ファフニールという名のドラゴンはアニメやゲームの世界ではメジャーな怪物。
そして、トールキンの「指輪物語」(ロード・オブ・ザ・リング)の元ネタとなったといわれるのがこの北欧神話のファフニール。
ワーグナーの戯曲「ニーベルンゲの指輪」としても知られる、元祖財宝を守るドラゴン、ファフニールの物語とは。
目次
ファフニール(ファフナー)、ドラゴンになったドワーフ
ファフニール( Fáfnir)は北欧神話「詩のエッダ 」やサガで語られているドワーフ(ドヴェルグ)。
ファフニル、ファーブニル、ファヴニル、ファルニル、ファフナー、古ノルド語では「ファーヴニル」([faːvnir])、「抱擁するもの」を意味します。
ファフニール はドラゴンとなってグニタヘイズの荒野で財宝を守ります。
その姿は輝く鱗に覆われ、猛毒の息を吐き、フロッティと呼ばれる剣を持ち、見る者を恐怖させる力を持つエギルの兜を被ります。
けれど、その姿に反して賢者と呼ばれるほど賢く、心臓や血には動物の言葉を理解できるようになる魔力がありました。
元は魔法使い・フレイズマルの3人息子のひとりであるドワーフ。
神々が弟を殺した代償に財宝と魔法の指輪を得て、その呪いによって指輪の魅力に取りつかれます。
財宝を独り占めするために父を殺し、ドラゴン(ワーム)に変身してしまいます。
神話の中のファフニール
「詩のエッダ 」に語られるファフニール は元は、小人で魔法使い。
父フレイズマルとオッテルとレギンという2人の弟たちと暮らしていました。
オーディン・ロキ・ヘーニルが共に旅をしているとき、河でカワウソに変身していたオッテルに出会い、ロキがいたずらにしとめてしまいます。
その日の宿を求め、そうとは知らず殺したカワウソに変身したオッテルの父フレイズマルのもとを訪れます。フレイズマル親子は末弟を殺されたことを知り、3人を捕らえ賠償金を要求します。
神々がオッテルの皮を埋め尽くす量の黄金を支払うことで合意。
オーディンとヘーニルが人質として残され、ロキが黄金の工面をすることになります。
そこでロキは滝の近くに住み、魚に変身する能力を持つドワーフのアンドヴァリを捉えることを画策します。
そしてまず、海の神エーギルの妻ラーンを訪れます。
ラーンから大きな網を借り、その網を使ってカワカマスに変身したアンドヴァリを捕え、命を助ける代償にアンドヴァリが所有する財宝を全て渡すように要求。
アンドヴァリは持つ者に富を与える魔法の指輪アンドヴァラナウトを所有していました。
アンドヴァリは黄金の全てを与えることには同意しましたが、魔法の指輪を渡すことは拒みます。けれどロキはそれを許さず強引に奪おうとします。
アンドヴァリは奪われてしまう指輪に「それを手にした者は破滅する」という呪いをかけます。
ロキはフレイズマルに黄金を引き渡し、指輪には破滅の呪いがかけられていることを告げます。
けれどファフニールは指輪の魅力に取りつかれ、父親を殺して黄金を奪ってしまいます。
財宝の取り分を要求するレギンにもエギルの兜を被りレギンを威嚇しこれを拒否。
誰にも財宝を奪われないようドラゴンに変身して、グニタヘイズの地に逃亡してしまいます。
取り分を手に入れられなかったレギンは、シグルズを養子にし、ファフニールを倒せる若者に育てます。
成人となったシグルスはファーヴニルの通り道に穴を掘りそこに潜み、名剣グラムによってファーヴニルの心臓を突き、見事討伐。
そしてファフニールの心臓を食べたいというレギンのために、ファーヴニルの心臓を火で焙ります。
その際にファフニールの血をなめ、シグルスは全ての会話を理解する力と常人より遥かに優れた知力を得ることになります。
ニーベルンゲンの指環のファフニール
ファフニールは中世の叙事詩『ニーベルンゲンの歌』では、ブリュンヒルデを誘拐した悪者。
『ニーベルングの指環』でのファフニールはドイツ語読みの「ファーフナー」という名、神々に騙され財宝を盗む巨人として描かれています。
シグルズはジークフリート、財宝を所有していたアンドヴァリはアルベリヒ、ファフニールの弟レギンはミーメという名で登場。
ファフニール(ファフナー)は「ニーベルングの指輪」では兄弟のファーゾルトと共にヴァルハラ建築に携わります。そしてその代価として女神フレイヤの身柄を要求。フレイヤはそれを拒否し、代償に小人族の持つ黄金を支払うことになります。
その指輪には小人族の長アルベリヒの呪いがかかっていました。ファフナーは財宝の分配で揉めたファーゾルトを殺害し、ワーム(Wurm 地を這う竜、あるいは大蛇)となって黄金と指輪を独占。
そのことを恨んだミーメ(小人族の一人)に差し向けられたジークフリートによって倒されてしまいます。
ロボットの名前にまで? 多様すぎるファブニール
竜の代名詞的存在となったファブニールは色々な作品に登場。
「お姫さまをさらい、財宝を守る」という現在ではステレオタイプな竜のイメージは、ファブニールが原典になっているといわれます。
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『蒼穹のファフナー』では謎の侵略者と戦うために、少年少女たちが乗る巨大な人型兵器。
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『銃皇無尽のファフニール』では世界を滅ぼす邪竜。
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「FF14」のファヴニルは狂乱の暗竜。ドラゴン型妖異の王
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財宝を守るドラゴンでイメージするのはやはり「ホビット 竜に奪われた王国」のスマウグ。
火竜族「ウルローキ」に族する、翼と金色の鱗を持つ貪欲な第三紀最大の竜。
ファフニール(ファフナー) まとめ
ファフニールのイメージが定着した「ホビット竜に奪われた王国」の財宝を守るスマウグ。
このドラゴンはドワーフと人間の国を滅ぼした邪悪な存在として描かれています。
けれど、神話の中のファフニールは兜を被り、剣を持ったドラゴン。なんかゆるキャラなイメージが浮かんでしまいます。当然、後者の方が好感が持てますが。。。