ギリシャの三大悲劇詩人のひとり、ソポクレスによる「オイディプス王」。ギリシャ悲劇を代表する名作です。
今回はその「オイディプス王」のご紹介です。
あの有名な「スフィンクスの謎掛け」も実はオイディプスに登場するエピソードなんです。
ギリシャ悲劇の最高傑作と評されるオイディプスの生涯とは?
目次
オイディプス、運命にもてあそばれたの生涯
オイディプス(オイディプースOedipu)はギリシャ神話で語られるテーバイの王。
実の父を殺し、実母と結ばれた悲劇の王。
近年ではエディプスコンプレックスの語源となっていることでも有名です。(エディプスコンプレックスとは母親を独占したいという欲求、父に対抗心を抱く心理)
その物語は古代ギリシャ三大悲劇詩人の一人ソポクレスによって戯曲『オイディプス王』となり、ギリシャ悲劇の最高傑作と評されます。
『オイディプス王』(オイディプス)その生涯
オイディプスの誕生
父はテーバスの王ラーイオス、母はイスカリオテー。
ラーイオス王は「お前は自らの子供によって殺められ、命を落とす」と神託を受け、オイディプスは呪われた子として生を受けました。
けれどラーイオスは我が子オイディプスを手に掛ける事はできませんでした。そこでオイディプスを自分の元から遠ざけようと、従者に彼をキロイターンの山へ捨ててくるように命じます。
オイディプスはその山に居た羊飼いに預けられますが、その後、子供ができなくて困っていたコリントス王のポリュボスとその妻メロペーにより拾われます。
この二人によって、「オイディプス」と彼は名付けられました。「オイディプス」は、「膿んだ足」という意味です。
オイディプスは非常に才気あふれる青年へと成長しますが、それによって「オイディプスはポリュボスとメロペーの実子ではないのではないか」という噂をされることとなります。
彼は悩み、自分の父母がだれなのかを神々に聞くために、デルポイの神殿でアポロンの神託を受けます。アポロンはそれには答えず「故郷に居ては両親の命が危ない」とオイディプスに告げます。
父との出会い
育ての親を自らの手に掛けるのだと思い込んだ彼は旅に出ます。
旅の途中、ポーキスの三叉路にてオイディプスの乗った戦車は別の戦車と鉢合わせします。「道を譲れ」という相手の従者の言葉に怒ったオイディプスは、戦車と戦い、従者と主人全てを倒します。
この主人こそが、オイディプスの実の父であるラーイオスでした。
父を倒したということを知らぬまま、オイディプスは生まれ故郷であるテーバイにたどり着きます。
スフィンクスの謎かけ
テーバイは猛獣スフィンクスに苦しめられていました。
スフィンクスは道を通ろうとするオイディプスに謎掛けをします。
「一つの声を持ち、朝には四本、昼には二本、夜には三本の足で立つ生き物とは何物か?」オイディプスは答えました。
「答えは人である。人は赤ん坊の頃四つ足で歩き、大人になると日本の足で立つ。老人になると杖をつき足は三本になる」
謎は解かれ、スフィンクスは城山から身を投じて絶命しました。
スフィンクス退治の功績を称えられ、オイディプスはテーバイの王となります。
テーバイの王オイディプス
そして、彼が娶った妻こそは実の母であるイスカリオテーでした。
二人の間には二人の男児エテオクレースとポリュネイケースと、二人の女児アンティゴネーとイスメーネーが生まれます。
オイディプスが王になって以来、テーバイは凶作と疫病に悩まされます。神託は「不作と疫病はラーイオス殺害の穢れの為である。これを免れるためにはラーイオスを倒した者をテーバイから追放せよ」と告げます。
オイディプスはそこで過去に遡って調べを進めるうち、ラーイオスを倒したのは自分であり、妻のイスカリオテーは自分の母であることを知ることになります。
真実を知ったイスカリオテ-は命を絶ち、オイディプスは自らの目をえぐり、娘とともに放浪の旅に出ます。
オイディプスの最期
娘と共に長く諸国をさすらったオイディプスは、やがてアテナイに辿り着きます。アテナイ王テセウスはオイディプスにコロノスの森で最期を迎えることを認めます。
ようやく安息の地を得たオイディプスは地中に飲み込まれ、その生涯を終えます。
オイディプス、舞台では人気
前述のソポクレースによる「王」、オイディプスの娘の物語「アンティゴネー」など、古典ギリシャ悲劇によく取り上げられます。
「オイディプス王」は舞台で有名な題材の一つで、日本を代表する舞台演出家である蜷川幸雄によるオイディプス王が2002年、2004年に公開されています。
ーーーーーーーーーー
その後2015年には宝塚歌劇版。2018年12月には演出を杉原邦生が担当し、出演は中村橋之助、南果歩、宮崎吐夢らによる「オイディプスREXXX」が公開されました。
ーーーーーーーーーー
オイディプス まとめ
神々による神託によって全てを定められていたオイディプス。
まさにギリシャ神話の悲劇性を如実に表すストーリー展開です。
『エディプスコンプレックス』と名付けられるほど母親に恋い焦がれたわけではなく、妻に娶った女性がなんと実母であった。
視点を変えれば、彼こそ運命にもてあそばれた被害者なのでは。