出典:deviantart
ネフティスはオシリス、イシス、セト兄弟の末の妹で葬祭の女神。
他の兄姉に比べ、影の薄い存在のように思いますが、イシスとワンセットで死者の復活には欠かせない重要な女神様です。
そのネフティスに注目です。
ネフティスってどんな神?
その役割は?
目次
ネフティス、死者を守るエネアド(ヘリオポリス九柱神)
ネフティスとは
ネフティス(Nephthys)は、エジプト神話の葬祭の女神。
古代エジプト語ではネベト・ヘト(Νέφθυς )。
喪と死者の保護を司ります。
ヘリオポリス九柱神の一柱。
大地の神・ゲブと天空の女神・ヌトの子で、冥界の神・オシリス、豊穣の女神・イシス、戦争の神・セトの末の妹でセトの妻。
葬儀では姉妹のイシスとともに死者の来世への旅立ちを見守ります。
オシリス神話においては、オシリスに焦がれ、イシスを装ってオシリスと交わり、葬儀神・アヌビスを出産。
夫セトがオシリスの殺害に至る原因の一つとなっています。
イシスとともにオシリスの復活を助け、 幼いホルスの乳母の役割も果たしています。
家系
ネフティスはヘリオポリス九柱神の一柱。
ヘリオポリス九柱とはエジプト最古の都市の一つ、ヘリオポリス創世神話に関わる九柱の神の一柱、エニアド、エネアドとも呼ばれます。
紀元前3000年頃のエジプト初期王朝時代から古王国時代(紀元前2686年頃 - 2181年頃)にかけて、ヘリオポリスの神官団によって体系化され崇拝された神々。
大気の神・シューと湿気の女神・テフヌトを創造。
シューとテフヌトは大地の神・ゲブと天空の女神・ヌトを生み、ゲブとヌトはオシリス、イシス、セト、ネフティスの兄妹を生みます。
ネフティスはいくつかの神話でアヌビスの母。
(他説、アヌビスは豊穣の女神・バステトやイシスの息子、ネフティスはアヌビスの妻ともされています。)
また、ホルスの叔母(しばしばホルスの母や妻ともされます)で乳母の役割を担います。
ヘリオポリス九柱神
- アトゥム(Atum) - 創造神、シューとテフヌトの父
- シュー(Shu) - 大気の神 ゲブとヌトの父
- テフヌト(Tefnut) - 湿気の女神 ゲブとヌトの母
- ゲブ(Geb) - 大地の神 オシリス、イシス、セト、ネフティスの父
- ヌト(Nuit) - 天空の女神 オシリス、イシス、セト、ネフティスの母
- オシリス(Osiris) 冥界の神
- イシス(Isis) 豊穣の女神
- セト(Set) 戦いの神
- ネフティス(Nephthys)
神格 役割

太陽の船のオシリス、後;ネフティス、前;イシス 紀元前305年頃
ネフティスは喪、夜、闇、奉仕、死者、保護を司る女神。
オシリスとイシスの夫婦が豊穣と秩序を象徴するのに対し、セトとネフティスは均衡を保つ混沌を象徴。
姉イシスが「生」を、妹ネフティスは「死」や「闇」を象徴します。
夜、ネフティスはセトと共にラーの船を蛇神・アポフィスから守り、太陽がドゥアト(冥界)を渡り、再び世界を照らす手助けをします。
葬、死者を守る女神

イシス(左)とネフティス(右)、紀元前13世紀
ネフティスはイシスと共に死者を守る葬儀の女神。
カノプス壺に保管された内臓を含むミイラ全体を守護し、死者を復活へと導きます。
ネフティスは生と死の間の境界領域と関連づけられ、イシスは生への移行、ネフティスは来世への移行を守護します。
この役割の延長として、ミイラ作りの過程で用いられるカノプス壺の一つ、ハピを守る女神でもあります。
ハピは、肺を守る神。
そのため、ネフティスは「生命の寝床のネフティス」とも称されます。
カノプス壺
カノプス壺はミイラ作成時に取り出された内臓(肝臓、肺、胃、腸)を保管する容器。
「ホルスの4人の息子」によって守護されています。
ネフティスは、イシス、セルケト、ネイトと共に4人の息子たちとカノプス壺の守護に携わっています。
ホルスの4人の息子
- イムセティ 人間の姿、肝臓を守る神
- ハピ ヒヒの姿、肺を守る神。
- ドゥアムトエフ 山犬の姿、胃を守る神。
- ケベフセヌエフ 隼の姿、腸を守る神。
守護女神
ネフティスは、古代エジプトの学問において「助けの女神」または「卓越した女神」とされ、広く信仰されています。
記録にはネフティス神の護符が数多く残っていたと記され、多くの魔法のパピルス(書)にも人間を助けるために召喚されたことの記載があります。
彼女は慈悲深く、時に獰猛な守護者。
炎の息で敵を焼き尽くす、悪魔を恐怖に震え上がらせる数少ない存在とされています。
神殿、寺院の守護
ネフティスはギリシャ語ではネベト・ハット。
その名は「神殿の貴婦人」「城の女主人」を意味し、城や寺院の守り手であることを象徴しています。
イシスが玉座(王権)を神格化した存在であるのに対して、妹ネフティスは城を神格化した存在。
神殿の門を守る塔門、あるいは台形の塔の入口(地平線)を象徴する、境界や通路の女神でもあります。
出産の女神
ネフティスは出産を守護する女神の一柱でもあります。
ウェストカー・パピルス(紀元前26世紀、古代エジプトの神官や魔術師が行った奇跡に関する5つの物語)の中で、
イシス、ネフティス、出産の女神・メスケネト、豊穣の女神・ヘケトが旅回りの踊り子となり、 アメン・ラーの司祭の妻を助ける物語が記されています。
容姿

ハヤブサの翼を広げたネフティス。紀元前1323年頃
多くの場合、ネフティスは凧(トビ)やハヤブサの翼を持つ、あるいはその姿をした女性として描かれています。
これは凧や鷹の鳴き声が死者のために嘆き悲しむ女性の哀歌を思い起こさせるため。
頭上には境界や寺院の守護神を象徴する塔門を冠り、名前を表す象形文字やアンクなどの守護のシンボルを掲げています。
ネフティス信仰
イシスが死者の再生を司るのに対し、ネフティスは死後の世界(冥界)を渡る死者の保護を司ります。
また、ネフティスはホルスの叔母であり、ホルスの母や妻とも見なされています。
このことからネフティスはホルスの化身であるファラオの乳母や母であると考えられていました。
ネフティスは悪魔たちが恐怖に震える力であり、 ドゥアト(冥界)の様々な階層を渡るために不可欠な存在。
時に獰猛で危険な神として、ファラオの敵を炎の息で焼き尽くすことができるとされ、ファラオはイシスとネフティスの守護を得て、来世への旅路をあゆみます。
後に、この神聖な力はすべての死者にも与えられ、彼らはイシスと同様にネフティスを来世へ蘇るために必要不可欠な存在として崇めるようになります。
オシリス神話の中のネフティス

エジプト後期、紀元前664~30年頃
オシリス神話の中でもネフティスは物語に深く関わっています。
ネフティスは兄でもあるセトの妻ですが、長兄オシリスに焦がれ、イシスの姿でオシリスと交わり、ミイラづくりの神アヌビスをもうけます。
けれどセトの怒りに触れるのを恐れ、アヌビスを捨ててしまいます。
そのアヌビスを養子として育てたのがイシス。
セトはネフティスが焦がれたことも影響して、温厚な性格で神々からの信頼も厚く、主神となったオシリスを妬み、殺害。
その身体をバラバラにし、方々に捨ててしまいます。
これを探すイシスにネフティスは同行、オシリスの復活を助けます。
このことからネフティスは死者の守護神となり、葬祭の女神として崇められるようになります。
また、復活したオシリスとイシスの子・ホルスの乳母となり、ホルスの成長を擁護しています。
ネフティス 現代でもまんまキャラ
映画・ドラマ
『キング・オブ・エジプト』2016年公開のSFアクション作品。
神々の争いに巻き込まれた人間の青年が死んだ恋人を蘇らせようと奮闘。
ここでのネフティスはセトの元妻。オシリスの死後、セトに抵抗する神々を統率し守護の羽を奪われてしまいます。
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ゲーム・アニメ
アプリゲーム『モンスターストライク』のネフティスは獣神化する神属性、水属性のモンスター
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『神姫プロジェクト』のネフティスは闇属性、内向的で人見知りな性格の神姫。
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『遊戯王OCG』では「ネフティスの鳳凰神」として登場。炎属性・鳥獣族のモンスター。
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ネフティス まとめ

ワシントン州歴史博物館所蔵
ネフティスって、兄妹の中では目立たない存在のようにも思いますが、ネフティスが加わることでその関係がより複雑化する重要な存在な気がします。
自分の妻でさえ兄に恋焦がれて子供まで宿している、そんな兄の存在を妬ましく思うセトの気持ちもわかるし、イシスになりすましてまで自分の思いを遂げたいネフティスの気持ちも悲しすぎるものがあります。
人間にもそんなドラマがあるかもしれない、生々しさを感じます。




