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ギリシャ神話・伝説 神・英雄・怪人

エリーニュス三姉妹、アレークトー、ティーシポネー、メガイラ、復讐の女神たち

更新日:

ジャック・フランソワ・フェルディナンド・レアレス作

聖書には、「愛する者よ、自ら復讐するな、ただ神の怒に任せまつれ。録して『主い給う、復讐するは我にあり、我これに報いん』」という言葉があります。

これは、「悪に対して、悪で報いてはいけない。悪人には、神が報復するからである」という意味です。

実は、この言葉を体現するかのような神がギリシャ神話に存在するのです。

その名はエリーニュス。

罪人を地の果てまで追い回し、狂人にさせてしまいほど恐ろしい執念を持った女神たちです。

今回は、そんなエリーニュス姉妹のご紹介です。


 

エリーニュス、オイデップス、オレステスを罰した復讐の女神 

カール・ラール作 1852年

エリーニュスとは 

エリーニュス (Erinyes 複数形はエリーニュエス)は、ギリシャ神話の復讐をつかさどる女神たち 

夜と闇に関連する、古代の神 

冥界の奥底にあるエレボスに住み、時にはタルタロスの罪人を罰します。 

罪人を追い回し、その罪を責め続け、エリーニュスに責められた罪人はその罪の呵責にさいなまれ、ついには狂気に陥ります。 

 

古くは多数のエリーニュスが存在するとされていましたが、後に三柱の姉妹として語られるようになります 。

 

姉妹は 

ジョン・フラックスマン・ジュニア 作

 ⚫︎アレクトー 「止まない者」「休まぬ者」、人間の道徳的な罪を非難する役割を持ち、その罰に狂気を与えます 

⚫︎ティーシポネー 「殺戮の復讐者」「殺人に復讐する者」、血に濡れた衣をまとうタルタロスの大門を守る番人。 

⚫︎メガイラ 「嫉妬する者」 

特にアレクトーは義憤の女神・ネメシスの役割と共通しています。 

 

 

エリーニュスに制裁を受けた主な罪人は 
⚫︎オイディプス 

呪われた子として生を受け、親を知らずに育ったオイティプスは、それを知らず、父テーバスの王・ライオスを殺し、母・イオカステーを娶ります 

再婚した夫が元夫を殺した実子であることを知ったイオカステーは自殺 

オイディプスは狂気に陥り、娘と共に放浪の旅に出ます 

オイディプス→ 

⚫︎アルクマイオン  

テーベを攻撃したアルゴス人の英雄アルクマイオンは予言者・アムピアラーオスの子。 

父はハルモニアの宝飾で買収された母・エリピューレーの企てで死亡 

父の遺言で復讐のために母を殺害 

その罪に苦しみ、狂気に陥ります。 

古代都市プソフィスの王・ペゲウスに癒され、娘のアルシノエを娶ります。 

 

⚫︎オレステス  

トロイア戦争の総大将でミュケーナイの王・アガメムノンは帰還し、妻のクリュタイムネーストラーに暗殺されます。 

その子オレステスは成長し、母を殺害 

狂気に陥ります。 

オレステス→ 

 

エリーニュスの誕生と家系 

紀元前330年頃

誕生、両親 

エリーニュスは、天空神・ウラノスが息子のクロノスによって男根を切り落とされた際、大地母神・ガイアの上にしたたり落ちたウラノスの血から生まれました(ヘシオドスの『神統記』) 

他説 

  • 夜の女神・ニュクスの娘 (アイスキュロス(紀元前5世紀、古代ギリシアの悲劇作家)) 
  • 冥界の王・プルートーとノクス(ニュクス)の娘 (ウェルギリウス(紀元前1世紀、の『アエネイス』)
  • クロノスエウリュノメーの娘
  • 海神・ポルキュスエウリュノメーの娘
  • ハデスペルセポネの娘 (オルペウス文学) 

 

姉妹 

  • メリアス  落葉樹トネリコのニンフ。 クレーテー島のレアーの洞窟で幼いころのゼウスの世話をしています。
  • ウラノスが殺害された時、ウラノスの男根に付いていた泡から愛と美の女神・アフロディテが誕生しています。 

 

系譜 

エリーニュスは、クロノスが率いる巨神族・ティターン族に属しオリンポスの神々とは違った系譜です。 

エリーニュスにはゼウスですら手出しできなかったことから、オリンポスの神々とは違う一定の権能を持っていたようです。 

 

エリーニュスの容姿と神格

ジョン・シンガー・サージェント 作

エリーニュスは翼を持っているとも伝えられ、髪には蛇を宿し、血走った目、炭のように黒い肌、黒衣をまとった老女 

手には闇をてらす松明と、青銅の釘が仕込まれたムチを持ちます 

このムチに打たれた者はもがき苦しみ、命を落とすといわれれるもの。 

 

古くは主には肉親、親子、兄弟間での暴行や殺害を犯す罪に対しての復讐を果たす役割を担っていました。 

けれど次第に 

  • 若者が老人に
  • 子供が親に
  • 主人が客に
  • 権力者が弱者に 

対する非道な行いの訴えに、罪人をどこまでも追い回し、あらゆる手段で責め続け、容赦なく断罪しました。 

 

エリーニュスとオレステス

復讐の女神エリーニュス慈しみの女神エウメニデスになるまで 

ヨハン・ハインリヒ・ヴィルヘルム・ティシュバイン作  1788年

エリーニュスが追及した罪人として有名なのが、トロイア戦争でギリシャ軍の総大将であったアガメムノンの息子・オレステスです。 

その物語は(古代ギリシア悲劇作家)アイスキュロスの悲劇三部作『オレステイア』で語られています。 

 

『アガメムノン』 

トロイアに勝利したギリシア軍総大将アガメムノンが、捕虜となったトロイアの王女カッサンドラーを連れ、ミュケーナイに凱旋帰国 

妃・クリュタイムネーストラーの出迎えを受けます。 

 

カッサンドラは復讐の女神・エリーニュスに取り憑かれ、アガメムノンの不幸を予言。 

邸内にアガメムノンの悲鳴が響きます。 

 

妃・クリュタイムネーストラーはアガメムノンが娘・イーピゲネイアを勝利を得るための生贄としたことの復讐のため、アガメムノンに恨みを抱く愛人・アイギストスと共謀し、アガメムノンとカッサンドラを殺害 

アイギストスと自分がミュケーナイの支配者であると宣言します。 

 

『供養する女たち』 

幼い頃里子に出されていたアガメムノンの息子・オレステスはアガメムノンの墓前で母に冷遇される姉・エレクトラと再会。 

オレステスはアポロン神に導かれ、父の仇をとるために帰国。 

ふたりは父の墓前で、母・クリュタイムネーストラーと愛人・アイギストスへの復讐を誓います 

 

旅人に扮したオレステスは宮を訪ね、アイギストスを殺害 

命乞いをする母もまたその手にかけ殺害 

母を殺したことの罪の呵責にさいなまれ、恐ろしい怪物、復讐の女神・エリーニュスが襲ってくると言い出し、パニック状態に陥ります 

オレステスは復讐の女神たちから逃れるため、デルポイのアポロンの信託所へ向かいます。 

 

『慈しみの女神たち』

ギュスターヴ・モロー作  1891年

放浪の末にたどり着いたデルポイの神殿でアポロンは「アテナイで女神アテナの裁判を受けよ」と告げます 

 

ヘルメスの導きでオレステスはアテナイに向かい、エリーニュスがその後を追いかけます。 

エリーニュスはアクロポリスのアテナの神殿でオレステスを捉え、とり囲み、復讐の歌を歌いながら踊り狂います。 

 

やがてアテナが現れ、オレステスを弁護するアポロンと、オレステスを母親殺しとして告発するエリーニュスによって裁判が行われ、アテナの支持によってオレステスは無罪 

エリーニュスは激昂。 

けれどアテナになだめられ、調和と安定をもたらす慈しみの女神・エウメニデスになるよう説得され、その申し出を受け入れます 

その後、エリーニュスは時にエウメニデスと呼ばれるようになります 

 


 

エリーニュス、創作作品での登場回数は低め

ゲームシャドウバース」では、ゴールドレアリティとして登場しています。この作品では、三姉妹ではなく、一柱の女神として描かれています。

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ゲームゴッド・オブ・ウォー アセンションでは、物語の鍵を握るキーパーソンとして登場。元は正義感が強いエウメニデス的な存在でしたが、アレクトーが戦神・アレスと関係を持ったことにより、妹たち共々ゼウスに反抗する復讐の女神変わっていきます。

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エリーニュス まとめ

ギュスターヴ・モロー作  1891年

罪人を容赦なく追い詰める復讐の恐ろしき女神かと思えば、慈愛をもたらす女神でもあるという、二面性を持ったエリーニュス三姉妹。

罪人を狂人にするほど追及を行うのは、ある意味、自身に絶対的な正義があるということ。

そういった意味では、一貫性がある女神なのかもしれません。

 


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