を召喚することができたとされます。

そのため、ラビ・レーヴは安息日（土曜日）を妨害されることを恐れ、前の金曜日の夜にはシェム(shem)を外してゴーレムを動かなくしていました。

けれど、ゴーレムの中には恋に落ち、暴力的なモンスターになるものがあり、暴動を起こした伝えられています。

伝説によると、ラビ・レーヴの造ったゴーレムは現在もシナゴーグの屋根裏部屋にあるとされます。

また、ゴーレム創造で有名な人物、ポーランドのラビ・エリヤという人物がいます。

ゴーレムは完成すると自然と巨大化するとされています。

エリヤが作ったゴーレムはエリヤの予想以上に巨大化してしまいます。

困ったエリヤはゴーレムを破壊しようとしますが、自分よりはるかに巨大なゴーレムの額にある紙に手が届きません。

そこで、ゴーレムにしゃがむように命じ、額の紙から「e」を消したところ、土に戻ったゴーレムの残骸がエリヤの上になだれこみ、圧死してしまいました。

ゴーレム、ゲームやアニメの世界では超人気の中堅キャラ？

個人的にはゴーレムを語るなら、やっぱドラクエ。「ドラゴンクエスト」シリーズでのゴーレムは、レギュラー出演の人気キャラの一体。

ーーーーーーーーーーー

『ゼルダの伝説 　ティアーズオブザキングダム』のゴーレムはゾナウ族の技術で作られた、青銅に似たボディのロボットのような存在。倒すとバッテリー回復に使われるゾナウエネルギーをドロップします。

ーーーーーーーーーー

『ポケットモンスター』シリーズではイシツブテの最終進化形で、通称岩団子のゴローニャや、幻の古代文明の科学によって粘土から生み出されたゴビットなどが活躍しています。

ーーーーーーーーーーー

『仮面ライダーセイバー』のゴーレムメギドは本の魔人メギド ・レジエルに生み出された幻獣のジャンルに分類される「岩石王」。

ーーーーーーーー

『星のカービィ 』ではレンガでできた柱のキングゴーレムや、積み石で出来たガレブとして登場。、カービィが近付いたり通り過ぎたりすると動き出します。

ーーーーーーーーー

ゴーレム　まとめ

出典：deviantart

命令すれば主人の思いのままに動くロボットは現代でも製作可能。

かつては脅威であったゴーレムの存在も、今、世の中に出たとしても、さほど注目されるものではなくなっていると思います。

先進のテクノロジーはすでに神の域に達した分野が幾つもあるようで。

けど、これからの未来、期待より不安が勝るのは私だけでしょうか。