近年の小説やゲームなどの創作物で、巨人は「粗暴な人食いの怪物」として描かれています。けれど、それは大きな勘違い! ちょっぴりかわいいところもある、ちゃんとした神様なんです。
今回は、ギリシャ神話の巨人族を代表する、ギカンテスとサイクロプスを紹介します。
これを機会に巨人への誤解を解いちゃいましょう!
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怪物≠巨人、巨人=神様である
ギリシャ神話に登場する巨人族は、4つ。
50の頭と100の腕をもつヘカントヘイル族、単眼のサイクロプス族、ほぼ不死身のギガンテス族、ゼウスの父・クロノスが属するティターン族です。
この4種族は、地母神・ガイアの子供です。
ギガンテス
ギガンテスは、神には殺されないという性質をもつ、怪力の巨人族です。上半身が人間、両足が蛇の姿をしているといいます。
彼らは天空神・ウラノスとガイアの間に生まれましたが、その生まれ方は特殊です。
ギガンテス族が生まれる前、ティターン族・サイクロプス族・ヘカントヘイル族が順に誕生しました。ですが、ウラノスはティターン族以外は、見た目が異形だといって、奈落・タルタロスに閉じ込めてしまいます。
怒ったガイアは、ティターン族の末子であり、ゼウスの父でもあるクロノスをそそのかし、ウラノスの性器を切り落とさせます。その時、ウラノスがこぼした血からガイアが身ごもり、ギガンテスが生まれます。
クロノスがウラノスを追放して王になった際、タルタロスに追放されます。しかし、ゼウスに助け出され、ゼウスとティターン族が戦った「ティタノマキア」では、ゼウスに助力。
ゼウスの勝利後、ティターン族はタルタロスに封印されますが、その処分が気に入らなかったガイアが抗議。ガイアに協力したギガンテスは、「ギガントマキア」という戦争を起こします。
神に殺されない性質をもっていたギガンテスにオリンポスの神々は苦戦しますが、ゼウスと人間の間に生まれた英雄・ヘラクレスによって倒されたのでした。
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サイクロプス
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ウラノスとガイアの子供として生まれたサイクロプス。単眼に単角をもち、鍛冶を得意とする巨人です。
ウラノスに嫌われ、奈落・タルタロスに落とされていましたが、「ティタノマキア」の際にゼウスによって解放され、ゼウスに加勢。
サイクロプスは、お礼として、ゼウスには雷霆、ポセイドンには三つ又の槍、ハデスにはかぶると姿が見えなくなる兜をプレゼントしています。
その後は、鍛冶の神・ヘパイストスのもとで働いていました。ですが、平穏に暮らせると思った矢先、悲劇に襲われます。
医術の天才・アスクレピオスが死者をよみがえらせた時、ハデスが「死者が生き返ることは、秩序に反する」と抗議。ゼウスがそれを受け入れ、アスクレピオスを射殺します。
アスクレピオスの父・アポロンは、息子を殺されたことの八つ当たりでゼウスの雷霆でサイクロプスを皆殺しにしてしまいます。なんとも納得のいかない痛ましい最期です。
ちなみに、ホメロスの叙事詩『オデュッセイア』ではサイクロプスであるポリュペーモスが登場。凶暴な人食いの怪物として描かれています。
現在の「怪物は、粗野で人食い」というイメージは、ここから生まれたのかも?
敵モンスターでおなじみ、ギガンテス・サイクロプス
ギガンテス・サイクロプスは、ファンタジー系作品で敵役として多く出演。
ギガンテスは、『ドラゴンクエスト』シリーズでおなじみ。単眼で緑色の巨人として描かれています。サイクロプスと混同されている?
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サイクロプスは、『パズル&ドラゴンズ』に登場。
レアリティが高い、アポロンのスキル上げ素材としても利用されているようです。神話で殺された相手の素材になってしまうとは、ゲームの中でも皮肉ですね。
まとめ
ギガンテスやサイクロプスは、粗野で凶暴じゃない、ちゃんとした神様だったんですね。
「粗野で凶暴で人々を襲う」という加害者なイメージがありますが、母親に巻きこまれて戦争を起こしたり、ビジュアルだけで父親に奈落に閉じ込められたり、八つ当たりにあって殺されたり、むしろ被害者ですよね~!
母親に逆らえず戦争しちゃったり、助けてくれたお礼に最強の武器を造ってあげたり、礼儀正しくてかわいいところもありますし。
巨人が乱暴な人食いというテンプレートを生んでしまった『オデュッセイア』、罪深し。