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サテュロス、聖書にも悪魔と記される、快楽に溺れる半神半獣

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ピーテル・パウル・ルーベンス作

サテュロスはギリシャ神話の半獣神、ヤギの角を持つ精霊です。

聖書にも悪魔として登場する、酒と色欲に溺れるダークなチャラ男?

今回はそのサテュロスに注目です。

ギリシャ神話の奔放な半獣、サテュロスとは

 


 

サテュロス悪魔や幽霊にもなる悪戯や快楽を好む精霊

ウィリアム・アドルフ・ブグロー作『ニンフとサテュロス』

サテュロス(satyr)はギリシャ神話の半人半山羊の自然の精霊

サテュロスの名は古代ギリシア語のsatyros「扇動する者」「種をまく者」の意味。

好色で酒好き。ローマ神話では森の精霊ファウヌスやギリシア神話の半獣神アイギパーンと同一視されています。

 

ディオニュソス神の従者のひとり。

森や山に出没し、酒と踊りと音楽を愛し、悪戯や快楽を好みます

古代ギリシアの叙事詩人ヘーシオドスは、山のニュムペーやクーレースの兄と述べ、1世紀の博物学者プリニウスの「博物誌」では、敏捷で、時に四つ足で歩いたり、二本足で走ったりすることのできる実在する怪物と信じられていました。

中世にはその外見のイメージから悪魔として扱われ、サバトにもその姿を現しています

 

16世紀の博物学者オラウス・マグヌスは著書「北方民族文化誌」で『北方の地方で踊る幽霊のたぐい』と記しています。

野山の精霊の一面である、快楽を楽しむ野獣。しばしばニュムペーを追いかけ回し、男根を勃起させたサテュロスの姿も多く描かれています。

 

サテュロスは聖書にも登場しています

イザヤ書13章と34章でセイリム(se'irim)「毛のあるもの」、荒野に住む魔物あるいは超自然的な存在として記されています。

 

サテュロスの容姿

アウグスティン・ヒルシュフォーゲル作

上半身は頭にヤギの角を持つ、狭い額としし鼻、尖った耳の人間、下半身はヤギの足と尻尾

毛むくじゃらな身体と割れたヒヅメを持つ猿にも山羊にも似た風貌

 

成人したサテュロスは顎ヒゲがあり、禿頭(ハゲ)

禿げていることはギリシア文化においては屈辱的な特徴でであったとのこと。

前頭部の角は若い頃には突起状態のものが成長するに従って大きく長くなってゆきます

 

アッティカ地方で伝えられる古代のサテュロスは尖った大きな耳とヤギの尻尾、勃起したままの陰茎を持った怪物として描かれています

葡萄と蔦で作った花輪を被り、獣の皮をまとい、時には繁栄、繁殖力、悦楽を象徴するテュルソスを持ち歩くこともあります

 

― テュルソス ―

テュルソスはディオニューソスとその信者女が持つ霊杖
先端に松かさがついたディオニューソス神の大地を肥沃にする力を象徴しています。

男根の形状をしている事から、生命、豊穣、再生の象徴でもあります。

「ブドウの葉に包まれた槍」「木ヅタを巻いた槍」とも称され、その先端の突起が狂気を引き起こす霊妙な威力を発揮する,無敵の武器ともなる杖。乳や蜜,清水などを湧き出させることもできる力を持っていると信じられていました。

 

サテュロスはユダヤ教では異教的な存在、キリスト教では悪魔と結び付けられています。悪魔がしばしば下半身がヤギの姿をしているのは、サテュロスの影響。

また、プーカパックの下半身がヤギの姿で描写されるのもサテュロスの影響であると考えられています

 

古代から存在するサテュロスは時代によって変化してゆきます。

初期のギリシアではサテュロスは年老いた怪物的な姿で描かれ、下半身も人間の姿であったようです。

紀元前4世紀以前の彫刻や絵画のサテュロスも人の姿をしているものが多く残されいます。

それ以降、体型は半人半獣の姿で描かれるようになりますが、表情は人間に近くなり、獣としての性格を失っていくことになります。

 

サテュロスの性格

アルブレヒト・デューラー作『サテュロスの家族』

性格は陽気でいたずら好きな小心者。恥ずかしがり屋で臆病。あらゆる快楽を求め、「サチリアージス(男性の色情症)」の由来にもなっています。

酒と女(男も)を愛し、。アウロスという笛、シンバル、カスタネット、バグパイプといった楽器の音楽に乗って踊り、ニュンペーを追い回すチャラ男。

刹那的で、快楽主義、それゆえに破壊的で危険な存在としての側面もあったようです。

 

ーイソップ物語の中のサテュロスー

ヤーコブ・ヨルダーンス作

サテュロスはイソップ物語に登場しています。

男とサテュロス

昔、ある男が森でサテュロスに会い、うまく友達になることができました。二人はじきに一番の親友になり、男の家で一緒に暮らしました。しかし、ある冬の夕方、家に向かって歩いていたとき、サテュロスは男が指に息を吹きかけているのを目にしました。

「どうしてそうするんだ?」とサテュロスは尋ねました。
「手を温めているんだ」と男は答えました。

家に着くと男はおかゆを二椀支度しました。これらを湯気が出るほど熱いままテーブルにおき、二人はとても機嫌よく座って食事にとりかかりました。しかし、サテュロスがとても驚いたことに、男はおかゆに息を吹きかけ始めました。

「どうしてそうするんだ?」とサテュロスは尋ねました。
「おかゆをさますんだ」と男は答えました。

サテュロスは急いでたちあがると、戸口に向かいました。

「あばよ」サテュロスは言いました。「もうたくさんだ。同じ息で熱い息を吹いたり冷たい息を吹いたりするやつとはとても友達でいられないね!」

The man who talks for both sides is not to be trusted by either.
両方の側に話す男はどちらからも信頼されません(二枚舌の人は信用されません)

イソップ物語

 

サテュロスの寿命

ホセ・デ・リベーラ作『アポローンとマルシュアース』

サテュロスは不死ではありません

その寿命は定かではありませんが、彼らは歳をとれば老死、暴力が原因でも死んでいます

4世紀後期ギリシア語叙事詩人ノンノスによるとサテュロスのひとりマルシュアースは、アポローンと竪琴の腕を競って敗れ、その罰に全身の皮を剥がされて死亡ししています。

 

また、ディオニューソスのインド行軍の際、同行したサテュロスはその戦いで戦死しています・

 

 

美女になる、イカつくなる、サテュロス

グラブルファンタジー」のサテュロスは剣戟と共に舞い遊ぶ可憐なる旅人。気ままに空を渡り歩き、歌と踊りに合わせて陽気に天地を墜とします。

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美女育成RPGカードゲーム「刻のイシュタリア」でのサテュロスは移り気で気紛れ、時として人間を惑わせる悪戯妖精。

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ダンジョンズ&ドラゴンズでのサテュロスは欲深で退廃的なクリーチャー。内気で臆病ないたずら者のような印象を与え、出会った人と友達になり、隙を見てその人の持ち物を強奪します。


ダンジョンズ&ドラゴンズ スターター・セット第5版

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キングダムハーツ3」のサテュロスはオリュンポス、アレンデール、サンフランソウキョウに出現。素早いパンチと突進攻撃が特徴です。

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サテュロス まとめ

 

ニッコロ・フランジパーネ作

今の時代、サテュロスのような人種は人の集まるいろんなところにいそうなキャラのように思います。

サテュロスはその存在を『怠惰で無用の種族』と表現されています。

ちなみに七つの大罪での怠惰はキリスト教の中の7番目の大罪。色欲も5番目に入っています。まあ、高慢・物欲・妬み・怒り・貧食なんて大罪を犯していない人間なんかいませんが。

そいういう意味では、やっぱサテュロスは人間らしい半獣のチャラ男クン、なようで。。

 

 

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