偉大なる魔術師マーリン、アーサー王を育て、共に戦った腹心として有名です。
最近では映画やドラマでも活躍する人気キャラ。けれどその生涯は謎に包まれた人物でもあります。
そこで、魔術師マーリンの生い立ちと数奇な生涯を辿ります。
意外とも思えるマーリンの実像とは。
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魔術師マーリンとは
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アーサー王に登場する大魔術師マーリン。アンブローズ・マーリン(Ambrose Merlin)は、実は12世紀の偽史『ブリタニア列王史』において、著者ジェフリー・オブ・モンマスが作り上げた架空の人物。
アーサー王の腹心として活躍する以前から、グレートブリテン島(現在のイギリス)の未来について予言を行い、ブリテン王にしてアーサーの父ウーサー・ペンドラゴンを導き、ストーンヘンジを建築するなどの功績を持ちます。
マーリンのモデルとなった人物
『ブリタニア列王史』の著者ジェフリー・オブ・モンマスは、予言の力を持つ魔術師マーリンを登場させるためにモデルとしたふたりの人物があったと伝えられています。
その一人は573年頃、カンブリア(北ブリテン)アルデリズの戦いで正気を失い、野人化した予言者、伝説的なウェールズの隠者マルジン・ウィスルト。ウェールズではこの野人は高名な詩人であり、偉大な予言者ミルディン(Myrddin)とよばれます。これがマーリンの名の語源となったとされます。
他のひとりは、8世紀後半に書かれた『ブリトン人の歴史』に登場する実在のブリテン人の将軍アンブロシウス・アウレリアヌス。彼のエピソードはそのままマーリンの少年期の『白い竜と赤い竜』という出来事として取り入れられています。
一説ではアンブロシウスはアーサー王のモデルになった人物であるとも伝えられています。
マーリンの生い立ちと能力
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魔術師マーリンはウェールズの小国ダヴェドの王女が、夢魔インキュバス(あるいは悪魔、または森の妖精)に誘惑されてできた子。
フランス中世文学では、生まれたばかりのマーリンを見た人々が、どの赤子よりも毛深い、と驚愕しているとあります。マーリンは魔に属する父の容姿を受け継いでいたのでした。
母はマーリンを産むと尼僧となり、マーリンはウェールズの町カーマーゼンで育ちました。
生後、マーリンが邪悪な存在になってしまうと考えた母は、教会で洗礼を受けマーリンから邪悪な部分を取り除いたため、不思議な能力だけが残ったのでした。
マーリンは過去から未来に至るまでを見通すことのできる千里眼の持ち主。数多の魔術を操りますが、特に “変身魔術”を得意とし、自身や他者をも完璧に変身させることが可能。アーサー王の父ウーサペンドラゴンを別人に仕立てています。
マーリンの生涯
マーリンはアーサー以前より4代の歴代ブリテン王に仕えた、大変長命な予言者であり魔術師。
小国の王女と夢魔との間に生まれます。
ヴォーティガーン王とマーリン
ある時、当時の王ヴォーティガーンが家臣の魔術師たちに唆され、塔の人柱(生贄)のため、部下に「父のいない若者」を連行するように命じ、マーリンが連れて来られました。
マーリンは塔の建築がうまくいかないのは生贄を立てないからではなく、塔の地盤の下にあるふたつの石のそれぞれに竜が眠っているからであると告げます。工事にかかるとヴォーティガーンの目前で二匹の竜が目覚めて、白い竜と赤い竜が争い、赤い竜が負けて逃げ去ります。
マーリンはこれを白い竜はヴォーティガーンが傭兵とするサクソン人、赤い竜はブリテンの民を表し、この戦いの当面の戦局と将来を告げていると予言します。
オーレリアン・アンブローズ王とマーリン
マーリンの予言通り、一旦は勝利したヴォーティガーン王は完成した塔にこもりますが、最終的にはオーレリアン・アンブローズとウーサー・ペンドラゴンの兄弟に倒されてしまいます。
ヴォーティガーン王亡き後、マーリンはオーレリアンとウーサー・ペンドラゴンの兄弟に仕えます。
オーレリアンが新たなブリテン王となり、戦勝碑を作ることとなり、マーリンはアイルランドの癒しの効果のある魔法の石、「巨人の舞踏」という巨石を使うのが良いと進言します。
王は弟ウーサーにその任を託し、ウーサーがアイランドに遠征している際オーレリアンが毒殺されてしまいます。
ウーサー・ペンドラゴン王とマーリン
その時夜空に、二つの光線を吐く竜の形をした星々が現れ、マーリンはこれによって『兄王が死んだこと、ウーサーが戦に勝利すること、後に生まれる彼の息子アーサーがガリアを征服すること』を予言します
王位に就いたウーサーはアイルランドに勝利した後、マーリンの予言にちなんで「竜の頭」を意味するペンドラゴンを名乗ります。
そしてイギリス南部のソールズベリーに「巨人の舞踏」を使った巨石建築群ストーンヘンジを立て、生涯をその地で暮らします。
ストーンヘッジにはオーレリアン、ウーサー、アーサー、コンスタンティン3世の四代のブリテン王のうちのアーサーを除く三人が葬られていると伝えられています。
王となったウーサーはある時コーンウォールの妃イグレインに一目惚れし、それが原因で戦争になってしまいます。それでもイグレインを思い切れず、マーリンの魔法で夫のゴルロイスに化け、イグレインの城に侵入して結ばれます。この時イグレインが懐妊したのが後のアーサー王。
アーサー王とマーリン
アーサー王とマーリンの繋がりについては15世紀後半に書かれたトマス・マロリーの作品「アーサー王の死」で語られています。
アーサー王の治世下、反対勢力との戦いに助言し王を勝利に導き、王を「湖の貴婦人」の元に導いて聖剣エクスカリバーを授けます。
そして、アーサーの実子モードレッドが国を滅ぼすことを予言し、 モードレッドの出生を阻止するために5月1日生まれの子供を全て虐殺するようにとの助言も行なっています。
マーリンの最期、マーリンとヴィヴィアン
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美男子であったかははなはだ疑問ですが(夢魔の子)、マーリンは後世の文学では数多くの女性に言い寄る色男とされました。
『アーサー王の死』でのマーリンはアーサー王と妃グィネヴィアの婚姻の後、湖の乙女の侍女のひとりヴィヴィアンという女性に恋い焦がれます。ヴィヴィアンもマーリンの魔術を習得したいという思いがあり、ふたりは清い交際を始めます。
ある時マーリンは、アーサー王に「近いうちに自分は生きながら地中に埋められるだろこと、そのために国の行く末をあれこれと予言し、エクスカリバーとその鞘だけは絶対に護るように」という忠告を与え、ヴィヴィアンと共に旅に出ます。
旅の途中、マーリンは魔法の力で強引にヴィヴィアンとの関係を迫ります。そのことに嫌気がさしたヴィヴィアンは、魔法で大きな石の下にはまっている岩の下にマーリンを誘い込むと、どんな魔術を使っても出られないようにし、そのまま立ち去ってしまいます。
そして、マーリンのその後についての記述は途絶えてしまいます。
ちなみにその後ヴィヴィアンは円卓の騎士の一人ペレアス卿と結婚し、魔術の力で王や円卓の騎士を助けます。アーサー王がカムランの戦いで負傷した際には、モーガン・ル・フェイに同行しアーサー王を伝説の島アヴァロンへと導いています。
マーリン、現代でも主役、準主役級の人気
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「Fateシリーズ」のマーリンは伝説のイケメン魔術師。ウェールズ王妃と夢魔に生まれ、ブリテンの騎士王、アーサー王(アルトリア)を生み出し、導いた存在。
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「七つの大罪」のマーリンは右首に雄豚の印を持つ妖艶な雰囲気の美女。83話で初登場するブリタニア大陸一の魔術師。
イギリスの人気ファンタジードラマ「魔術師マーリン」では堂々の主役。10世紀のイギリスを舞台に、若き日のマーリンの活躍が楽しめます
マーリン まとめ
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大魔術師マーリン、歴代の王に仕え、数々の功績をあげながらその最期はなんともお粗末。
たとえ自分の未来を予知していたとしても、嫌がる女を手篭めにしようとし、愛想を尽かされ、石の下敷きにされてしまう。なんとも情けない、残念な死にざま(?)です。
予知していたのなら、もう少しは自重してほしかった。。。