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ヒンドゥー教 神・英雄・怪人

サティ、パールヴァティーに生まれ変わったシヴァ神の最初の妻

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サニティ・デヴィー作  (1919)

殺戮、陰謀、略奪、多くの血生臭い物語で綴られる神話や伝説の中で、一途な恋を貫いたという物語も語られています。 

 

悲恋ではあるものの、アーサー王伝説の中のランスロットトロスタンとイゾルデ 

ギリシャ神話なら黄泉の国で妻との再会を果たすオルペウス

冥界の試練に耐えて結ばれたプシュケーとエロース 

 

そして、インド神話のサティも、夫の名誉を守るために焼死。 

生まれ変わってシヴァと結ばれるというハッピーエンドを迎えています。 

 

 

サティ、シヴァへの愛を貫いた最初の妃 

19世紀

サティとは 

サティー(Satī)は破壊神・シヴァの最初の妻。 

パールヴァティーに生まれ変わった結婚の幸福と長寿の女神 

父は創造神・ブラフマーの息子ダクシャ、母は人間の始祖・マヌの娘プラスティ。 

「サティー」という名前はサンスクリット語で「真実の」「高潔な」「高実な」「誠実な」を意味します。 

 

サティの物語は 

  • 古代インドの叙事詩 

 ・『ラーマーヤナ』(ヴィシュヌの7番目の化身・ラーマの生涯を描いた叙事詩) 

 ・『マハーバーラタ』カウラヴァ王家とパーンダヴァ王家の王位継承をめぐる戦争) 

  • プラーナ文献

で語られています。 

 

サティはシヴァを嫌う父に抗い焼身自殺、パァルヴァティーに生まれ変わり再びシヴァの妻となります 

 

サティの生涯、シヴァとサティ

作者不明

誕生と幼少期

サティはダクシャの末娘で、ダクシャに最も愛された娘 

幼い頃からシヴァを崇拝し、熱烈な信者として成長しました 

成人してもその思いは変わらず、シヴァ以外の神との将来は考えられないものとなってゆきます。 

 

シヴァとの出会い 

サティは父の宮殿での贅沢な暮らしを捨て、シヴァやその従者たちから試練を受け、シヴァ同様に苦行とシヴァ崇拝に身を捧げます。 

そんなサティの存在をシヴァも受け入れ、サティの想いは実を結びます 

 

結婚 

けれど、行者のような奇妙な容姿と行動のシヴァを訝しく思う父・ダクシャはサティのスヴァヤンヴァラ(古代インドの集まった求婚者の中から夫を選ぶという風習を催し、シヴァと結婚させぬよう画策します。 

その催しにはシヴァを除くすべての神々が招待されましたが、ただひとりシヴァだけは招待されませんでした 

けれど、シヴァを慕うサティは、シヴァ以外の誰とも結婚するつもりはありません。 

 

当日、夫候補の神々の中にシヴァがいないことを知ったサティーは悲しみ、花婿へ送る花輪を空中へ投げます 

そこへシヴァが現れ、花輪は彼の上に落ち、ふたりの結婚が決まります。 

(一説にはヴィシュヌがシヴァをサンニャーシ(修行者)に変装させて結婚を助けています) 

 

ブラフマーが司祭を務めて結婚式が執り行われ、サティはシヴァと共にカイラス山に新居を構えます。 

 

サティの死 

けれどこの婚礼は、シヴァを疎ましく思うダクシャとシヴァの確執を深めることになります。 

 

婚礼の後、ダクシャはサティとシヴァを除くすべての神々を招待してヤグナ(犠牲祭)を催します 

サティはシヴァを冷遇する父に抗議するため、父を訪れます。 

ダクシャはこの訪問に激怒し、彼女を辱め、シヴァを嘲笑。 

サティは、夫の名誉を守るため祭の火に身を投じて焼死。 

 

シヴァの嘆き 

サティを三叉槍に乗せて運ぶシヴァ 作者不明 (1800年頃)

サティの死を知ったシヴァの怒りは凄まじく、ダクシャの犠牲祭に乱入。 

タンダヴァ創造と破壊のエネルギーを象徴する舞踊)を舞い、破壊の限りを尽くし、全ての神々を追い払っています。 

 

他のブラーナ(物語)では 

1820年頃 ヴィラバドラとダクシャ

彼はヴィラバドラとバドラカリという二柱の獰猛な神々を生み、破壊の限りを尽くします 

その場の神々を倒し、ヴィラバドラはダクシャの首をはねます 

その後シヴァは、殺された者を生き返らせ、祝福を与えています。 

ダクシャもまたはねられた首をヤギの首に換えられ生き返っています 

 

シヴァはサティーの死体を火の中から取り出し、嘆き悲しみます。 

そして悲しみのあまり狂気にとりつかれ、サティーの遺体を抱いて世界を飛び、破壊の舞踏タンダヴァを踊り、世界の都市は破壊されてゆきます 

 

サティの死後 

神々はヴィシュヌ神にシヴァを正常に戻すよう祈ります。 

ヴィシュヌはスダルシャナ・チャクラヴィシュヌの円盤状の武器)を用いてサティの遺体を51箇所(あるいは50個)に分割 

サティの身体を失ったシヴァは正常に戻ります。 

その破片の落ちた地はピタ(聖地)となり、そこから無数の女神が生まれたとされます 

そのため一説にはシヴァには何百もの妃がいるとされています。 

これらの箇所は現在シャクタ・ピタ(シャクティ派の聖地)ヒンドゥー教徒の聖地となっています。 

 

亡くなったサティーは、ヒマラヤの神ヒマヴァットの娘パールヴァティー(ウマー)として生まれ変わり、妻を失った失意のシヴァのかたくなな心を開き、新たな妃となりました。 

 

 

サティ、現代でも癒し回復系女神(?)

女神転生』シリーズのサティは火炎属性スキルと回復スキルを実装している “女神”種族の悪魔 

レベル48まで成長させると地母神パールヴァティになります。

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人気アニメ『シャーマンキング』のサティは癒しの力を持つシャーマン。

シャーマンファイトの第三勢力・ガンダーラの指導者で「チーム・如来」のリーダー。


 

サティ まとめ

19 世紀 石版画

死を持って夫の名誉を守る、日本の時代劇にもありそうなシュチュエーションですが、自らの意思で炎の中に飛び込んでゆくというのは、狂気に近い衝動のようにも思います。 

それだけ神の尊厳を守るということの重要性を表しているのでしょうか。 

 

もし人間なら、もし私なら、 

たとえどれだけの怒りが込み上げても、守られる相手、残された者の悲しみをおもい、踏み止まるのではないかとおもいます。 

人間の尺度で考えるべきではないことなのでしょう 

 

 

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