夜が来る。ベッドの下に、クローゼットの中に、暗闇の中にやつは潜んでいる。子供を恐怖させる、その怪物の名はブギーマン。
「悪い子はブギーマンがさらいに来る」とは、西洋圏ではよく言われる脅し文句です。ブギーマンは大人が子供を怖がらせるための幻の怪物。それは誰しもが抱いている原初的な恐怖が形を成したものです。
その姿は想像する子供の数だけあると言えます。
開きかけた扉の隙間に、真っ暗で景色が見えない窓の中に彼(彼女)は隠れています。
目次
ブギーマン、不定形の怪物
フランシスコ・デ・ゴヤ 作
ブギーマンとは伝説上のいわゆる「おばけ」、幽霊に類似した怪物をいいます。
その具体的な外見は特定されていません。
ブギーマンとは、子供達の心に潜む恐怖が実体化したものだからです。
ブギーマンはスコッランドが発祥地といわれています
この地にある沼地（ボグ bog）に潜む悪い妖精「ボーグルbogles」や「ボギーbogies」がヨーロッパ、アメリカにまで呼び名も変化して広まっていったものと推測されています
ちなみにスコットランドの悪い妖精は子供と遊びたいために、1年と1️日の間その子を誘拐するのだと伝えられています。
ブギーマンの特徴は
出典：deviantart
世界に存在するブギーマンですが、「子供をさらう」存在であるという共通点があります。
ブギーマンの語源は「恐ろしい幽霊」を意味する「bogge/bugge」に由来するものと伝えられています。
悪い子には夜「『ブギーマン』が来る！」と大人は子を叱ります。
そして様々な言い伝えや、それぞれのイマジネーションによって、この怪物は姿を変えます。
「麻布を被った毛むくじゃらの化け物」である場合もあり、「白いマスクをした殺人鬼」であるかも知れないのです。性別も特に決まっているものではありません。
世界に存在するブギーマン
出典：deviantart
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アメリカ
アメリカのブギーマンはベッドの下やクローゼットの中に潜む怪物。
言うことを聞かない悪い子供をさらいます。
また
カナダ・ネイティブアメリカンのオジブウェー族にとっては陰湿な精霊ウェンディゴ
ラテンアメリカではチャネケという小人の妖精、魔犬カデホ、獣人キブンゴなどがブギーマンのような存在として扱われています
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ブラジル・ポルトガル
麻袋を担いだサンタクロースのような姿の「袋の男」（homen do saco）が聞き分けのない子供を脅します
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フィンランド
モランと呼ばれる青い目をした幽霊がブギーマンの一種とされています。このモランですが、なんとムーミン谷にも現れていています。
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ドイツ
キンダーフレッサー、キンダーシュレッカー、シュヴァルツェマンといった怪物が暗いところで悪い子供を狙っています
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ブルガリア
さらった子どもを入れるトルバとよばれる袋を背負た怪物トルバラン
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イラン・ペルシャ
行儀の悪い子供たちはルルという怪物に食べられてしまいます
- チェコ共和国 ブバク（bubak、怖いもの）ハストルマン（hastrman、案山子）
- デンマーク ブッセマンド（bussemand）
- フランス クロックミテーヌ
- ギリシャ バブラス（Baboulas）
- スペイン エル・ココ（El Coco）
日本のブギーマン
完全に形を持ったケースでは、ご存知の日本の「ナマハゲ」も、子どもを驚かすブギーマン伝説の一つと言えます。
また、鬼は「おぬ(隠)」という意味が転じたもので、鬼は古来形を持たなかったとされています。全国各地で叺背負い、隠しん坊、隠れ婆、油取りなど、子供を攫う妖怪が伝承されており、こうした存在をまとめて「隠し神」と呼称します。
これらも日本版ブギーマンとも言えるかもしれませんね。
フィクションの中のブギーマン
フィクションの中では、映画『ハロウィン』シリーズの殺人鬼『ブギーマン』(本名、マイケル・マイヤーズ)が有名。泣く子も黙らせる、恐ろしき白いマスクのシリアルキラーの活躍ぶりはホラーファンを熱狂させ、13日の金曜日のジェイソン、エルム街の悪夢のフレディと並びアメリカ三大ホラーの主役の一人です。白マスクは実際ハロウィンになると仮想の一つとして使われます
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ホラーとは真逆の、クローゼットの怪物の世界を描いたディズニー・ピクサー映画『モンスターズ・インク』もブギーマン映画の一つです。
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ティム・バートン原作の『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』では麻袋姿で怪物の一人として出演しました。
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ブギーマン、そして継承される伝承
出典：deviantart
この世に子どもがいる限り、ブギーマンの存在は形を変えながら受け継がれていきます。
暗闇はいつだって子どもの想像力を刺激し、恐ろしい怪物を空想させてきました。そして、それは親の「暗闇を恐れなさい」という教訓と表裏一体です。
幼い子どもたちにとって、ブギーマンはサンタクロースと同じ、実在する存在なのです。
