人間はおろか神までも、この世の全ての運命を自由に操れる力、なんて強くてかっこよくて、憧れますよね。
今回は、そんな運命をつかさどる北欧神話の女神・ノルン(ノルニル)について紹介します。
我々の運命は、彼女たちの手のひらにあるのかも。
ノルン 神々をも支配した運命の女神
ノルン(norn)は、ゲルマン神話に登場する運命をつかさどる女神たちです。複数形はノルニル(nornir)
神話が作られた当初は、複数人いたとされましたが、ギリシャ神話の同じく運命をつかさどるモイラという女神3姉妹の影響を受け、ノルンも3柱だと考えられるようになりました。
3姉妹としてのノルンは、長女・ウルド、次女・ヴェルダンディ、三女・スクルドの順にそれぞれ「起こったこと(過去)」、「起きつつあること(現在)」、「成されるべきこと(未来)」をつかさどるとされています。
しかし、ゲルマン神話が作られた古代ゲルマン社会には、時間の三分割の概念はなかったと考えられているため、当初から彼女たちが過去・現在・未来をつかさどる神だとは想定されていなかったかもしれません。
・長女のウルドは「過去」を司り「編む者」
・次女ヴェルダンディは「現在」を司り「紡ぐ者」
・三女スクルドは「未来」を司り「責務・義務」という意味を持ちます。
三姉妹は神々の運命を支配した、至高の神々だともいわれており、あらゆるものの生と死を見守りました。
運命の糸の長さは三姉妹が定めたのです。
ウルドが運命の糸を紡ぎ、ヴェルダンディが糸の長さを選定し、スクルドが糸を裁断する役割を持ちます。スクルドのみが、戦場で倒れた戦士たちをオーディンの宮殿であるヴァルハラへと導く戦乙女・ワルキューレを兼ねていました。
三姉妹はこの作業を繰り返して世界の安定を保っています。
ノルン・ノルニルの役割
ノルニルたちは、世界樹ユグドラシルの根のほとりにある、ウルズの泉に住んでおり、毎日泉の水をユグドラシルにかけて育てています。
竜などの動物によってかじられ、弱りきっているユグドラシルですが、彼女たちが世話をしているために枯れずに姿を保っていられるのです。
17世紀に発見された歌謡集『詩のエッダ』には3柱の主要なノルニルに加えて、より目立たない多くのノルニルが存在すると記されています
複数人としてのノルニルには、黄金の糸を紡ぐ者と木片にルーン文字を刻み、運命を定める者がいます。
また、『詩のエッダ』の3番目の詩『ヴァフスルーズニルの言葉』には、すべての悪意と悲惨な出来事をもたらす悪意あるノルニルと、守護女神となる善意のノルニルがいると語っています。
ノルンは、人間だけでなく、神々の運命をも手中にしました。
彼女たちの登場以前、神々は平和と繁栄の黄金時代を生きていました。しかし、ノルンの登場により、それは終わりを告げます。
17世紀のアイスランドの歴史家スノッリ・ストゥルルソンの著『古エッダ』の『巫女の予言』にはヨトゥンヘイムからやって来てたノルニルは、神々の黄金時代を終わらせたと説明されています。
ノルンの登場は、運命が定められ、ラグナロクという約束された終末に向けて運命を支配されることになるのです。
人間の運命も司るノルン
一方、当初から運命に支配されている人間は、生まれる前に必ずノルンのところに行くことになっていました。そこで、ノルンは人間の寿命を定め、運命を与えるのです。
優れた人間が生まれることを察知すると、ノルンの方から訪れることもありました。
シグムンドの息子で竜殺しのシグルドの異母兄弟でもあるヘルギが生まれた時は、ノルン自ら訪れ、「この子は王の中の王になるだろう」と運命を定めました。
成長したは、偉大な王となり、遠征先でフンディングという強大な王を倒すほどになりました。『ヒョルヴァルズルの息子ヘルギの歌』では、彼の活躍がくわしく分かります。
ノルン・ノルニル、3姉妹のパターンも単独のパターンも
ゲーム「ファイアーエムブレム 新・暗黒竜と光の剣」と「新・紋章の謎」では、ノルンをモデルにした少女が登場。祖国の為に志願兵になり、戦場で戦う勇敢な少女です。
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藤島康介の漫画『ああっ 女神さまっ』では、3姉妹としてウルド・ヴェルダンディ・スグルドが登場します。「1つだけ何でも願いを叶える」と言ったヴェルダンディに対し、主人公が「君のような女神にずっと一緒にいてほしい」と願ったことから始まるラブコメディです。
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「女神転生シリーズ」のノルンはアマテラス・ラクシュミに次ぐ高位の女神様
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ノルン・ノルニル まとめ
ノルンには神々でさえ、逆らえなかったとは驚きです。
ノルン登場以前は自由に生きられたのに、登場後は運命を定められ、ラグナロクまで一直線に生きなければならいないということを考えると、神々にとってノルンは憎むべき存在のようにも思います。
なんにしろ運命を定められる、できればご遠慮したい存在です